有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S10083H4
株式会社新日本科学 研究開発活動 (2016年3月期)
事業等のリスクメニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度の研究開発活動は、科学技術の急速な進展により医薬品の開発環境が大きく変化している中、新しい環境にも迅速に対応した質の高い開発支援ができるよう、当社グループの各セグメントにおいて最先端と思われる技術を開発利用しております。
当連結会計年度における研究開発費は、815,632千円であり、各セグメント別の研究開発活動は、次のとおりであります。
(1) 前臨床事業
当社の安全性研究所及び薬物代謝分析センター並びにSNBL USAでは、迅速で質の高い試験成績を委託者に提供できるよう、バックグラウンドデータの蓄積や解析を行うだけではなく、事前検討の実施や新技術獲得のための基礎研究や技術改良に日々取り組んでおります。また、いずれの施設も動物福祉に積極的に取り組み、第三者機関により動物福祉適合施設として認証されております。
医薬品の主流が、低分子化合物から抗体医薬に代表されるバイオ医薬品の開発及びiPS細胞に代表される再生医療に移行する中で、当社は、これらの業界の動きに対応するため、種々の検討を先駆けて実施しております。例えば、抗体医薬ではこれまで日本では受託できる機関がなかった組織交差性試験を立ち上げ、抗体の特性評価をより詳細に実施するためのキャピラリー電気泳動やELISAの自動測定装置であるGyrolabでの受託も開始しております。さらに、既存技術より高い感度でバイオマーカーを測定できる高感度免疫分析装置Erennaの受託も開始しており、高感度により得られる高品質な測定結果に製薬企業より評価頂いております。Erennaは国内CROでは当社のみ導入しており、他社との差別化を図って参ります。また、抗体医薬は霊長類のみに効果がみられるものが多く、日本で唯一の霊長類を用いた生殖発生毒性試験を実施できる施設として、次世代への影響を評価する試験実績を増やしております。再生医療の分野では、iPS細胞を含む各細胞の機能解析にも応用可能な高機能細胞分析装置(Attune NxT)を積極的に導入し、研究受託設備を強化しております。Attune NxTのような高機能細胞分析装置を導入しているCROはほとんどないため、既に臨床検体の解析等も受託しており、前臨床だけでなく臨床試験の受託増加が見込めます。また、霊長類の感染実験が実施可能な施設を活用し、インフルエンザやエイズワクチンなどに関して企業や大学との共同研究を行っており、フェレットやマウスを用いた感染実験も確立しております。これまでの安全性研究所における収益の柱であった安全性評価に加え、近年では医薬品の有効性評価に関わる業績が向上しております。特に当社は霊長類を用いた非臨床試験では国内でトップクラスの業績を有しており、これまで培ってきた業績を基礎に霊長類を主体とした各種病態モデルを確立し、臨床への外挿性が高い有効性評価手法が国内外の製薬企業より評価を頂いております。それら病態モデルの中でも、臨床でiPS細胞の適用が進められている加齢性黄斑変性症の薬効試験は国内でも少数の試験施設でしか受託体制は整っていないため、当該モデルの確立後から既に複数試験の受託をしております。引き続き、加齢黄斑変性症のみならず、時代に応じて変化する創薬ニーズに対応した新しい病態モデルの確立も進めて参ります。また、有効性評価の実績向上には、業界に先駆けて導入を進めた各種イメージング機器を用いた非臨床試験数の増加も寄与しております。当社で導入しているMRI、CT、及び血管造影装置はすべて臨床でも使用している機器となります。つまり、サルなどの大動物を用いてヒトと近似の病態モデルを作出し、ヒトと同じ機器を用いて動物を傷つけることなく薬物の評価を継時的にできる技術が高く評価されております。従来、非臨床試験ではイメージングを用いた有効性評価及び安全性評価は一般的ではございませんでしたが、新薬が出にくくなり、動物福祉のさらなる向上が求められている製薬業界において、イメージングを用いた新しい評価系へのニーズは国内外の製薬企業を問わず今後も高まっていくことが予想されます。
なお、研究成果については海外や国内の多くの学会等において発表したり、国内外の学術雑誌へ論文として掲載されたりしております。
以上の活動における研究開発費は、626,682千円であります。
(2) トランスレーショナル リサーチ事業
ⅰ)経鼻投与技術
当社が独自に開発した経鼻投与基盤技術(Nasal Delivery System: NDS)について、米国でPhaseⅡ臨床試験を完了したグラニセトロン経鼻剤(開発コード:TRG,制吐薬)、米国でPhaseⅠ臨床試験を完了したゾルミトリプタン経鼻剤(開発コード:TRZ,偏頭痛薬)における臨床実績が高く評価され、これまでに、海外の製薬企業3社に対して、特定の化合物に限定した粉末経鼻製剤の全世界における独占的開発権及び販売権を導出した実績があります。また、国内外の複数の製薬企業が保有する化合物に応用するための技術評価試験(フィジビリティ試験)の実施も増えております。
併せて、インフルエンザワクチンの注射液剤を固化して粉体で安定的に鼻腔に投与する新技術の研究開発に成功し、非臨床試験でその予防効果を確認しました。インフルエンザ経鼻ワクチン(開発コード:TR-Flu)は、注射器や針が不要であるだけでなく、室温で保管できることに加えて、感染予防に重要である粘膜免疫(分泌型IgA産生)を高めることから、注射ワクチンよりも高い感染予防効果が期待されており、更にウイルスがある程度変異しても有効性が維持できると推測されています。このような優位性により、インフルエンザウイルス各種に対し幅広い交叉性を有し、より強力な免疫を誘導する効果が期待できます。現在、ワクチン会社から提供されたインフルエンザワクチン抗原を使った試験研究が進展しております。また、オランダのISA Therapeutics社から提供を受けた子宮頸がん治療薬を当社経鼻投与技術に応用して、子宮頸がん発症予防のためのワクチン経鼻製剤の研究も実施しております。
これまでの研究開発実績から当社の経鼻投与基盤技術が種々の薬剤に対して幅広い応用可能性が実証されたことにより、大手を含む国内外の複数の製薬企業が保有する化合物に当社の技術を応用するフィジビリティ試験の実施が活発化しております。フィジビリティ試験における良好な成績をもとに、現在、技術供与のライセンス契約や共同研究の契約締結に向けた交渉を積極的に進めております。
ⅱ)核酸医薬開発
核酸医薬開発に関しては、重要な投資先であるWaVe Life Sciences Ltd.と共同で、核酸医薬の立体制御技術(キラル核酸合成技術)を用いて創製した新規のキラル核酸アジュバントの研究開発にも取り組んでおります。対象となる疾患領域は様々ですが、特に、がん治療への応用を優先ターゲットとして、有力候補配列の選定や効果の検証を実施しております。
以上の活動における研究開発費は、166,726千円であります。
(3) その他の事業
その他の事業に係る研究開発費は、22,223千円であります。
当連結会計年度における研究開発費は、815,632千円であり、各セグメント別の研究開発活動は、次のとおりであります。
(1) 前臨床事業
当社の安全性研究所及び薬物代謝分析センター並びにSNBL USAでは、迅速で質の高い試験成績を委託者に提供できるよう、バックグラウンドデータの蓄積や解析を行うだけではなく、事前検討の実施や新技術獲得のための基礎研究や技術改良に日々取り組んでおります。また、いずれの施設も動物福祉に積極的に取り組み、第三者機関により動物福祉適合施設として認証されております。
医薬品の主流が、低分子化合物から抗体医薬に代表されるバイオ医薬品の開発及びiPS細胞に代表される再生医療に移行する中で、当社は、これらの業界の動きに対応するため、種々の検討を先駆けて実施しております。例えば、抗体医薬ではこれまで日本では受託できる機関がなかった組織交差性試験を立ち上げ、抗体の特性評価をより詳細に実施するためのキャピラリー電気泳動やELISAの自動測定装置であるGyrolabでの受託も開始しております。さらに、既存技術より高い感度でバイオマーカーを測定できる高感度免疫分析装置Erennaの受託も開始しており、高感度により得られる高品質な測定結果に製薬企業より評価頂いております。Erennaは国内CROでは当社のみ導入しており、他社との差別化を図って参ります。また、抗体医薬は霊長類のみに効果がみられるものが多く、日本で唯一の霊長類を用いた生殖発生毒性試験を実施できる施設として、次世代への影響を評価する試験実績を増やしております。再生医療の分野では、iPS細胞を含む各細胞の機能解析にも応用可能な高機能細胞分析装置(Attune NxT)を積極的に導入し、研究受託設備を強化しております。Attune NxTのような高機能細胞分析装置を導入しているCROはほとんどないため、既に臨床検体の解析等も受託しており、前臨床だけでなく臨床試験の受託増加が見込めます。また、霊長類の感染実験が実施可能な施設を活用し、インフルエンザやエイズワクチンなどに関して企業や大学との共同研究を行っており、フェレットやマウスを用いた感染実験も確立しております。これまでの安全性研究所における収益の柱であった安全性評価に加え、近年では医薬品の有効性評価に関わる業績が向上しております。特に当社は霊長類を用いた非臨床試験では国内でトップクラスの業績を有しており、これまで培ってきた業績を基礎に霊長類を主体とした各種病態モデルを確立し、臨床への外挿性が高い有効性評価手法が国内外の製薬企業より評価を頂いております。それら病態モデルの中でも、臨床でiPS細胞の適用が進められている加齢性黄斑変性症の薬効試験は国内でも少数の試験施設でしか受託体制は整っていないため、当該モデルの確立後から既に複数試験の受託をしております。引き続き、加齢黄斑変性症のみならず、時代に応じて変化する創薬ニーズに対応した新しい病態モデルの確立も進めて参ります。また、有効性評価の実績向上には、業界に先駆けて導入を進めた各種イメージング機器を用いた非臨床試験数の増加も寄与しております。当社で導入しているMRI、CT、及び血管造影装置はすべて臨床でも使用している機器となります。つまり、サルなどの大動物を用いてヒトと近似の病態モデルを作出し、ヒトと同じ機器を用いて動物を傷つけることなく薬物の評価を継時的にできる技術が高く評価されております。従来、非臨床試験ではイメージングを用いた有効性評価及び安全性評価は一般的ではございませんでしたが、新薬が出にくくなり、動物福祉のさらなる向上が求められている製薬業界において、イメージングを用いた新しい評価系へのニーズは国内外の製薬企業を問わず今後も高まっていくことが予想されます。
なお、研究成果については海外や国内の多くの学会等において発表したり、国内外の学術雑誌へ論文として掲載されたりしております。
以上の活動における研究開発費は、626,682千円であります。
(2) トランスレーショナル リサーチ事業
ⅰ)経鼻投与技術
当社が独自に開発した経鼻投与基盤技術(Nasal Delivery System: NDS)について、米国でPhaseⅡ臨床試験を完了したグラニセトロン経鼻剤(開発コード:TRG,制吐薬)、米国でPhaseⅠ臨床試験を完了したゾルミトリプタン経鼻剤(開発コード:TRZ,偏頭痛薬)における臨床実績が高く評価され、これまでに、海外の製薬企業3社に対して、特定の化合物に限定した粉末経鼻製剤の全世界における独占的開発権及び販売権を導出した実績があります。また、国内外の複数の製薬企業が保有する化合物に応用するための技術評価試験(フィジビリティ試験)の実施も増えております。
併せて、インフルエンザワクチンの注射液剤を固化して粉体で安定的に鼻腔に投与する新技術の研究開発に成功し、非臨床試験でその予防効果を確認しました。インフルエンザ経鼻ワクチン(開発コード:TR-Flu)は、注射器や針が不要であるだけでなく、室温で保管できることに加えて、感染予防に重要である粘膜免疫(分泌型IgA産生)を高めることから、注射ワクチンよりも高い感染予防効果が期待されており、更にウイルスがある程度変異しても有効性が維持できると推測されています。このような優位性により、インフルエンザウイルス各種に対し幅広い交叉性を有し、より強力な免疫を誘導する効果が期待できます。現在、ワクチン会社から提供されたインフルエンザワクチン抗原を使った試験研究が進展しております。また、オランダのISA Therapeutics社から提供を受けた子宮頸がん治療薬を当社経鼻投与技術に応用して、子宮頸がん発症予防のためのワクチン経鼻製剤の研究も実施しております。
これまでの研究開発実績から当社の経鼻投与基盤技術が種々の薬剤に対して幅広い応用可能性が実証されたことにより、大手を含む国内外の複数の製薬企業が保有する化合物に当社の技術を応用するフィジビリティ試験の実施が活発化しております。フィジビリティ試験における良好な成績をもとに、現在、技術供与のライセンス契約や共同研究の契約締結に向けた交渉を積極的に進めております。
ⅱ)核酸医薬開発
核酸医薬開発に関しては、重要な投資先であるWaVe Life Sciences Ltd.と共同で、核酸医薬の立体制御技術(キラル核酸合成技術)を用いて創製した新規のキラル核酸アジュバントの研究開発にも取り組んでおります。対象となる疾患領域は様々ですが、特に、がん治療への応用を優先ターゲットとして、有力候補配列の選定や効果の検証を実施しております。
以上の活動における研究開発費は、166,726千円であります。
(3) その他の事業
その他の事業に係る研究開発費は、22,223千円であります。
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