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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100R2V6 (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 株式会社ペルセウスプロテオミクス 事業の内容 (2023年3月期)


沿革メニュー関係会社の状況

当社は東京大学先端科学技術研究センター・システム生物医学ラボラトリー(LSBM)で開発された蛋白質発現・抗体(※1)作製技術を基盤として、診断・創薬標的に対する抗体の医療への活用を目指して設立されました。創業以来、医薬品シーズ(※2)抗体を創生することで、がん及びその他疾患の治療用医薬品の研究開発、及び関連業務を行っております。LSBMで開発された蛋白質発現技術により、従来は作製することが困難だった標的蛋白質も免疫することが可能となり、そのような標的蛋白質に対する抗体の取得がより容易になりました。これをハイブリドーマ法(動物免疫法)(※3)と組み合わせることで、親和性(※4)の高い抗体の効率的な取得を可能にしています。さらに、当社は多様性に富むファージ抗体ライブラリ(※5)と特許技術でもある独自の抗体スクリーニング(※6)技術を保有しており、対象とする疾患の細胞に適用することで、創薬標的を探索するとともに、従来のハイブリドーマ法で得られるものとは異なる特徴を持つ高機能シーズ抗体を取得することを可能にしています。当社の技術は、これらの抗体技術とシーズ探索技術を融合し、医療ニーズにマッチした医薬品シーズ抗体を取得することを特長としております。また、当社は東京大学発であることを起点として、さらにそのネットワークを広げ、多くのアカデミアとの連携により「最先端の抗体技術で世界の医療に貢献する」ことを企業理念としております。

当社は以下の二つのアプローチによりシーズ探索を行っています。一つは、動物に免疫して取得する一般的なハイブリドーマ法です。グリピカン3(PPMX-T001)やカドヘリン3(PPMX-T002)はこの手法で同定(※7)されました。もう一つは、動物を用いずに抗体を取得するファージディスプレイ法(※8)です。この手法は創薬標的の同定とがん特異的な抗体の探索を同時に行うことができる方法です。

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世界におけるバイオ医薬品市場の推移を見ると、年々バイオ医薬品の売上高は増加しており、2020年には約2,831億ドルに達しました。今後も売上の増加が見込まれており、2026年には約5,489億ドルに達するとも予測されています。(出典:Evaluate®)
また、2022年度の世界の医薬品の売上高上位10品目のうち、抗体医薬品(※13)は1位も含めて5品目を占めております(出典:日経BP社 「日経バイオテクONLINE」2023年4月25日掲載https://bizboard.nikkeibp.co.jp/bp_bto/atcl/column/16/011900001/23/04/21/00341/ )。
このような事業環境の中で、当社は機能性の高い抗体を当社独自の技術で作製し治療薬として開発しているほか、抗体に放射性同位体や抗がん剤等を化学的に結合させ、がん細胞への攻撃力を高めた治療薬の研究開発も行っております。

(1)当社の事業モデル
当社の事業セグメントは、医薬品事業のみの単一セグメントでありますが、以下の各分野において製品化に向けた研究開発、ライセンス、製造方法の確立に取り組んでおります。
① 創薬
当社は、長年の経験に基づいたハイブリドーマ法と、独自のスクリーニング技術を取り入れたファージディスプレイ法により、高機能抗体を取得し、必要に応じて抗体に遺伝子工学的な改変あるいは化学的な修飾を施し、抗体医薬品候補として研究開発を進めております。
創薬の収益モデルは、国内外の製薬企業に対して、当社が開発した医薬品候補を導出(特定の医薬品を開発、販売するために必要な知的財産権の使用を許可すること。)することによる契約一時金収入、開発の進捗に応じて支払われるマイルストーン収入、上市(※14)後に売上高の一定割合が支払われるロイヤリティ収入等を獲得することであります。

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収入の形態内容
契約一時金契約締結時に一時金として受け取る対価。
マイルストーン収入製薬企業等提携先が当社と契約締結後、当社又は提携先における研究開発が進捗し、契約上規定された特定の開発目標を達成した時の対価である開発マイルストーンと、医薬品販売後に、事前に設定した年間販売額を達成した時に受け取る収益である販売マイルストーンがあります。
ロイヤリティ収入上市後に当該製品売上高に対して契約に設定された一定割合を受け取る収入。

当社は、これまでに創出したがん治療用抗体のうち、肝臓がんを標的とする抗体及び固形がんを標的とする放射性同位体標識抗体を、それぞれ製薬企業である中外製薬株式会社及び富士フイルム株式会社に導出しております。このうち富士フイルム株式会社に導出した2つの抗体(PPMX-T002及びPPMX-T004)は、同社の子会社の放射性医薬品事業の他社への譲渡により、2022年3月に実施権が返還されました。現在、有効性を高めた新たな抗体医薬品としての開発をそれぞれ進めております。また、難治性血液がんを標的とした抗体(PPMX-T003)は、2014年に国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)に採択された後、開発を進め、2018年より企業主体の開発に切り替えて自社で治験を推進中です。この抗体については、治験中の対象疾患とは別の疾患においても、新たな医薬品候補となる可能性が認められ、2022年3月に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」に採択されております。
なお、当社における抗体創薬の特長は、医薬品として高い薬理効果が期待できる新規抗体を効率的に取得することです。この抗体の物質特許が事業のベースになり、その抗体を医薬品として患者さんに届けるべく非臨床試験、臨床試験及び薬事承認を得るまでいかに早く進めるかが課題となります。導出は、一般的に、特許取得後すぐに大手製薬企業に導出するケース、自社で非臨床試験を完了してから導出するケース、自社単独であるいはパートナー企業と共同で臨床試験を実施し、パイプラインの価値を高めてから製薬企業に導出するケース等があります。この導出の形態は、薬剤の特性、薬剤ごとに異なる臨床試験の計画、適応疾患及び開発費用等を勘案して決定いたします。
近年、抗体医薬品の認知度が高まる中、多数の抗体医薬品が上市され、抗体医薬品ビジネスの競争も激化しつつあります。これに伴い、非臨床段階では有利な経済条件で導出することが難しくなりつつあります。当社は、抗体医薬品を早期に患者さんに届けるため、自社でも積極的に臨床試験を実施し、製薬企業への導出を推進してまいります。
本書提出日現在においては、適用疾患の範囲が広いと期待される抗トランスフェリン受容体抗体の自社での臨床試験を推進するとともに、放射性同位体標識抗体及び薬剤結合抗体(ADC)の開発も進めております。さらに、新規抗体に関しては、当社の保有するファージ抗体ライブラリを探索して取得した複数の候補の評価を行っております。
なお、各開発品の詳細については、後述「(3)当社の開発品」をご参照ください。

② 抗体研究支援
当社は、これまでにがん等を対象とした抗体医薬品や研究用試薬の創出を通じて培ってきた技術や経験を活かして、抗体に関連した研究支援(研究受託)を実施しております。特にアカデミアや製薬企業に対する抗体研究支援は、当社の創薬活動におけるネットワークを広げる等のシナジー効果があります。

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a.抗体作製
動物細胞を利用した組換え蛋白質の生産系を利用して、薬効を確認する試験に使用することが可能な程度に高度に調製したIgG型抗体(※16)の作製を行います。一般にマウスなどを対象とした動物試験で使用する抗体の必要量は数十mg程度ですが、一般の試薬会社では100㎍単位で販売されるのに対し、組換え蛋白質として抗体の生産を委託会社に依頼した場合、数g単位のような過剰量であることも多く費用が高額になりがちです。それに対し、当社は生産量にフレキシブルに対応することが可能です。

b.研究受託
抗体は物理的な安定性や薬理的な効果など様々な観点での試験が行われ、その用途に応じて、最適な抗体が選択される必要があります。当社ではこれまでに培った抗体解析・評価ノウハウをもとに、ある標的に対して得られる多数の抗体群の中から、診断・治療に適した抗体を選別・提供するような研究受託を行います。また前述した抗体作製技術によって作製した抗体などを利用して薬効試験を代行・コンサルティングするなど、当社の抗体開発経験をもとにした各種サービスを提供することで、大学等の研究を支援いたします。

c.配列解析
抗体産生細胞(ハイブリドーマ、一般に一種類のマウス抗体を産生する)から、抗体配列(※17)を取り出しその遺伝子配列を決定します。抗体の遺伝子配列は様々な標的との結合が可能となるように多様な組み合わせの配列を生成するという特有の特殊性を持つため、通常の配列決定法では一意に遺伝子配列を決めることが困難ですが、当社は独自に設計した遺伝子増幅用配列を用いることで、その抗体配列情報を解析することが可能です。そして、この解析を行うことでこの結果をもとにした特許出願を行ったり、前述した組換え蛋白質として抗体作製に用いたりすることが可能となります。

③ 抗体・試薬販売
当社では、がんや生活習慣病等、各種疾患のバイオマーカー(※18)となる核内受容体抗体を全48種類取り揃えており、世界の研究者に向けて研究用試薬として販売しております。また、PTX3 ELISAキット(※19)の開発に成功し、研究用試薬として販売しております。

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a.核内受容体抗体
核内受容体とは細胞内でホルモンなどと結合することで遺伝子の発現調節を行う蛋白質で、ヒトでは48種類存在します。核内受容体は生命維持の根幹に関わる遺伝子調節機能を担っており、創薬標的としても注目されている蛋白質群です。当社は、この核内受容体に対する抗体を全種類開発し、研究用抗体として世界の研究者に販売提供しております。
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b.研究用試薬 PTX3 ELISA キット
蛋白質であるPTX3の血液中の濃度は血管炎症の程度を反映する指標と考えられています。当社はこのPTX3の濃度を高感度に測定できる測定試薬を開発し、研究用試薬として販売しております。なお、炎症の程度を鋭敏に捉えるPTX3の特徴を活かし、新型コロナ感染症等による肺炎や血管炎症を伴う各種疾患の重症化を予測するためのPTX3迅速計測キットの開発も別途進めております。
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(2)当社の技術
治療用抗体を取得するために、当社では①抗体探索、②抗体工学、③標的探索、④機能性蛋白質発現の各技術を保有しております。
① 抗体探索
抗体を取得する方法として、当社ではファージディスプレイ法とハイブリドーマ法を実施しております。また、ファージディスプレイ法によって取得した抗体を効率的にスクリーニングする技術として、当社独自の手法であるICOS法(Isolation of antigen/antibody Complexes through Organic Solvent method、特許第4870348号)を開発し、活用しております。
a.ファージディスプレイ法
動物を用いない抗体取得方法として、以下の2つの抗体ライブラリから特定の標的分子と結合する抗体配列を選別します。当社は、保有する抗体ライブラリと独自のスクリーニング技術を組み合わせることで、薬剤となりうる抗体を取得しています。優れた抗体は、狙った標的分子のみに強く結合する性質を持ち、これを特異性(※22)、高親和性と呼びます。またその性質により、標的分子の機能を制御する場合は機能性抗体と呼ばれ、抗体医薬品においては重要な性能となります。
(a)ヒト抗体ライブラリ
当社は多種類のヒト抗体配列を揃えたヒトナイーブ抗体ライブラリ(※23)を保有しています。抗体は、それぞれ2本のH鎖(重鎖:分子量が大きい)とL鎖(軽鎖:分子量が小さい)によって構成されています。抗体の抗原認識に対する寄与度は、L鎖よりもH鎖の方がより大きいことが知られています。そこで、当社は保有するヒト抗体ライブラリのH鎖の多様性を増やして、多彩な抗原を認識できる抗体の存在比率を大幅に高めることにより、標的分子に対して多数の抗体群を取得することを可能としました。これにより、標的抗原に対して親和性の高い抗体を取得する可能性を向上させております。また、標的抗原に対して多数のエピトープ(※24)を認識する抗体群を取得することで、機能性抗体を取得する確率も高めております。
ナイーブレパートリーと呼ばれる、体内の抗体の中でも特に未熟な抗体は、一般的に、免疫寛容(※25)を受けておらず、さまざまな標的に対する反応性を持っています。当社ではそのような素材からライブラリに格納する抗体集団を構築する手法により、様々な標的分子に対して最適な抗体を作出することを可能にしております。

(b)ラクダ抗体ライブラリ
ラクダ抗体(※26)は、他の動物種の抗体とは異なりサイズが小さいため生産が容易で、熱に対しても高い安定性を示すことが特徴です。また他の蛋白質との一体化など、用途に適した抗体へ改変することが容易なため、医薬品以外にも様々な用途で活用することが期待されています。
当社は、こうした優れた特性を持つラクダ抗体配列を多種類揃えたライブラリを保有しております。

(c)抗体スクリーニング技術
抗体医薬品の標的分子となる蛋白質は、細胞膜上に発現しますが、その蛋白質は折り畳まれて複雑な立体構造を作り出しています。抗体は抗原認識の際に標的分子の持つ立体的な構造に大きく影響されますので、スクリーニングの際には細胞を用いることが効果的です。
しかしながら生きた細胞をそのままスクリーニングに使うと、標的に特異的でない多数の抗体も含まれてしまうという問題が生じます。そのため、通常は精製された抗原がスクリーニングに使われますが、当該手法では、精製の過程で蛋白質の立体構造が失われてしまうため、標的蛋白質に対する最適な抗体を取得することは困難でした。これを解決した方法が、当社が独自に開発したICOS法です。ICOS法は有機溶剤を利用して、細胞が有機層に入る過程で、非特異的に吸着した抗体を細胞表面から除去する手法です。これにより、細胞上に存在する蛋白質の立体構造を反映した、親和性の高い抗体のみを効率的に取得することが可能となりました。
また細胞膜上の蛋白質に限らず、通常免疫法では取得が困難な標的に対しても最適なスクリーニング技術を開発しており、蛋白質はもちろん、低分子等様々な標的に対する抗体を取得することができます。
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b.ハイブリドーマ法
抗体作製技術の一つで、当社の抗体作製技術の出発点となっている基本的な重要技術です。蛋白質等の標的分子をマウス等の動物に免疫することで、抗体を産生する細胞(ハイブリドーマ)を作出する、古典的ですが信頼性の高い手法です。現在市販されている抗体医薬品の多くがこの手法で作られています。
抗体医薬品の主な標的である膜蛋白質の多くは、ヒト以外の動物でも同じ形で存在することが知られています。この様な標的の場合、通常の免疫方法では免疫が自分自身を攻撃するのを防ぐ機構を持つために、ヒトを形作るのと同じ構造を持つ蛋白質に対する機能性抗体の取得は難しいことが知られています(この現象を免疫寛容と言います)。しかし当社では、東京大学との多くの共同研究を通じて得た最先端の知識と、アジュバント(※27)と呼ばれる免疫増強剤の使用・投与方法の工夫といったノウハウを組み合わせることで、高い結合力で的確に標的に結合する抗体を効率的に取得しています。
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② 抗体工学
a.抗体配列解析
抗体配列を100%正確に解析することは、後述する抗体デザインを行う上で極めて重要な操作となります。
抗体産生細胞(ハイブリドーマ)が生産する抗体のアミノ酸の並びを解読するためには、細胞から抗体の遺伝子を取り出し、その遺伝子配列を決定する必要があります。しかし抗体の遺伝子配列は、様々な標的との結合が可能となるように、多様な組み合わせの配列を生成するという特有の性質を持つため、通常の配列決定法では一意に遺伝子配列を決めることは困難です。そこで当社では独自に設計した遺伝子増幅用配列(プライマー(※28))を用いて、その抗体配列情報を解析しています。即ち、ハイブリドーマから抗体に翻訳される遺伝子領域を取り出し、その部分を独自に設計したプライマーを用いて増幅することで遺伝子配列を解析します。これにより当社では非常に多様な抗体の配列情報を正確に決定します。
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b.抗体デザイン
マウスに免疫して得られた抗体は、構造的にはマウスの特徴を備えた抗体であるため、これをそのままヒトに投与すると、ヒトの免疫機構が異物と判断して排除してしまい、安全性に問題が生じる場合があります。このような事象を回避するため、抗体が標的蛋白質と結合する部分だけを残して残りの部分をヒトの抗体構造と置き換えることで、ヒトに投与しても安全なデザインを施します。これを抗体のヒト化と呼びます。一方、ヒト抗体ライブラリを使ってファージディスプレイ法で得られた抗体は、もともと全ての部分がヒトに由来しているため、マウス由来の抗体と比べて安全性が高いと考えられます。
こうしてデザインした抗体は、そのままの形で薬として利用する場合もありますが、例えば放射線を発する物質や強力な抗がん剤を抗体と直接連結することで、がん細胞だけを効果的に殺傷することもできます。
このように、取得した抗体を様々にデザインすることで、より進化させ、最新の治療手法に応用することが可能です。
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③ 標的探索
a.トランスクリプトーム(※29)解析
抗体医薬品の新薬開発において最も重要なことの1つが、その疾患の治療標的となる細胞表面に存在する蛋白質が何であるかを効率的に絞り込んでいくことです。当社では、油谷浩幸教授(LSBM)が構築したLSBMトランスクリプトームデータベースから得られた情報に基づき、治療標的となり得る有用な蛋白質を発掘し、がんの診断・治療に役立つ抗体を作製し、抗体医薬品候補として研究開発を行っております。

b.リバーストランスクリプトーム(※30)解析
疾患に関連した細胞(例えばがん細胞)の表面には、正常な細胞とは異なり、その疾患に特有の構造を持つ蛋白質が往々にして存在します。これらの蛋白質は抗体の標的分子となるため、当社は、その疾患に特異的な蛋白質の構造を正確にとらえた抗体を多数取得し、ライブラリ化しております。このようにして得られた抗体ライブラリには、診断や治療に有用な抗体が多数含まれていることが期待され、ここから様々な治療効果を示す抗体を選別し、その抗体が標的としている蛋白質の調査を進めていきます。このようにして得られた有用な抗体群は、治療薬候補の抗体として研究開発が進められます。

④ 機能性蛋白質発現技術(BV:Budded Virus)
高い結合力で的確に目標と結合する抗体を作製するには、標的となる蛋白質の細胞上での構造と機能を維持した状態で作製することが極めて重要です。当社はこの課題を克服する手段の一つとして、LSBMにて浜窪隆雄教授を中心に開発したBV(Budded Virus)技術を活用しています。この技術を用いると、標的蛋白質が構造と機能を保ったまま生産されるように遺伝子組換えを施したウイルスを昆虫細胞に感染させ、そこから放出されるウイルスを免疫源として直接利用することが可能です。これにより従来は作製することが困難だった標的蛋白質も免疫することが可能となり、これまで作製困難だった標的に対する抗体の取得が、さらに容易になりました。

(3)当社の開発品
当社の開発パイプラインの進捗状況は以下のとおりです。
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※ANKL:アグレッシブNK細胞白血病
PPMX-T001の特許は2022年6月に有効期限を迎えたため、中外製薬株式会社との契約も満了となりました。このためパイプラインから削除しております。

① PPMX-T002(新規開発コードに変更予定)
PPMX-T002は、導出先の富士フイルム株式会社の事業方針の変更により、2022年3月に実施権が返還されており、新たな医薬品候補として開発を進めております。本書提出日現在、協業候補先を決定しており、2025年3月期の導出を目指して協業先を決定し、開発計画を策定してまいります。
a.特徴
PPMX-T002は、がん細胞表面に存在するカドヘリン3(CDH3)を標的としています。CDH3は、細胞間接着蛋白質として機能すると考えられています。トランスクリプトーム解析から、主要正常臓器において発現が低く、各種がんで多く発現している標的として見出されました。
PPMX-T002は、放射性同位体を標識した抗体(Armed抗体(※31))を用いた抗がん剤で、通常の抗体医薬品とは異なる作用メカニズムを持ちます。一般的な抗体医薬品は、抗体ががん細胞表面に発現する特定の蛋白質に結合し、生体が持つ免疫機能を誘引することで標的細胞を攻撃しますが、免疫機能が低下した患者さんに対しては効果が弱くなります。一方PPMX-T002は、動物免疫で取得し、遺伝子改変した抗体に放射性同位体を標識したもので、抗原抗体反応によってがん細胞に集積
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させ、標識した放射性同位体から放出する放射線で直接がん細胞を攻撃することができます。このため、患者さんの免疫機能の状態に関わらず、高い効果が期待できます。また、PPMX-T002は、固形がんの細胞表面に多く発現しているCDH3を標的とし、肺がん、膵臓がん、大腸がん、卵巣がん等の細胞に高い集積性を有する抗体を用いています。

b.開発状況
富士フイルム株式会社による米国における進行性固形がん患者さんでの第Ⅰ相試験において、PPMX-T002の抗体が、投与された患者さんのがん組織に集積すること及び安全性が確認された用量で一部症例において腫瘍の縮小が確認されました。ステージ4の患者さんを対象にした臨床試験で、15例中11例でSD(病勢安定)又はCR(完全寛解)という好成績が得られています。また、CRの症例では投与後、次第に腫瘍が小さくなり26か月後には卵巣がんが消失した症例がありました。


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(出典 Subbiah et al. (2017) AACR Annual Meeting, Chicago, USA DOI: 10.1158/1538-7445.AM2017-CT097)

米国における拡大第Ⅰ相試験の終了をもって、富士フイルム株式会社によるPPMX-T002の開発は中止となります。当社は、これらの治験データを含むすべての成果物を譲り受け、新たな協業先と提携の上、さらに有効性の高い放射性同位体標識抗体として開発を進めてまいります。なお、富士フイルム富山化学社によるPPMX-T002の日本における第I相試験は、同社の放射性医薬品事業の譲渡に伴い中止となりました。


治験名A Dose Escalation Study of Radio-labeled Antibody for the Treatment of Advanced Cancer
進行がんに対する放射性同位体標識抗体の用量漸増試験
治験フェーズ拡大第Ⅰ相試験(国内第II相試験相当)
対象進行性固形がん患者
実施国アメリカ
評価項目安全性、薬物動態(主要)
有効性(副次的)
状態実施中。現在進行中の治験終了後に開発終了

c.対象疾患
CDH3陽性難治性固形がん(卵巣がん、胆道がん、頭頸部扁平上皮がん)

d.ライセンスの状況
2011年1月に、当社及び富士フイルムRIファーマ株式会社(現 富士フイルム富山化学株式会社)のPPMX-T002に関する権利(「研究・開発」及び「製造・販売」等)を富士フイルム株式会社に実施許諾する契約を締結しましたが、同社の子会社である富士フイルム富山化学株式会社の放射性医薬品事業の他社への譲渡に伴い、2022年3月に当該契約を解除しました。当該事業の承継先であるPDRファーマ株式会社と協議した結果、当社が今後の開発及び導出活動を主導することが決定しました。標識する放射性同位体を、より高い有効性が期待される放射性同位体に変更することも視野に、新たな医薬品候補として開発を進めております。

② PPMX-T003
a.特徴
PPMX-T003は、ファージディスプレイ法により取得された抗体で、トランスフェリン受容体(TfR)を標的とします。TfRは、鉄を結合したトランスフェリンを細胞内に取り込むために、細胞膜上に発現しています。細胞の生存には細胞内への鉄の取り込みが必須ですが、中でも赤血球になる前の細胞である赤芽球と、増殖が盛んな全てのがん細胞は極めて多くの鉄を必要とするため、TfRが高発現していることが広く知られています。このため、鉄の取り込みを阻害することで細胞内の鉄を枯渇させ、がん細胞を死滅させるという試みが、古くから行われてきました。これまでに数多の研究者が抗TfR抗体の研究開発に取り組んできましたが、臨床で使用可能な抗体はいまだ見出されておりません。こうした中、当社は、当社独自のスクリーニング技術であるICOS法を取り入れたファージディスプレイ法により、極めて高い鉄取り込み阻害能を示す完全ヒト抗体を取得しました。現在、幅広い血液疾患を対象とした治療薬の開発を計画しており、まずは真性多血症(PV:Polycythemia Vera)に対する治療薬開発を目指して、2019年11月から臨床試験を実施しています。
下の中央図は、PPMX-T003が、ブロッキング抗体としてTfRからの鉄結合蛋白質の取り込みを阻害する様子を表しています。右のグラフは、TfRに対する結合阻害率を評価した競合アッセイデータです。横軸は濃度で左に行くほど結合が強く(低濃度で阻害する)、下に行くほど結合阻害率が高いことを示します。体内にあるトランスフェリンと比較して、PPMX-T003は、100倍以上結合が強いこと、また、完全に結合阻害していることがわかります。A24は従来の抗体で、結合力も弱く阻害率が半分にも到達していません。



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PPMX-T003は、TfRに結合することでがん細胞への鉄の取り込みを阻害し、強力な抗腫瘍効果を示しています。これにより、化学療法剤で生じるような患者さんの大幅なQOL(※32)低下を伴わない治療効果が期待されます。
また、東海大学との共同研究においては、PPMX-T003の優れた鉄取り込み阻害能が、アグレッシブNK細胞白血病(ANKL)という超希少疾患にも有効である可能性が示されました。患者由来腫瘍細胞を移植したマウスモデルによるPPMX-T003の投与実験で、極めて高いがん細胞増殖抑制効果及び生存期間の延長が確認され、2022年3月には、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」に採択されております。
PPMX-T003は、上記の他にも、試験管内で幅広い種類の血液がんに抗腫瘍効果を発揮し、各種マウスモデルでがん縮小/延命効果を発揮しました。
以下のデータ(表)は様々な血液がん細胞に対する増殖抑制効果のデータです。一番下の正常細胞(臍帯由来細胞)に対して、最下段以外の全てが種々のがん細胞で、そのEC50(細胞増殖を50%抑制するために必要な薬剤濃度)は2桁以上少なく、がん細胞が正常細胞に比較してPPMX-T003に敏感で、強く増殖抑制されることが示されています。


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(注) 細胞株とは、がん組織から採取し、安定的に増殖・培養できるようにした実験用細胞のこと

以下のデータは担癌マウスを用いた動物実験データです。急性骨髄性白血病(AML)や悪性リンパ腫で薬剤の用量依存的にがん細胞の増殖が抑制されていることが示されています。いずれも横軸は日数、縦軸は腫瘍の大きさで、矢印は薬剤の投与を表しています。二つのグラフはいずれも、薬剤無し(Control)で日数と共に急速に腫瘍体積が大きくなっています。これに対してPPMX-T003を投与すると、投与量が増えるとともに腫瘍体積の増大が抑制されています。特に30日目以降は、その後薬剤の投与が行われていないのに腫瘍体積は増えていません。つまり、PPMX-T003は用量依存的に腫瘍体積の増加を抑制し、投与量が多い場合はがんを消失していることが確認できました。

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(出典 Zhang et al.(2017) AACR Annual Meeting, Chicago, USA DOI: 10.1158/1538-7445.AM2017-5586)


b.開発状況
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)研究成果最適展開支援プログラムの採択後、2018年にサルを用いた非臨床毒性試験(GLP毒性試験)を完了し、2015年に終了した予備試験と同様の結果を得ております。また、本非臨床毒性試験完了をもって研究成果最適展開支援プログラムは終了し、現在、自社単独で治験を実施しております。
PPMX-T003は種々の血液がんで治療効果が期待されますが、最初に真性多血症治療薬の開発に取り組んでいます。真性多血症は赤血球が通常より多い疾患で血栓生成が問題です。現在の治療法は、瀉血(しゃけつ)又は抗がん剤等の薬物療法です。瀉血は体内の鉄分が不足するため、貧血や脱力感、うつ病、手足むずむず病等の精神症状を伴い、QOLが悪いという課題があります。また、抗がん剤等の既存の薬物療法は骨髄抑制や2次がん発症リスク等の問題があります。これに対して、PPMX-T003は、既存の治療法で問題となる副作用の大幅な低減が期待されます。
以下に真性多血症の標準的治療法と課題について図に示します。


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以下のデータは、順天堂大学における真性多血症の患者さんの瀉血検体を用いた内因性赤芽球コロニーの増殖試験の結果です。PPMX-T003を加えた細胞培養の実験で、赤芽球コロニーの形成が阻害されていることがわかります。これは、PPMX-T003の真性多血症治療薬としての可能性が、ヒトの検体を用いて検証された、重要な事例です。

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(出所:第81回日本血液学会学術集会「抗TfR1抗体による真性多血症内因性赤芽球コロニーの形成阻害」)

2019年11月より真性多血症治療薬としての第Ⅰ相試験を開始し、2021年3月に健常人の第Ⅰ相試験が終了しました。
治験名真性多血症患者を対象としたPPMX-T003の非盲検、多施設共同、用量漸増、単回持続静脈内投与による薬物動態及び安全性を評価する第I相試験
治験フェーズ第Ⅰ相試験
対象真性多血症患者
実施国日本
評価項目単回静脈内投与時の安全性
状態実施中

2021年3月に完了した健常人の第Ⅰ相試験では、日本人健康成人男性へのPPMX-T003の投与量0.25mg/kgまでの単回持続静脈内投与において、安全性が確認されたと考えております。また、以下のデータのようにPPMX-T003の投与により用量依存的に網状赤血球が減少し、ヘマトクリット値も低下しました。これは、PPMX-T003がTfRを高発現している赤芽球に作用して、網状赤血球が低減したためと考えられます。赤血球低下に伴い減少したヘマトクリット値は1か月間にわたり低下し、その後回復しました。ヘマトクリット値は血液中の赤血球の割合で、真性多血症ではこの値が大きくなります。(網状赤血球とは、骨髄から末梢血に入ったばかりの幼若赤血球で、1日で成熟赤血球になります。骨髄における赤芽球造血を反映しています。)

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現在は真性多血症患者さん6名を対象とする第Ⅰ相試験を実施しており、2023年3月期には3名の患者さんへの投与が行われました。この投与結果につきまして、2023年5月27日に治験責任医師より第118回近畿血液学地方会で中間報告が行われ、3名ともに安全性が確認されるとともに、薬効である赤芽球及び赤血球抑制に用量依存的な効果が認められました。また、副作用は、一過性発熱及びリンパ球減少等で、健常人における試験結果の範囲内であったことが発表されました。 2024年3月期には残る3名の患者さんへの投与を行い、第I相試験を完了させる予定です。
また、「a.特徴」に記載のとおり、ANKLという超稀少疾患の治療薬となる可能性も示され、2023年3月には医師主導治験の治験計画届が治験責任医師から提出されました。被験者が登録され次第投与が開始できる状態にあります。稀少疾患であるため、患者さんへの投与が滞りなく行われるよう、全国7か所の基幹病院での治験実施体制を整備しております。ANKLの有効な治療薬の開発に向けて、治験を推進してまいります。
さらに、急性骨髄性白血病、悪性リンパ腫等の血液がん及び固形がんの治療薬としての作用機構を明確化するため、名古屋大学、群馬大学等と共同で臨床効果に関する創薬研究を推進しております。

c.対象疾患
血液がん

d.ライセンスの状況
本書提出日現在、日本及びグローバルでのライセンスの提携先は決まっておりません。

③ PPMX-T004(新規開発コードに変更予定)
PPMX-T004は、導出先である富士フイルム株式会社の事業方針の変更により、2022年3月に実施権が返還されており、新たな医薬品候補として開発を進めております。
a.特徴
PPMX-T004は、PPMX-T002と同じく、がん細胞表面に存在するカドヘリン3(CDH3)を標的としています。CDH3は、細胞間接着蛋白質として機能すると考えられています。PPMX-T004は、遺伝子改変した抗体に薬物を結合した抗体薬物複合体で、結合した薬物によって、本抗体と結合したがん細胞を殺傷することができるため、患者さんの免疫機能の状態に関わらず、高い効果が期待できます。PPMX-T004では、固形がんの細胞表面に多く発現しているCDH3を標的とし、がん細胞に対し高い内在性を有する抗体を用いています。

b.開発状況
当社において新たな医薬品候補として開発してまいります。

c.対象疾患
CDH3を発現する固形がん

d.ライセンスの状況
2015年9月に、PPMX-T004に関する権利(「研究・開発」及び「製造・販売」等)を富士フイルム株式会社に実施許諾する契約を締結しましたが、富士フイルム株式会社の事業方針の変更により、PPMX-T002と標的が同じであるPPMX-T004につきましても、2022年3月に当該契約を解除しました。今後、より高い有効性が期待される薬剤に変更することも視野に、新たな医薬品候補として開発を進めてまいります。

④ PPMX-T001
中外製薬株式会社 開発コード等:
「GC33」抗グリピカン3ヒト化モノクローナル抗体 一般名:codrituzumab
「ERY974」抗グリピカン3/CD3バイスペシフィック抗体(※34)
2022年6月21日をもって中外製薬株式会社との契約の対象特許が期間満了となるため、同社との契約も同日に満了しました。PPMX-T001が今後の当社の収益に与える影響はなく、当社計画にも見込んでおりません。

⑤ その他
当社は患者組織を利用することで取得した疾患特異的な標的候補を多数保有しております。これら標的群に対する抗体取得を順次進めており、Naked抗体(※36)、Armed抗体等、多様なプラットフォームを用いた自社開発プログラムを推進中です。


用語説明
※1抗体抗原(免疫反応を引き起こす物質)の構造に応じて1対1の関係で特異的に結合する蛋白質。この特異的な結合力を利用して、がんや感染症、疾患を診断・治療する医薬品(分子標的薬)に応用されます。
※2シーズ医薬品の候補となる物質。
※3ハイブリドーマ法抗体を産生する細胞と不死化細胞を融合して、1種類の抗体を多量に産生する技術。免疫方法や細胞の調整といった手法が確立され、ファージディスプレイ法と比較して安価で簡便であることから、広く一般的に行われています。親和性の高い抗体が取得可能ですが、取得した抗体がヒト以外の動物由来のものであるため、医薬品として使用するためには抗体をヒト化する必要があります。また、ファージディスプレイ法と比較して複雑な構造の標的分子に対する抗体の作成が困難です。
※4親和性ある物質が特定の物質と選択的に結合しようとする性質、傾向。
※5ファージ細菌に感染するウイルスの総称。ファージに様々な遺伝子を組み込むことで細菌に人為的に特定の蛋白質を作らせることができます。
抗体ライブラリある特定の手段あるいは目的をもって構成された抗体あるいは抗体遺伝子の集合。
※6スクリーニング様々な指標で目的とする物質を選択する操作。
※7同定一般的に、ある対象が、どのような分子であるのか、何という分子であるのかを定めること。
※8ファージディスプレイ法細菌に感染するウイルスであるファージに抗体分子を表出する技術。標的分子と反応させることで、特異的に結合する抗体クローンを見つけ出すことができます。ハイブリドーマ法と比較してヒト抗体ライブラリから直接ヒト抗体を取得できる利点がある一方、コストが高く、抗体ライブラリ作製に熟練が必要であることに加え、一般的には親和性の高い抗体の取得が困難です。
※9マウス抗体マウスに免疫して得られた抗体。
※10キメラ抗体遺伝子工学的手法によりマウス抗体の可変領域とヒト抗体の定常領域を連結したもの。
※11ヒト化抗体遺伝子工学を用いてマウスで作成した抗体の抗原結合部位をヒト由来の抗体分子に移植して作製された抗体分子で、配列的にキメラ抗体より、ヒト抗体に近いものです。
※12完全ヒト抗体蛋白質配列が全てヒト遺伝子に由来する抗体。他の生物種由来の配列を含まないため、より安全性が高いと考えられています。
※13抗体医薬品抗体の様々な機能を利用した医薬品。抗体はその構造の同一性から、製造技術の確立が進み、バイオ医薬品としての開発が盛んに行われています。
※14上市医薬品として承認され、実際に市販されること。
※15ADCAntibody Drug Conjugate(抗体薬物複合体)の略。強力な細胞傷害活性を持つ薬物が連結されている抗体。ADCは標的を介して細胞内部に取り込まれ、連結している薬物の効果で細胞を殺傷します。
※16IgG型抗体血液中に最も多く存在する抗体の一種。細菌や毒素と結合する能力が高く、血中にとどまる時間が長いという性質があります。
※17抗体配列抗体は蛋白質の一種であり、そのアミノ酸配列の並びのこと。
※18バイオマーカー生体内の生物学的変化を定量的に把握するため、血中蛋白質量等の生体情報を数値化・定量化した指標。疾患の有無や進行度合いの指標になります。


用語説明
※19PTX3Pentraxin3の略。体内の炎症により産生される炎症性蛋白質の一つ。
ELISAEnzyme-Linked Immunosorbent Assay(酵素免疫測定法)の略。試料溶液中に含まれる目的物(一般的には蛋白質)を、これに特異的に結合する抗体で捕捉し、酵素反応に基づく発光、発色をシグナルとして検出することで目的物の濃度を計測する方法。
※20CROContract Research Organization(医薬品開発業務受託機関)の略。製薬企業、医療機関、行政機関等の依頼により、医薬品、医療機器、食品(特定保健用健康食品)、化粧品等の臨床開発及び臨床試験(治験)に関わる業務を、受託、又は労働者派遣等で支援する機関のこと。
※21CMOContract Manufacturing Organization(医薬品製造受託機関)の略。製薬企業から医薬品(治験薬・市販薬を含む)の製造を受託します。
※22特異性抗体が特定の抗原にのみ結合して他とは結合しない性質。
※23ヒトナイーブ抗体ライブラリ人のリンパ球由来抗体遺伝子をもとに構築された抗体配列の集合体。ナイーブとはいまだ特性の抗原に対して刺激を受けていない状態。刺激をうけると特定の抗原に対して特異性と親和性を向上させていきます。
※24エピトープ抗体が標的とする物質の結合領域。
※25免疫寛容体の中で作られる抗体が自分の細胞を攻撃しないように自己抗原に対する抗体をあらかじめ排除する機構。抗体が作られる初期の段階で選別が行われます。
※26ラクダ抗体ラクダに由来する抗体。ヒトと異なり、H鎖のみの単鎖抗体が存在しますが、単鎖抗体は、分子量が小さい、物理的に安定であるなど、ヒト抗体とは異なる利点を持ちます。
※27アジュバント抗原と一緒に投与して、その効果を高めるために使用する物質。
※28プライマー遺伝子を増幅する際の起点として使用されるDNA断片。
※29トランスクリプトーム特定の状況下において細胞中に存在するmRNAの総体。
mRNA:Messenger RNA(伝令RNA)の略。蛋白質に翻訳される遺伝子情報を持つRNA(遺伝子の情報を伝える物質)のこと。
※30リバーストランスクリプトーム特定の状況下での発現産物の総体から発現産物を同定するトランスクリプトームから逆の過程を経ることから想起した造語。
※31Armed抗体放射性同位体や細胞傷害剤等を連結した抗体。連結した物質の種類により、例えばがん細胞への攻撃力を高めるなどが期待できます。
※32QOLQuality Of Lifeの略。日本語では「生活の質」「生命の質」と訳されます。患者さんが、人間らしく満足行く生活が送れているのかという尺度として捉えられます。
※33放射線免疫療法RIT:Radio Immuno Therapy 放射性核種で標識した抗体を患者さんに投与し、これを腫瘍に到達させることで、腫瘍を殺傷する治療法。
※34バイスペシフィック抗体2つの異なる抗原と結合できる抗体。
※35DNAマイクロアレイ細胞内の遺伝子発現量を測定するために、多数のDNA断片をガラス等の基板上に高密度に配列した分析器具。
※36Naked抗体何の修飾も施していない抗体。

沿革関係会社の状況


このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E35510] S100R2V6)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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