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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S1007R8P

有価証券報告書抜粋 帝人株式会社 研究開発活動 (2016年3月期)


事業等のリスクメニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

帝人グループでは、ブランドステートメント"Human Chemistry, Human Solutions"のもと、人々の暮らしを豊かにし、社会の発展に貢献することで事業の持続的成長と収益性向上を実現するための研究開発をグローバルな視野で推進しています。研究開発活動への積極的かつ効率的な投資を継続して実施しており、国内8ケ所、海外7ケ所のグローバル研究開発ネットワークにおいて1,600名余りの研究者が、基礎研究を含めたグループ全体の研究開発戦略に基づく研究開発活動を推進しています。
中長期経営ビジョン「CHANGE for 2016」で定めた帝人グループの成長戦略と、それを支える経営基盤の強化を基軸に据え、既存事業の深化、幅出しに加え、「グリーンケミストリー」「ヘルスケア」及びこれらの「融合領域」を研究開発の重点技術領域と定めて、基盤・基幹強化を進めています。更に2014年11月公表の修正中期計画では、発展戦略の主要施策として「複合化」と「融合」による「ソリューション提供」の実現に向けた重点資源投入を行う事を発表しました。高機能素材、ヘルスケア、ITという3つの異なる事業の強みを複合化、融合し、競争力のある素材を用いたソリューション提供型ビジネスの構築による高収益事業創出に向け、研究開発を着実に進めています。サプライチェーンやビジネスモデルの変革を念頭におき、素材等の一次製品の提供だけではなく付加価値をつけた部材・デバイスまでを作り上げて納入する、またIT技術を活用しヘルスケア分野で新しいサービスを提供する等、従来型のビジネスの域を超えた価値創造、ポートフォリオ変革に積極的に取り組んでいきます。
2014年度から継続して研究開発機能の強化と研究開発成果の早期事業化の推進を目的にいくつかの組織改編を進めています。まず2014年4月には、従来の技術最高責任者、研究部門、エンジニアリング本部及び原料重合技術開発部を統合し、技術本部を設置しました。
2015年4月からは、プラットフォーム構成技術(基盤・基幹技術)の強化・拡充と出口発想に基づくソリューション開発力の強化を目的に技術本部内に技術開発部門とその下部組織である「加工・ソリューションセンター」(松山拠点)を新設し、併せて、これまで技術本部直下組織であった「先端技術開発センター」を同部門へ編入しました。2015年8月には高機能素材のソリューション開発拠点として、松山事業所(愛媛県松山市)内に「技術開発センター」を開設し、本格稼働しました。「技術開発センター」は、全社横断的なソリューション開発機能、及びエンジニアリング機能の融合の場として設立するもので、帝人グループの研究開発の中核拠点として、高機能素材分野におけるソリューション開発機能の強化を図るとともに、素材の複合化、モノとサービスの複合化によるソリューション開発の加速を目指しています。
なお、「加工・ソリューションセンター」は、発展戦略を加速的に推進する「ソリューション開発センター」に、また、「先端技術開発センター」は基盤技術の強化を担う「基盤技術開発センター」として2016年4月にそれぞれ改組しました。
「技術開発センター」では、発展戦略における成長コンセプトとして掲げている「高機能複合材料による顧客価値の実現」「モニタリング・サービスの横展開」「在宅医療モデルの横展開・市場創造」及び「生体適合医療材料の実用化」に向けたソリューション開発に注力していくこととしており、既にスマートウェアラブルの実用化や、高機能素材とITの融合による高靱性軽量構造材の建築分野への展開等を重点テーマとして活動しています。
また、産官学連携等のオープンイノベーションの推進、知財戦略や構造解析能力等、研究開発活動を支える機能・組織の見直しとインフラ機能の強化、技術系人材の育成を一層推進しています。
人財育成に関しては、高分子・バイオ関連分野の大学教授や研究者が集まるフォーラムの開催、学界・学術研究機関等の有識者による技術アドバイザリー会議の開催、国内外の最先端研究機関への若手研究員派遣等を積極的に推進しています。2010年度ノーベル化学賞を受賞され、帝人グループの名誉フェローにご就任いただいている根岸英一 米・パデュー大学特別教授には、国内研究員のコンサルテーションと「Teijin Limited Director of the Negishi-Brown Institute」としての派遣研究員への直接のご指導を継続してお願いしており、幾つかの新しい技術開発成果が生まれつつあります。
なお、当連結会計期間の研究開発費は333億円(前期比9億円増)でした。
また、報告セグメントごとの研究開発活動の概要は次のとおりです。

高機能繊維・
複合材料事業
: アラミド繊維分野では、帝人グループでパラ系アラミド繊維「トワロン」を生産・販売しているテイジン・アラミドB.V.(オランダ・アーネム市)が、この度、貨物輸送関連製品を扱う米国のマクロ・インダストリー社(米国・アラバマ州)と、「トワロン」を使用した、耐久性・難燃性の高い航空貨物コンテナ(ULD)の共同開発、及び製造、商業化に向けて協力していくことで合意しました。「トワロン」を使用して製造されたULDは、軽量性や耐久性がアルミ製ULDよりも優れていることが評価されており、世界に約90万台あるとされるアルミ製ULDからの置き換えも容易で、設置後のメンテナンスも削減できるため、環境負荷低減にも貢献することが期待されます。
また、パラ系アラミド繊維「トワロン」は、㈱LIXILが開発した木造軸組工法住宅向けの耐震リフォーム工法「アラテクト」に採用されました。「アラテクト」は既存の壁を壊さずに耐震化が可能な、木造住宅向けの新たな耐震リフォーム工法で、薄いシート状に加工することが可能でかつ引張強度の高い材料が必要であることから「トワロン」が採用されたものです。
更に、新規メタ系アラミド繊維「Teijinconex neo」の生産工場をタイ国アユタヤ県に新設し、2015年8月より生産・販売を開始しました。「Teijinconex neo」は世界最高レベルの優れた熱防護性を持ち、安定した染色性により従来の「コーネックス」では実現できなかった後染め(紡糸・製織後の染色)が可能で、かつ特殊な紡糸法により製造プロセスにおける化学物質排出やエネルギー消費を削減することができます。生産工場の本格稼働により、既存の「コーネックス」と合わせ、日本や欧米のほか、中東やアジア等グローバル市場に向けて事業展開を図っていきます。
ポリエステル繊維分野では、極細ポリエステル繊維を使用した面ファスナー「ファスナーノ」を開発しました。超極細ポリエステルナノファイバー「ナノフロント」のパイル地を用いた同製品は、その特性である高い摩擦力を最大限に活かし、僅かな力で容易に着脱することができます。今後は介護用や一般向けの寝装、雑貨用途等に向け、「ファスナーノ」を使用した商品を展開していきます。
炭素繊維・複合材料分野では、自動車向けの高付加価値CFRPビジネスを加速させるため、これまで複合材料開発センターが担ってきた熱可塑性CFRPのマーケティング機能と、グループ会社である東邦テナックス㈱が担ってきた熱硬化性CFRPのマーケティング機能を2015年4月に統合し、炭素繊維・複合材料事業本部直轄の組織「オートモーティブ事業開発推進グループ」として再編しました。これに伴い複合材料開発センター(愛媛県松山市)は、個別テーマの技術開発機能に特化して取り組む組織として「複合材料技術開発センター」に改称しました。
また、複合材料技術開発センターでは、国際的な試験所認定規格である「ISO/IEC 17025」(試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項)を取得し、これにより同センターでは、熱可塑性CFRPの製造から評価までをワンストップで顧客に提供することが可能となりました。
更に、航空機や自動車用途において求められる高強度と高弾性率を両立した新しい炭素繊維「テナックスXMS32」の開発や、産業機器・航空機部材用途等幅広い用途への展開を目指す熱可塑性樹脂を使用した難燃かつ高強度・高剛性の織物プリプレグの開発を行いました。鉄道車両用途では、川崎重工業㈱が開発した新世代台車「efWING(イーエフ ウィング)」に搭載するCFRP製バネを同社と共同開発し、同社への供給を開始しています。加えて、高収益・高成長分野での事業拡大に向け、ダウンストリームビジネスへの展開の一環として、欧州において高機能成形機を導入し、プリフォームの自動製造プロセスと組み合わせてCFRPの一貫生産体制の構築を図りました。
また国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施している「革新的新構造材料等研究開発」の成果として、世界初の技術である「マイクロ波による炭素化技術」と「プラズマによる表面処理技術」の開発に成功しました。来るべき炭素繊維複合材料の量産化時代に向けて、これら製造エネルギーと二酸化炭素排出量を半減させ、生産性を飛躍的に向上させる革新的な炭素繊維製造量産プロセスの工業化を目指していきます。
当セグメントに係る研究開発費は48億円です。

電子材料・
化成品事業
: 樹脂分野では、自動車樹脂グレージング用途で要求される耐擦傷性と耐久性を向上させる技術として、ラボレベルでのプラズマCVD(化学気相成長)法によるコーティング技術の開発を推進しています。この度、自動車窓に求められる新たな保安基準への対応に目途をつけたことにより、今後は実車サイズに対応可能な開発設備を松山に導入し、スケールアップ技術・三次元形状対応技術の開発による積極的なソリューション提供を行っていきます。
カメラレンズ用途においては、最高レベルの屈折率と耐熱性を兼ね備えた特殊ポリカーボネート樹脂を開発し、市場での評価を開始しました。スマートフォンの薄型化や車載カメラ、防犯カメラ等厳しい条件下で使用される用途での今後の伸長に対応するため、更に高い屈折率と耐熱性を有する樹脂の研究開発を継続します。
更にノンハロゲンに対応した難燃剤「FCX-210」の用途拡大に向けて、予め対象とする樹脂へFCX-210(紛体)を練り込み、粒状としたマスターバッチを開発することで、繊維への同剤の応用を可能としました。難燃性を求められるカーテンやカーペット、壁紙等インテリア用途への市場拡大に向けて、顧客へのサンプル出荷を開始しています。
フィルム分野では、2015年10月に高い汎用性と輝度や拡散性、傷つき防止等の機能の高さを併せ持つ液晶ディスプレイ用反射フィルムの新商品「テトロンUX K2シリーズ」「テトロンUX QTシリーズ」を開発し、上市しました。
また、2016年1月に離型フィルム「Purex」の新グレードを開発、インドネシア工場での生産を開始しました。今後、「Purex」生産の国内外での拡大を図っていきます。
当セグメントに係る研究開発費は34億円です。


ヘルスケア事業: 医薬品分野では、2015年4月に新規高尿酸血症・痛風治療薬として「TMX-049」の第1相臨床試験に着手しました。また「フェブリク錠」のがん化学療法に伴う高尿酸血症への適応拡大プロジェクトとして開発中の「TMX-67TLS」については、2015年7月に厚生労働省に対し承認申請を行いました。2015年9月には、ペプチドリーム㈱との共同研究開発契約を締結し、これまで創薬の対象から除外されてきた様々な創薬標的に対して特殊環状ペプチドの医薬品化に取り組み、医療ニーズの高い疾患に対する革新的医薬品の創製を目指しています。そのほか、中国でアステラス製薬(中国)有限公司と共同開発中の痛風・高尿酸血症治療剤「TMX-67」(一般名:フェブキソスタット)について、2015年11月に中国国家食品薬品監督管理局に承認申請を行いました。また、2016年1月には、英国シグマタウ社が創製したADA欠損症治療薬「EZN-2279」(国内開発コード;STM-279)の臨床開発に着手し、同年3月には厚生労働省より希少疾病用医薬品の指定を取得しました。
在宅医療事業分野においては、小型・軽量でありながら連続流1L/分を実現した携帯型酸素濃縮装置「ハイサンソポータブルαⅡ」を2016年3月に上市しました。睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療器であるCPAP装置についても、快適に治療を継続できる「スリープメイト10」を2016年2月に上市しました。また超音波骨折治療法においては、患者の治療継続意識の向上を図った「セーフスexogen」を2016年1月に上市しました。
これらに加え、発展戦略の一環として2015年9月より患者情報共有システム「バイタルリンク」の販売を開始し、地域包括ケアの軸となる施設等を中心に営業活動を行い、事業展開を図っています。また、大阪大学等との産学連携で開発した反復経頭蓋磁気刺激装置の治験器を用いた医師主導による難治性神経障害性疼痛治験は、2015年12月の大阪大学医学部附属病院の治験開始に続いて、その他複数の病院においても治験が開始されました。
当セグメントに係る研究開発費は152億円です。

製品事業: 帝人フロンティアでは、2015年10月に社長直轄組織として技術専任スタッフ構成による「新事業開発室」を新設しました。各種商品展開が期待される「ウェアラブル電極布技術」、「身に纏う化粧品ラフィナン」関連から環境・介護・ヘルスケア分野等を中心に、製品事業グループ全般にわたる新領域開拓、新事業モデル構築を目的として、本格的な技術開発に向けた取り組みをスタートしています。
当セグメントに係る研究開発費は6億円です。
帝人㈱で行うコーポレート研究(グループ共通の基礎研究及び新事業・新製品創出)では、帝人グループの発展戦略を実現すべく、素材技術・ヘルスケア技術・IT技術の融合により、新事業の創出を目指して研究開発に取り組んでいます。
高変換効率太陽電池を製造するための材料となる「NanoGramシリコンペースト」については、太陽電池メーカーへのマーケティング活動、共同開発活動を本格的に推進しています。
また、帝人の素材技術を活かした『電波を制御するシート』である「セルフォーム」の2次元通信技術をベースとした棚管理システム「レコピック」の販売を推進しています。「セルフォーム」とタグキャストのビーコン技術「TAGCAST」の組み合わせにより、スマートフォンやタブレットを置くことでネットワークへの接続を認証する世界初のシート型ビーコンである「PaperBeacon(ペーパービーコン)」を開発し、2015年6月より販売を開始しました。
ヘルスケアの分野においては、埋め込み型医療機器、再生医療製品等、新たな事業分野の創出を目指し、研究開発活動を推進しており、心臓修復パッチは経済産業省の医工連携事業化推進事業として継続して開発に取り組んでいます。
これらに係る研究開発費は93億円です。これらの費用については、各セグメントへの配賦は行わずに「消去又は全社」に表示しています。

事業等のリスク財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析


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