有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S10082RU
石原産業株式会社 研究開発活動 (2016年3月期)
事業等のリスクメニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当社グループは、基本理念の一つである「社会、生命、環境に貢献する」を具現化するため、無機化学及び有機化学の各事業において人と環境にやさしい製品の開発から生産技術の開発に至るまで、積極的かつ重点的な研究開発に取り組んでおります。また、環境、エネルギー、IT、バイオ、食料等といった事業に関連した領域で、新たな市場ニーズを探索し、無機、有機の垣根を超えた新たな事業に繋がる新技術の研究開発にも取り組んでおります。
無機化学事業の内、酸化チタン顔料や機能材料等の開発は、四日市の開発企画研究本部において、商品開発から製造技術検討までを効率的かつ柔軟に進めております。一方、電池材料の開発は、電池・発電材料開発推進本部において、技術・生産・営業が商品開発から量産技術開発まで一体となって取り組んでおります。
また、グループ会社である富士チタン工業(株)は、主力製品である化繊向け酸化チタン、電子材料用チタン酸バリウム及びそれらから派生する化学関連品を対象に独自に研究開発に取り組んでおりますが、当社との研究領域が近いため、必要に応じて研究開発協力を行っております。
一方、有機化学事業(農薬、医薬等)は草津の中央研究所において研究開発を推進しております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、8,988百万円となりました。
セグメントごとの研究開発は、次のとおりであります。
(無機化学事業)
酸化チタン顔料については、塩素法及び硫酸法の2つの製法を有する特徴を活かし、塗料,インキ,プラスチックの各分野向けに市場ニ-ズに合致した高付加価値銘柄やカスタマイズ銘柄の開発に注力して取り組んでおります。
機能材料については、新規分野の開拓や酸化チタンの持つ機能を活かした製品のスペシャリティー化に注力して取り組んでおります。特に、近年、環境・省エネルギー問題の高まりから注目される遮熱分野では、透明遮熱ガラスコート剤を既存の光触媒コート剤と合わせて市場展開を進めている他、2014年に上市した黒色系遮熱材料は、建材向け塗料や人工木材などへの応用展開を進めております。超微粒子高純度酸化チタンでは、MLCC等電子部品の高性能化・ダウンサイジング化に対応するため、更なる微粒子化、高品質化が求められており、開発を急いでおります。
新規分野の開拓としては、微細配線や接合(高温ハンダ)及び装飾用途に使われる金属微粒子、電子機器の熱対策需要の高まりを受けた高熱伝導材料、特殊形状合成技術を用いた意匠性材料など、独自技術によるユニークな製品開発と市場展開を推進しております。
電池材料については、車載用途や電力蓄電用途など中大型電池が使用される分野で今後大きな市場拡大が見込まれているリチウムイオン電池の負極材として有望視されている、チタン酸リチウムの製品開発を引き続き推進しております。
当事業における研究開発費は、1,647百万円となりました。
(有機化学事業)
農薬については、主力剤の多くが特許切れとなり、市場ではジェネリックとの競合に晒されておりますが、研究開発面では、新規製剤・新規混合剤の投入、登録国・適用作物の拡大を進めるなど、各種対抗策を具体化させることにより、引き続き、販売の維持・拡大を図っております。
新規うどんこ病殺菌剤は、各国で登録認可され、順次上市しております。新規菌核・灰色かび病殺菌剤は既に登録申請が行われ、2015年のカナダ、米国を皮切りに順次、上市予定です。また、新規チョウ・蛾類殺虫剤は2013年末から2016年初めにかけて世界各地で登録申請を行い、早期登録を目指しております。新規トウモロコシ用除草剤は、2014年に国内で登録申請、2015年以降、順次、欧州及び米州各国で登録申請を進めております。新規水稲用除草剤は、2016年第2四半期に国内での登録申請を予定しております。更に、国内の食の安全・安心指向の高まり、更に抵抗性発達の為に有効な既存化学農薬が不足するなどの市場ニーズに合致した、微生物殺菌剤、接触型忌避剤及び天敵昆虫類等の製品群の開発に注力しております。微生物殺菌剤は2012年から国内販売を開始しており、また、2015年以降、接触型忌避剤、3種の天敵昆虫類の国内登録を取得し、2016年末から順次上市の予定です。近未来の植物防疫の姿を見据え、これらと当社の安全性の高い化学農薬群を組み合わせた当社独自のIPMプログラムの確立とともに、従来の化学農薬コンセプト・分野とは異なる場面でも、当社全製品の普及拡大を目指していきます。
農薬事業を取り巻く環境が激しく変化する昨今、自社創生・開発に加えて、他社開発剤の導入や他社との共同開発にも取り組んでおります。水稲除草剤に関しては、2010年以降、海外企業から導入したヒエ防除剤をベースとした一発剤、中・後期剤を開発し、国内で上市しております。また、2015年には、海外企業が発明した新規の非選択性除草剤を全世界で共同で開発する契約を締結しました。今後、この剤の販売供給でも同企業との協力関係を構築する等、新たなビジネススタイルの実現を目指しております。
また、近年、長年にわたる農薬、医薬創製の研究・開発で培った技術とシードを活かし、動物薬の本格開発に取り組んでおります。その一つである新規作用機序を有する動物用抗炎症薬は、国内での臨床試験が終了し、2017年度内の上市を予定しております。
ライフサイエンス事業(医薬品・医療機器開発)についても、特色ある商品開発を進めております。酸化チタンの機能性を利用した人工関節固定用骨セメントについては、京都大学医学部と共同で開発を進めてきましたが、2016年3月に製造販売承認申請を行いました。2016年度中に医療機器としての承認を取得し、保険適用後の上市を予定しております。
バイオ研究者向けの研究用試薬「ゲノムワン」(遺伝子機能解析用HVJ-Eベクターキット並びに関連製品)については、国内販売だけでなく、欧米を中心にグローバルな販売を行っており、利用者の要請にも対応して、より高い機能開発に取り組んでおります。なお、HVJ-Eについては、新規バイオ抗がん剤としての開発も目指しており、大阪大学医学部附属病院と連携して、前立腺がん、悪性黒色腫(メラノーマ)及び悪性胸膜中皮腫の3がん種を対象とした第Ⅰ相臨床試験を進めております。この内、前立腺がん治療薬の開発については、2014年2月に科学技術振興機構(JST)の産学共同実用化開発事業の課題に採択されております。
また、長く蓄積してきた遺伝子技術を駆使し、青色花卉の作出研究や商品化を目指した取り組みも進めております。
当事業における研究開発費は、7,334百万円となりました。
なお、当連結会計年度におけるセグメントに帰属しない全社共通の研究開発費の金額は6百万円となりました。
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