有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100LOW1 (EDINETへの外部リンク)
株式会社ACSL 事業の内容 (2021年3月期)
当社は、「技術を通じて、人々をもっと大切なことへ/Liberate Humanity through Technology」というミッションのもと、「最先端のロボティクス技術を追求し、社会インフラに革命を」というヴィジョンを掲げております。当社は自律制御(※1)技術を始めとしたロボティクス技術を追求し、常に最先端の技術開発を行っております。それらの技術の社会実装を通じて、人類の活動の基盤となる社会インフラにおける、人類の経済活動の生産性を高め、付加価値の低い業務、危険な業務を一つでも多く代替させ、次世代に向けた社会の進化を推し進めるべく事業を展開しております。
主たる事業は、「産業向け」の飛行ロボット(以下、「ドローン(※2)」という。)の自社開発、ドローンを活用した無人化システムの受注開発、生産、及び販売・サービス提供であります。
ドローンは、「空(そら)」や「空(カラ;屋内の開かれた場)」といった、屋内外問わず、空間の制約を克服して自動化・省人化が達成可能であり、この技術の潜在的な利用可能分野は極めて大きいと考えております。当社は最先端の自律制御技術をコアとして、顧客先の業務を代替・進化させるドローンを提供するべく、顧客先の現場視察、対話、そして実証を通して用途特化型ドローンの開発を進めております。
当社の事業は、ドローン関連事業の単一セグメントであるため、以下に当社の主要な製品及びサービスの内容を記載いたします。
(1)当社の事業内容
当社は自律制御の研究開発をゼロから国内で行うことで、「自ら考えて飛ぶ」最先端の制御技術を核とした技術力を有しており、通信・ソフトウエアなどを統合した制御パッケージや、高性能な機体プラットフォーム(※3)を提供することに加えて、用途別にカスタマイズした産業向け特注機体、特注システムの開発、さらに最終的には顧客システムに統合されたレベルのシステム開発まで、事業として幅広く対応することが可能となっております。
■ 当社が提供可能な次世代社会インフラ
当社では、ドローン活用において、検討段階から実際の導入まで全面的なシステム構築をワンストップで提供することを前提とし、主に大企業を中心としたコアクライアントに対して、概念検証(PoC)に係るサービス提供に取り組んでおり、特注システム開発や用途別の産業用ドローンの機体(以下、「用途特化型機体」という。)の量産供給に繋がるように営業活動を促進しております。
当社のビジネスモデルは、顧客企業からのドローン導入の打診に基づき、顧客企業におけるドローン活用による課題解決の概念検証(PoC:Proof of Concept(※4))、及び概念検証(PoC)を経て顧客先の既存システムへの組み込みも含めた特注システム全体の設計・開発を行う「実証実験」と、顧客先における試用(パイロット)ベースの導入として、当社のプラットフォーム機体をベースにした機体の生産・供給を行う「プラットフォーム機体販売」であります。
また、これらの実証実験、プラットフォーム機体販売を通じて、当社が提供できるソリューションの作り込みを行い、ドローンの利活用が多く見込まれる用途において、用途特化型機体の量産機体の開発・生産・販売を推進しております。
「実証実験」では、顧客のドローン導入のニーズを踏まえて、課題解決のために当社のテスト機体を用いた概念検証(PoC)に係るサービスを有償で提供しております。この概念検証(PoC)では、最小限のシステム構成にすることで、顧客のドローン活用の導入検討のハードルを下げつつ、業務効率化・無人化の検証を並行して行っております。なお、当社の指す概念検証(PoC)は単にアイデア提供等を行うサービスではなく、目的の業務においてドローン導入の有効性を判断するための飛行試験・実演を伴う概念検証サービスを指します。更に当社では、顧客先の既存システムへの組み込みも含めた特注システム全体の設計・開発を行っております。業務効率化などの効果実現に向け、特注システムの提供のみに留まらず、安全導入に不可欠なドローンの操作シミュレータやドローンの保守点検サービスを提供し、システム導入・運用サポートを一貫して提供しております。なお、顧客の既存システムへ組み込むソリューションの取り組み事例としては、工場設備、橋梁、煙突内部、下水道管路内等の閉鎖環境、および風力発電設備等の点検、また、ドローンによる物流システムの運用構築、災害現場の把握等がございます。これらの特注システム開発に際しては、概念検証(PoC)のサービス提供料や特注システムの仕様提案・設計・開発・試験運用に係るカスタム開発料を主な収益源としております。概念検証(PoC)を含めて有償のサービスモデルを構築し、顧客の側で継続的なプロジェクトをスムーズに立案・実施することを可能にしております。
また、当社では、「プラットフォーム機体販売」として、顧客先における試用(パイロット)もしくは商用ベースでのドローン導入として、当社が保有するプラットフォーム機体の生産・供給を行っております。この段階では、当社のプラットフォーム機体をベースに顧客の実業務への展開に向けたカスタマイズなどを行っております。
更に、直近の新たな市場環境変化に対応すべく、量産が見込める特定の領域において、「用途特化型機体」の開発を進めております。用途特化型機体は、①小型空撮機体、②中型物流ドローン、③煙突点検ドローン、④閉鎖環境点検ドローンの4種類の製品化を進めております。
当社では、各段階で収益を獲得する案件が一般的ですが、案件によっては、特注機体を開発、複数台製造をしつつ、運用システムを構築するなど実証実験とプラットフォーム機体販売を組み合わせて包括的に契約を締結する場合もあります。
なお、機体販売後の運用サポートにおいては、販売後、定常的に発生する機体の保守手数料や消耗品の販売料などを主な収益源としております。
また、当社製品・サービスが産業向けドローン業界におけるデファクト・スタンダードとなるためには、今後も継続的かつ積極的に研究開発活動を実施していくことが不可欠となります。そこで、当社では産学官連携で様々なプロジェクトに参画し、最先端の技術開発に取り組んでおります。国家プロジェクトにおいては、各プロジェクトで発生した研究開発費用について、管轄機関の監査を受けて認められた金額を、助成金又は補助金として収受しております。なお、助成金又は補助金に関して、新規技術の研究開発に係るものについては、営業外収益として計上しております。また、新規の研究開発を行わず、既存の当社の技術を用いて委託された実験を行うことが主目的であるプロジェクトについては、売上高として計上しております。
■ ドローンを活用した無人化・効率化システムのビジネス
■ 当社の産業向けドローンを活用した無人化・効率化システムの比較コンセプトのイメージ(石油・化学プラント運営企業に対する総合的なソリューションサービスのイメージ)
(注)1.スタンドアロンのドローン機体:外部の機器やシステムと繋がっておらず、機体のみが独立して存在しているドローン機体のこと
2.業務組み込み型ドローンシステム:ドローン機体が既存の機器やシステムとインターネットなどを活用して繋がり一体化されたシステムのこと
3.レポートUI(User Interface):点検調書等のレポートにおける情報の表示
■ 当社が開発を進めている用途特化型機体
■ 当社の用途別特化型の機体開発:上市に向けたステップと開発状況
(2)当社保有のプラットフォーム技術
当社は千葉大学発のスタートアップ企業として創業して以来、自律制御技術を中核技術と位置づけ、継続的に開発投資を行ってまいりました。2017年より、自社開発の制御技術の競争力を高めるために、無人化・効率化システムの一部としてドローンを採用することが多い企業需要に着目し、ドローンを活用した産業向けの無人化・効率化システムの開発に注力してまいりました。
この分野においてシステム構築を実現するためには、GPS(※5)が利用できない非GPS環境などあらゆる環境での飛行を可能にする最先端の「自律飛行(※6)能力(Autonomy)」と、業務効率化・無人化・効率化を実現するための「既存システムへの組み込み能力(Connectivity)」が必要になります。当社では、非GPS環境下での自律飛行を実現する画像処理による自己位置推定(Visual SLAM(※7))を軸とした自律制御技術、ドローンの飛行ログや取得画像データ蓄積・解析を行うための独自通信・クラウド(※8)システムの整備、人間や通路認識などの飛行制御向けAI(※9)、安全機能強化として落下エネルギーを約90%減少させ、高度10m以上であれば終端速度を5m/s程度まで減速可能なパラシュート等を点検、防災、物流、測量など多様な用途に対応可能なプラットフォーム技術として開発・商用化しております。また、既存システムへの組み込み能力においては、顧客における実環境でのデータを蓄積することが非常に重要であり、当社はこれまで多くのクライアントとのプロジェクトを通じて、豊富な現場視察、クライアントとの対話、そして実証実験の実績がございます。
■ 当社が注力している技術分野
現在、商品展開中の産業向けプラットフォーム機体「ACSL-PF2」、「Mini」及びその派生型は、当社の技術を全て集約させ、多様な用途に対応する高度な飛行性能と安全性を実現しております。当社が現在注力している用途特化型機体の開発においても、プラットフォーム機体をベースにした実証を行い、有用性を確認した上で、用途特化型機体の作り込みを行っております。当社プラットフォーム機体の開発コンセプトは、あらゆる用途に適応した機体特性を実現可能とするべく、最大公約数的な技術要素を集約した機体であり、主に以下の4つの特徴を挙げることができます。
① 「自ら考えて飛ぶ」自律制御技術
当社の中核技術でもある自律制御技術は、人間でいう「頭脳」に相当します。人間でいう運動機能をつかさどる「小脳」に該当する部分であるドローンの姿勢制御、飛行動作制御等の技術については、モデルベース(※10)の先端制御理論に加え、一部で非線形制御(※11)に係るアルゴリズム(※12)を使用しており、競合他社やオープンソースコードを推進する団体が採用する一般的なPID制御(※13)と比較しても、耐風性や高速飛行時の安定性、突発的な動作に対する安定性などの点で優位性があります。
また、人間でいう、目で見ることや自ら考えること等に係る機能をつかさどる「大脳」に相当する部分の技術は、画像処理による自己位置推定(Visual SLAM)やLidar(光センサー技術)等のセンサー・フュージョン、AIによる環境認識を開発し、ドローンの「小脳」部分に統合しており、従来のドローンに搭載されている衛星(GPS・GNSS(※14))を用いる制御では自律飛行することができなかった非GPS環境下での完全自律飛行を実現しております。
■ 最先端の「大脳」技術 - Visual SLAM
当社では、今後、本格化する目視外飛行や、通信が途絶えた場面、制御不能な状況を想定し、自律的ゴーホーム機能や各種緊急時の自動対応指示機能、操作・制御介入機能を搭載し、より安全で信頼性の高い制御を可能にする開発を進めております。FMEA(※15)等の航空機技術で培われた知見を活用し、故障を論理的、系統的に分析することで、その対応を重要なものから順次、対策技術を導入していくことを試みております。
例えば、当社では通信の冗長性を担保しております。一般的には920MHz帯及び2.4MHz、5.7GHz帯が通信として採用されておりますが、当社の制御技術では片方の通信が不可能になった場合はもう片方によって緊急操作介入ができるようになっております。なお、両方の通信が不可能な場合においても、ドローンは60秒間ホバリングを続けた上、操作介入なしでその場に自動で着陸するフェールセーフ(※16)機能を実装しております。
またプロペラが6枚以上実装されている当社ドローンでは、万一、何らかの原因でESC(モーターの回転数を制御する装置)又はモーターそのものが故障しプロペラ1枚が回らなくなった場合においても、残りの回転しているモーターとプロペラを使用してバランスを保ち、安定して着陸する技術を開発しております。この要素技術開発を元に、標準技術として商品化すべく実装試験を行っております。
② 機体・駆動ハードウエア
機体・駆動ハードウエアは、構造機能であるCFRP(※17)と、駆動機能であるモーター、CFRPプロペラ及びLiPO(※18)バッテリー等から構成されています。長時間、長距離飛行を行うための軽量化と安全に飛行するための必要な強度との両立、さらに雨に対する防滴性のような環境耐性も要求されます。
当社では、CFRPモノコックデザインを採用し従来品と比較して極めて軽量な機体構造により、ACSL-PF2は30分程度、Miniは40分程度の飛行時間(共にペイロードなしの場合)を実現するとともに、防災や物流向けには雨天時飛行を可能とするため国際IEC規格(ACSL-PF2はIP54、MiniはIP43(※19))の防塵・防水性を満たす機体を製品化しております。当社としてハードウエア技術を社内に有しつつ、量産機体の組み立てについてはパートナー企業と連携することで当社としては生産設備を有さない運用をしております。
③ 機能アプリケーション(※20)・搭載オプション
自律制御技術と機体・駆動ハードウエア技術を基にドローンを開発した後に、特定用途で利用するためには機能アプリケーションや搭載オプションの追加が必要となります。ドローンは、主に「目」(データ収集)や「手」(作業)の代わりとしての役割を果たすことができ、カメラやセンサーを搭載することで「目」の代わりの役割を、物品輸送用のキャッチャー(※21)や散布機を搭載することで「手」の代わりの機能を果たすことになります。
多くの場合、機能アプリケーションは制御と切り離された形で外付けとなる要素ですが、当社では、制御とのシステム連携を行う機能アプリケーションやオプションを開発、提供しております。点検、物流・郵便、防災・災害対応、測量、空撮など多様な用途に応じた産業向けのソリューションに必要な付属センサーやカメラ、パラシュート等の安全装置付属品など、機能アプリケーション別のカスタマイズも可能であり、個々の顧客のニーズに対応しております。
例えば、安全装置のパラシュートでは、何らかの障害でドローンが故障して落下した場合、地上で大事故とならないように機体が落下していることを検知し、自動でパラシュートが開きます。当社ドローン向けに開発されたパラシュートでは、安全機能として自由落下や機体傾き、電気信号途絶を自動検知し、0.5秒で開化することにより落下エネルギーをパラシュート非搭載の機体との比較で最大90%程度削減し、高度10m以上であれば終端速度を5m/s程度まで減速することを可能としております。
④ ソフトウエア・外部システム
ドローンは本体側での計算処理(エッジ処理)による自律的な飛行を行いますが、一般的には920MHzや2.4GHz、5.7GHz帯の周波数を用いて地上局と通信しながら飛行を行っております。地上局のソフトウエア技術は、自律飛行を行うためのルート設計及びドローンの飛行中の情報を遠隔にて可視化・モニタリングするために必要なもので、特に目視外飛行において重要性が増しております。
当社では、パソコンやタブレット、スマートフォンなどに搭載されたソフトウエアにリアルタイム情報を表示し、飛行速度や高度などの機体状態や飛行状況の管理を行っております。独自開発のソフトウエアからは飛行ルート変更の操作指示を与えたり、緊急時には、非常用介入操作指示を出したりすることが可能です。同時に、気象情報や地図情報、近隣の有人機飛行状況等の飛行管理に必要な多彩な情報を、地上の通信回線から取得し統合して表示を行うことで、ドローン飛行管理の司令塔の役割を果たします。
また、最近ではクラウドサービスとの接続、顧客企業の外部システムへの統合API(※22)、ドローン飛行練習用のシミュレーションソフトウエアなども重要になってきており、当社にて開発、商品化を行っております。
■ 飛行経路を遠隔モニターしているときの遠隔端末上(パソコンなど)の表示状況
[事業系統図]
(注)パートナー企業の一部を対象に、当社のドローンの転売又はドローンに付加価値を追加したソリューションをパートナークライアントの事業として商用展開を可能とすることを想定し、「ソリューションパートナー」契約を締結しております。
用語解説
本項「3 事業の内容」において使用しております用語の定義について以下に記します。
主たる事業は、「産業向け」の飛行ロボット(以下、「ドローン(※2)」という。)の自社開発、ドローンを活用した無人化システムの受注開発、生産、及び販売・サービス提供であります。
ドローンは、「空(そら)」や「空(カラ;屋内の開かれた場)」といった、屋内外問わず、空間の制約を克服して自動化・省人化が達成可能であり、この技術の潜在的な利用可能分野は極めて大きいと考えております。当社は最先端の自律制御技術をコアとして、顧客先の業務を代替・進化させるドローンを提供するべく、顧客先の現場視察、対話、そして実証を通して用途特化型ドローンの開発を進めております。
当社の事業は、ドローン関連事業の単一セグメントであるため、以下に当社の主要な製品及びサービスの内容を記載いたします。
(1)当社の事業内容
当社は自律制御の研究開発をゼロから国内で行うことで、「自ら考えて飛ぶ」最先端の制御技術を核とした技術力を有しており、通信・ソフトウエアなどを統合した制御パッケージや、高性能な機体プラットフォーム(※3)を提供することに加えて、用途別にカスタマイズした産業向け特注機体、特注システムの開発、さらに最終的には顧客システムに統合されたレベルのシステム開発まで、事業として幅広く対応することが可能となっております。
■ 当社が提供可能な次世代社会インフラ
当社では、ドローン活用において、検討段階から実際の導入まで全面的なシステム構築をワンストップで提供することを前提とし、主に大企業を中心としたコアクライアントに対して、概念検証(PoC)に係るサービス提供に取り組んでおり、特注システム開発や用途別の産業用ドローンの機体(以下、「用途特化型機体」という。)の量産供給に繋がるように営業活動を促進しております。
当社のビジネスモデルは、顧客企業からのドローン導入の打診に基づき、顧客企業におけるドローン活用による課題解決の概念検証(PoC:Proof of Concept(※4))、及び概念検証(PoC)を経て顧客先の既存システムへの組み込みも含めた特注システム全体の設計・開発を行う「実証実験」と、顧客先における試用(パイロット)ベースの導入として、当社のプラットフォーム機体をベースにした機体の生産・供給を行う「プラットフォーム機体販売」であります。
また、これらの実証実験、プラットフォーム機体販売を通じて、当社が提供できるソリューションの作り込みを行い、ドローンの利活用が多く見込まれる用途において、用途特化型機体の量産機体の開発・生産・販売を推進しております。
「実証実験」では、顧客のドローン導入のニーズを踏まえて、課題解決のために当社のテスト機体を用いた概念検証(PoC)に係るサービスを有償で提供しております。この概念検証(PoC)では、最小限のシステム構成にすることで、顧客のドローン活用の導入検討のハードルを下げつつ、業務効率化・無人化の検証を並行して行っております。なお、当社の指す概念検証(PoC)は単にアイデア提供等を行うサービスではなく、目的の業務においてドローン導入の有効性を判断するための飛行試験・実演を伴う概念検証サービスを指します。更に当社では、顧客先の既存システムへの組み込みも含めた特注システム全体の設計・開発を行っております。業務効率化などの効果実現に向け、特注システムの提供のみに留まらず、安全導入に不可欠なドローンの操作シミュレータやドローンの保守点検サービスを提供し、システム導入・運用サポートを一貫して提供しております。なお、顧客の既存システムへ組み込むソリューションの取り組み事例としては、工場設備、橋梁、煙突内部、下水道管路内等の閉鎖環境、および風力発電設備等の点検、また、ドローンによる物流システムの運用構築、災害現場の把握等がございます。これらの特注システム開発に際しては、概念検証(PoC)のサービス提供料や特注システムの仕様提案・設計・開発・試験運用に係るカスタム開発料を主な収益源としております。概念検証(PoC)を含めて有償のサービスモデルを構築し、顧客の側で継続的なプロジェクトをスムーズに立案・実施することを可能にしております。
また、当社では、「プラットフォーム機体販売」として、顧客先における試用(パイロット)もしくは商用ベースでのドローン導入として、当社が保有するプラットフォーム機体の生産・供給を行っております。この段階では、当社のプラットフォーム機体をベースに顧客の実業務への展開に向けたカスタマイズなどを行っております。
更に、直近の新たな市場環境変化に対応すべく、量産が見込める特定の領域において、「用途特化型機体」の開発を進めております。用途特化型機体は、①小型空撮機体、②中型物流ドローン、③煙突点検ドローン、④閉鎖環境点検ドローンの4種類の製品化を進めております。
当社では、各段階で収益を獲得する案件が一般的ですが、案件によっては、特注機体を開発、複数台製造をしつつ、運用システムを構築するなど実証実験とプラットフォーム機体販売を組み合わせて包括的に契約を締結する場合もあります。
なお、機体販売後の運用サポートにおいては、販売後、定常的に発生する機体の保守手数料や消耗品の販売料などを主な収益源としております。
また、当社製品・サービスが産業向けドローン業界におけるデファクト・スタンダードとなるためには、今後も継続的かつ積極的に研究開発活動を実施していくことが不可欠となります。そこで、当社では産学官連携で様々なプロジェクトに参画し、最先端の技術開発に取り組んでおります。国家プロジェクトにおいては、各プロジェクトで発生した研究開発費用について、管轄機関の監査を受けて認められた金額を、助成金又は補助金として収受しております。なお、助成金又は補助金に関して、新規技術の研究開発に係るものについては、営業外収益として計上しております。また、新規の研究開発を行わず、既存の当社の技術を用いて委託された実験を行うことが主目的であるプロジェクトについては、売上高として計上しております。
■ ドローンを活用した無人化・効率化システムのビジネス
■ 当社の産業向けドローンを活用した無人化・効率化システムの比較コンセプトのイメージ(石油・化学プラント運営企業に対する総合的なソリューションサービスのイメージ)
(注)1.スタンドアロンのドローン機体:外部の機器やシステムと繋がっておらず、機体のみが独立して存在しているドローン機体のこと
2.業務組み込み型ドローンシステム:ドローン機体が既存の機器やシステムとインターネットなどを活用して繋がり一体化されたシステムのこと
3.レポートUI(User Interface):点検調書等のレポートにおける情報の表示
■ 当社が開発を進めている用途特化型機体
■ 当社の用途別特化型の機体開発:上市に向けたステップと開発状況
(2)当社保有のプラットフォーム技術
当社は千葉大学発のスタートアップ企業として創業して以来、自律制御技術を中核技術と位置づけ、継続的に開発投資を行ってまいりました。2017年より、自社開発の制御技術の競争力を高めるために、無人化・効率化システムの一部としてドローンを採用することが多い企業需要に着目し、ドローンを活用した産業向けの無人化・効率化システムの開発に注力してまいりました。
この分野においてシステム構築を実現するためには、GPS(※5)が利用できない非GPS環境などあらゆる環境での飛行を可能にする最先端の「自律飛行(※6)能力(Autonomy)」と、業務効率化・無人化・効率化を実現するための「既存システムへの組み込み能力(Connectivity)」が必要になります。当社では、非GPS環境下での自律飛行を実現する画像処理による自己位置推定(Visual SLAM(※7))を軸とした自律制御技術、ドローンの飛行ログや取得画像データ蓄積・解析を行うための独自通信・クラウド(※8)システムの整備、人間や通路認識などの飛行制御向けAI(※9)、安全機能強化として落下エネルギーを約90%減少させ、高度10m以上であれば終端速度を5m/s程度まで減速可能なパラシュート等を点検、防災、物流、測量など多様な用途に対応可能なプラットフォーム技術として開発・商用化しております。また、既存システムへの組み込み能力においては、顧客における実環境でのデータを蓄積することが非常に重要であり、当社はこれまで多くのクライアントとのプロジェクトを通じて、豊富な現場視察、クライアントとの対話、そして実証実験の実績がございます。
■ 当社が注力している技術分野
現在、商品展開中の産業向けプラットフォーム機体「ACSL-PF2」、「Mini」及びその派生型は、当社の技術を全て集約させ、多様な用途に対応する高度な飛行性能と安全性を実現しております。当社が現在注力している用途特化型機体の開発においても、プラットフォーム機体をベースにした実証を行い、有用性を確認した上で、用途特化型機体の作り込みを行っております。当社プラットフォーム機体の開発コンセプトは、あらゆる用途に適応した機体特性を実現可能とするべく、最大公約数的な技術要素を集約した機体であり、主に以下の4つの特徴を挙げることができます。
① 「自ら考えて飛ぶ」自律制御技術
当社の中核技術でもある自律制御技術は、人間でいう「頭脳」に相当します。人間でいう運動機能をつかさどる「小脳」に該当する部分であるドローンの姿勢制御、飛行動作制御等の技術については、モデルベース(※10)の先端制御理論に加え、一部で非線形制御(※11)に係るアルゴリズム(※12)を使用しており、競合他社やオープンソースコードを推進する団体が採用する一般的なPID制御(※13)と比較しても、耐風性や高速飛行時の安定性、突発的な動作に対する安定性などの点で優位性があります。
また、人間でいう、目で見ることや自ら考えること等に係る機能をつかさどる「大脳」に相当する部分の技術は、画像処理による自己位置推定(Visual SLAM)やLidar(光センサー技術)等のセンサー・フュージョン、AIによる環境認識を開発し、ドローンの「小脳」部分に統合しており、従来のドローンに搭載されている衛星(GPS・GNSS(※14))を用いる制御では自律飛行することができなかった非GPS環境下での完全自律飛行を実現しております。
■ 最先端の「大脳」技術 - Visual SLAM
当社では、今後、本格化する目視外飛行や、通信が途絶えた場面、制御不能な状況を想定し、自律的ゴーホーム機能や各種緊急時の自動対応指示機能、操作・制御介入機能を搭載し、より安全で信頼性の高い制御を可能にする開発を進めております。FMEA(※15)等の航空機技術で培われた知見を活用し、故障を論理的、系統的に分析することで、その対応を重要なものから順次、対策技術を導入していくことを試みております。
例えば、当社では通信の冗長性を担保しております。一般的には920MHz帯及び2.4MHz、5.7GHz帯が通信として採用されておりますが、当社の制御技術では片方の通信が不可能になった場合はもう片方によって緊急操作介入ができるようになっております。なお、両方の通信が不可能な場合においても、ドローンは60秒間ホバリングを続けた上、操作介入なしでその場に自動で着陸するフェールセーフ(※16)機能を実装しております。
またプロペラが6枚以上実装されている当社ドローンでは、万一、何らかの原因でESC(モーターの回転数を制御する装置)又はモーターそのものが故障しプロペラ1枚が回らなくなった場合においても、残りの回転しているモーターとプロペラを使用してバランスを保ち、安定して着陸する技術を開発しております。この要素技術開発を元に、標準技術として商品化すべく実装試験を行っております。
② 機体・駆動ハードウエア
機体・駆動ハードウエアは、構造機能であるCFRP(※17)と、駆動機能であるモーター、CFRPプロペラ及びLiPO(※18)バッテリー等から構成されています。長時間、長距離飛行を行うための軽量化と安全に飛行するための必要な強度との両立、さらに雨に対する防滴性のような環境耐性も要求されます。
当社では、CFRPモノコックデザインを採用し従来品と比較して極めて軽量な機体構造により、ACSL-PF2は30分程度、Miniは40分程度の飛行時間(共にペイロードなしの場合)を実現するとともに、防災や物流向けには雨天時飛行を可能とするため国際IEC規格(ACSL-PF2はIP54、MiniはIP43(※19))の防塵・防水性を満たす機体を製品化しております。当社としてハードウエア技術を社内に有しつつ、量産機体の組み立てについてはパートナー企業と連携することで当社としては生産設備を有さない運用をしております。
③ 機能アプリケーション(※20)・搭載オプション
自律制御技術と機体・駆動ハードウエア技術を基にドローンを開発した後に、特定用途で利用するためには機能アプリケーションや搭載オプションの追加が必要となります。ドローンは、主に「目」(データ収集)や「手」(作業)の代わりとしての役割を果たすことができ、カメラやセンサーを搭載することで「目」の代わりの役割を、物品輸送用のキャッチャー(※21)や散布機を搭載することで「手」の代わりの機能を果たすことになります。
多くの場合、機能アプリケーションは制御と切り離された形で外付けとなる要素ですが、当社では、制御とのシステム連携を行う機能アプリケーションやオプションを開発、提供しております。点検、物流・郵便、防災・災害対応、測量、空撮など多様な用途に応じた産業向けのソリューションに必要な付属センサーやカメラ、パラシュート等の安全装置付属品など、機能アプリケーション別のカスタマイズも可能であり、個々の顧客のニーズに対応しております。
例えば、安全装置のパラシュートでは、何らかの障害でドローンが故障して落下した場合、地上で大事故とならないように機体が落下していることを検知し、自動でパラシュートが開きます。当社ドローン向けに開発されたパラシュートでは、安全機能として自由落下や機体傾き、電気信号途絶を自動検知し、0.5秒で開化することにより落下エネルギーをパラシュート非搭載の機体との比較で最大90%程度削減し、高度10m以上であれば終端速度を5m/s程度まで減速することを可能としております。
④ ソフトウエア・外部システム
ドローンは本体側での計算処理(エッジ処理)による自律的な飛行を行いますが、一般的には920MHzや2.4GHz、5.7GHz帯の周波数を用いて地上局と通信しながら飛行を行っております。地上局のソフトウエア技術は、自律飛行を行うためのルート設計及びドローンの飛行中の情報を遠隔にて可視化・モニタリングするために必要なもので、特に目視外飛行において重要性が増しております。
当社では、パソコンやタブレット、スマートフォンなどに搭載されたソフトウエアにリアルタイム情報を表示し、飛行速度や高度などの機体状態や飛行状況の管理を行っております。独自開発のソフトウエアからは飛行ルート変更の操作指示を与えたり、緊急時には、非常用介入操作指示を出したりすることが可能です。同時に、気象情報や地図情報、近隣の有人機飛行状況等の飛行管理に必要な多彩な情報を、地上の通信回線から取得し統合して表示を行うことで、ドローン飛行管理の司令塔の役割を果たします。
また、最近ではクラウドサービスとの接続、顧客企業の外部システムへの統合API(※22)、ドローン飛行練習用のシミュレーションソフトウエアなども重要になってきており、当社にて開発、商品化を行っております。
■ 飛行経路を遠隔モニターしているときの遠隔端末上(パソコンなど)の表示状況
[事業系統図]
(注)パートナー企業の一部を対象に、当社のドローンの転売又はドローンに付加価値を追加したソリューションをパートナークライアントの事業として商用展開を可能とすることを想定し、「ソリューションパートナー」契約を締結しております。
用語解説
本項「3 事業の内容」において使用しております用語の定義について以下に記します。
No. | 用語 | 用語の定義 |
※1 | 自律制御 | 機体の自律行動を実現する制御方式あるいは技術 |
※2 | ドローン | 遠隔操縦あるいは自律式の無人航空機一般 |
※3 | プラットフォーム | 必要最低限の技術要素をパッケージ化した技術の塊のことを意味し、カスタム製品や搭載物を変えて用途別製品を開発する際に使用できる基盤となる一連の技術要素の組み合わせのこと |
※4 | 概念検証(PoC:Proof of Concept) | 新たな概念やアイデアの実現可能性を示すために、可能な範囲で限られた手段を組み合わせて試験的な実験を行うこと。デモンストレーションによって特定の概念や理論の実用化が可能であることを示すこと |
※5 | GPS | Global Positioning Systemの略称で、全地球無線測位システムを指す。カーナビゲーションシステムなどに利用されているシステム |
※6 | 自律飛行 | 事前のプログラミングなどにより人の操縦がなくても飛行可能な飛行方法 |
※7 | SLAM | Simultaneous Localization and Mappingの略称で各種センサーから取得した情報から、自己位置推定と地図作成を同時に行うこと |
※8 | クラウド | サーバーやストレージ、ネットワークのインフラやソフトウエアを持たなくても、インターネットを通じて、サービスを必要な時に必要な分だけ利用することが可能なサービス |
※9 | AI | Artificial Intelligenceの略称。学習・推論・認識・判断などの人間の知能的な振る舞いを行うコンピュータシステム |
※10 | モデルベース | 制御対象の運動を数学モデルによって表現することに基づいた制御設計技術 |
※11 | 非線形制御 | 制御理論、制御技術の一つであり、一般的にPID制御よりも高度な数学が用いられ、制御対象をより正確に制御することが可能な制御技術 |
※12 | アルゴリズム | コンピューター上における問題を解くための手順・解き方 |
※13 | PID制御 | 比例(P)制御、積分(I)制御、微分(D)制御の組み合わせによって、設定された目標値にフィードバック(検出値)を一致させる制御機能を指す。速度、圧力、流量、温度などの制御に使用される技術 |
※14 | GNSS | Global Navigation Satellite Systemの略称で、全地球測位システムを指す。人工衛星を使用して地上の現在位置を計測する「衛星測位システム」のうち、全地球を測位対象とすることができるシステム |
※15 | FMEA | Failure Mode and Effect Analysisの略称であり、製品又はプロセスについて、問題が発生する前に問題(故障モード)を識別することと、それが波及する影響の解析をすることを含む、故障を予防する体系的な手法。あくまで解析結果のため、それに対する対応策が各種フェールセーフ機能となる |
※16 | フェールセーフ | 誤操作を起こさない又は誤操作をした場合でも事故が起こらないようにする機能。当社では、故障が起きたときに対する安全機能全般と定義している。フォルトトレランスはフェールセーフの一つ |
※17 | CFRP | Carbon Fiber Reinforced Plasticsの略称でプラスチック、つまり樹脂を炭素繊維で強化することで、樹脂単体よりも高い強度や剛性を得ることを可能とした「炭素繊維強化プラスチック」のこと |
※18 | LiPO | リチウムイオンポリマー二次電池のこと。正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで充電や放電を行う二次電池であるリチウムイオン二次電池の一種 |
※19 | 国際IEC規格 IP54/IP43 | 「IP」とは「IEC(国際電気標準会議)」によって定められている防塵・防水の保護規格であり、IP54は機器の正常な作動に支障をきたしたり、安全を損なう程の料の粉塵が内部に侵入しない防塵性かつ、300〜500mmの高さより全方向に10ℓ/分の放水、10分間放水した際の防水性、IP43は直径1.0mmの外来固形物まで内部に侵入しない防塵性かつ、200mmの高さより60°の範囲で10ℓ/分の放水、10分間放水した際の防水性 |
※20 | アプリケーション | 特定の適用・応用する用途のこと全般。もしくは特定の用途のためのソフトウエアのこと(アプリケーションソフトウエア) |
※21 | キャッチャー | 物を掴む、運搬するための機能・装置。機体に実装することによって、人の手に代わって作業を行うことが可能になる |
※22 | API | Application Programming Interfaceの略称であり、コンピュータプログラム(ソフトウェア)の機能や管理するデータなどを、外部の他のプログラムから呼び出して利用するための手順やデータ形式などを定めた規約のこと |
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ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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