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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100AQEO

有価証券報告書抜粋 戸田建設株式会社 研究開発活動 (2017年3月期)


経営上の重要な契約等メニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

当社は、社会、顧客及び社内各部門のニーズやCSRに的確に応えるため、技術開発センターを中心に技術部門の総力を結集して、基礎的研究から新製品開発までの幅広い研究開発活動を行っている。特に重要なテーマについては「技術研究開発プロジェクト」を起こし、全社的な取り組みで短期間に開発を行い着実に成果をあげている。また、西松建設㈱との共同研究をはじめ、公的機関、大学、異業種企業、同業他社との技術交流、共同開発を積極的に推進して、多様な分野での研究開発の効率化を図っている。
当連結会計年度における研究開発費の総額は1,135百万円であり、セグメントごとの研究開発活動は以下のとおりである。

(建築事業及び土木事業)

(1)建築環境関連技術
建設工事施工中に発生するCO2排出量を削減する活動を「低炭素施工システム(TO-MINICA)」と称し、全国の作業所で活用している。2014年にTO-MINICAをWeb版へと改良を行った。
この活動の展開により、2016年度の作業所におけるCO2排出量は68,719t-CO2(基準年比64.27%減)、 CO2排出量原単位は17.52t-CO2/億円(基準年比38.6%減)となった。2020年に1990年比CO2排出量、CO2排出量原単位共に40%削減する目標を掲げて活動中である。
このような環境への取り組みを評価され、当社は環境評価を行う国際的な非営利団体CDP(本部:ロンドン)から、最高のランクである「TheClimateAList2016」企業として認定された。A Listに選ばれた企業は全世界で193社、日本では22社のみであり、当社が実施している環境への取り組みが、高く評価された証である。
ZEB(ネット・ゼロエネルギー・ビル)の実現に向けて、自然換気や昼光をはじめとする再生可能エネルギー利用や、潜顕分離空調など省エネに寄与できる設備の研究開発を進めている。
技術研究所の「室内環境比較実験室」等を活用し、省エネルギーを図りながら快適性など環境の品質を向上に資する技術開発に取り組んでいる。
室内環境に関する技術として、知的生産性や健康性を向上する「スマート・オフィス・ライティングシステム」を開発し、複数の実建物に採用された。また、国土技術政策総合研究所からの受託研究などにより、室内環境が健康や生産性など人に与える影響についての研究・開発を進めている。
省エネルギー関連技術として、太陽電池による発電電力を直流のまま蓄電・供給し、省エネルギーやピークシフトの他、BCPにも対応できる「直流給電システム」を技術研究所に試験導入しているが、さらに燃料電池を追加導入し検証を行っている。
また、環境配慮建築に対する各種要素技術を総合的に実験・検証するため環境技術実証棟を建設した。

(2)再生可能エネルギー関連技術
鋼とコンクリートを複合利用した浮体式洋上プラットフォームの技術を共同開発し、風力発電に応用、環境省による「浮体式洋上風力発電実証事業委託業務」を受託し、2013年度には実証機(2MW)の実海域設置を成功させ、2015年度に予定通り実証事業を終了した。2016年度には日本初の実用化を実現し、発電事業として運転データを収集し、制御、設計技術に反映している。また、日本初の浮体式商用ウィンドファーム実現のため、コスト削減のための量産化や係留、調査、O&Mなど、普及拡大に向けた技術開発を継続している。

(3)生物多様性関連技術
その地域における生物や植生の特性を踏まえて緑化設計の妥当性を評価できる「生物多様性評価システム」を開発し、活用している。
また、研究所敷地は、関東・水と緑のネットワーク拠点百選にも選出されており、研究所内における施設整備に合わせて、希少種を中心とした移植等による保護・保全手法の研究に取り組んでいる。

(4)農業関連技術
茨城県常総市内に農業実証ハウス「TODA農房」を建設し、主に施設園芸農業および園芸ハウス建設に関する技術開発への取り組みを開始した。

(5)放射性廃棄物処分の関連技術
放射性廃棄物処分関連技術としては、ベントナイトに関する技術の開発、地下深部での地震動測定と耐震性評価、海外情報調査、新規制基準制定に伴う学会標準改定の業務、原子力発電所の廃炉に関する調査などを実施した。

(6)超高層建物構工法関連技術
超高層RC造では、SuperHRCシステムを積極的に採用し、建設中を含めて延べ57棟に適用している。2016年2月に竣工した55階建て超高層集合住宅では設計基準強度200N/mm2の超高強度コンクリートを採用した。
コンクリート充填鋼管(CFT)造では、高強度のコンクリートを充填した鋼管に鉄筋を内蔵したSuperCFT造を開発し、構造評定を取得した。設計施工で高さ178mの複合ビルや設計中の案件を含めて10棟の実績がある。
国土交通省の建築基準整備促進事業および総合技術開発プロジェクト等の共同研究にも参画し、構造設計・施工技術の向上を図っている。

(7)免震・制振・BCP関連技術
精密生産施設の微振動対策技術では、弾性すべり支承と剛すべり支承を用いた微振動対応型の免震工法に加え、新たに高層住宅の風対策や生産施設の微振動対策用にオイルダンパー付き弾性すべり支承を開発し、2016年2月に生産施設に適用している。
また、地震の揺れに応じて減衰係数を切り換え、小中地震から大地震まで幅広い範囲で揺れを抑えることが可能な「セミアクティブ免振技術」、電源を用いないで減衰のON/OFFを切り換える「自己復元型トリガー機構」を開発している。
さらに、東日本大震災の教訓を受け、BCM対策の核となるソリューション技術として建物の損傷を迅速かつ適格に評価可能な「ユレかんち」を展開している。「ユレかんち」はIoT技術を実装したローコストなシステムであり、事務所、工場等の複数建物の一括監視を可能にしている。

(8)天井脱落対策技術
在来工法天井の落下・脱落防止対策として「天井耐震クリップ工法」を開発し、技術審査証明を取得した。また、特に重要な施設のBCM対策として「制震天井システム」や特定天井にも適用可能な高い耐震性能を有する「ペアロッククリップ」を開発した。ペアロッククリップは2016年9月より戸田建設の施工現場で標準的に採用されている。
さらに、特定天井内に多数設置される斜め材を集約して鉄骨フレームに置換できる「高耐震天井工法」を開発している。

(9)基礎・地盤関連技術
場所打ちコンクリート杭について、杭中間部に拡径部を設けることにより、常時および地震時の支持力及び引抜き抵抗を向上させ基礎構造の減量化・合理化をはかるための「Me-A工法」を開発し、高層建物への適用など水平展開を進めている。
杭基礎の安全性向上および施工性向上のため,鋼管コンクリート杭の杭頭接合部に角型の鋼板プレートを設置して構造性能および配筋の納まりを向上させた「鋼板補強型杭頭接合工法(TO-SPCap工法)」を開発し,日本建築総合試験所の技術性能証明を取得した。

(10)建築仕上げ材料関連技術
高耐久性床、抗菌・防かび床、帯電防止床を開発し、実用化している。また、臭気対策としてゼオライト消臭塗料(オドキャッチャー)、抗菌対策として光触媒技術を利用した抗菌コーティング材を開発し、病院等に展開している。
また、木質材料の利用拡大を目指し、耐久性評価などの研究開発を進めている。

(11)建築生産システム関連技術
杭工事においては、施工精度をリアルタイムで管理する「杭芯位置誘導管理システム」、「ケーシング鉛直精度管理システム」を開発・活用している。水の凍結膨張圧を利用し、現場造成杭の余盛りコンクリートを低騒音、低振動、無粉塵で杭頭処理を行うことができる「凍結杭頭処理工法」を開発し、実物件に適用している。
鉄骨工事においては、情報化施工技術の一つとして複数の鉄骨柱の位置計測と建入れ調整を自動で行う「鉄骨柱の自動計測・建入れ調整システム」を開発し、多数の現場で活用している。
工事振動対策として、おもり(重量物)を地表面に置くことにより,工事振動の伝搬を抑制することができる「GMD工法(GroundMassDamper)」を開発し、実物件に適用している。
リニューアル・耐震補強工事においては、居付きの耐震補強を可能にする「鋼管コッター工法」を用いた耐震補強工法のメニューを拡充し、多くの実績を積んでいる。

(12)ICT生産管理関連技術
情報化技術に関しては、「ICタグを利用した入退場管理システム」、「作業所内物流管理システム」のほか、品質向上のためのタブレット端末やウェアラブル端末の適用や、「加速度センサーを用いたコンクリート打重ね時間管理ツール」や「CFT打設管理システム」を展開し、作業所における施工管理業務の効率化を図っている。

(13)音響・遮音関連技術
ホールなどの大空間における音楽・講演等をより快適に聴くことのできる空間を提供する室内音響関連技術、交通騒音や隣室騒音等の聞きたくない音を低減する遮音関連技術の双方の研究開発を実施し、多くの実物件に適用している。
防音壁などの先端部に取り付けることで大きな騒音低減効果が得られるエッジ効果抑制パネル「エッジサイレンサー」を開発し、工事中の騒音対策だけでなく本設にも適用し、日本音響学会技術開発賞を受賞した。また、トンネル工事中の発破音の低減対策にも取り組んでいる。
集合住宅で問題となる重量床衝撃音に対しては、特殊防振支持脚を採用することにより重量床衝撃音レベル遮断性能を従来の乾式二重床より1ランク向上させ、床面の振動も小さく抑えることができる乾式二重床「プレフロアーQuiet+(クワイエットプラス)」を開発した。また、天井内に敷設するだけで重量床衝撃音を低減できる粒状制振材を開発中である。さらに、近隣への設備騒音などの対策として、敷地境界における騒音予測システムを開発し社内展開を図っている。

(14)シールド関連技術
狭隘な都市域においてシールド発進立坑用地の確保を容易にした「省面積立坑システム」は、当社施工28件、他社施工分を含めると47件の現場適用実績を持つ。下水道管渠の劣化防止を目的とした「シールドトンネル内面被覆工法」は、民間6社で共同研究を実施し、(公財)日本下水道新技術機構の技術審査証明を取得済みである。さらに、シールド工法の分野では工事で発生する自然由来の重金属汚染土を浄化するシステムや高性能裏込め材注入システムの開発をするとともに、推進工法の分野では推進工法を応用した「交差点アンダーパス工法」、「非開削トンネル構築工法」等の技術を開発し、営業展開、現場適用に取り組んでいる。国内で8件しかないφ3500mm以上の超大口径管推進工事においては、そのうち2件を当社が施工している。

(15)山岳トンネル技術
増加基調の山岳トンネル工事に対応する技術として、覆工品質の向上、支保・補助工法技術の改良、調査計測技術の高度化、環境負荷低減技術の開発に部門横断組織で積極的に取り組んでいる。覆工品質の向上については、補強材や養生等によるひび割れ低減技術の開発、支保技術の改良については、増粘剤を添加してリバウンドを抑制した吹付けコンクリートの開発、補助工法技術の改良については、土砂地山に適用可能なフォアプレート工法(鉄矢木打設装置)の開発、防水シート損傷の要因となるロックボルト頭部をなくした突起レスロックボルトの開発を行っている。また、調査計測については、切羽前方の地山を可視化するDRiスコープの開発、地山の3次元の変形に時間を考慮して変形予測を行う4DスーパーNATMの開発、環境負荷低減技術については、坑内環境自動制御システムの開発に取り組んでいる。また、開発済みの拡底ロックボルトやNT-Support(脚部補強工)、TDEM探査法は現場適用に展開している。

(16)コンクリート技術
設計基準強度200N/mm2の超高強度コンクリートや、収縮を低減させることでひび割れを防止し高耐久化を図るコンクリート(低収縮コンクリート)を開発している。
品質管理に関して、コンクリートの現場受入時の品質管理システムやコンクリート施工時の打重ね時間管理システムを構築した。また、(独)土木研究所との共同研究である「ボス供試体によるコンクリート構造物の品質検査法」については、(一社)日本非破壊検査協会の微破壊試験の規格として制定され、国土交通省地方整備局の橋梁直轄工事に採用されている。
劣化したコンクリートの点検技術として、小径のコア内で強度を推定する「孔内局部載荷試験」を開発し、実際の点検業務に展開している。

(17)リニューアル技術
既設トンネル等の補修補強工法として「BFP修繕工法」を開発した。本工法は連続繊維をプレート状に加工し、トンネル覆工内面に設置することで耐荷性や変形性能を向上させる工法であり、鉄道トンネルを主体として現場展開している。

(18)基盤整備関連技術
わが国の持続的発展を図る上で、社会基盤整備は急務の課題であり、それらを支援するために各種の技術提案及び開発を実施している。オーバーパスに対応した立体交差急速施工技術「すいすいMOP工法」(2現場竣工済)、アンダーパスに対応した非開削トンネル構築技術「さくさくJAWS工法」、鉄道連続立体高架の工期短縮を実現するプレキャストアーチ式高架橋「すいすいSWAN工法」、開削地下構造物の急速構築技術「さくさくSLIT工法」を積極的に提案展開している。老朽インフラ更新技術、排泥量削減を目指した地盤掘削技術「気泡掘削工法」及び「特殊ポリマー安定液工法」など、持続可能で災害に強い基盤整備に資する施工技術の向上を目指している。また、大規模加速器計画などの地下岩盤利用分野についても積極的に取り組んでいる。

(19)医療施設関連技術
病院内の臭気対策として「ゼオライト消臭建材」を開発し、さらに、光触媒技術の利用をはじめとした「院内感染対策トイレシステム」を開発している。その他、手術室、病室のレイアウト検討のためにバーチャルリアリティ(VR)技術を使った「病院VRシステム」を開発している。
また、無線通信技術を利用した次世代病院向け照明システム「スマートホスピタルライティングシステム」を開発し、埼玉県立がんセンターをはじめ、複数の病院等に導入している。

なお、子会社においては、研究開発活動は行われていない。


(不動産事業及びその他の事業)
研究開発活動は特段行われていない。

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