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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100D9WP

有価証券報告書抜粋 ブライトパス・バイオ株式会社 事業の内容 (2018年3月期)


沿革メニュー関係会社の状況


当社グループは、新規の「がん免疫治療薬」の開発を行い、現在臨床試験段階にあるパイプラインを有する創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴などについては以下のとおりであります。

(1) 事業モデル

当社グループの基本的な事業モデルは、がん免疫治療薬候補品を自社創製するか、もしくは外部から開発初期の段階で導入し開発を進め、後期臨床試験からは国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスし開発を委ね、そのライセンス先製薬会社からライセンス収入を得るものです。
医薬品開発は一般的に10年以上かかりますが、この事業モデルでは、各国の当局の製造販売承認を得て上市される前の開発段階から、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したいくつかのマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合となる販売ロイヤリティ収入等)を得ることができます。製薬会社へライセンス後も開発協力金を得て開発を継続することもあります。
当社グループでは、がん免疫療治療薬を開発領域とし、がんペプチド※1ワクチン、T細胞※2療法をはじめとする細胞医薬品、免疫調整因子抗体など多様なモダリティ(医薬品形態)のパイプラインについて、原則として探索研究から早期臨床試験までを手掛け、後期臨床試験からは国内外の製薬会社へ導出し、契約一時金から始まるライセンス収入を得ていきます。このような開発プロジェクトを段階的に複数並行で進めることにより、投資早期回収と黒字転換後の継続的な収入実現を図ります。


(2) 開発中のがん免疫治療薬の特徴

がん免疫療法は、がん免疫機構に関わる免疫細胞やペプチド・タンパク質分子を利用して、すべての人が備えもつ免疫活性を亢進することによって、がん細胞の死滅、再発・転移予防、進行抑制効果を発揮します。腫瘍を切除する外科的手術や、放射線でがん細胞を殺傷する放射線療法、低分子化合物による化学療法(いわゆる抗がん剤)とは作用機序が異なるため、これらの既存の治療法で効果が得られないがん患者を対象にすることが可能になり、手術・放射線療法・化学療法に次ぐ「第4の治療法」となることが期待されています。
近年免疫チェックポイント阻害剤※3に代表されるがん免疫療法は、がん治療に革新をもたらし、標準療法を大きく変えつつあります。一方で、今ある免疫チェックポイント阻害剤単剤で治療効果が出せる領域にも限りがあることもわかってきており、CAR-T※4(キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞)といった新しいコンセプトのがん免疫治療薬や、他の新しいがん免疫治療薬を組み合わせる複合的がん免疫療法に、更なる治療効果の期待が寄せられています。


■当社の事業領域

免疫サイクル(免疫機構ががん細胞を殺傷する仕組み)と
各プロセスで働きかける当社のがん免疫治療薬パイプライン


(3) 開発パイプライン

当社グループにおける現在のパイプラインは、以下の通りです。
・ HLA*A24※5拘束性ペプチドワクチンITK-1(前立腺がん※6)
・ HLA*A2拘束性ペプチドワクチンGRN-1201(メラノーマ/非小細胞肺がん)
・ ネオアンチゲン※7(遺伝子変異抗原)ペプチドワクチンGRN-1301(非小細胞肺がん)
・ iPS細胞由来の再生T細胞療法(EBウイルス※8由来リンパ腫)及び再生NKT※9細胞療法(導入オプション)(頭頸部がん)

ITK-1 (前立腺がん)
・ 患者の免疫応答に最適ながんペプチドワクチンを選択投与
・ 富士フイルム株式会社へライセンスアウト
・ 国内で進行性の去勢抵抗性前立腺がん※10を対象とする第Ⅲ相臨床試験は、2018年5月の開鍵(キーオープン)の結果、主要評価項目を達成できず

がんペプチドワクチンITK-1は、富士フイルム株式会社へ導出済みで、2013年6月より日本国内において進行性の去勢抵抗性前立腺がんを対象とするプラセボ対照第Ⅲ相二重盲検比較試験が実施されておりましたが、2018年5月の開鍵(キーオープン)の結果、主要評価項目を達成することが出来ませんでした。今後のITK-1の方針については、導出先の富士フイルム株式会社が検討していく方針です。


GRN-1201 (メラノーマ/非小細胞肺がん)
・ グローバル向けがんペプチドワクチン
・ 米国でメラノーマ(悪性黒色腫)を対象とする第Ⅰ相臨床試験、及び非小細胞がんを対象とした免疫チェックポイント阻害剤との併用による第Ⅱ相臨床試験を実施中

「複合的がん免疫療法」を創薬コンセプトとするGRN-1201は、欧米人が多く有するA2型のHLA(HLA*A02)に結合するペプチドで構成される、米国や欧州を始めグローバルに展開できるがんペプチドワクチンです。ワクチンに用いられている抗原ペプチドは、がん患者から得られた腫瘍組織からcDNA(腫瘍細胞に発現するタンパク質情報を持つメッセンジャーRNA(mRNA)※11)から逆転写酵素※12を用いて合成された相補的DNAライブラリを作製し、そのcDNAライブラリの中からCTL※13の細胞株(がん患者から樹立された実際にがん細胞を攻撃することができるCTLの細胞株)が認識する抗原タンパク質を同定し、さらにCTLにより認識される9-10個のアミノ酸からなるペプチド分子を同定することによって見つけられました。実際のがん患者のCTLからより高いがん細胞殺傷力を引き出すペプチド抗原が厳選され、さらに久留米大学における臨床研究で実際にがん患者に投与され、高い免疫原性と安全性を示唆するデータが得られているものです。
これらの生体由来のがん抗原※14タンパク質から見出されたペプチドは、そのアミノ酸配列のまま化学合成されたペプチド製剤となります。人の体内に存在するものと同じ物質であるため、従来の抗がん剤(化学療法剤)に比べて安全性が高く、患者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)※15を維持しながら、生存期間を延長させることが可能になると期待されています。また、これらのペプチドは化学合成で製造されることから、動物由来、血液由来のウイルス等の混入はありません。
CTLはHLAと抗原ペプチドとの結合を介して、ペプチドを攻撃対象の目印として記憶しますが、このHLAにも個人差、人種差があります。日本人に最も多いHLA-A24は日本人全体の60%、欧米ではHLA-A2が全体の50%を占めます。GRN-1201はHLA-A2に結合するペプチドで構成されているため、欧米においての展開を想定しています。
GRN-1201は、第1適応をメラノーマ(悪性黒色腫)として、米国FDA(米国食品医薬品局)へ2015年10月に治験申請(IND)を行い、現在米国での第Ⅰ相臨床試験を実施中です。また、2017年1月から、同じく米国で非小細胞肺がんを対象に、複合的がん免疫治療法としての展開を見据えて免疫チェックポイント阻害剤との併用による第Ⅱ相臨床試験を実施しています。
免疫チェックポイント阻害剤は、がん治療の歴史に大きな変革をもたらし、様々ながん種で治療効果を示しましたが、単剤ではその奏効率は20-30%と言われております。現在治療効果の得られない症例を効くように変える方法も含めた、治療効果を改善する複合的がん免疫療法が期待されており、単純に既存の化学療法、分子標的薬、放射線療法などの標準治療との併用に加えて、抗腫瘍T細胞応答に関与する免疫ネットワークの重要な調節ポイントを複数制御する方法が検討されております。当社はT細胞の抗腫瘍効果を加速させるがんペプチドワクチンの開発に長年の経験を有しており、免疫抑制状態を解除することを作用機序とする免疫チェックポイント阻害剤との相乗効果を狙った創薬コンセプトのもと、グローバルに注目を集める複合的がん免疫療法の一つとして臨床開発を進めております。


■GRN-1201と免疫チェックポイント阻害剤の併用メカニズム




GRN-1301 (非小細胞肺がん)

・ネオアンチゲン(遺伝子変異抗原)ペプチドワクチン

GRN-1301は、2016年12月に、非小細胞肺がんを適応症とするネオアンチゲンペプチドワクチンを開発するべく、地方独立行政法人 神奈川県立病院機構が有する特許「上皮成長因子受容体(EGFR)のT790M点突然変異に由来する抗原ペプチド」の譲渡を受けました(EGFRは、細胞の増殖や成長を制御する上皮成長因子 (Epidermal Growth Factor) と結合し、シグナル伝達を行う受容体(Receptor))。肺がんは、米国では年間約22万人、日本では年間約13万人が新たに罹患すると報告されていますが、その内一部の患者は、治療の過程で既存の治療薬であるEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)に対し耐性を生じている状態でした。しかし、これらの患者の約6割にEGFR-T790M点突然変異(EGFRの790番目のアミノ酸がスレオニンからメチオニンへ遺伝子変異すること)という遺伝子変異が生じていることが分かっており、当社グループは、このEGFR-TKI耐性遺伝子変異を抗原とするペプチドワクチンの開発を行っています。


iPS-T (EBウイルス※28由来リンパ腫)
・iPS細胞再生T細胞療法
・再生医療のがん免疫療法分野における世界初の臨床応用

2016年12月に、株式会社アドバンスト・イミュノセラピーを子会社化し、中内啓光東京大学医科学研究所教授兼スタンフォード大学教授らの創製技術を用いたiPS細胞由来再生T細胞療法の研究開発を開始しました。同社は、iPS技術を用いてがん細胞を攻撃するT細胞を再生させる(若返らせる)ことにより、がん免疫療法においてこれまで課題とされてきたT細胞の疲弊と、様々な過程で起こりうる副作用を回避する独自の技術を保有しております。当初はコンセプトを示しやすいウイルス性血液がんの一種であるEBウイルス由来リンパ腫を適応症としております。



iPS-NKT (頭頸部がん)
・iPS細胞由来再生NKT細胞療法
・多面的な抗腫瘍効果を有する免疫細胞(自然免疫の活性/獲得免疫の誘導/免疫抑制環境の改善)
・理化学研究所との導入オプション付共同研究

NKT細胞由来iPS細胞から再分化誘導したNKT細胞を用いた新規他家がん免疫療法です。がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつが、体内には微量にしか存在しない免疫細胞であるNKT細胞を、iPS細胞の高い増殖性を活かしてがん免疫療法へ応用することを試みるものです。
当社は、2018年3月に、国立研究開発法人理化学研究所統合生命医科学研究センターが進める細胞医薬の技術開発と臨床応用に向けたプロジェクトに参画しました。本プロジェクトは、理化学研究所が中心となって日本医療研究開発機構(AMED)再生医療実現拠点ネットワークプログラム疾患・組織別実用化研究拠点(拠点B)に採択された「NKT細胞再生によるがん免疫治療技術開発拠点」プロジェクト及び理研創薬・医療技術基盤プログラムのプロジェクトとして進められているもので、頭頸部がんを対象とする医師主導治験が2019年度中をめどに開始される計画です。理化学研究所からiPS-NKT細胞療法の独占的開発製造販売ライセンスのオプション権を取得し、世界でも初となるiPS-NKT細胞療法の臨床応用実現にむけ、本医師主導治験を全面的に後押しいたします。

■iPS-NKTの特徴



その他
各研究機関(国立研究開発法人 国立がん研究センター、国立大学法人 東京大学、地方独立行政法人 神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター及び国立大学法人 三重大学)等との共同研究でネオアンチゲンをターゲットとする完全個別化ワクチン※16の創製を目指してまいります。
本プロジェクトは、患者ごとに異なるネオアンチゲンを、一人ひとりに合わせてがん免疫療法として用いる完全個別対応型がん治療薬の創製を目指しております。個々の患者の免疫応答、がん細胞、がん組織の環境などの特性を解析したうえで、個々の患者に最適ながん免疫療法を提供する Personalized Medicine(個別化医療)の試みが始まっておりますが、本プロジェクトによって、できるだけ一つで多くの人に使える汎用品としての医薬から、個人差に対応する完全個別化を追求する次世代の医薬を目指してまいります。


▲免疫チェックポイント阻害剤は、これまで遺伝子変異の多いがん種で良い臨床成績を得ており、これは、ネオアンチゲンががん免疫療法において有効なターゲットとなっている可能性を示唆している

(4) 許認可、免許及び登録等の状況について

a. 許認可、免許及び登録、行政指導等
医薬品販売業許可(福岡県)を2013年5月27日付で得ています。
医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律;
日本では、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、2014年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。

b. 知的財産権の状況
知財は、個別のペプチドの物質特許※17を押さえ、その上で複数ペプチド投与を前提とするためその組み合わせの臨床上の有用性を、実際の臨床試験のデータを実施例として特許化する2層構造が骨格となります。
ITK-1を構成するペプチド物質及び関連特許は、独占的に富士フイルム株式会社に使用許諾されています。
GRN-1201については、物質特許を含め当社グループが特許を有しております。
その他の特許につきましては、地方独立行政法人 神奈川県立病院機構より、GRN-1301に係る上皮成長因子受容体(EGFR)の T790M 点突然変異に由来する抗原ペプチド及び当該ペプチドを含むがんを処置するための薬剤に関する特許の譲渡を受けております。また、国立大学法人 東京大学より、iPS-Tに係る抗原特異的T細胞の製造方法及び、多能性幹細胞を用いた免疫機能再建法に関する特許の実施許諾を得ております。



発明の名称特許登録番号出願国
(登録国)
権利者
上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)由来ペプチド4579836日本当社
7655751米国
2554195カナダ
腫瘍抗原
7465452米国当社
1207199欧州(注)
2381348カナダ
4051602日本
4097178日本
4035845日本
4624377日本
CD4陽性T細胞に認識されるペプチド4443202日本当社
副甲状腺ホルモン関連タンパク質のHLA-A24または-A2結合ペプチド4579581日本当社
新規な腫瘍抗原タンパク質SART-3及びその腫瘍抗原ペプチド4436977日本当社
4904384日本
7541428米国
7968676米国
8097697米国
8563684米国
1116791欧州(注)
2340888カナダ
99812596.2中国
660367韓国
がんペプチドワクチン(出願中)米国当社
カナダ
2591799欧州(注)
5706895日本
5980303日本

(注)欧州については、ドイツ、スペイン、フランス、英国、イタリアが含まれております。

[用語解説]

※1(ペプチド)
アミノ酸が複数個つながったもの。タンパク質の断片。

※2(T細胞)
白血球のうち、リンパ球と称される細胞の一種で、骨髄で産生され胸腺でリンパ球へと分化される免疫細胞のこと。胸腺(Thymus)の頭文字をとってT細胞と呼ばれます。生体内に侵入した異物から人体を守る免疫応答システムの司令塔の働きを有し、マクロファージや細胞傷害性T細胞(CTL)などの免疫実働細胞に指示・命令を出します。

※3(免疫チェックポイント阻害剤)
がん細胞がもつ、免疫の働きにブレーキをかけて免疫細胞の攻撃から逃れる仕組みを阻止するため、免疫チェックポイントと呼ばれる分子を阻害してブレーキを解除する抗体医薬品を指します。

※4(CAR-T)
Chimeric Antigen Receptor T-cell Therapy:キメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞療法
ある特定のがんに対する、キメラ抗原受容体の遺伝子を患者のT細胞という免疫細胞に導入し、その遺伝子導入されたT細胞を体外で増やして患者に戻すという治療法。ヒト白血球抗原(HLA)の型に依存せず、多くの患者に適用することができるといった特徴がある。

※5(HLA)
HLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)は、体のほとんど全ての細胞表面で発現がみられる、免疫機構において重要なタンパク質で、細菌やウイルスなどの病原体の排除やがん細胞の拒絶、臓器移植の際の拒絶反応などに関与しており「主要組織適合遺伝子複合体」とも呼ばれています。
HLAはがん細胞でも細胞表面上に発現しており、がんワクチンの作用機序においては、がん細胞内でがん抗原タンパクが分解されて生成されたペプチドと結合して細胞表面に移動し、CTLにがん細胞として認識させるように機能します。
HLAは自己と非自己(他)を区別する「自他認識のマーカー」であり、非常に多様な「他(た)」を自己と区別するために、非常に多様な型があります。ペプチドはHLAの特定の型に結合し、型が合わない場合は結合しません。

※6(前立腺がん)
前立腺がんとは、前立腺(外腺)に発生する病気、がんの一つです。前立腺は男性の臓器で、膀胱の下で尿道をとり囲むようにしてあります。前立腺がんは50歳代から急速に増え始め、発生の平均年齢が70歳といわれるくらい高齢の男性にみられるがんです。前立腺がんは加齢による男性ホルモンのバランスの崩れや、前立腺の慢性的炎症、食生活や生活習慣などの要因が加わって発生すると言われています。前立腺がんは高齢者で発症することから、高齢化が進む日本を含む先進国で罹患率が増加しており、2011年の罹患者数(年間の新規診断数)は7万8,728人であり、男性では胃がんに次いで2番目に多いがんです。前立腺がんによる死亡数も年々増加し、2013年における死亡数は1万1,560人であり、この20年間で約3倍に増加しています(出所:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター)。

※7(ネオアンチゲン:Neoantigen)
がん細胞に独自の遺伝子異常が起きた際に生じる、遺伝子変異(アミノ酸変異)を含む抗原を指します。個々の患者のがん細胞に生じた独自の遺伝子変異によって発現されるようになったがん特異的な抗原で、正常な細胞には存在しません。免疫系から「非自己」として認識されるネオアンチゲンを標的とすることで、がん細胞を殺傷する免疫を効率よく誘導できるようになることが期待されています。

※8(EBウイルス)
エプスタイン・バール・ウイルス。EBウイルスはヘルペスウイルスに属し、ほとんどの人が感染しており、その一部がヒトに腫瘍を発生させることで知られます。1964 年にEpsteinとBarrによって発見されたヒトの腫瘍から見つかった最初のウイルスです。


※9(NKT細胞)
NKT細胞は、がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に、他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつ免疫細胞のこと。活性化すると、多様なサイトカインといわれる物質を産生し、自然免疫系に属するNK細胞の活性化と樹状細胞の成熟化を促す。成熟した樹状細胞は、更に獲得免疫系に属するキラーT細胞を増殖・活性化させることで、相乗的に抗腫瘍効果が高まる。また、自然免疫系を同時に活性化させることで、T細胞では殺傷できないMHC陰性のがん細胞に対しても殺傷能を持つ特徴がある。

※10(去勢抵抗性前立腺がん)
ホルモン療法及び去勢を行っても効かなくなった状態の前立腺がん。前立腺がんの増殖や進行には男性ホルモンであるアンドロゲンとその受容体であり、転写因子として機能するアンドロゲン受容体が重要な役割を果たすことがわかっています。初めは男性ホルモンを抑える内分泌療法(ホルモン療法)が奏功するものの、暫くして再燃を繰り返した末に奏功しなくなり、「去勢抵抗性」状態になります。

※11(RNA)
リボ核酸(ribonucleic acid)の略称。DNAも核酸であるが、DNAは核の中で様々な情報を蓄積・保存をする役割があるのに対し、RNAはその情報の一時的な処理を行うという役割があります。
生体内の働き・構造から、翻訳の鋳型となる伝令RNA(メッセンジャーRNA, mRNA)、リボソームの主要構成成分であり細胞内RNAの最多成分であるリボソームRNA(rRNA)などに分類されます。
この中でメッセンジャーRNAは、DNAからタンパク質を合成するための塩基配列情報を持ったRNAで、mRNAと表記されます。タンパク質の合成は、DNAからタンパク質を合成するために必要な塩基配列情報をコピーしたmRNAが合成され、このmRNAの塩基配列情報に従ってタンパク質が合成されます。

※12(逆転写酵素)
RNA依存性DNAポリメラーゼ (RNA-dependent DNA polymerase) のこと。逆転写反応を触媒する酵素。この酵素は一本鎖RNAを鋳型としてDNAを合成(逆転写)するもので、レトロウイルスの増殖に必須の因子として発見されました。逆転写酵素は相補的DNA(cDNA)の合成に利用され(逆転写反応)、遺伝子工学や分子生物学的実験には必須のツールとなっています。

※13(細胞傷害性T細胞‐CTL)
CTLはCytotoxic T Lymphocyteの略語で、リンパ球のうちのT細胞の一種。細胞表面のT細胞受容体を通じて、樹状細胞等の抗原提示細胞から提示された異物を特異的に認識し、同じくその異物を表面上に提示しているウイルス感染細胞やがん細胞を認識し、細胞傷害物質のサイトカインであるパーフォリンやグランザイムなどを放出することで殺傷することができます。以前はキラーT細胞とも呼ばれていました。

※14(がん抗原)
細胞傷害性T細胞等の免疫細胞が、正常細胞とがん細胞を見分けるための目印になるタンパク質。

※15(QOL=Quality of Life)
医療現場で、病気を治療することだけでなく、患者の生活機能ができるだけ保たれ、人間らしい生活を続けられること。「生活の質」、人間らしい充実した生活、暮らしのレベル。医療分野においては、がん等の長期療養を要する疾患、ならびに消耗の激しい疾患や進行性の疾患において、患者の体へのダメージの大きい治療を継続することによって、患者が自らの理想とする生き方、もしくは社会的にみて「人間らしい生活」と考える生活が実現できない状況を「QOL (生活の質)が低下する」と呼びます。

※16(完全個別化ワクチン)
個々の患者のがん細胞にあるネオアンチゲンを探索し、これに対するオーダーメイドのがんワクチン。海外で臨床試験が行われている。

※17(物質特許)
新規に生成された医薬品の成分など、一定の機能や効果を持った物質そのものに対して付与される特許権。その特許化された物質については、特許権者又は実施許諾者以外の実施(使用、生産、譲渡等)が制限されることにより、特許権者又は実施許諾者の実施が保護されることになります。

沿革関係会社の状況


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