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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S1007UIQ

有価証券報告書抜粋 第一生命ホールディングス株式会社 事業等のリスク (2016年3月期)


対処すべき課題メニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析



当社及び当社グループの事業その他に関するリスクのうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられるリスクは、主に以下のとおりであります。
これらのリスクを認識した上で、リスクの発生の回避に向けた対応を推進するとともに、発生した場合には迅速かつ適切な対応に努めております。
なお、本項における将来に関する事項は、別段の表示がない限り、本書提出日現在において当社及び当社グループが判断したものであります。

(1) 事業に係るリスク
1) グループ経営体制改革に関するリスク
当社は、更なるガバナンスの強化を目的に、持株会社体制への移行を予定しております(詳細については、「第2 事業の状況 5 経営上の重要な契約等」並びに「第5 経理の状況 1 連結財務諸表」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等」の「注記事項(重要な後発事象)」をご参照下さい。)が、円滑な移行が実現できない可能性があります。また、持株会社体制への移行により経営効率が改善するとの保証はなく、所期した施策を想定どおり実行できない可能性もあります。結果として、当社の財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

2) 国内外の金融市場・経済情勢の悪化が当社の事業・業績に悪影響を及ぼすリスク
当社グループの業績は、国内外の経済状況や金融市場に大きく影響されるものであります。日本経済は、海外経済の減速懸念の高まりや円高の進展を受け、先行きに不透明感があります。また、日本銀行が導入したマイナス金利政策の効果の波及状況にも注視する必要があると言えます。世界的な経済や金融市場における先行き不透明感が強まった場合、金融資本市場は不安定さを増し、金融市場のパフォーマンスの悪化につながる可能性があります。深刻な金融不安が生じた場合には、主要な経済圏に多大な影響を及ぼす可能性もあります。
こうしたリスクが現実となった場合、当社の保険商品への需要が低下する可能性や、個人保険の解約・失効率が上昇するおそれがある他、低金利や株価下落により資産運用収支の悪化等、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

3) 保有株式の価値減少に係るリスク
国内株式市場を含むグローバル金融市場は、世界的な経済・金融情勢により大きく変動します。経済危機及び主要経済大国における景気回復見通しの不透明感等を起因として株価が急落する場合、有価証券評価損・売却損の増加及び有価証券含み益・売却益の減少を通じて当社の資産運用収支、純資産及びソルベンシー・マージン比率(通常の予測を超えて保険金等の支払等が発生するリスクに備えて保険会社の「支払余力」がどの程度カバーされているかを示す行政監督上の指標の一つ)等を著しく悪化させ、当社の財務内容に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、その他有価証券評価差額金は、当社の純資産と支払い余力及びソルベンシー・マージン比率に影響を及ぼします。
株式市場の著しい低迷及び経済状況の悪化による保有株式の価値減少に係るリスクに備えるため、株式残高については市場動向に留意しつつ適宜デリバティブも活用してリスク・コントロールを実施しております。また、必要に応じて準備金の取崩しを行っております。例えば、当社は2009年3月期、2011年3月期及び2012年3月期に価格変動準備金(注1)を取り崩しました。今後、仮に、国内外の経済状況及び株式市場の悪化が続く場合、将来、当社に更なる重大な損失をもたらし、当社の財務内容に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

(注1) 価格変動準備金とは、保険業法に基づき、株式等の価格変動の大きい資産について、その価格が将来下落したときに生じる損失に備えることを目的に積み立てている準備金をいいます。


4) 金利変動に係るリスク
当社では、保険契約の引受けによって生じる負債に見合った運用資産を適切に管理するため、長期的な資産・負債間のバランスを考慮しながら安定的な収益の確保を図ることを目的として、資産・負債総合管理(Asset Liability Management。以下、「ALM」という。)を行っておりますが、日本国債の流動性の大幅な低下や金利の乱高下といった大幅な市場環境の変動等が起きた場合には、当社の財務内容及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社ではALMの考え方に基づき保有債券のデュレーション(残存期間)を長期化させる努力をしておりますが、契約者に対して負う当社の債務のデュレーションは未だ運用資産よりも長期であることから、このような負債と資産のデュレーションのアンマッチ(不一致)による金利変動リスクを有しております。金利の低下局面では、より低い金利水準を求めて期限前償還又は繰上返済される債券や貸付及び満期を迎えて償還される資産を再投資した際の運用利回りは従来より低くなるため、当社の平均運用利回りは低下いたします。既契約の保険料が原則として変わらない一方、このような低い金利水準により当社の資産運用ポートフォリオの利回りが低下することで、当社の収益性及び長期的な事業運営能力に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、平成初期の円金利水準の著しい下落は、当社の資産運用ポートフォリオの平均利回りが既契約の保険料率の設定に用いた予定利率を下回る現象、いわゆる「逆ざや」を招きました。近年では、満期、解約、失効、転換を受け予定利率の高い過去の契約が減少していることや予定利率の低い新契約を獲得していること、2008年3月期より追加的な責任準備金の積立てを行っていること等により平均予定利率が低下しております。その後、資産運用利回りの上昇により当社の逆ざやは減少し、2014年3月期以降は順ざやとなりました。しかし、国内外の景気の悪化、マイナス金利政策の長期化・強化、不動産価格及び株価の下落、当社の貸出先の経営状況及び世界の経済環境の変動等に起因し、当社の資産運用ポートフォリオの資産運用利回りが大幅に低下する場合には、再び逆ざやとなる可能性があります。また、中長期金利が長期にわたり著しく低水準で推移した場合には、収益性の確保が困難になり、販売中止を余儀なくされる貯蓄性商品が今後も発生する可能性があります。
逆に、日本銀行による物価目標の設定の影響や財政悪化懸念等により、金利が今後上昇する局面も考えられますが、資産運用利回りが上昇することにより当社の資産運用ポートフォリオの収益力を向上させることができる一方で、保険契約者がより高収益の資産運用手段を求めることにより保険契約の解約が増える可能性があります。更に、金利上昇時は債券等の価格が下落し、含み損益の悪化により当社の純資産にマイナスの影響を及ぼします。当社は金利上昇リスクに対応し、会計上、一定のデュレーションマッチングを条件に簿価評価が可能な責任準備金対応債券を積極的に活用することにより、かかる影響を緩和していますが、金利が短期間で大幅に上昇した場合は当社の財務内容及び収益性に重大な影響を及ぼす可能性があります。

5) 資産運用ポートフォリオに係るその他のリスク
過去に生じた世界的な経済・金融危機は、米国及び国際信用市場、インターバンク短期金融市場等様々な金融市場において、各種のモーゲージ担保証券・資産担保債券、投資適格債を含むその他の確定利付証券の資産価格の急落と大幅な変動をもたらしました。こうした事象は当社の多額の資産運用ポートフォリオに大きなリスクをもたらす可能性があり、このような状況下においては、当社の保有する資産価値が下落し純資産が毀損する可能性があります。
また、安定的な資産運用収益の獲得は当社の事業運営にとって重要であるため、当社の資産運用ポートフォリオは、国内外の公社債及び株式、貸付金、不動産並びにオルタナティブ投資等幅広い資産区分に分散投資することでリスク抑制的な運営を行っておりますが、以下に掲げる様々なリスクを回避できない可能性があります。

a 為替リスク
当社の保有する有価証券には外貨建てのものも含まれております。外貨建ての有価証券とは、主に外国債券(外国の国債・政府機関債・社債等)、外国株式及び証券化商品であります。当社は、保有する外国債券の一定割合について外国為替変動をヘッジしておりますが、主要海外通貨に対して大幅な円高となることによる著しい為替差損等が生じた場合、当社の財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。


b 信用リスク
当社が保有する債券の発行体の信用力が信用格付けの引下げ等により低下し、債券の市場価格が下落する可能性及び保有する債券の発行体が元利金不払い等債務不履行に陥る可能性並びに当社の貸付先の財務内容悪化や信用力低下等による貸付金の評価額が減少する可能性があります。その結果、有価証券評価損の発生、有価証券売却損益・含み損益の悪化、貸倒引当金を上回る損失の発生や引当金の増額が必要となることで、当社の財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社が市場リスクをヘッジするために用いている金利スワップ、為替予約、株価指数先物等のデリバティブ取引についても、カウンターパーティー・リスク(デリバティブ取引等の相手方の信用リスク)を有しており、カウンターパーティーに債務不履行が生じた場合には、有価証券評価損及びその他損失の発生や、有価証券売却益及びその他利益の減少につながる可能性があり、当社の財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社は貸付先の財務内容や信用力が悪化するリスクにさらされており、当該リスクは当社の貸付金ポートフォリオの信用コストを上昇させる可能性があります。すなわち、当社は貸付先に関する評価・見積りに基づき貸倒引当金を計上しておりますが、日本経済の状況悪化や業種固有の問題等により債務不履行や信用力の低下が発生した場合には、実際に発生する損失が引当金を超過し又は引当金の増額が必要となり、当社の財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は国内のメガバンクに対して相当量のエクスポージャー(与信等の残高)を有しておりますが、それは主に劣後債と優先出資証券であります。一般的に、これら劣後性証券の価値はシニア債権の価値に比べて、発行体である銀行の信用情報の変化に、より大きく影響を受ける傾向があります。そのため、国内の銀行の信用状況や財務内容が悪化した場合には、有価証券評価損、引当金の増額及びその他損失の発生又は有価証券売却益及びその他利益の減少につながる可能性があり、当社の財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

c 証券化商品に関するリスク
当社は、国内外の住宅ローン等を裏付けとする証券を含む証券化商品を保有しております。信用市場が悪化し、証券化商品の流動性が低下した場合には、当社が保有する証券化商品やその他運用資産の価値が下落し、結果として、当社の財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

d 不動産投資に関するリスク
当社は、営業・投資を目的とする不動産を保有しております。景気低迷により、国内の不動産価格や賃貸料の下落及び空室率の上昇等が生じた場合には、当社の不動産関連収益は減少し、結果として、当社の財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

6) 格付けの引下げ等による財務健全性の悪化等に関するリスク
当社の財務健全性が実際に悪化した又は悪化したと判断された場合、保険契約の解約・払戻しの増加、新契約販売の減少、費用の増加、当社の資産運用・資金調達・資本増強策に関連するその他の問題という形で、当社の事業展開、財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これらの悪影響は、日本の保険業界全体における格付けの引下げの可能性、否定的なメディア報道や風評、業績悪化のみならず、実際の当社の格付けの引下げやソルベンシー・マージン比率の大幅な低下によって生じる可能性があります。また、特に他の国内の大手生命保険会社と比較して、当社のソルベンシー・マージン比率が大幅に低下した場合には、当社の事業展開、財務内容及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
当社の財務健全性が実際に悪化した又は悪化したと判断された場合に加え、当社が資金調達を行おうとする資本市場・信用市場が悪化した場合等にも、当社にとって有利な条件で資本増強ができない又は資本増強そのものができないおそれがあり、結果として、当社の事業展開、財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。


7) 保険商品の料率設定及び責任準備金の積立ての前提が変動するリスク
当社の収益は、当社商品の料率設定及び責任準備金額の決定に用いる計算基礎率が保険金・給付金等の支払い実績とどの程度一致するか等に大きく影響されます。計算基礎率には、将来の死亡率(予定死亡率)、資産運用収益率(予定利率)、事業費率(予定事業費率)を含みます(詳細については、後記「(参考1) 生命保険料の仕組みについて」をご参照下さい。)。計算基礎率よりも実際の死亡率が高かった場合、資産運用収益が低かった場合、事業費がかかり過ぎた場合には、当社の財務内容及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。また、標準生命表や標準利率の改定は計算基礎率の設定に影響し、結果として会社の財務内容及び業績にも影響を及ぼし得ます。近年、当社が販売に力を入れている「第三分野」の保険商品(医療保険、がん保険、介護保険等)の料率設定の計算基礎率は、伝統的な死亡リスクを保障する生命保険商品の計算基礎率に比べて限定的な経験に基づくことが多く、相対的に高い不確実性を内包しております。
当社は、保険業法に基づき、保有契約の責任準備金について定期的に計算を行い、責任準備金の変動分を費用又は収益として計上しております。保険金・給付金等の支払い実績が当初の計算基礎率より多額となる等により責任準備金の積立不足が顕在化した場合、又は環境の変化によって当社の責任準備金の計算基礎率を変更せざるを得ない場合(後記「(2)保険業界に係るリスク 6)責任準備金の計算に係る会計基準の変更に関するリスク」をご参照下さい。)においては、当社は責任準備金の積み増しを行うことが必要となる可能性があります。このような積み増しが多額である場合には、当社の財務内容及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
更に、当社連結子会社である第一フロンティア生命保険株式会社(以下、「第一フロンティア生命」という。)を通じて販売している変額年金保険の中には、最低給付の保証を特徴とするものがあります。この保証型商品については、毎四半期に責任準備金を計算し、不足があれば積み増しを行う必要があり、結果として費用が増加し、当社による第一フロンティア生命の自己資本の充実が必要となる可能性があります。同社は、ダイナミックヘッジ(価格変動リスクをヘッジする手法の一つ)の活用や再保険契約の締結等によって最低給付保証に係るリスクのヘッジに努めておりますが、こうした取組みが成功するとは限らず、また、将来において、ダイナミックヘッジが有効に機能しない可能性や、適切な条件で再保険を締結できない又は再保険の締結自体ができない可能性があるとともに、再保険取引についてカウンターパーティー・リスクにさらされております。同社による責任準備金の積み増しが多額である場合には、当社グループの財務内容及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。また、同社が販売している円貨建及び外貨建定額商品等の中には、市場価格調整(MVA)を設定するものがあり、国内外の市場金利の低下局面においては責任準備金の積増し、上昇局面においては責任準備金の取崩しが必要となることから、会計上の一時的な変動要因となる可能性があります。

8) 保険販売が営業職員チャネル等を通じた個人向け生命保険商品に集中しているリスク
当社及び当社連結子会社である第一フロンティア生命及びネオファースト生命保険株式会社(以下、「ネオファースト生命」という。)の保険料収入においては、個人向け生命保険契約によるものの占有率が高く、個人向け生命保険商品の販売においては、以下に掲げるものを含む様々な要因が影響を及ぼしております。
・国内の雇用水準及び家計所得水準
・貯蓄の代替商品及び投資商品の相対的な魅力
・保険会社の財務健全性、信頼性及びレピュテーションに対する一般的な認識
・出生率の動向及び高齢化といった日本の人口構成に影響を及ぼす長期的な人口動態
このような要因の変化等は、個人向け生命保険商品における新契約販売の減少又は既契約の解約・失効の増加をもたらし、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの個人向け生命保険商品の販売は、主に営業職員チャネルや銀行等の金融機関に依存しております。規制緩和により銀行等の金融機関が年金保険等の新たな販売チャネルとして定着し、また、来店型保険ショップ等の乗合代理店が、新たな販売チャネルとして地位を確立し、シェアを拡大しつつあるように、今後、新たなチャネルが規制や環境の変化等により、営業職員チャネルや銀行等の販売チャネルに取って代わる程の規模に成長した場合や、営業職員の採用環境が熾烈化し、想定の採用数を確保できずに営業職員在籍数が大幅に減少する場合等には、当社グループは現在の競争力・収益性と市場シェアの維持という点において課題に直面し、結果として、当社グループの事業展開及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。


9) 資産の流動性を十分に確保できないリスク
当社が提供する多くの商品は、契約者が積立金の一部を引き出すこと及び契約を解約し解約返還金を受け取ることを認めております。
当社は、今後予想される積立金の引出しや解約の請求、保険金・給付金等の支払い及び金融機関等とのデリバティブ契約に関する担保の差入れ要請に対応するために十分な流動性を提供し維持できるよう、負債の管理と資産運用ポートフォリオの構築をしており、また、流動性を高めるために当座借越契約を締結しております。一方で、不動産、貸付金及び私募債等の一部の資産は一般的に流動性に乏しいものであります。当社が、例えば、不測の引出しや解約、感染症の大流行等の大規模災害により、急遽、多額の現金の支払いを求められる場合、当社の流動資産及び当座借越が無くなり、その他の資産も不利な条件で処分することを強いられる可能性があります。更に、金融市場における混乱は、当社が有利な条件で資産を処分できない又は全く処分できないといった、流動性における危機をもたらす可能性があります。当社が不利な条件での資産の処分を強いられる又は資産を処分できない場合には、当社の財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

10) 銀行等の販売チャネルでの販売が成功しないリスク
2002年の個人年金保険及びその他商品の銀行窓販の解禁の結果、販売代理店としての銀行は、広範な支店網と巨大な顧客基盤によって、国内の個人向け年金商品の最も重要な販売チャネルとなりました。更に、2007年12月には全ての保険商品の銀行窓販が解禁となり、現在では、国内の銀行と証券会社は販売代理店として全ての保険商品を販売することができるようになっております。
当社は、こうした販売チャネル向けの新しい年金商品等の開発・販売を専門とする第一フロンティア生命を子会社として設立し、2007年10月に販売を開始する等の取組みを行っています。変額年金保険等において、国内景気の停滞、資産運用パフォーマンスの不振による需要の減少及び生命保険会社間の競争激化等の厳しい事業環境により、同社の販売が低迷する可能性があります。また、第一フロンティア生命は、最低給付保証(変額年金商品の中にはかかる保証が付されているものがあります。)に係るリスクへのエクスポージャー(リスク量)を管理するため、特定の金融機関代理店を通じて販売する変額年金商品の販売抑制を実施する場合があります。
当社グループは、販売代理店数を増やし、また円建定額保険、外貨建定額保険等、商品ラインアップの多様化を図っておりますが、このような事業環境において当社グループが競争力を確保し、又は販売を拡大して目標となる収益性を達成できるとは限りません。更に、販売代理店である銀行・証券会社等の金融機関と当社の営業職員との間の競争が将来激化する可能性があります。これらの結果、当社グループの事業展開、財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

11) ネオファースト生命を通じた新市場における取組みが成功しないリスク
近年、お客様ニーズが多様化する中、銀行窓口において、貯蓄性保険に加えて保障性保険の販売が拡大し、また銀行・来店型保険ショップ等において、商品を自ら比較検討したいというご意向を持つお客さまが増加しています。
そこで、当社グループはこうしたお客様に対し、銀行窓口、来店型保険ショップ等のチャネルを通じて、医療保険等の第三分野を中心に、商品性がわかりやすく、手続きが簡便な、新しい商品とサービスを提供していくことを目指し、新たな子会社を通じて新市場に参入することにいたしました。
具体的には、損保ジャパン・ディー・アイ・ワイ生命保険株式会社を完全子会社化し、2014年11月25日付でネオファースト生命に商号変更(社名変更)を行いました。ネオファースト生命において、事務・システムインフラの構築等を行い、2015年8月より、新たな時代に合った商品・サービスの提供を、銀行窓口や来店型保険ショップ等の乗合代理店を通じて開始しております。
当社グループは、競争環境に合わせた戦略立案・商品提供を行いますが、競争戦略が想定通りに実現できなかったり、競合他社から類似商品が販売されたりすることで、販売件数が想定に満たない場合が考えられます。また、代理店に対する保険会社間の手数料競争が激化することで、手数料率が高水準となり事業費が増加する場合が考えられます。それらの結果、ネオファースト生命に係る事業が収益性を確保するまでに、想定以上の期間が必要となる可能性があります。


12) 海外事業の拡大に関連するリスク
近年、当社グループは、日本以外の収益基盤を確保するために、海外において保険事業及びアセットマネジメント事業を積極的に展開しております。特に、海外保険事業では、ベトナム、オーストラリア及び米国における保険会社の買収、インドネシア、インド及びタイにおける保険会社への出資等を行っております。また、展開地域の拡大に伴い、北米およびアジアパシフィック地域に、地域統括会社を設立し、経営管理・支援体制の強化を図っております。当社グループは、進出各国における保険事業のバリューアップに努めておりますが、生命保険商品の普及率が当社の予想水準、あるいは成熟市場の水準まで向上するとは限らず、その結果、当社グループの事業展開、財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、海外への展開においては、以下を含む様々なリスクにさらされております。
・外国為替相場の変動
・将来起こりうる不利益な税制
・法令や規制の予期せぬ変更
・お客さまニーズ、市場環境及び現地の規制に関する理解不足
・人財の採用・雇用及び国際的事業管理の難しさ
・新たな多国籍企業との競争
更に、主要な生命保険グループとして、当社連結子会社であるProtective Life Corporation(以下、「プロテクティブ社」という。)の現在の事業は、生命保険会社に当てはまる引受リスク及び投資リスク並びに本項目の他の部分に記載するその他の種類のリスクによっても影響を受けます。プロテクティブ社は米国において事業を行っていることから、マクロ経済リスク、市場リスク並びに法令及び規制の変更といった分野において米国内の動向の影響を受けます。プロテクティブ社の事業に影響を及ぼし得るその他のリスクには以下のものが含まれます。
・プロテクティブ社における生命保険商品及び年金商品の販売を、第三者に依存していること
・プロテクティブ社が行っている買収事業(他の保険会社から保険契約を買取り、必要に応じて契約内容を変更し、義務を履行する業務)が想定する収益性を確保できない可能性
・プロテクティブ社が締結する再保険契約等の重要な契約に関するカウンターパーティー・リスク
・プロテクティブ社が、米国における連邦及び州レベルでの複雑かつ急速に変化する規制に服していること
・プロテクティブ社の事業運営の中核となる経営陣及び従業員を雇用できなくなる可能性及びその雇用を維持できなくなる可能性
当社グループは、海外事業を引き続き拡大させるとともに海外収益比率を増加させる方針でおりますが、上記のような事業展開に関連する様々なリスクのために、当社グループの海外事業の拡大が成功するとは限りません。また、海外企業への投資に関連して減損(プロテクティブ社の完全子会社化に伴い計上した無形固定資産の減損を含む。)が生じる可能性や、当社グループの目標を達成できない市場から撤退する可能性があります。これらの結果、当社グループの事業展開、財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

13) M&Aが想定通りのメリットをもたらさないリスク
当社は、株式会社化以来、M&Aを成長戦略の一環と位置づけており、今後もその機会を追求してまいります。しかし、将来のM&Aについては、そもそも適切な買収対象があるとは限らず、また、適切な買収対象があった場合にも、当社にとって受入れ可能な条件で合意に達することができない可能性があり、この他、買収資金を調達できない可能性、必要な許認可が取得できない可能性、法令その他の理由による制約が存在する可能性があり、買収を実行できる保証はありません。当社は、近年、適切な買収対象の選定、M&Aの実行及び被買収事業の当社グループへの統合等につき経験を積み重ねておりますが、将来的なM&Aの成功は、以下のような様々な要因に左右されます。
・買収した事業の運営・商品・サービス・人財を当社の既存の事業運営・企業文化と統合させる能力
・当社の既存のリスク管理、内部統制及び報告に係る体制・手続きを被買収企業・事業に展開する能力
・被買収事業の商品・サービスが、当社の既存事業分野を補完する度合い
・被買収事業の商品・サービスに対する継続的な需要
・目標とする費用対効果を実現する能力
これらの結果、M&Aが想定通りのメリットをもたらさなかった場合、当社の財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

14) リスク管理に係るリスク
当社のリスク管理の方針・手続きは、保険引受リスク、資産運用リスク、流動性リスク、事務リスク、システムリスクを含む幅広いリスクへの対応を想定したものとなっております。当社のリスク・エクスポージャーの管理手法の多くは、過去の市場動向や歴史的データによる統計値に基づいております。これらの手法は将来の損失を予測できるとは限らず、将来の損失は過去実績によって示される予想損失を大幅に上回る可能性もあります。その他のリスク管理手法は、ある程度、市場やお客さま等に関する一般的に入手可能な情報に対する当社の評価に依拠しておりますが、それらの情報は常に正確、完全、最新であるとは限らず、また適切に評価されているとは限りません。更に、当社のリスク管理手続きにおいては、多数の支社等の情報源から収集した情報を統合する過程で誤りが生じる可能性もあります。一般的に、これらのリスク管理方針・手続きにおける誤りや有効性の欠如は、当社の財務内容及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。特に、事務リスクの管理においては、膨大な取引や事象を適切に記録し検証するための方針・手続きが必要となりますが、当社の方針・手続き自体が必ずしも有効であるとは限りません。従業員、後記16)記載の提携先又は外部委託先による事務手続き上の過失は、当社のレピュテーション上又は財務上の損害をもたらす可能性があるとともに、行政処分につながるおそれもあり、これらの結果として、当社の財務内容及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
更に、将来的な国内外の生命保険市場の継続的発展に伴い、当社は、顧客基盤の拡大とともに、提供する商品・サービスの拡大・多様化を進める予定でおります。提供する商品・サービスを拡大し、当社の事業規模を拡大するにつれて新たに生ずるリスクを管理統制するための手法を整備することが困難となる可能性があります。当社がリスク管理の方針・手続きを当社の事業や事業環境の変化に適応させることができない場合には、当社の財務内容及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

15) 繰延税金資産の減額に係るリスク
当社グループは、日本の会計基準に従い、将来の税負担額の軽減効果を有すると見込まれる額を繰延税金資産として納税主体毎に繰延税金負債と相殺した上で連結貸借対照表に計上しております。繰延税金資産の計算は、将来の課税所得に関する前提を含む様々な前提に基づいているため、実際の結果がこれらの前提と大きく異なる可能性もあります。また、将来的な会計基準の変更により、当社が計上できる繰延税金資産の金額に制限が設けられる場合や、将来の課税所得の見通しに基づき当社が繰延税金資産の一部を回収できないとの結論に至った場合には、繰延税金資産が減額される可能性があります。それらの結果、当社グループの財務内容及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、「所得税法等の一部を改正する法律」及び「地方税法等の一部を改正する等の法律」が2016年3月29日に国会で成立したことに伴い、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に使用する法定実効税率が28.76%から、2016年4月1日以降に開始する連結会計年度に適用されるものについては28.16%、2018年4月1日以降に開始する連結会計年度に適用されるものについては27.92%にそれぞれ変更されております。今後も、法人税の税率が変更され、法定実効税率が引き下げられる場合には、中長期的には当社グループの業績の向上及びエンベディッド・バリューの増加が見込まれる一方で、法定実効税率の引き下げ前の税率を前提として計上を行った繰延税金資産の取崩しが行われることにより、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。


16) 提携先との関係及び提携先の業績に係るリスク
当社グループは、販売チャネル及び商品ラインアップの拡大のために、損害保険ジャパン日本興亜株式会社、American Family Life Assurance Company of Columbus、株式会社みずほフィナンシャルグループ及び株式会社りそなホールディングスといった生命保険業界内外の企業と業務提携を行っております。これらの提携関係は、第三分野商品や年金商品等の販売を拡大するという当社事業戦略において不可欠であります。2016年3月29日、当社は株式会社かんぽ生命保険との間で業務提携に係る基本合意に至りました。この基本合意は、両社の強みを相互補完・融合することで事業基盤を強化し、持続的な企業価値の向上を実現すること等を目的としております。また、当社の関連会社で、国内最大級の年金資産運用会社であるDIAMアセットマネジメント株式会社は、株式会社みずほフィナンシャルグループと当社が50%ずつ出資している合弁会社でありますが、同社は2016年10月、みずほ信託銀行株式会社の資産運用部門、みずほ投信投資顧問株式会社及び新光投信株式会社と機能を統合させ、新会社「アセットマネジメントOne株式会社(以下、「アセットマネジメントOne」という。)」に移行する予定であります。アセットマネジメントOneにおける当社の株主議決権保有割合は49%であります。また当社の経済持分割合は30%を目処として協議中であります。これらの戦略的提携先が、財務面等事業上の問題に直面した場合、業界再編等によって戦略的志向を変更した場合又は当社が魅力的な提携相手でなくなったと判断した場合には、当社グループとの業務提携を望まなくなる又は当該提携が解消される可能性があります。当社グループが業務提携を継続できない場合には、当社グループの事業展開及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

17) 営業職員や内勤職員の雇用等に係るリスク
優秀な営業職員を確保するための競争が激化しております。当社と競合している国内の生命保険会社と同様に、当社の事業は優秀な営業職員を雇用・教育・維持できるかということに大いに左右されます。営業職員による保険販売は当社保険料収入の大部分を占めており、その中でも生産性の高い営業職員による保険販売は、個人向けの保険商品の販売において非常に高い割合を占めております。営業職員の平均的な離職率は当社の営業職員以外の従業員に比べて著しく高く、生産性の高い営業職員を維持し又は採用し続けるための努力が実を結ぶとは限りません。資産運用部門や保険数理部門の従業員も高度な専門性を求められるため、優秀な人財を確保、教育・維持するためには特別な努力が必要となります。当社が優秀な営業職員等の人財を確保、教育・維持できない場合や、これらの事由により想定している販売計画を大幅に下回る場合には、当社の事業展開及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

18) システムリスク
当社グループの事業運営は、外部の業務委託先によるものを含め、情報システムに大きく依存しております。当社グループは、これらのシステムに依拠して、保険契約の管理、資産運用、統計データ及び当社お客さまの個人情報の記録・保存並びにその他の事業を運営しております。当社グループが事業運営や商品ラインアップを拡大するにつれて、情報システムへの多額の追加投資が必要となる可能性があります。その結果として、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
事故、火事、自然災害、停電、ユーザー集中、人為的ミス、妨害行為、ハッキング、従業員の不正、ソフトウェアやハードウェアのバグや異常、ウィルス感染やネットワークへの侵入を原因とするインターネット全般への悪影響又は設備、ソフトウェア、ネットワークの障害等の要因により、当社グループの情報システムが機能しなくなる可能性があります。このような障害は、当社グループが支社等においてお客さまに提供するサービス、保険金・給付金等の支払いや保険料の集金、資産運用業務等を中断させる可能性があります。また、当社グループのレピュテーションの低下、お客さまの不満やお客さまからの信頼の低下等のその他の深刻な事態をもたらす可能性があり、また、既契約の解約の増加、新契約販売の減少、行政処分につながるおそれもあります。その結果として、当社グループの事業展開及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
更に、当社グループの業務及び情報システム等は、外部の業務委託先及び取引先と同様に首都圏に集中しているため、首都圏に被害を及ぼす地震等の災害によって当社グループの事業運営が著しい混乱に陥る可能性があります。地震等の災害が発生した場合には、当社グループ、外部の業務委託先及び取引先が直ちに業務を再開できるとは限らず、その結果として当社グループの事業展開及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。


19) 情報漏洩に関するリスク
当社グループは、外部の業務委託先によって提供されるものを含め、オンラインサービスや集中データ処理を広く利用しており、機密情報を厳格に管理することは当社グループの事業において重要であります。顧客情報を紛失したり、ご本人の同意なく情報が開示されてしまうことが、現在まで又は将来において全くないとは限らず、当社グループ、外部の業務委託先及び当社の戦略的提携先の情報システム等から情報が漏洩しないとも限りません。当社グループがお客さまの個人情報を紛失した場合若しくはご本人の同意なく開示した場合又は第三者が当社グループ、提携先又は外部の業務委託先のネットワークに侵入して当社グループの顧客情報を不正利用した場合には、当社グループが損害賠償を請求され、当社グループのレピュテーションが傷つけられる可能性があります。当社グループ従業員による顧客情報の紛失・漏洩・不正利用も同様のリスクをもたらすものであります。また、最近の日本では個人情報の紛失・漏洩・不正利用等の事故に対して、メディア、規制当局及び消費者の目が厳しさを増しております。更に、広く報道された多くの国内企業による顧客情報の紛失・漏洩・不正利用に対する政府の対応策の一環として2005年4月に施行された「個人情報の保護に関する法律」の下で、お客さまの個人情報の取扱いに関して当社グループに適用される規制上の要件は、より厳しいものとなりました。また、2015年10月に施行された「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(マイナンバー法)の下で、当社グループはお客さま及び役職員等からマイナンバーの取得を順次行っておりますが、マイナンバーを含む特定個人情報の取扱いにおきましては、一般の個人情報よりも厳格な安全管理措置が必要とされております。顧客情報等の紛失・漏洩・不正利用及び当社グループの情報システムへの外部からの侵入は、当社グループのレピュテーションを大きく低下させ、当社グループの財務内容及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

20) 従業員、代理店、外部の業務委託先及びお客さまの不正により損害を被るリスク
当社グループは、従業員や販売代理店、外部の業務委託先及びお客さまによる詐欺その他の不正による潜在的な損失にさらされております。当社の営業職員及び販売代理店は、お客さまとの対話を通じて、お客さまの個人情報(家計情報を含みます。)を熟知しており、一部の業務委託先もお客さまの個人情報を了知しているため、当該個人情報を用いて不正が行われる可能性があります。不正としては、違法な販売手法、詐欺、なりすましその他個人情報の不適切な利用等があり得ます。
保険契約の詐欺的な使用や、保険契約時のなりすまし等、お客さまも詐欺的な行為をすることがあります。また、反社会的勢力であることを秘して当社と取引を行う者もいます。当社グループは、このような詐欺的行為を防ぎ、見破るための対策をとっておりますが、当社の取組みがこれらの詐欺、違法行為又は反社会的勢力との取引を排除できない可能性があります。
従業員、代理店、取引先及びお客さまがこれらの不正を行った場合、当社グループのレピュテーションが大幅に低下し、当社は重大な法的な責任を問われるとともに、行政処分につながるおそれがあります。それらの結果として、当社グループの事業展開及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

21) 退職給付費用の増加に関するリスク
当社グループは、年金資産の時価の増減、年金資産における収益率の低下又は退職給付債務見込額の計算基礎率及び資産運用利回りの変化により、当社グループの退職給付制度に関する追加費用を計上する可能性があります。また、当社グループには、将来、当社グループの退職給付制度の変更に伴う未認識の過去勤務費用の負担が生じる可能性があります。その結果として、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。


22) 訴訟リスク
当社グループのうち保険事業を営む会社は、恒常的に、保険事業に関連した訴訟を抱えております。現在及び将来の訴訟の結果について予想することはできませんが、その結果によっては、当社グループに多額の損害賠償責任が発生する可能性があります。多大な法的責任が課された場合や訴訟への対応に多大なコストがかかった場合、当社グループのレピュテーションが低下し、また当社グループの事業、財務内容、業績及びキャッシュ・フローに重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

23) 契約者配当の配当準備金に係るリスク
当社が確保すべき契約者配当準備金は費用として扱われ、これにより会計年度における純利益が減少します。当社の定款では、契約者配当原資の最低水準は有配当保険契約に属する非連結ベースの純利益(ただし、契約者配当準備金の原資を確保する前のもの)の20%としております。当社は、当該最低水準を超える契約者配当準備金の決定について裁量を有しておりますが、契約者配当準備金の積立額の水準については、当社商品の競争力、業績、ソルベンシー・マージン比率等の様々な要素を考慮し、契約者の合理的な期待と合致させるよう判断する必要があります。契約者の利益を適切に評価した結果として、当社が現行水準を超える契約者配当準備金の積立てを行わないとは限らず、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。


(2) 保険業界に係るリスク
1) 日本の人口動態に関するリスク
日本の合計特殊出生率は、1975年頃から長期に低下傾向にありました。2005年以降反転上昇の傾向にあるものの、足元の水準は日本の人口置換水準からは遠い状況にあります。こうした長期に渡る少子化の影響を受け、15歳から64歳までの人口も減少しております。この年齢層の人口は生産年齢人口といわれ、当社の主力商品である死亡保障性保険の顧客層とほぼ一致しております。当社はこのような人口動態上の傾向が、総保有契約高の減少要因の一つであると考えております。生産年齢人口が大幅に減少し続け、生命保険に対する需要が減少することになれば、当社の生命保険事業の規模が縮小し、財務内容及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

2)競争状況に関するリスク
当社は、日本の生命保険市場において、国内生命保険会社、外資系生命保険会社、保険子会社を保有している又は大手保険会社と業務提携している国内の大手金融機関との激しい競争に直面しております。また、近年は特に、規制緩和、死亡保障性の保険商品に対する需要の低下及び外資系生命保険会社との競争の激化等により、日本の生命保険市場における競争環境は熾烈化しております。競合他社の中には、卓越した金融資産や財務力格付け、高いブランド認知度、大規模な営業・販売ネットワーク、競争力のある料率設定、巨大な顧客基盤、高額な契約者配当、広範囲に亘る商品・サービス等において、当社より優位に立っている企業もあります。
また、株式会社かんぽ生命保険は、巨大な顧客基盤や全国的な郵便局のネットワークの活用、日本郵政株式会社を通じた間接的な一部政府出資の存在等から、日本の保険市場における競争優位性を保持しております。当該競争優位性を保持したまま、株式会社かんぽ生命保険の業務範囲の拡大(保険金額の上限見直しや販売できる保険契約の種類拡大等)が進められた場合、当社の競争力が相対的に低下する可能性があります。なお、2016年3月29日、当社は株式会社かんぽ生命保険との間で業務提携に係る基本合意に至りました。この基本合意は、両社の強みを相互補完・融合することで事業基盤を強化し、持続的な企業価値の向上を実現すること等を目的としております。また、当社は、農業協同組合、全国労働者共済生活協同組合連合会、日本生活協同組合連合会のような、競合する保険商品を提供している各種協同組合との競争にも直面しております。
また、各種の規制撤廃策は日本の生命保険業界における競争の激化をもたらしました。例えば、1998年から2007年の間に制定された数多くの規制緩和のための法改正によって、証券会社や銀行で保険商品が販売できるようになりました。当社は規制緩和により激化した競争環境について、更に激しさを増していくと考えております。更に、来店型保険ショップやインターネット等を主要な販売チャネルとして活用する保険会社の新規参入によって、価格競争が激化する可能性もあります。その他、日本の金融業界は、近年大規模な再編を経験しており、更なる再編が生命保険商品の販売における競争環境に影響を及ぼす可能性があります。
更に、ベトナム、オーストラリア及び米国における保険会社の買収、インドネシア、インド及びタイにおける保険会社への出資により、当社はそれぞれの海外市場において現地保険会社との競争に直面しております。
当社が競争力を維持できない場合には、このような競争圧力等により当社の新契約販売が減少するとともに既契約の解約が増加し、当社の事業及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

3) 法規制に関するリスク
a 保険業法上の監督権限に関するリスク
当社、当社の連結子会社である第一フロンティア生命及びネオファースト生命は、保険業法及び関連業規制の下、金融庁による包括的な規制等の広範な監督下にあります。
保険業を行うものは、保険業法の規定により免許を要することとされております。免許の種類は、生命保険業免許と損害保険業免許の二種類となっており、当社は
・人の生存又は死亡に関し、一定額の保険金を支払う保険
・疾病、傷害若しくは疾病を原因とする状態又は傷害を直接の原因とする死亡等に関し、一定額の保険金を支払う保険(いわゆる第三分野)
・上記の保険に係る再保険
の引受けを行う事業に係る免許である生命保険業免許を受けた保険会社であります。また、保険会社は、新しい保険商品の販売や料率設定条件の変更に際して、原則として内閣総理大臣(原則として金融庁長官に権限委任。以下同じ。)の事前認可を受けなければなりません。
保険業法及び関連業規制の主な目的は、株主ではなく、保険契約者等を保護することにあります。保険業法は、保険会社が行える事業の種類ごとに規制を設けるとともに、保険会社に一定の準備金や最低限のソルベンシー・マージン比率を維持させることとしております。保険業法は、内閣総理大臣に対して、免許取消しや業務停止、報告徴求、会計記録等に関する厳格な立入り検査の実施等、保険業に係る広範な監督権限を与えております。
特に、保険業法その他の法令、これに基づく処分並びに、定款、事業方法書、普通保険約款、保険料及び責任準備金の算出方法書等の基礎書類に定めた事項のうち特に重要なものに違反した場合、免許に付された条件に違反した場合又は公益を害する行為をした場合には、内閣総理大臣は当社の免許を取り消すことができます。また、当社の財産の状況が著しく悪化し、保険業を継続することが保険契約者等の保護の見地から適当でないと認められる場合にも、内閣総理大臣は当社の免許を取り消すことができます。現在、免許の取消しを生ずべき要因は認識しておりませんが、仮に、当社の免許が取り消されることになれば、保険業法の規定により、当社は解散することとなり、事業活動を継続できなくなります。

b ソルベンシー・マージン比率等の規制に関するリスク
現在、当社、当社の連結子会社である第一フロンティア生命及びネオファースト生命は、保険業法及び関連業規制に基づき、自己資本の充実度合いを計る基準であるソルベンシー・マージン比率を連結・単体ベースそれぞれで200%超に維持するよう要求されております。ソルベンシー・マージン比率やその他の財務健全性指標を適切なレベルに維持できない場合には、以下のとおり、内閣総理大臣は当社に対して早期是正措置を命じることができます。なお、当社及び第一フロンティア生命のソルベンシー・マージン比率につきましては、「第2 事業の状況 7 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の「(参考1)当社及び第一フロンティア生命保険株式会社の固有指標の分析」の「2 当社の固有指標の分析」及び「3 第一フロンティア生命保険株式会社の固有指標の分析」をご参照下さい。
早期是正措置は、保険会社の業務の健全かつ適切な運営を確保し、保険契約者等の保護を図ることを目的として、行政処分である業務改善命令や業務停止命令を内閣総理大臣が発出する制度で、1999年4月より保険業法に導入されました。具体的には、生命保険会社のソルベンシー・マージン比率が200%を下回った場合に、その状況に応じて内閣総理大臣の是正措置命令が発動されることで、保険会社に対して早期に経営改善への取組みを促す制度であり、ソルベンシー・マージン比率の水準等に応じて、措置内容が定められております。また、実質純資産額(注2)がマイナス又はマイナスと見込まれる場合にも、内閣総理大臣から業務の全部又は一部の停止を命じられる可能性があります。当社及び第一フロンティア生命の実質純資産額につきましては、「第2 事業の状況 7 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の「(参考1)当社及び第一フロンティア生命保険株式会社の固有指標の分析」の「2 当社の固有指標の分析」及び「3 第一フロンティア生命保険株式会社の固有指標の分析」をご参照下さい。このような早期是正措置により、当社の事業展開及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

c 国際的な規制に関するリスク
保険監督者国際機構(以下、「IAIS」という。)は、コム・フレーム(国際的に活動する保険会社グループを対象とした共通の監督の枠組み)等の新たな資本規制や、ソルベンシー評価の新基準について検討を行っております。これらの新規制の導入に関して、IAISの構成員である金融庁は、IAISが検討している新規制に沿った新しい規制を導入するものと思われます。この経済価値に基づく新規制は、現在の規制とは大きく異なることが予想され、これが導入された場合又は将来に提案される可能性のあるその他の基準改正がなされた場合には、これらの改正に含まれる制約が、当社グループの事業や資産運用に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、保険業法には資産運用に関する規制も定められておりますが、当該規制の詳細については後記「(参考2) 資産運用規制について」をご参照下さい。


(注2) 実質純資産額とは、貸借対照表の資産を基礎として計算した額(有価証券・不動産等について一定の時価評価を行ったもの)から負債の部に計上されるべき金額を基礎として計算した額(負債の額から価格変動準備金・危険準備金等の額を差し引いた額)を控除した金額をいい、内閣総理大臣による早期是正措置において、実質的な債務超過の判定基準として用いられる額であります。

4) 法改正に伴うリスク
法規制の改正及びその執行に関する政府方針の変更、当社グループ及び生命保険各社に対する規制措置並びに当社グループが取扱う商品ラインナップの拡大等に関連する規制動向は、当社グループの保険商品の販売に影響を及ぼし、コンプライアンス・リスクを高めるとともに、コンプライアンスの強化・改善のための追加支出や競争の激化をもたらし、当社グループの事業、財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの事業には、多数の営業職員及び販売代理店が関与しており、将来において規制の改正がなされた場合、適時にこれに適合した態勢をとることができるとは限りません。
また、現行の所得税法は、当社グループが提供する大部分の保険商品の払込保険料の全部又は一部について所得控除を認めております。同様に、法人又は中小企業の契約者は、一定の条件の下で、定期保険や年金商品のような特定の保険商品につき、保険料の全部又は一部を経費として損金算入することが認められております。こうした当社グループの保険商品の保険料に対する税務上の取扱いに悪影響を及ぼす税制改正は、当社グループの新契約販売数、ひいては業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

5) 保険金等の支払い漏れ問題に係るリスク
2007年10月、金融庁からの報告命令に対して、当社は、2001年4月から5年間の保険金等の支払い漏れや請求案内漏れに関する自己査定を行い、およそ7万件、保険金・給付金総額で189億円の支払い漏れ等があることを報告いたしました。このうち大多数は、生命保険契約における医療特約の未請求によるものであり、当社における包括的な視点及び当初の請求に対する検証プロセスが不十分であったことにより発生したものと考えております。
2008年7月、金融庁は、経営管理(ガバナンス)・内部監査態勢の強化、改善策の徹底及び有効性の検証を求める業務改善命令を発出し、2008年8月、当社は、経営管理(ガバナンス)・内部監査の方針や手続きの強化・改善及び今後の支払い漏れ等の発生を防止するための改善策についてまとめた業務改善計画を金融庁へ提出いたしました。当社は、「お客さまに保険金・給付金をお支払いするときこそが保険の役割が果たされるとき」という認識を改めて全役職員が共有するとともに、お客さまの視点に立ち、改善策の定着とその実効性向上に努めてまいりました。2011年12月に金融庁あての報告義務は解除されましたが、今後も何らかの理由によって支払管理態勢の整備状況が不十分であると判断される場合には、当社の信用が損なわれ、事業展開及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。当社としては、引き続き、支払漏れ等の発生状況を定期的に公表すると共に、医療技術の進歩等を注視しつつ、支払管理態勢の整備に努めてまいります。

6) 責任準備金の計算に係る会計基準の変更に関するリスク
保険業法及び関連する規制・ガイドラインは、責任準備金の計算に関する基準を規定しております。責任準備金の積み増しを求める基準変更が行われた場合には、当社の財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、国際会計基準審議会は、現在、保険負債の現在価値評価を含む、保険契約に係る新会計基準について検討しております。保険負債の現在価値評価が導入された場合、当社は、その時々の金利水準等の計算要素を考慮した保険負債の現在価値に基づいて責任準備金を計算していく必要があります。保険負債の現在価値評価の導入を見越して、当社は、現行基準において必要とされる金額を超える責任準備金の積立てを行っておりますが、想定している以上の積立てが必要になった場合には、その結果、当社の財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。


7) 生命保険契約者保護機構の負担金及び国内の他の生命保険会社の破綻に係るリスク
当社、当社の連結子会社である第一フロンティア生命及びネオファースト生命は、国内の他の生命保険会社とともに、破綻した生命保険会社の契約者を保護する生命保険契約者保護機構(以下、「保護機構」という。)への負担金支払い義務を負っております。保護機構は、破綻した生命保険会社の保険契約を引き継ぐ生命保険会社に対する資金の提供等、特殊な役割を担っております。国内の他の生命保険会社と比較して、当社の保険料収入及び責任準備金が増加する場合、当社へ割り当てられる負担金が増加する可能性があります。また、将来的に、国内の他の生命保険会社が破綻した場合や、保護機構への負担金の支払いに関する法的要件が変更される場合には、当社は保護機構に対して追加的な負担を求められる可能性があります。それらの結果、当社の財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、日本の他の生命保険会社の破綻は、日本の生命保険業界の評価にも悪影響を及ぼし、お客さまの生命保険会社に対する信頼を全般的に損ない、これにより、当社の新契約販売が減少又は既契約の失効・解約が増加し、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

8) 大規模災害に関するリスク
当社グループは、東京等の人口密集地域又は広範囲な地域を襲う地震・津波・テロ等の大規模災害や鳥インフルエンザ・新型インフルエンザのような感染症の大流行を原因として大量の死者が出た場合に、保険給付に関する予測不可能な債務を負うリスクにさらされております。当社は、業界慣行や会計基準に従って危険準備金を維持しておりますが、こうした準備金が実際の保険給付債務をカバーするのに適切な水準にあるとは限らず、当社の財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。更に、物理的な被害その他のこうした大規模災害の影響により、当社グループの業務運営に重大な支障を来す可能性があります。


(参考1) 生命保険料の仕組みについて
生命保険料は、保険の種類及び内容、契約時の被保険者の年齢、性別、保険期間、保険金額等を考慮して、次に掲げる計算基礎率(予定死亡率・予定利率・予定事業費率)等に基づいて決定されます。

計算基礎率内容
予定死亡率過去の統計を元に、性別・年齢別の死亡者数を予測し、将来の保険金の支払い等に充てるための必要額を算出するために用いる死亡率を予定死亡率といいます。
予定利率保険料の設定においては、資産運用による一定の収益を予め見込んで割り引いておりますが、この割引率を予定利率といいます。
予定事業費率保険料の設定においては、保険金の支払事務や保険料の収納等の必要な事業費を予め見込んで保険料の中に組み込んでおりますが、その事業費の率を予定事業費率といいます。


これらの計算基礎率は、通常、将来のリスクに一定程度対応できるように設定していますので、特に有配当保険においては、実績との差額が生じることが多くなります。有配当保険においては、この差額(剰余金)に基づいて、契約者配当(相互会社においては社員配当)が支払われます。
ただし、近年においては、一部の契約において、実際の運用利回りが予定利率を下回る、いわゆる「逆ざや」の状態にあります。「逆ざや」につきましては、「第2 事業の状況 7 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の「(参考1)当社及び第一フロンティア生命保険株式会社の固有指標の分析」の逆ざやに関する記載をご参照下さい。

(参考2) 資産運用規制について
生命保険会社の資金の運用については、保険業が公共性・社会性を伴うものであるため、保険会社の保険金支払能力を確保し、保険契約者の利益を保護するために運用規制が課されております。
このため、保険業法第97条第2項の規定により、保険会社の保険料として収受した金銭その他の資産の運用は次に掲げる方法等に限定されております。
・有価証券の取得
・不動産の取得
・金銭債権の取得
・短期社債等の取得
・金地金の取得
・金銭の貸付け(コールローンを含んでおります。)
・有価証券の貸付け
・民法に規定する組合契約又は商法に規定する匿名組合契約に係る出資
・預金又は貯金
・金銭、金銭債権、有価証券又は不動産等の信託
・有価証券店頭デリバティブ取引等
・金融先物取引等
・金融等デリバティブ取引
・先物外国為替取引
また、一般勘定においては、資産の運用対象が特定の相手方に偏ることのないよう同一人に対する株式、社債、貸付金等の資産の運用額の合計を資産全体の10%以内(貸付金等については特に3%以内)とする制限も設けられております。特別勘定については、運用資産の構成に関する制限は設けられておりません。

対処すべき課題財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析


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