有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100APUW
日揮ホールディングス株式会社 研究開発活動 (2017年3月期)
事業等のリスクメニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
中期経営計画「Beyond the Horizon」の開始年度である当連結会計年度は、差別化技術に基づいたビジネス開発を推進してきました。重点戦略を①開発技術の早期商業化とライセンスビジネスの拡大、②成長分野における新規ビジネスの創出と推進、③オープンイノベーションの活用による社外との連携強化とし、資源、環境、ライフサイエンス、新エネルギー、ものづくりの各分野に注力してきました。その結果、海外への技術ライセンス供与の実績をあげ、成長分野における新規ビジネスの創出を図るとともに、将来ビジネスの核となる技術獲得のために産官学の連携による開発を推進することができました。なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、51億75百万円(消費税等は含まない)です。
① 総合エンジニアリング事業
設計・調達・建設(EPC)ビジネス分野
コアビジネスである設計・調達・建設(EPC)ビジネス分野においては、既存のハイドロカーボン分野、ノンハイドロカーボン分野に加えて、EPCビジネスの領域拡大を目指し、洋上LNG(フローティングLNG)分野、インフラ分野に取り組んできました。また、近年の動向として、オフショアだけでなく、オンショアにおいても大型モジュール工法が採用される事例が増えてきており、これらのプロジェクトに対しても設計製作から輸送まで難度の高い同工法を適用しています。さらには、同工法を極寒地での建設にも利用するなどの適用範囲の拡大や、さらなる工法の開発・工夫による競争力強化に取り組んでいます。
石油資源・精製分野
世界の石油需要が長期的に増大する傾向がある中、豊富な埋蔵量のカナダオイルサンドや南米の超重質油、東アフリカの高流動点原油など、非在来型重質油の開発が注目されています。これら重質原油の多くが既発見ながら未開発のままである主たる理由として、粘度が高く消費地までのパイプラン輸送が困難であることが挙げられます。当社は独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構と共同で、超臨界水を利用したSCWC(Supercritical Water Cracking)プロセスを開発し、カナダに設置したパイロット装置で連続運転を終了しました。その結果、パイプラインで輸送できるまでに粘度を低減できること、副生するピッチはボイラー用燃料に加え、道路用アスファルトの原料として使用できることを確認しました。カナダをはじめベネズエラ、コロンビア、ウガンダなどの未開発原油の開発を推進し、我が国の資源獲得に貢献します。
また、天然ガスの需要増加に伴い、その副生物として生産量が増えているコンデンセートは、原油に比べて軽質留分を多く含むため輸送燃料のみならず石油化学原料としても需要が増えています。コンデンセートに含まれる硫黄分を一つの反応器で一括して脱硫処理するシンプルな脱硫技術を確立しました。コンデンセートを各留分に分けた後に脱硫処理する従来法に比べて、設備費と運転費を大幅に削減できることを確認し、産ガス国に対してプロモーションを行っています。
天然ガス分野
温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の排出量削減が求められている昨今、当社ではCO2の排出抑制→分離回収→有効利用・貯留→資源再生というカーボンマネジメント・サイクルの各要素で技術・知見を積上げています。分離回収においては、吸収法による高圧再生型CO2回収(HiPACT®)プロセスを保有し、天然ガス処理や合成ガス精製過程でCO2をより高圧で回収することで、地中貯留(CCS: Carbon dioxide Capture and Storage)のために新たに必要となる圧縮エネルギーとコストを大幅に削減することができます。さらには、今後の資源開発が見込まれる高濃度CO2含有天然ガス田に含まれるCO2を、特殊なセラミック膜で効率的に分離回収する技術を開発し、フィールド実証を計画しています。両技術ともCO2の有効利用先として原油増進回収(CO2-EOR: Enhanced Oil Recovery)への展開が期待されています。実油田を対象に実施したCO2-EOR適用可能性調査などの知見と合わせて、産油ガス国/企業向けにCO2問題に対するトータルソリューションを提供していきます。
また、海洋ガス田向けの洋上LNGプラントや中小ガス田向けの陸上小型LNGプラントの技術開発に継続して取り組んできた結果、東南アジアの洋上LNGプラントのEPCビジネスに結びつきました。現在、複数のプロジェクトを手掛けており、さらに複数のFEED業務(Front End Engineering and Design)を遂行中です。また、陸上LNGプラントのEPCと連携したO&M(Operation and Maintenance)手法の基本スキームを開発しており、O&Mサービスの販売活動を展開しています。空気冷却式の陸上LNGプラントでは、操業場所の気象条件も考慮したプラント周辺の熱風のシミュレーションによる生産性の高いプラントを設計する解析技術(AIRLIZE LNG®)を確立し、幅広い顧客のニーズに対して、多彩なソリューションを提案しています。
ケミカル分野
シェールガスをはじめとする天然ガスは、液体燃料製造や高付加価値の化学品製造の原料としても期待されています。天然ガスなどから合成されるメタノールを原料とするプロピレン製造プロセス(DTP®)は、現在産ガス国や化学会社などに対して営業活動を展開しています。また、次世代の高性能触媒も継続して開発中です。
環境分野
経済産業省は2016年3月に「水素・燃料電池戦略ロードマップ改訂版」を発表しました。この中では、燃料電池自動車の導入とともに、水素発電やCO2フリー水素の導入についても実用化までのステップが示されています。
CO2フリー水素を用いた発電において、水素の輸送形態(エネルギーキャリア)として、アンモニアが着目されています。当社は、内閣府による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のエネルギーキャリアプロジェクトに参画し、再生可能エネルギーなどからCO2フリーアンモニアを製造するシステムを開発しており、2019年に産業技術総合研究所福島再生可能エネルギー研究所内で実証試験を行う計画です。本開発では、太陽光や風力の不安定な出力を平準化するために、蓄電池や水電気分解などを組み合わせた全体システムとして最適化も検討しています。
排ガスからSOxおよびNOxを効率的に除去する乾式脱硫脱硝システムの技術は、昨今問題となっている中国やインドにおける環境汚染対策に非常に有効です。各国での技術検討や実証などを推進し、これら新興国への本システムの導入を、引き続き進めていきます。
ライフサイエンス分野
ライフサイエンス分野では、バイオ医薬品製造技術としてマイクロバブル発生技術に高性能撹拌技術を付加したバイオリアクターやシングルユース機器のハンドリング技術の開発を行っています。また、視覚・触覚のフィードバックを伴うマスター・スレーブ方式の遠隔操作による無人(塵)化対応、粉体コンテナのドライ洗浄、高薬理活性物質の飛散性測定、原薬および製剤の連続製造など、多角的な技術開発を行っています。
再生医療分野では再生医療関連施設の多くの実績を踏まえ、細胞・組織培養環境基準の構築や再生医療関連要素技術の高度化を進めています。病院建設では、病院総合運営パートナー事業にも踏み込んだ展開を国内外で進めた結果、カンボジアで病院建設、運営を行うに至っています。
原子力分野
東日本大震災により発生した放射能を含んだ瓦礫、廃棄物、あるいは汚染土壌の一部は焼却処理や熱処理により除染することが検討されています。しかし、このような除染により除去され濃縮された放射能を処分するための処理方法はいまだ決定されていません。そこで、当社では、これらの放射能の高い汚染物に対して、新たな固化体を用いた封じ込め性の高い固化処理技術の開発に着手しました。また、発電所サイト内に貯蔵されている塩分を含んだ放射性廃液の処理技術の開発も進めています。
新規事業創出分野
低品位炭を原料とする石油代替燃料(JGC Coal Fuel: JCF®)への変換技術は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成により、インドネシアで年産1万トン規模のJCF製造およびその燃料を用いた発電実証を行い、商業化への目途を得ました。このプロセスはインドネシアに多く存在する未利用低品位炭を高圧熱水により改質させた後、水と混合してスラリー燃料に加工する当社の独自技術で、今後インドネシアのエネルギー自給への貢献が期待されています。
CO2の排出量削減に向けて、バイオマス由来燃料の開発が世界的に進められています。非食物系バイオマスを原料にした酵素法エタノール製造プロセスは、NEDOからの委託事業が終了し、基礎技術の確立に到りました。その成果を実用化に結びつけるため、バイオマス利用を目指す企業と共同で実証開発を実施しています。
なお、当事業での研究開発費は23億46百万円(消費税等は含まない)です。
② 触媒・ファイン事業
石油精製分野
国内では、将来的な石油需要の減衰に対応するエネルギー供給構造高度化法により、石油精製各社の精製能力削減および経営統合による生産効率化や重質油の白油化よる高付加価値化が進んでいます。東南アジアでは燃料油生産とともに石油化学原料も生産する大型石油コンビナートの増設や船舶燃料油の硫黄規制強化への対応の動きが見られるようになってきています。これらの動きに対応すべく、石化型流動接触分解装置に好適な触媒の実証化を進めています。また、重質油を効率的に分解する流動接触分解触媒は既に実績が得られていますが、さらなる高活性化を目指した次世代触媒の開発も進めています。石化型流動接触装置に有効なアディティブ触媒については、世界トップクラスのプロピレン増産用アディティブが国内外の製油所で採用され始めており、さらに高性能なプロピレン増産およびブテン選択性の高いアディティブを開発、実証化を進めています。
一方、新興国を中心に環境規制強化に対応するために、水素化脱硫触媒の需要は堅調に伸びていくと予想されています。高い脱硫活性と安定性を兼ね備えた革新的な軽油サルファーフリー脱硫触媒が国内製油所で初めて採用になり、その実績を基に拡販を進めていく計画です。また、残油水素化処理装置用の高い脱硫活性と活性安定性を有する直接脱硫触媒が国内製油所で良好な性能を実証し、今後拡販を進めていきます。また、本実証知見に基づき次世代の触媒開発にも取り組んでいます。一方、石油精製会社の研究所と共同開発した軽油サルファーフリー脱硫触媒や水素化分解触媒は、製油所ニーズを取り込んで収益向上に貢献しています。
顧客に対して魅力ある触媒の提案や運転サポートなど、ソリューションプロバイダー型の技術サービス体制を整え、国内外の石油精製会社との共同研究、実証化も進めています。
石油化学分野
国内ナフサクラッカーの休止や統合など、顧客は厳しい環境の中で、付加価値の高い製品開発や新しいビジネスモデルの構築を模索しています。このような状況の中で、顧客のニーズ変化に対応するケミカル触媒の受託研究・工業化に取り組むとともに、ニッケル触媒をはじめ石油化学向け触媒の活性金属の担持・成型・還元技術をブラッシュアップし、触媒特性を向上させる開発・工業化の検討を進めています。また、ケミカルプロセスで反応器の前後で使用する不純物吸着剤(原料であるハイドロカーボン中の硫化カルボニル除去など)の開発・工業化およびテクニカルサービスを強化し、拡販を進めています。
環境保全分野
環境保全分野では、CO2削減の観点から、福島復興プロジェクトの一環として石炭ガス化発電(IGCC)が計画されており、用いられる排ガス処理材料の実証化に取り組んでいます。さらに木質バイオマスを混焼させる石炭火力発電所に加え、バイオマス専焼の発電も増えている中、国内企業との共同研究により触媒被毒成分による触媒劣化を抑制した脱硝触媒の開発を進め、実ガスによる実証化試験を行っています。さらに中国や欧州向けにディーゼル車排ガス浄化触媒の開発を行っています。
中国ではコークス炉ガスの燃焼排ガスおよびセメントキルンの排ガス浄化触媒のニーズが高まり、前者には乾式脱硫と低温触媒を組み合わせたシステムが採用され、低温型脱硝触媒を納入しました。低温脱硝触媒についてはより低温で性能を発揮する触媒開発に取り組んでいます。
クリーンエネルギー分野
政府が2020年夏に東京で開催するオリンピック・パラリンピックに向けて、水素エネルギーの導入を促進する中、燃料電池自動車や定置型燃料電池の普及が拡大するものと予想されます。また、IoTを支える自律型センサーの需要が高まっており、独立電源に用いられる低照度光発電用材料のニーズが高まってきています。当社は次世代の新エネルギー関連材料を国内大学と共同開発を行っており、燃料電池関連材料や色素増感型太陽電池材料の製品ラインナップの充実に努めています。
生活関連・化粧品分野
眼鏡レンズのハードコートラッカー塗料用の高屈折率酸化物ゾルについて、耐候性を改善した開発品で眼鏡レンズ用の販売を強化するべく展開中です。多用途への展開では、車部材やLCDパネルのハードコート用にサンプルワークを継続しており、新しい展開分野を探索しています。一方、ラッカー塗料は硬度を向上した眼鏡レンズで顧客の採用が進みつつあります。今後も主要特性と生産性を高めて、眼鏡分野のシェア拡大と多用途展開による規模拡大を図ります。
化粧品分野では、国連環境計画など地球規模の環境汚染の懸念が指摘されているプラスチック製マイクロビーズの代替材料として開発したシリカビーズが注目され、スクラブ材への採用に繋がりました。また、トイレタリー分野への展開も進めており、ヘアケア製品で採用、商品化されました。さらに、かねてより顧客と共同開発を進めてきた紫外線遮蔽効果を増幅する光学材についても商品化され、次いで第二世代の材料開発に着手しました。
電子材料分野
記録メディア市場はクラウドの需要により維持されており、高記憶容量化に向けたさらなる研磨面精度が求められています。従来の2次仕上げ研磨用に加え、1次研磨用にも当社の高面精度、高研磨速度シリカ研磨砥粒が適用され業界トップシェアを維持しています。また、半導体用CMP分野では、半導体デバイスの微細化・多層化が進んでおり、高平坦性・低欠陥と高研磨速度が両立する研磨砥粒が求められています。このニーズに対応する無機ハイブリッド型研磨砥粒の顧客評価が順調に進んでおり採用間近の状況にあります。
また、半導体実装材料分野で採用されたドライ研磨用の多孔質粒子が半導体市場伸長とともに需要が拡大しています。引き続き拡大基調への生産対応を図るとともに次世代の材料開発も開始しています。
光学フィルム用機能性光学材料は、かねてより開発に取り組んできた高画質4Kテレビの視認性を向上させる反射防止フィルムに用いる高性能タイプの低屈折率粒子の需要が拡大しています。そこで、新たに次世代用としてさらなる高性能タイプを開発しサンプルワークを開始しました。引き続きテレビ用途の拡大を図るとともにPCモニタ、スマートフォン、タブレット用途でも継続的な拡大を図ります。
ファインセラミックス分野
ハイブリッド車、電気自動車、太陽光発電、LED照明など、高電力用のパワーデバイスを支える放熱用基板としての「高熱伝導率窒化珪素基板」の性能向上を目的とした開発を行っています。また、NEDO事業として3D革新的設計生産技術に参加しています。その他、材料による差別化を図るため、非酸化物系セラミックスの材料開発ならびにシリーズ化、セラミックス金属複合材(MMC)の開発に注力しています。
なお、当事業での研究開発費は27億21百万円(消費税等は含まない)です。
また、総合エンジニアリング事業および触媒・ファイン事業に加え、その他の事業において1億7百万円(消費税等は含まない)の研究開発費を計上しております。
① 総合エンジニアリング事業
設計・調達・建設(EPC)ビジネス分野
コアビジネスである設計・調達・建設(EPC)ビジネス分野においては、既存のハイドロカーボン分野、ノンハイドロカーボン分野に加えて、EPCビジネスの領域拡大を目指し、洋上LNG(フローティングLNG)分野、インフラ分野に取り組んできました。また、近年の動向として、オフショアだけでなく、オンショアにおいても大型モジュール工法が採用される事例が増えてきており、これらのプロジェクトに対しても設計製作から輸送まで難度の高い同工法を適用しています。さらには、同工法を極寒地での建設にも利用するなどの適用範囲の拡大や、さらなる工法の開発・工夫による競争力強化に取り組んでいます。
石油資源・精製分野
世界の石油需要が長期的に増大する傾向がある中、豊富な埋蔵量のカナダオイルサンドや南米の超重質油、東アフリカの高流動点原油など、非在来型重質油の開発が注目されています。これら重質原油の多くが既発見ながら未開発のままである主たる理由として、粘度が高く消費地までのパイプラン輸送が困難であることが挙げられます。当社は独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構と共同で、超臨界水を利用したSCWC(Supercritical Water Cracking)プロセスを開発し、カナダに設置したパイロット装置で連続運転を終了しました。その結果、パイプラインで輸送できるまでに粘度を低減できること、副生するピッチはボイラー用燃料に加え、道路用アスファルトの原料として使用できることを確認しました。カナダをはじめベネズエラ、コロンビア、ウガンダなどの未開発原油の開発を推進し、我が国の資源獲得に貢献します。
また、天然ガスの需要増加に伴い、その副生物として生産量が増えているコンデンセートは、原油に比べて軽質留分を多く含むため輸送燃料のみならず石油化学原料としても需要が増えています。コンデンセートに含まれる硫黄分を一つの反応器で一括して脱硫処理するシンプルな脱硫技術を確立しました。コンデンセートを各留分に分けた後に脱硫処理する従来法に比べて、設備費と運転費を大幅に削減できることを確認し、産ガス国に対してプロモーションを行っています。
天然ガス分野
温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の排出量削減が求められている昨今、当社ではCO2の排出抑制→分離回収→有効利用・貯留→資源再生というカーボンマネジメント・サイクルの各要素で技術・知見を積上げています。分離回収においては、吸収法による高圧再生型CO2回収(HiPACT®)プロセスを保有し、天然ガス処理や合成ガス精製過程でCO2をより高圧で回収することで、地中貯留(CCS: Carbon dioxide Capture and Storage)のために新たに必要となる圧縮エネルギーとコストを大幅に削減することができます。さらには、今後の資源開発が見込まれる高濃度CO2含有天然ガス田に含まれるCO2を、特殊なセラミック膜で効率的に分離回収する技術を開発し、フィールド実証を計画しています。両技術ともCO2の有効利用先として原油増進回収(CO2-EOR: Enhanced Oil Recovery)への展開が期待されています。実油田を対象に実施したCO2-EOR適用可能性調査などの知見と合わせて、産油ガス国/企業向けにCO2問題に対するトータルソリューションを提供していきます。
また、海洋ガス田向けの洋上LNGプラントや中小ガス田向けの陸上小型LNGプラントの技術開発に継続して取り組んできた結果、東南アジアの洋上LNGプラントのEPCビジネスに結びつきました。現在、複数のプロジェクトを手掛けており、さらに複数のFEED業務(Front End Engineering and Design)を遂行中です。また、陸上LNGプラントのEPCと連携したO&M(Operation and Maintenance)手法の基本スキームを開発しており、O&Mサービスの販売活動を展開しています。空気冷却式の陸上LNGプラントでは、操業場所の気象条件も考慮したプラント周辺の熱風のシミュレーションによる生産性の高いプラントを設計する解析技術(AIRLIZE LNG®)を確立し、幅広い顧客のニーズに対して、多彩なソリューションを提案しています。
ケミカル分野
シェールガスをはじめとする天然ガスは、液体燃料製造や高付加価値の化学品製造の原料としても期待されています。天然ガスなどから合成されるメタノールを原料とするプロピレン製造プロセス(DTP®)は、現在産ガス国や化学会社などに対して営業活動を展開しています。また、次世代の高性能触媒も継続して開発中です。
環境分野
経済産業省は2016年3月に「水素・燃料電池戦略ロードマップ改訂版」を発表しました。この中では、燃料電池自動車の導入とともに、水素発電やCO2フリー水素の導入についても実用化までのステップが示されています。
CO2フリー水素を用いた発電において、水素の輸送形態(エネルギーキャリア)として、アンモニアが着目されています。当社は、内閣府による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のエネルギーキャリアプロジェクトに参画し、再生可能エネルギーなどからCO2フリーアンモニアを製造するシステムを開発しており、2019年に産業技術総合研究所福島再生可能エネルギー研究所内で実証試験を行う計画です。本開発では、太陽光や風力の不安定な出力を平準化するために、蓄電池や水電気分解などを組み合わせた全体システムとして最適化も検討しています。
排ガスからSOxおよびNOxを効率的に除去する乾式脱硫脱硝システムの技術は、昨今問題となっている中国やインドにおける環境汚染対策に非常に有効です。各国での技術検討や実証などを推進し、これら新興国への本システムの導入を、引き続き進めていきます。
ライフサイエンス分野
ライフサイエンス分野では、バイオ医薬品製造技術としてマイクロバブル発生技術に高性能撹拌技術を付加したバイオリアクターやシングルユース機器のハンドリング技術の開発を行っています。また、視覚・触覚のフィードバックを伴うマスター・スレーブ方式の遠隔操作による無人(塵)化対応、粉体コンテナのドライ洗浄、高薬理活性物質の飛散性測定、原薬および製剤の連続製造など、多角的な技術開発を行っています。
再生医療分野では再生医療関連施設の多くの実績を踏まえ、細胞・組織培養環境基準の構築や再生医療関連要素技術の高度化を進めています。病院建設では、病院総合運営パートナー事業にも踏み込んだ展開を国内外で進めた結果、カンボジアで病院建設、運営を行うに至っています。
原子力分野
東日本大震災により発生した放射能を含んだ瓦礫、廃棄物、あるいは汚染土壌の一部は焼却処理や熱処理により除染することが検討されています。しかし、このような除染により除去され濃縮された放射能を処分するための処理方法はいまだ決定されていません。そこで、当社では、これらの放射能の高い汚染物に対して、新たな固化体を用いた封じ込め性の高い固化処理技術の開発に着手しました。また、発電所サイト内に貯蔵されている塩分を含んだ放射性廃液の処理技術の開発も進めています。
新規事業創出分野
低品位炭を原料とする石油代替燃料(JGC Coal Fuel: JCF®)への変換技術は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成により、インドネシアで年産1万トン規模のJCF製造およびその燃料を用いた発電実証を行い、商業化への目途を得ました。このプロセスはインドネシアに多く存在する未利用低品位炭を高圧熱水により改質させた後、水と混合してスラリー燃料に加工する当社の独自技術で、今後インドネシアのエネルギー自給への貢献が期待されています。
CO2の排出量削減に向けて、バイオマス由来燃料の開発が世界的に進められています。非食物系バイオマスを原料にした酵素法エタノール製造プロセスは、NEDOからの委託事業が終了し、基礎技術の確立に到りました。その成果を実用化に結びつけるため、バイオマス利用を目指す企業と共同で実証開発を実施しています。
なお、当事業での研究開発費は23億46百万円(消費税等は含まない)です。
② 触媒・ファイン事業
石油精製分野
国内では、将来的な石油需要の減衰に対応するエネルギー供給構造高度化法により、石油精製各社の精製能力削減および経営統合による生産効率化や重質油の白油化よる高付加価値化が進んでいます。東南アジアでは燃料油生産とともに石油化学原料も生産する大型石油コンビナートの増設や船舶燃料油の硫黄規制強化への対応の動きが見られるようになってきています。これらの動きに対応すべく、石化型流動接触分解装置に好適な触媒の実証化を進めています。また、重質油を効率的に分解する流動接触分解触媒は既に実績が得られていますが、さらなる高活性化を目指した次世代触媒の開発も進めています。石化型流動接触装置に有効なアディティブ触媒については、世界トップクラスのプロピレン増産用アディティブが国内外の製油所で採用され始めており、さらに高性能なプロピレン増産およびブテン選択性の高いアディティブを開発、実証化を進めています。
一方、新興国を中心に環境規制強化に対応するために、水素化脱硫触媒の需要は堅調に伸びていくと予想されています。高い脱硫活性と安定性を兼ね備えた革新的な軽油サルファーフリー脱硫触媒が国内製油所で初めて採用になり、その実績を基に拡販を進めていく計画です。また、残油水素化処理装置用の高い脱硫活性と活性安定性を有する直接脱硫触媒が国内製油所で良好な性能を実証し、今後拡販を進めていきます。また、本実証知見に基づき次世代の触媒開発にも取り組んでいます。一方、石油精製会社の研究所と共同開発した軽油サルファーフリー脱硫触媒や水素化分解触媒は、製油所ニーズを取り込んで収益向上に貢献しています。
顧客に対して魅力ある触媒の提案や運転サポートなど、ソリューションプロバイダー型の技術サービス体制を整え、国内外の石油精製会社との共同研究、実証化も進めています。
石油化学分野
国内ナフサクラッカーの休止や統合など、顧客は厳しい環境の中で、付加価値の高い製品開発や新しいビジネスモデルの構築を模索しています。このような状況の中で、顧客のニーズ変化に対応するケミカル触媒の受託研究・工業化に取り組むとともに、ニッケル触媒をはじめ石油化学向け触媒の活性金属の担持・成型・還元技術をブラッシュアップし、触媒特性を向上させる開発・工業化の検討を進めています。また、ケミカルプロセスで反応器の前後で使用する不純物吸着剤(原料であるハイドロカーボン中の硫化カルボニル除去など)の開発・工業化およびテクニカルサービスを強化し、拡販を進めています。
環境保全分野
環境保全分野では、CO2削減の観点から、福島復興プロジェクトの一環として石炭ガス化発電(IGCC)が計画されており、用いられる排ガス処理材料の実証化に取り組んでいます。さらに木質バイオマスを混焼させる石炭火力発電所に加え、バイオマス専焼の発電も増えている中、国内企業との共同研究により触媒被毒成分による触媒劣化を抑制した脱硝触媒の開発を進め、実ガスによる実証化試験を行っています。さらに中国や欧州向けにディーゼル車排ガス浄化触媒の開発を行っています。
中国ではコークス炉ガスの燃焼排ガスおよびセメントキルンの排ガス浄化触媒のニーズが高まり、前者には乾式脱硫と低温触媒を組み合わせたシステムが採用され、低温型脱硝触媒を納入しました。低温脱硝触媒についてはより低温で性能を発揮する触媒開発に取り組んでいます。
クリーンエネルギー分野
政府が2020年夏に東京で開催するオリンピック・パラリンピックに向けて、水素エネルギーの導入を促進する中、燃料電池自動車や定置型燃料電池の普及が拡大するものと予想されます。また、IoTを支える自律型センサーの需要が高まっており、独立電源に用いられる低照度光発電用材料のニーズが高まってきています。当社は次世代の新エネルギー関連材料を国内大学と共同開発を行っており、燃料電池関連材料や色素増感型太陽電池材料の製品ラインナップの充実に努めています。
生活関連・化粧品分野
眼鏡レンズのハードコートラッカー塗料用の高屈折率酸化物ゾルについて、耐候性を改善した開発品で眼鏡レンズ用の販売を強化するべく展開中です。多用途への展開では、車部材やLCDパネルのハードコート用にサンプルワークを継続しており、新しい展開分野を探索しています。一方、ラッカー塗料は硬度を向上した眼鏡レンズで顧客の採用が進みつつあります。今後も主要特性と生産性を高めて、眼鏡分野のシェア拡大と多用途展開による規模拡大を図ります。
化粧品分野では、国連環境計画など地球規模の環境汚染の懸念が指摘されているプラスチック製マイクロビーズの代替材料として開発したシリカビーズが注目され、スクラブ材への採用に繋がりました。また、トイレタリー分野への展開も進めており、ヘアケア製品で採用、商品化されました。さらに、かねてより顧客と共同開発を進めてきた紫外線遮蔽効果を増幅する光学材についても商品化され、次いで第二世代の材料開発に着手しました。
電子材料分野
記録メディア市場はクラウドの需要により維持されており、高記憶容量化に向けたさらなる研磨面精度が求められています。従来の2次仕上げ研磨用に加え、1次研磨用にも当社の高面精度、高研磨速度シリカ研磨砥粒が適用され業界トップシェアを維持しています。また、半導体用CMP分野では、半導体デバイスの微細化・多層化が進んでおり、高平坦性・低欠陥と高研磨速度が両立する研磨砥粒が求められています。このニーズに対応する無機ハイブリッド型研磨砥粒の顧客評価が順調に進んでおり採用間近の状況にあります。
また、半導体実装材料分野で採用されたドライ研磨用の多孔質粒子が半導体市場伸長とともに需要が拡大しています。引き続き拡大基調への生産対応を図るとともに次世代の材料開発も開始しています。
光学フィルム用機能性光学材料は、かねてより開発に取り組んできた高画質4Kテレビの視認性を向上させる反射防止フィルムに用いる高性能タイプの低屈折率粒子の需要が拡大しています。そこで、新たに次世代用としてさらなる高性能タイプを開発しサンプルワークを開始しました。引き続きテレビ用途の拡大を図るとともにPCモニタ、スマートフォン、タブレット用途でも継続的な拡大を図ります。
ファインセラミックス分野
ハイブリッド車、電気自動車、太陽光発電、LED照明など、高電力用のパワーデバイスを支える放熱用基板としての「高熱伝導率窒化珪素基板」の性能向上を目的とした開発を行っています。また、NEDO事業として3D革新的設計生産技術に参加しています。その他、材料による差別化を図るため、非酸化物系セラミックスの材料開発ならびにシリーズ化、セラミックス金属複合材(MMC)の開発に注力しています。
なお、当事業での研究開発費は27億21百万円(消費税等は含まない)です。
また、総合エンジニアリング事業および触媒・ファイン事業に加え、その他の事業において1億7百万円(消費税等は含まない)の研究開発費を計上しております。
事業等のリスク財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
- 有価証券報告書 抜粋メニュー
- 連結経営指標等
- 提出会社の経営指標等
- 沿革
- 事業の内容
- 関係会社の状況
- 従業員の状況
- 業績等の概要
- 生産、受注及び販売の状況
- 事業等のリスク
- 研究開発活動
- 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
- 株式の総数等
- 発行済株式総数、資本金等の推移
- 株価の推移
- 最近6月間の月別最高・最低株価
- 株式所有者別状況
- 役員の状況
- コーポレートガバナンス状況
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E01575] S100APUW)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。