有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S1007QYA
旭化成株式会社 研究開発活動 (2016年3月期)
事業等のリスクメニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ)の主たる研究開発活動の概要、成果及び研究開発費(総額81,118百万円)は以下のとおりです。
「ケミカル・繊維」セグメント
(ケミカル事業)
ケミカル事業では、これまで蓄積してきたコア技術の深耕と新たな技術獲得を通じ「環境・資源・エネルギー」
にフォーカスした研究開発を推進することで社会に新たな価値を提供していきます。
石油化学系事業では、石化原料の多様化に向けた新技術として、エタンなどさまざまなエチレン性原料やバイオエタノールを原料にプロピレンを高効率的に製造するE-FLEXプロセス及びブテンからブタジエンを製造するBB-FLEXプロセスの実証を進めており、実用化に向けた検討を行っています。また、水島製造所内に炭酸ガスを原料とするジフェニルカーボネートの実証プラント建設に着工しました。
高機能ポリマー系事業では、新たなポリマー設計による超高耐熱・高剛性・易成形性のポリアミドや次世代省燃費タイヤ用変性SBRなどの開発が進捗しています。また、完全光学等方性を有する新規光学特性樹脂の生産設備を当社川崎製造所千葉工場内に新設し、2015年度に稼働しました。さらに、独自CAE(Computer Aided Engineering)技術の高度化を推進し、機能樹脂事業において新規事業開拓と海外展開を加速していきます。
高付加価値系事業では、膜・水処理関連として、多孔質構造を有した世界最速のリン吸着剤及びリン吸着・回収システムの大型下水処理施設での実証試験が終了し、日本国内だけでなく、水環境悪化や水不足が進行している米国や中国・アジアへの市場開拓を進めています。また、環境・エネルギー関連として、太陽電池や自動車などに使用される高機能コーティング剤の開発を進めています。さらに、再生可能エネルギーや省エネ関連素材の開発も進捗しており、社内外の技術を融合して開発を加速し、新製品・新事業の創出と立上げを推進していきます。
(繊維事業)
繊維事業では、グループ内外との連携により、研究開発機能を充実・高度化させるとともに、成果実現のスピードアップを図っています。主力製品であるポリウレタン弾性繊維「ロイカ™」、再生セルロース繊維「ベンベルグ™」、ナイロン66繊維「レオナ™」及び各種不織布において、独自性を活かした新たな価値商品の創出や、生産プロセスの革新を進めています。また、「健康で快適な生活」「環境との共生」に寄与する新事業領域の創出にも注力しており、新規セルロース素材の事業化や、高機能テキスタイル、新基軸不織布の開発などに取り組んでいます。
当セグメントに係る研究開発費の金額は19,410百万円です。
「住宅・建材」セグメント
(住宅事業)
住宅事業では、「ロングライフ住宅の実現」を支えるコア技術について重点的な研究開発を続けています。
シェルター技術については、安全性(耐震・制震・免震技術、火災時の安全性向上技術)、耐久性(耐久性向上・評価技術、維持管理技術、リフォーム技術)に加えて、居住性(温熱・空気環境技術、遮音技術)、環境対応性(省エネルギー技術、低炭素化技術)の開発を行っています。住ソフト技術については、二世帯同居などの住まい方についての研究を、評価・シミュレーション技術については、ITなどの活用により直感的に理解可能な環境シミュレーションシステムの構築を、それぞれ進めています。また、住宅における生活エネルギー消費量削減とともに、人の生理・心理から捉えた快適性を研究し、健康・快適性と省エネルギーを両立させる環境共生的住まいを実現する技術開発に注力しています。
(建材事業)
建材事業では、「絶えざる改善・革新で、お客様に安全、安心、快適を提供します」を事業ビジョンとし、軽量気泡コンクリート(ALC)、フェノールフォーム断熱材、高機能基礎システム、鉄骨造構造資材の4つの事業分野において基盤技術の強化を推進しています。また、ALC外装リニューアル事業への展開、断熱リフォーム向け製品の開発など、既存事業の周辺領域を取り込んだ新製品及びサービスの開発により、新たなソリューションビジネスも積極的に展開していきます。
当セグメントに係る研究開発費の金額は3,403百万円です。
「エレクトロニクス」セグメント
(電子部品系事業)
電子部品系事業では、技術革新の速い事業環境において、豊富な設計資産と有機的なエンジニア組織体制の構築により、ユニークかつタイムリーなデバイスの提供を図っています。高感度磁気センサの開発を通して蓄積してきた化合物半導体プロセス技術及びミクスドシグナルLSI技術を基盤とする高機能電子部品の開発を積極的に進めていきます。
(電子材料系事業)
電子材料系事業では、高分子設計・合成や、製膜加工、表面微細加工などのコア技術を活かして、「省資源・省エネルギー」「環境負荷軽減」「健康で快適な暮らし」に貢献する新規材料の開発を推進しています。民生・車載用途に展開する高機能リチウムイオン二次電池用セパレータなどの環境・エネルギー関連素材や、半導体・プリント配線基板の微細配線化といった先端技術トレンドを支える新規材料の展開に注力していきます。
当セグメントに係る研究開発費の金額は17,805百万円です。
「ヘルスケア」セグメント
(医薬事業)
医薬事業では、成熟化・高齢化社会において今後一層高まる「健康で快適な生活」へのニーズに応えるため、整形外科領域、中でもロコモティブシンドローム(運動器症候群)領域を中心に、「未だ有効な治療方法がない医療ニーズ(アンメットメディカルニーズ)」の解決に向けた積極的な研究開発を行っています。研究開発対象の新規開拓に加え、自社技術の絶えざる革新と、世界の優れた技術とのコラボレーションを積極的に推進します。
(医療事業)
医療事業では、治療の可能性を広げ、医療水準を向上させる製品、技術、サービスを提供するために、グループ総力をあげた研究開発に取り組んでいます。これまで培ってきた豊富な基礎技術と研究開発の応用により、人工腎臓、血液浄化技術、白血球やウイルスの除去技術をさらに発展させていきます。
(クリティカルケア事業)
クリティカルケア事業では、突然の心停止からの生存率を向上する技術開発を原点とし、新規領域にも研究を広げています。急性心筋梗塞・脳卒中・敗血症・呼吸困難など、予後の悪い数多い緊急疾病に対する新規治療法や技術が求められている昨今、私たちは全ての事業にわたり、患者と臨床医に役立つことを共通の使命としています。
当セグメントに係る研究開発費の金額は32,318百万円です。
「その他」
エンジニアリング分野では、次世代の生産技術や設備保全関連の検査技術などの研究開発に取り組んでいます。
当セグメントに係る研究開発費の金額は60百万円です。
持株会社では、成長戦略の重点分野と定めた「環境・エネルギー」「住・くらし」「ヘルスケア」関連分野において、積極的に経営資源を投入し、新規事業の開発を進めました。
「環境・エネルギー」関連分野では、深紫外発光ダイオード(UVC-LED)の用途開発が進み、分析計測機器用途の「Optan™」に加え、さらなる市場のニーズに対応する「Optan™ SMD」の販売を昨年8月から開始しました。今後は殺菌用途向けの開発を進め、早期の製品化を目指すとともに、水や空気、食品、医療など幅広い分野の新市場を開拓していきます。また、「クリーンな環境エネルギー社会」の実現を目指し、水素製造システムの開発にも取り組んでいます。本開発は、世界トップレベルのイオン交換膜法食塩電解プロセス技術を活かした、高効率なアルカリ水電解プロセスの開発であり、現在、他の企業と共同で実用に向けた実証試験を行っています。
「住・くらし」関連分野では、静岡県富士市に建設した「ヘーベルハウス™」の実証棟「HH2015」において、グループ内外の技術や製品を用いて「医療関連事業」及び「シニア関連事業」の検証を完了しました。「医療関連事業」では、在宅透析の検証に加え、深紫外発光ダイオード(UVC-LED)による空気や水の浄化など、シナジー効果を高めた事業展開の検証を実施し、「シニア関連事業」では、高齢者のくらしの実態の把握とともに、シニア向け集合住宅の実証試験を行い、自立した高齢者が快適に暮らすための研究を行いました。現在、「シニア関連事業」の検証の場を現場に移し、自立から介護まで切れ目のない最適な住まいとサービスの提供について具体的な検討を開始しています。
「ヘルスケア」関連分野では、新規分野の開拓活動に加えて、拡大するクリティカルケア事業と既存の医薬・医療事業とのシナジーを追及する為に、グループ内に設置された「ヘルスケア協議会」においてグローバル事業基盤の強化に向けた議論を進めています。
今後は、事業持株会社制への移行に伴い、研究開発組織の再編を行うことで社内の融合を生む体制とします。「コア技術の育成・獲得」「高付加価値化の追求」「マーケットチャネルの活用」の3軸の視点で研究開発に取り組み、新事業の創出につなげていきます。
全社に係る研究開発費の金額は8,123百万円です。
事業等のリスク財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
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