有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S10080H1
株式会社免疫生物研究所 研究開発活動 (2016年3月期)
事業等のリスクメニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当社グループは、製品開発型のバイオベンチャー企業として経営資源を医薬品研究開発へ積極的に投資しております。当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は193,037千円であり、各事業の研究開発費については、診断・試薬事業は71,054千円、遺伝子組換えカイコ事業は114,056千円、検査事業は7,926千円となりました。各事業における内容等は次のとおりであります。
事業別の研究開発活動
① 遺伝子組換えカイコ事業
当社は、遺伝子組換えカイコの繭から抗体等のタンパク質を発現させる技術を用いて、種々のタンパク質の産業利用に向けた研究を進めており、研究用試薬から診断薬原料、化粧品原料、さらに、ヒト及び動物向け医薬品としての開発を推進してまいります。
イ ヒトフィブリノゲン
当社は、血液凝固活性を有する組換えヒトフィブリノゲンを遺伝子組換えカイコの繭中に生産させることに成功し、血液に代わって、ウイルス等の混入の可能性が無い、安全な製剤原料を提供できる可能性を見出してきました。現在、ヒトフィブリノゲンの医薬品原料としての製品化を目指し、アステラス製薬株式会社との共同研究を精力的に進めております。
ロ 動物用医薬品原料の生産
当社は、動物用医薬品メーカーと共同で、遺伝子組換えカイコによって動物用医薬品原料となるタンパク質の生産を進めております。遺伝子組換えカイコ生産技術の利点を最大限に生かし、高い安全性および有効性が要求される動物用医薬品の原料として活用することを目指すものであります。
ハ 研究用試薬および体外診断用医薬品原料としての抗体
当社は、研究用試薬や体外診断用医薬品に使用する抗体を、遺伝子組換えカイコにより生産する技術を開発してまいりました。この技術を活用して、当社の製品であるアミロイドβ測定キットに用いている抗体を、遺伝子組換えカイコ生産抗体に切り替えたほか、大手体外診断用医薬品メーカーへも、抗体の供給を行っております。
ニ ヒトコラーゲン
当社は、遺伝子組換えカイコにより、アレルギーを起こす危険性が低い安心・安全なヒトコラーゲンを開発することに成功しました。このコラーゲンを「ネオシルクⓇ-ヒトコラーゲンⅠ」と命名し、化粧品原料としての販売を開始しております。
ホ ラミニン511-E8
iPS細胞等の培養足場材として有効であるラミニン511-E8を遺伝子組換えカイコを用いて安価に製造する方法を確立しました。研究用試薬原料として販売する準備を進めております。
へ 抗HIV抗体
当社は、遺伝子組換えカイコにより生産した抗体の糖鎖には「フコース」が含まれないことを発見し、その技術により、高いADCC活性を有する抗体医薬品が製造できる可能性を示してきました。その技術を用い、フコースを含まない抗HIV抗体を開発し、ADCC活性を飛躍的に増強させ、遺伝子組換えカイコを用いた抗体医薬品の実用化を目指して、共同研究開発を進めております。
② 診断・試薬事業(医薬用関連)
当社では、抗体作製技術を基盤として、治療用医薬品あるいは診断用医薬品に適した抗体の創製に取り組んでおります。治療用医薬品開発においては、製薬企業各社がパイプラインを充実させるために医薬シーズに係る権利の譲渡又は許諾を受ける活動を積極的に展開していることを受けて、当社の人的資源と効率を鑑み、創薬ターゲットの探索及びそのターゲットに対する各種抗体の作製とそれらの抗体の薬効評価に特化しております。
また、診断用医薬品開発においては、当社研究用試薬として製品化してまいりました、アルツハイマー病、及び糖・脂質代謝関連疾患の領域での研究開発を進めております。
主な研究開発の進捗状況は以下の通りであります。
イ がん領域における抗体医薬品シーズ探索
当社グループは、大学医学部との共同研究から、がん領域等における新たな抗体医薬品、及び体外診断用医薬品シーズの開発を行っております。
某大学との共同研究では、ヒト成人T細胞白血病(ATL)の診断に有効と考えられる関連タンパク質に対する抗体や測定系の開発を進めております。
ロ アルツハイマー病領域における治療用医薬品候補抗体の研究開発
当社は、大学等との共同研究から、神経細胞に毒性を有するとされているアミロイドβの毒性コンフォマーに対する抗体を創出しております。現在は、大学及び専門研究機関と共同でモデル動物を使った薬効試験によるアルツハイマー型認知症治療薬シーズとしての評価、さらに診断における臨床的意義の検証を進めております。
ハ アルツハイマー病に対する体外診断用医薬品
当社は、海外他社とアルツハイマー病の診断を目的とした原因タンパク質の測定キットの共同開発を行い、欧州において体外診断用医薬品としての販売に至りました。今後は、安定的な製造を進めてまいります。
ニ 耳鼻科領域における、めまい・難聴にかかわる疾患の体外診断用医薬品
当社は、大学のシーズを元に、めまい・難聴の原因を生化学的に診断できる世界初のバイオマーカー「CTP(Cochlin-tomoprotein)」に関して体外診断用医薬品としての開発を行っております。この度、体外診断薬申請 の経験豊富な体外診断薬メーカー、㈱コスミックコーポレーションと再実施許諾契約を締結し、日本国内での薬事申請・販売の権利を譲渡いたしました。これにより、早期に体外診断用医薬品の承認申請及び製品化を実現するとともに、当社は、本再実施許諾契約により一時金及び販売金額に応じたロイヤリティーを受領することになります。さらに、本製品の製造は当社において行うことで売上の拡大を目指してまいります。
ホ LPL(リポ蛋白リパーゼ)のラテックス自動化診断薬の開発
当社は既に販売しているLPL測定用キットをラテックス自動化診断薬として開発し、製造販売承認を取得いたしました。今後、販売を目指してまいります。LPLの診断薬は、既に脂質異常症の高TG血症患者を対象として他社から販売されておりますが、当社が開発する製品は、ラテックス凝集法による自動分析装置での測定を可能にするものです。これにより少数の検体から多数の検体まで幅広く対応することが出来、測定操作も簡便になり検査センターや病院の検査部門などでも広く測定することが可能となります。
へ 筋ジストロフィー患者の診断マーカーの測定系開発
某大学、及び研究機関との共同研究によって、筋ジストロフィー患者の診断のためのバイオマーカーとして、尿中のタイチンというタンパク質に対する測定系の開発を進めております。筋ジストロフィーとは骨格筋の壊死・再生を主病変とする遺伝性筋疾患です。患者尿中の解析において、タイチンという巨大なタンパク質の断片が存在することが発見され、それに対する抗体と測定系を開発しています。また、このタンパク質は筋肉に存在することから、運動負荷による筋肉障害のバイオマーカーとしても有用であると考えています。病気の診断・病態のモニタリングマーカー、あるいは、運動のモニタリングマーカーとしての開発を進めてまいります。
③ 診断・試薬事業(研究用関連)
研究用関連では、将来、診断に役立つ事を目指した抗体開発、及びそれを用いた測定キットの新製品の開発に取り組んでおります。分野として、当社の強みであるアルツハイマー病、がん・炎症及び糖・脂質代謝関連疾患の領域に特化した開発を行っております。
イ 老化関連分子に対する抗体・測定系の開発
この領域においては、既に可溶性α-Klotho測定キットを製品化し、国内外を問わず広く使用されております。本分子以外にも老化に関連する分子に対する抗体・測定系の開発を進めております。
ロ アルツハイマー型認知症関連タンパク質に対する抗体・測定系の開発
アミロイドβを中心とした種々のタンパク質に対する抗体・測定系の開発を進めています。これまでもアミロイドβ、及びその前駆体蛋白であるAPPなどに対する製品を広くラインアップしておりますが、新規の分子種に対する開発を継続しております。今後もユニークな製品を開発してまいります。
ハ メタボリックシンドローム・生活習慣病関連分子に対する抗体・測定系の開発
これまでにも糖代謝、脂質代謝、及び血圧調節などに関連する分子に対して特異的な測定系を開発、製品化しておりますが、既存製品の高感度化、あるいは新規ターゲットに対する測定系の開発等、継続して特徴のある新規製品を開発してまいります。
(注) 用語解説については、「第4提出会社の状況 6コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に記載しております。
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ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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