有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S1007WC7
古河電気工業株式会社 研究開発活動 (2016年3月期)
事業等のリスクメニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当社グループは、新商品、新技術開発による新規事業の創出と展開を図るべく、国内の当社4研究所(コア技術融合研究所、先端技術研究所、自動車・エレクトロニクス研究所、情報通信・エネルギー研究所)とおよび海外のOFS Laboratories, LLC (米国)、Furukawa Electric Institute of Technology Ltd.(ハンガリー)、SuperPower Inc.(米国)を中心とした研究体制を有し、積極的に研究開発を進めております。
当連結会計年度における研究開発費は16,845百万円であり、主な成果等は次のとおりであります。
(1)情報通信部門
①次世代CDC-ROADMシステムの主要部品であるマルチキャストスイッチ(MCS)について、小型化、低消費電力化を実現すべく、比屈折率差5%以上となる高Δ石英導波路技術を適用したMCSチップの開発を進め、試作品の特性評価を実施しております。②次世代の400G・1Tbps大容量光デジタルコヒーレント伝送向け制御回路付信号光源について、更なる高出力化、狭線幅化を実現すべく、構成要素である半導体レーザチップ、パッケージ技術、制御回路の開発および特性評価を進めております。
③信号ルート切替え装置の主要部品である波長選択スイッチ(WSS)について、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)プロジェクトからの委託研究「エラスティック光アグリゲーションネットワークの研究開発」にて最大1x93chの多ポート低損失の帯域可変WSSの開発に成功いたしました。WSSはサービス毎に性質の異なる通信トラフィックを効率よく集約し、用途に合わせデータ容量を伸縮するエラスティック光アグリゲーションネットワークに不可欠の部品であり、帯域可変特性やスイッチング特性の評価および実証試験を進めております。
④将来の超大容量光通信における空間多重技術として、NICTプロジェクトからの委託研究「革新的光通信インフラの研究開発」および「革新的光ファイバの実用化に向けた研究開発」も活用しつつ、1本の光ファイバに複数(7個あるいは19個)のコアを含むマルチコアファイバ、およびその周辺技術としてマルチコア光増幅、マルチコア光接続技術の開発に取り組み、長距離幹線系、加入者アクセス系、光インターコネクションへの適用に向けた技術検討を進めております。
⑤データセンターの低消費電力化や高速化を実現する光インターコネクション分野では、アクティブオプティカルケーブル(AOC)搭載用に開発した小型低消費電力光エンジンについて、次期規格である伝送速度28Gbpsでの製品化に向けた評価を引き続き行っております。また、機器内ボードを接続する高密度光配線用接続部材の開発を進め、ユーザーにおいてサンプル評価を継続して実施しております。
⑥開発したピーク光出力6kWのファイバレーザ発振機を用いて、加工試験実施による製品技術検討とアプリケーション開発を行うと共に、ユーザーにおける加工評価を進めております。
以上、当該事業に係る研究開発費は7,344百万円であります。
(2)エネルギー・産業機材部門
①内閣府が推進する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の課題の一つである革新的構造材料推進委員会に参画し、セルロースナノファイバー(CNF)強化樹脂の高効率製造法の開発を継続して進めております。②イットリウム系(Y系)高温超電導電力ケーブルについては、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託プロジェクト「次世代送電システムの安全性・信頼性に係る実証研究」に参画し、ケーブルを破壊した時の周囲の環境影響について、評価と検討を行っております。
③Y系超電導薄膜を応用した超電導応用機器については、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の委託プロジェクト「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業」に参画しており、高磁場特性に優れたY系超電導線材を活用し、超電導MRI装置などに用いられる高安定磁場コイルシステム基盤技術の研究開発を進めております。
④NEDOの助成プロジェクト「安全・低コスト大規模蓄電システム技術開発」にて公益財団法人鉄道総合技術研究所と共同で開発したフライホイール用高温超電導軸受を、回転運動と電力の相互変換により電力の貯蔵を可能とするフライホイール蓄電システムに組み込んだうえで、大規模太陽光発電所と電力系統に連係させる実証試験を開始しております。
⑤経済産業省の委託事業「浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業」に受託コンソーシアムの一員として参画し、浮体式設備の動きや波・潮流に追従して水中で浮遊する浮体式風力発電用ライザーケーブルの開発を担当しております。2015年に、7MW用風車の2期工事に向けて、22kVの大容量ライザーケーブルの施工を完了いたしました。
以上、当該事業に係る研究開発費は1,617百万円であります。
(3)電装・エレクトロニクス部門
①アルミ電線を使用したワイヤハーネスについては、車両軽量化の要請を背景とした更なる適用部位拡大に向け、高強度アルミ電線の開発や防食端子などの関連技術開発を継続して進めております。②自動車用バッテリーセンサーについては、バッテリー電力を管理することにより自動車のエネルギー利用効率化への貢献が期待されており、拡販および受注活動とともに、高機能化に向けた開発を進めております。また、今後予測される車載電子機器の増加・電動化に対して、電源品質を維持する電源マネージメントシステムに関連した製品の開発を継続して実施しております。
③先進運転支援システム(ADAS)を支える計測技術として、パルス方式により人・複数物標などの対象物を正確に認識可能な24GHz帯周辺監視レーダを開発しております。国内唯一のメーカーとなるべく、プロジェクトチームを発足させ、開発を加速しております。
④ヒートパイプ技術を活用した熱マネジメント(均熱・放熱)技術システムについては、HEV(ハイブリッド電気自動車)など次世代自動車への搭載に向けて、リチウムイオンバッテリーやインバータなどの発熱量の増大に対応するべく開発を継続して進めております。
⑤産業用・車載用モーターに使用される巻線については高効率化を、スマートフォンをはじめとする電子部品分野で使用される高機能巻線については省スペース化を志向した研究開発を行っております。
⑥非接触の電力給電方法として期待される、電界方式のワイヤレス給電システムの開発を継続して進めております。
⑦GaN(窒化ガリウム)パワーデバイスは、出資を行った同製品市場の有力事業者であるTransphorm, Inc.(米国)との相互連携を図り、継続して両社のGaNパワーデバイス応用製品群の強化、育成を進めております。
⑧NEDOの「低炭素社会を実現する炭素材料実用化プロジェクト」助成事業にて採択された、カーボンナノチューブを用いた超軽量電線の開発を進めております。
⑨研究開発の効率化のため、シミュレーション技術等の有効活用を推進しております。ワイヤハーネス開発においては構造シミュレーション、電子機器の開発においては振動・熱流体シミュレーション、レーダ開発においては電磁界シミュレーションを活用したほか、アルゴリズム構築の際にモデルベース開発などを行い、試作回数・費用の削減や設計の最適化を引き続き行っております。
以上、当該事業に係る研究開発費は4,263百万円であります。
(4)金属部門
①自動車の次期ワイヤハーネス向けに高強度アルミ電線を開発し、顧客提案および製品化を進めております。②銅ナノ粒子を用いたエレクトロニクス向け接合・配線材料の開発を引き続き行い、顧客によるサンプル評価を進めております。
③リチウムイオン電池用電解銅箔について、顧客の要求特性を満たすための銅箔設計指針を構築し、これを活用した設計を行っております。
以上、当該事業に係る研究開発費は1,157百万円であります。
(5)新事業分野に関するもの等(サービス・開発等部門)
主に新事業分野に関するものであります。米国研究子会社SuperPower Inc.において、Y系高温超電導線材の研究開発を行い、特に超高磁場超電導マグネット開発に貢献しております。同社の超電導線材は、米国フロリダ州タラハシーの国立高磁場研究所(NHMFL)で開発の超電導試験マグネットシステムの世界最高磁場(27T)を達成したほか、当社参加の公益財団法人鉄道総合技術研究所のプロジェクトにおいて世界最大の超電導フライホイール電力貯蔵システム開発に使用されました。
以上、当該事業に係る研究開発費は2,462百万円であります。
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