有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100A0HN
アンジェス株式会社 事業等のリスク (2016年12月期)
当社グループ(当社及び連結子会社2社)の事業展開その他に関してリスク要因と考えられる主な事項は以下のようなものがあります。
また、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、本報告書「第一部 企業情報 第2 事業の状況」の他の項目、「第一部 企業情報 第5 経理の状況」等にも記載しておりますので、併せてご参照ください。将来に関する事項については2016年12月末現在において判断したものであります。なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、以下の記載事項及び本項以外の記載事項を慎重に検討したうえで行われる必要があると考えております。
(1) 遺伝子治療の現状について
遺伝子治療とは、遺伝子を用いて病気を治療することです。世界初の遺伝子治療は1990年に米国で、アデノシン・デアミナーゼ(ADA)欠損症という先天的に免疫が正常に働かない遺伝子疾患を対象に実施されました。その後、遺伝子疾患に加え、有効な治療法がない癌や後天性免疫不全症候群などに対しても、遺伝子治療が実施されてきました。国内でも1995年に北海道大学においてADA欠損症を対象とした初めての遺伝子治療が行われ以来、過去20年間に亘り数多くの臨床試験が行われてきました。
遺伝子治療が有効と考えられる対象疾患としてはまず、遺伝子の変異が原因の遺伝子疾患があります。遺伝子疾患では、遺伝子治療により正常な遺伝子を補充することで治療効果が期待しやすいと考えられます。
さらに癌領域でも遺伝子治療が期待されております。癌領域では従来の治療法では十分な治療効果が得られない場合が多く、新しい治療法である遺伝子治療に期待が高まっております。癌の遺伝子治療には、癌抑制遺伝子を投与する方法や、患者の免疫力を高める遺伝子を投与する方法などが研究されています。
最近では血管疾患や心臓疾患、神経変性疾患など慢性疾患も遺伝子治療の対象として研究が進められております。特に、当社が開発を進めているHGF遺伝子治療の対象である足の血管が詰まる閉塞性動脈硬化症や、心筋に酸素や栄養を送る冠動脈の硬化によって起こる虚血性心疾患は、患者数が非常に多い疾患領域であり、事業性の面からも注目されております。
ただし遺伝子治療薬については、これまで米国を中心に数多くの臨床試験が実施されてきたものの、本格的な普及には至っていません。これまで先進国で承認された製品は、稀な代謝疾患であるLPL(リポプロテインリパーゼ)欠損症とADA欠損症を対象とした2例(共に欧州での承認)にとどまっています。遺伝子治療は新規性が高い治療法であることから、現段階では未知のリスクを否定できず、幅広い実用化には至らないリスクがあります。
(2) 今後の事業展開について
事業収益は、各プロジェクトの開発に関して提携先から得られる収益及び「ナグラザイム®」の販売による収益によって構成されております。
「ナグラザイム®」は2008年4月に発売され、当社グループは「ナグラザイム®」の販売による収益を計上しています。今後、対象疾患であるムコ多糖症Ⅵ型の患者に対する啓蒙活動により国内売上の増加が見込まれます。しかしながら、見込み通り患者の増加が実現しない可能性があります。
重症虚血肢を適応症としたHGF遺伝子治療薬に関しては、田辺三菱製薬株式会社に対し末梢性血管疾患を対象とした米国と日本における独占的販売権を付与しており、開発の進捗に伴ったマイルストーン、さらに上市後には売上高の一定率を対価として受け取る予定です。しかしながら、臨床開発の失敗その他の理由により、製造販売承認を取得できない可能性があります。
NF-κBデコイオリゴDNAについては、塩野義製薬株式会社との間でアトピー性皮膚炎などを治療する外用剤全般の全世界における独占的な販売権を付与する契約を締結しており、その契約に基づいて当社グループは、開発の進捗に伴いマイルストーンを受け取り、事業収益に計上しております。しかしながら、当社が開発を進めているNF-κBデコイオリゴDNAのアトピー性皮膚炎の治療薬(AMG0101、軟膏剤)の国内第Ⅲ相臨床試験の解析速報において主要評価項目である投与開始から4週間(28日間)後における主有効性評価部位の「皮膚症状スコア」の変化について、NF-κB デコイオリゴDNA投与群とプラセボ投与群の間で統計学的な有意差は示されませんでした。当社は当該臨床試験の結果の解析を進めておりますが、上記の解析結果を踏まえると、NF-κBデコイオリゴDNAのアトピー性皮膚炎の治療薬(AMG0101、軟膏剤)を医薬品として承認申請を行うことは極めて困難な状況であり、今後開発の中止を決定する可能性があります。このような場合には、当社グループの事業戦略や業績が影響を受ける可能性があります。
また、NF-κBデコイオリゴDNAの新たな対象疾患として、椎間板性腰痛を対象とした臨床開発の実施を計画しています。初期段階の臨床試験の結果が良好であれば、その後大手製薬企業に開発・販売権を導出する計画であり、実現すれば契約締結に伴う一時金、開発の進捗に伴ったマイルストーン、さらに上市後には売上高の一定率を対価として受け取る予定です。しかしながら、臨床開発の失敗その他の理由により、こうした事業計画が実現しない可能性があります。
当社は遺伝子治療薬、デコイオリゴDNAに続く第三の事業の柱としてDNAワクチン事業の推進を掲げています。その一環として高血圧を対象としたDNAワクチンの臨床開発の実施を計画しています。初期段階の臨床試験の結果が良好であれば、その後大手製薬企業に開発・販売権を導出する計画であり、実現すれば契約締結に伴う一時金、開発の進捗に伴ったマイルストーン、さらに上市後には売上高の一定率を対価として受け取る予定です。しかしながら、臨床開発の失敗その他の理由により、こうした事業計画が実現しない可能性があります。
また、当社グループはDNAワクチン事業推進の目的のため長期的観点から、バイカル社に資本参加しています。しかしながら、同社の事業が計画通りに進展しなかった場合やその他の理由により、投資資金を回収できない可能性があります。また、当社グループはバイカル社との間でAllovectin®に関する研究開発契約を締結しており、アジア地域における独占的開発販売権の許諾を受けています。転移性メラノーマ(悪性黒色腫)以外の癌疾患への適用可能性を検討しておりますが、今後、適切な対応策を見いだせない場合には、Allovectin®による将来の収入が見込めない可能性があります。
(3)研究開発について
一般に新薬の開発には、長期に亘る期間と多額の費用が必要です。それにもかかわらず、医薬品の開発は計画通りに進行するとは限らず、臨床試験のために必要とされる症例数を適時に確保できないこと、臨床試験の実施に係る各種業務を支援・代行するCRO(医薬品開発業務受託機関)における業務が計画通り進行しないこと等の様々な要因によって遅延する可能性があります。さらに、様々な試験の結果、期待した有効性を確認できなかったり、安全性に関する許容できない問題が生じたりした場合には、研究開発を中止するリスクがあります。このような場合には、当社グループの事業戦略や業績が影響を受ける可能性があります。
(4) 製造について
当社グループは、製品及び治験薬等を自社で製造しておらず、他社からの供給に依存しております。従って、製品や治験薬等について、何らかの要因により、品質上の問題が生じたり、もしくは予定通りに必要な数量を確保できない場合には、開発に遅れが生じたり、製品供給の不足により当社グループの業績が影響を受けたりする可能性があります。
(5) 販売について
当社グループが開発中の医薬品については、国内、米国及び欧州等の各地域において、将来競合する可能性のある製品及び開発品が存在します。当社グループは、競争力の高い製品を早期に開発、上市することで、一定の市場シェアの獲得を目指しております。しかしながら、競合他社が当社の想定以上のシェアを獲得した場合には、当社グループが開発した製品が上市された場合においても期待通りの収益をあげられない可能性があります。
また、日本や欧州においては新薬の価格は原則として政府あるいはそれに準じた公的機関により決定され、また、米国においては保険会社・マネージドケア(健康保険運営団体)及び政府のメディケア・プログラムとの交渉により決定されます。そのため、当社グループが開発した製品について当社グループが想定した薬価とならない場合があり期待通りの収益をあげられない可能性があります。
加えて、当社が販売する医薬品について、予期しない副作用が発生した場合には売上高の減少要因となり、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
(6) 薬事法制による規制について
薬事法制は、医薬品・医療機器等の品質、有効性、安全性確保の観点から、企業が行う開発・製造・販売等に関して必要な規制を行う法律であり、当社グループが実施している医薬品の研究開発は日本をはじめ各国の薬事法制の規制を受けております。
各国において、治療環境の変化など様々な要因による承認要件の変更、さらに薬事法制度の変更により、承認を計画通りに取得できない可能性があります。このような場合には、当社グループの事業戦略や業績が影響を受ける可能性があります。
(7)知的財産権について
① 特許戦略
当社グループが現在展開しているHGF遺伝子治療薬、NF-κBデコイオリゴDNAの研究開発活動は、主に当社グループが保有する又は当社グループが実施権を有する特許権あるいは特許出願中の権利に基づき実施しております。以下において、それらのうち特に重要なものを記載しております。
しかしながら、当社グループが現在出願中の特許が全て登録されるとは限りません。また、当社グループの研究開発を超える優れた研究開発により当社グループの特許が淘汰される可能性は、常に存在しております。仮に当社グループの研究開発を超える優れた研究開発がなされた場合、当社グループの事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
さらに、当社グループの今後の事業展開の中でライセンスを受けることが必要な特許が生じ、そのライセンスが受けられなかった場合には、当社グループの事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(注)1 当社は当該特許の実施権を有しております。
② 知的財産権に関する訴訟、クレーム
2016年12月31日現在において、当社グループの開発に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームが発生したという事実はありません。
ただし、他社が当社グループと同様の研究開発を行っていないという保証はなく、今後とも知的財産について問題が発生しないという保証はありません。
当社グループとしても、このような問題を未然に防止するため、事業展開にあたっては特許調査を実施しており、当社グループ特許が他社の特許に抵触しているという事実は認識しておりません。しかしながら、当社グループのような研究開発型企業にとって、このような知的財産権侵害問題の発生を完全に回避することは困難であります。
(8) 業績の推移について
当社グループの主要な経営指標等の推移は以下のとおりであります。
(注) 1 「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号 2013年9月13日)等を適用し、当連結会計年度より、「当期純損失」を「親会社株主に帰属する当期純損失」としております。
(注) 2 事業収益には消費税等は含まれておりません。
当社グループは、事業のステージが先行投資の段階にあるため、現時点では、上記記載のように、第14期から第18期において親会社株主に帰属する当期純損失を計上しておりますが、現在の事業計画に沿って研究開発を着実に進め、将来、医薬品の販売から得られる収益によって損益を改善し、さらには利益を拡大する計画であります。
ただし、現在の事業計画に沿った医薬品の研究開発や販売が実現しない場合には、当社グループが将来においても親会社株主に帰属する当期純利益を計上できない可能性もあります。
また、上記記載のように、第14期から第18期においては、営業活動によるキャッシュ・フローもマイナスであり、現状の事業計画に沿った医薬品の研究開発や販売が実現しない場合には、将来においても営業活動によるキャッシュ・フローがプラスにならない可能性もあります。
(9)経営上の重要な契約等について
当社のビジネス展開上重要と思われる契約の内容を本報告書「第一部 企業情報 第2 事業の状況 5 経営上の重要な契約等」に記載しております。なお、当社グループは、これらの契約に関して、いずれも当社グループの根幹に関わる重要な契約であると認識しております。したがって、当該契約の破棄が行われた場合、当社グループにとって不利な契約改定が行われた場合及び契約期間満了後に契約が継続されない場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)組織体制について
① 人材の確保
当社グループの競争力は研究開発力にあり、専門性の高い研究及び開発担当者の確保が不可欠です。また、事業の成長拡大を支えるためには事業開発、営業、製造、内部管理等の人材も充実させる必要があります。当社グループは、優秀な人材の確保及び社内人材の教育に努めますが、人材の確保及び社内人材の教育が計画どおりに進まない場合には、当社グループの業務に支障をきたす可能性があります。
一方、当社グループは、業務遂行体制の充実に努めますが、小規模組織であり、限りある人的資源に依存しているために、社員に業務遂行上の支障が生じた場合、あるいは社員が社外流出した場合には、当社グループの業務に支障をきたす可能性があります。
② 特定人物への依存
当社グループの事業の推進者は、代表取締役である山田英です。代表取締役山田英は、当社グループの最高責任者として、当社グループの経営戦略の決定、研究開発、事業開発及び管理業務の遂行に大きな影響力を有しております。また、当社メディカルアドバイザーである森下竜一には、研究開発の面でアドバイスを受けております。
当社グループではこれらの特定人物に過度に依存しない体制を構築すべく、経営組織の強化を図っていますが、当面の間はこれらの特定人物への依存度が高い状態で推移すると見込まれます。このような状況のなかで、これらの特定人物が何らかの理由により当社グループの業務を継続することが困難になった場合には、当社グループの事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(11)訴訟について
当社グループは、医薬品の副作用、製造物責任、知的財産権及び労務問題等に関して、訴訟を提起される可能性があります。将来、当社グループが提訴された場合には、その内容次第で当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
(12)配当政策について
当社グループは、創薬系バイオベンチャーであり、2008年4月よりムコ多糖症Ⅵ型治療薬「ナグラザイム®」を販売しているものの、主要なプロジェクトにおいては医薬品を開発中であり、事業のステージは、先行投資の段階にあります。このため、現時点においては、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しており、剰余金の配当は実施しておりません。
ただし、株主への利益還元については重要な経営課題と認識しており、将来、現在開発中の新薬が上市され、その販売によって利益が計上され分配可能額が生じる時期においては、経営成績及び財政状態を勘案しながら、剰余金の配当を検討したいと考えております。
(13)新株予約権の付与(ストック・オプション)制度について
当社はストック・オプション制度を採用しております。当該制度は会社法第236条、第238条及び第239条の規定に基づき、新株予約権を付与する方式により、当社従業員並びに当社子会社の取締役及び従業員に対して付与することを株主総会において決議されたものです。
これらの新株予約権の目的となる株式の数は2016年12月31日現在で合計21,000株となり、発行済株式数の0.03%となっております。これらの新株予約権の行使が行われた場合には、当社の1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。
(14)外国為替変動について
当社グループは、事業活動をグローバルに展開しており、海外での研究開発活動、海外企業とのライセンス、海外からの製品及び治験薬の仕入等において外貨建取引が存在します。また、当社グループが現在開発を行っている製品は、日本のみならず、米国を含む海外市場での販売が見込まれます。そのため、急激な為替変動によって為替リスクが顕在化した場合には、当社グループの事業戦略や業績が影響を受ける可能性があります。
(15)継続企業の前提に関する重要事象等について
医薬品事業は、製品化までに多額の資金と長い時間を要する等特性があり、創薬ベンチャーである当社グループにおいては、継続的な営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上している状況にあります。そのため、一部のプロジェクトにおいては提携先を確保し、開発協力金等を得ることにより開発資金の低減に努めているほか、ムコ多糖症Ⅵ型治療薬「ナグラザイム®」の販売を行っておりますが、全ての開発投資を補うに足る収益は生じておりません。当社グループは、当連結会計年度末において現金及び預金9億95百万円を有しているものの、全てのプロジェクトを継続的に進めるための十分な資金が不足していることから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。
また、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、本報告書「第一部 企業情報 第2 事業の状況」の他の項目、「第一部 企業情報 第5 経理の状況」等にも記載しておりますので、併せてご参照ください。将来に関する事項については2016年12月末現在において判断したものであります。なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、以下の記載事項及び本項以外の記載事項を慎重に検討したうえで行われる必要があると考えております。
(1) 遺伝子治療の現状について
遺伝子治療とは、遺伝子を用いて病気を治療することです。世界初の遺伝子治療は1990年に米国で、アデノシン・デアミナーゼ(ADA)欠損症という先天的に免疫が正常に働かない遺伝子疾患を対象に実施されました。その後、遺伝子疾患に加え、有効な治療法がない癌や後天性免疫不全症候群などに対しても、遺伝子治療が実施されてきました。国内でも1995年に北海道大学においてADA欠損症を対象とした初めての遺伝子治療が行われ以来、過去20年間に亘り数多くの臨床試験が行われてきました。
遺伝子治療が有効と考えられる対象疾患としてはまず、遺伝子の変異が原因の遺伝子疾患があります。遺伝子疾患では、遺伝子治療により正常な遺伝子を補充することで治療効果が期待しやすいと考えられます。
さらに癌領域でも遺伝子治療が期待されております。癌領域では従来の治療法では十分な治療効果が得られない場合が多く、新しい治療法である遺伝子治療に期待が高まっております。癌の遺伝子治療には、癌抑制遺伝子を投与する方法や、患者の免疫力を高める遺伝子を投与する方法などが研究されています。
最近では血管疾患や心臓疾患、神経変性疾患など慢性疾患も遺伝子治療の対象として研究が進められております。特に、当社が開発を進めているHGF遺伝子治療の対象である足の血管が詰まる閉塞性動脈硬化症や、心筋に酸素や栄養を送る冠動脈の硬化によって起こる虚血性心疾患は、患者数が非常に多い疾患領域であり、事業性の面からも注目されております。
ただし遺伝子治療薬については、これまで米国を中心に数多くの臨床試験が実施されてきたものの、本格的な普及には至っていません。これまで先進国で承認された製品は、稀な代謝疾患であるLPL(リポプロテインリパーゼ)欠損症とADA欠損症を対象とした2例(共に欧州での承認)にとどまっています。遺伝子治療は新規性が高い治療法であることから、現段階では未知のリスクを否定できず、幅広い実用化には至らないリスクがあります。
(2) 今後の事業展開について
事業収益は、各プロジェクトの開発に関して提携先から得られる収益及び「ナグラザイム®」の販売による収益によって構成されております。
「ナグラザイム®」は2008年4月に発売され、当社グループは「ナグラザイム®」の販売による収益を計上しています。今後、対象疾患であるムコ多糖症Ⅵ型の患者に対する啓蒙活動により国内売上の増加が見込まれます。しかしながら、見込み通り患者の増加が実現しない可能性があります。
重症虚血肢を適応症としたHGF遺伝子治療薬に関しては、田辺三菱製薬株式会社に対し末梢性血管疾患を対象とした米国と日本における独占的販売権を付与しており、開発の進捗に伴ったマイルストーン、さらに上市後には売上高の一定率を対価として受け取る予定です。しかしながら、臨床開発の失敗その他の理由により、製造販売承認を取得できない可能性があります。
NF-κBデコイオリゴDNAについては、塩野義製薬株式会社との間でアトピー性皮膚炎などを治療する外用剤全般の全世界における独占的な販売権を付与する契約を締結しており、その契約に基づいて当社グループは、開発の進捗に伴いマイルストーンを受け取り、事業収益に計上しております。しかしながら、当社が開発を進めているNF-κBデコイオリゴDNAのアトピー性皮膚炎の治療薬(AMG0101、軟膏剤)の国内第Ⅲ相臨床試験の解析速報において主要評価項目である投与開始から4週間(28日間)後における主有効性評価部位の「皮膚症状スコア」の変化について、NF-κB デコイオリゴDNA投与群とプラセボ投与群の間で統計学的な有意差は示されませんでした。当社は当該臨床試験の結果の解析を進めておりますが、上記の解析結果を踏まえると、NF-κBデコイオリゴDNAのアトピー性皮膚炎の治療薬(AMG0101、軟膏剤)を医薬品として承認申請を行うことは極めて困難な状況であり、今後開発の中止を決定する可能性があります。このような場合には、当社グループの事業戦略や業績が影響を受ける可能性があります。
また、NF-κBデコイオリゴDNAの新たな対象疾患として、椎間板性腰痛を対象とした臨床開発の実施を計画しています。初期段階の臨床試験の結果が良好であれば、その後大手製薬企業に開発・販売権を導出する計画であり、実現すれば契約締結に伴う一時金、開発の進捗に伴ったマイルストーン、さらに上市後には売上高の一定率を対価として受け取る予定です。しかしながら、臨床開発の失敗その他の理由により、こうした事業計画が実現しない可能性があります。
当社は遺伝子治療薬、デコイオリゴDNAに続く第三の事業の柱としてDNAワクチン事業の推進を掲げています。その一環として高血圧を対象としたDNAワクチンの臨床開発の実施を計画しています。初期段階の臨床試験の結果が良好であれば、その後大手製薬企業に開発・販売権を導出する計画であり、実現すれば契約締結に伴う一時金、開発の進捗に伴ったマイルストーン、さらに上市後には売上高の一定率を対価として受け取る予定です。しかしながら、臨床開発の失敗その他の理由により、こうした事業計画が実現しない可能性があります。
また、当社グループはDNAワクチン事業推進の目的のため長期的観点から、バイカル社に資本参加しています。しかしながら、同社の事業が計画通りに進展しなかった場合やその他の理由により、投資資金を回収できない可能性があります。また、当社グループはバイカル社との間でAllovectin®に関する研究開発契約を締結しており、アジア地域における独占的開発販売権の許諾を受けています。転移性メラノーマ(悪性黒色腫)以外の癌疾患への適用可能性を検討しておりますが、今後、適切な対応策を見いだせない場合には、Allovectin®による将来の収入が見込めない可能性があります。
(3)研究開発について
一般に新薬の開発には、長期に亘る期間と多額の費用が必要です。それにもかかわらず、医薬品の開発は計画通りに進行するとは限らず、臨床試験のために必要とされる症例数を適時に確保できないこと、臨床試験の実施に係る各種業務を支援・代行するCRO(医薬品開発業務受託機関)における業務が計画通り進行しないこと等の様々な要因によって遅延する可能性があります。さらに、様々な試験の結果、期待した有効性を確認できなかったり、安全性に関する許容できない問題が生じたりした場合には、研究開発を中止するリスクがあります。このような場合には、当社グループの事業戦略や業績が影響を受ける可能性があります。
(4) 製造について
当社グループは、製品及び治験薬等を自社で製造しておらず、他社からの供給に依存しております。従って、製品や治験薬等について、何らかの要因により、品質上の問題が生じたり、もしくは予定通りに必要な数量を確保できない場合には、開発に遅れが生じたり、製品供給の不足により当社グループの業績が影響を受けたりする可能性があります。
(5) 販売について
当社グループが開発中の医薬品については、国内、米国及び欧州等の各地域において、将来競合する可能性のある製品及び開発品が存在します。当社グループは、競争力の高い製品を早期に開発、上市することで、一定の市場シェアの獲得を目指しております。しかしながら、競合他社が当社の想定以上のシェアを獲得した場合には、当社グループが開発した製品が上市された場合においても期待通りの収益をあげられない可能性があります。
また、日本や欧州においては新薬の価格は原則として政府あるいはそれに準じた公的機関により決定され、また、米国においては保険会社・マネージドケア(健康保険運営団体)及び政府のメディケア・プログラムとの交渉により決定されます。そのため、当社グループが開発した製品について当社グループが想定した薬価とならない場合があり期待通りの収益をあげられない可能性があります。
加えて、当社が販売する医薬品について、予期しない副作用が発生した場合には売上高の減少要因となり、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
(6) 薬事法制による規制について
薬事法制は、医薬品・医療機器等の品質、有効性、安全性確保の観点から、企業が行う開発・製造・販売等に関して必要な規制を行う法律であり、当社グループが実施している医薬品の研究開発は日本をはじめ各国の薬事法制の規制を受けております。
各国において、治療環境の変化など様々な要因による承認要件の変更、さらに薬事法制度の変更により、承認を計画通りに取得できない可能性があります。このような場合には、当社グループの事業戦略や業績が影響を受ける可能性があります。
(7)知的財産権について
① 特許戦略
当社グループが現在展開しているHGF遺伝子治療薬、NF-κBデコイオリゴDNAの研究開発活動は、主に当社グループが保有する又は当社グループが実施権を有する特許権あるいは特許出願中の権利に基づき実施しております。以下において、それらのうち特に重要なものを記載しております。
しかしながら、当社グループが現在出願中の特許が全て登録されるとは限りません。また、当社グループの研究開発を超える優れた研究開発により当社グループの特許が淘汰される可能性は、常に存在しております。仮に当社グループの研究開発を超える優れた研究開発がなされた場合、当社グループの事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
さらに、当社グループの今後の事業展開の中でライセンスを受けることが必要な特許が生じ、そのライセンスが受けられなかった場合には、当社グループの事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
対象 | 表題 | 保有者 | 登録(出願)状況 |
HGF遺伝子治療薬 | 肝実質細胞増殖因子及びそれをコードする遺伝子 | 田辺三菱製薬株式会社 (旧 三菱ウェルファーマ株式会社)(注)1 | 米国にて成立済。 |
HGF遺伝子からなる医薬 | 当社 | 日本、米国、欧州(EP)、カナダ、豪州、中国、韓国、台湾にて成立済。 | |
リンパ管新生促進剤 | 当社 | 日本、欧州(EP)にて成立済。 | |
NF-κBデコイオリゴDNA | NF-κBに起因する疾患の治療及び予防剤 | 当社 | 米国、欧州(EP)にて成立済。 日本においては、物質特許及び虚血性疾患・臓器移植・癌などの医薬用途特許について成立済。 |
デコイを含む薬学的組成物及びその使用方法(アトピー性皮膚炎が対象) | 当社 | 日本、米国、欧州(EP)にて成立済。なお日本においては乾癬に対する用途特許も分割出願として成立済。 | |
椎間板の疾患を治療、阻害及び回復するための方法及び組成物 | 当社 ラッシュ大学(米国) | 日本、米国、欧州(EP)、カナダ、にて成立済。 |
(注)1 当社は当該特許の実施権を有しております。
② 知的財産権に関する訴訟、クレーム
2016年12月31日現在において、当社グループの開発に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームが発生したという事実はありません。
ただし、他社が当社グループと同様の研究開発を行っていないという保証はなく、今後とも知的財産について問題が発生しないという保証はありません。
当社グループとしても、このような問題を未然に防止するため、事業展開にあたっては特許調査を実施しており、当社グループ特許が他社の特許に抵触しているという事実は認識しておりません。しかしながら、当社グループのような研究開発型企業にとって、このような知的財産権侵害問題の発生を完全に回避することは困難であります。
(8) 業績の推移について
当社グループの主要な経営指標等の推移は以下のとおりであります。
第14期 | 第15期 | 第16期 | 第17期 | 第18期 | ||
2012年12月期 | 2013年12月期 | 2014年12月期 | 2015年12月期 | 2016年12月期 | ||
(1) 連結経営指標等 | ||||||
事業収益 | (千円) | 444,509 | 491,311 | 909,922 | 430,154 | 514,269 |
経常損失 | (千円) | △1,716,366 | △1,383,225 | △2,395,329 | △4,089,362 | △4,847,297 |
親会社株主に帰属する当期純損失 | (千円) | △1,708,366 | △1,409,686 | △2,369,205 | △4,143,335 | △4,776,780 |
純資産額 | (千円) | 1,738,562 | 3,543,534 | 7,734,440 | 4,221,356 | 3,869,382 |
総資産額 | (千円) | 2,260,229 | 3,904,164 | 8,183,524 | 4,751,994 | 4,539,201 |
営業活動による キャッシュ・フロー | (千円) | △1,631,074 | △1,456,637 | △2,703,624 | △4,599,416 | △4,983,694 |
投資活動による キャッシュ・フロー | (千円) | 7,174 | △27,203 | △52,082 | △69,371 | △829,815 |
財務活動による キャッシュ・フロー | (千円) | 387,160 | 3,389,880 | 6,426,732 | 716,713 | 4,793,388 |
現金及び現金同等物の期末残高 | (千円) | 354,778 | 2,295,153 | 6,011,329 | 2,068,825 | 995,620 |
(2) 個別経営指標等 | ||||||
事業収益 | (千円) | 442,075 | 441,311 | 909,922 | 430,154 | 514,269 |
経常損失 | (千円) | △1,704,583 | △1,436,883 | △2,421,204 | △4,131,649 | △4,762,602 |
当期純損失 | (千円) | △1,684,339 | △1,468,456 | △2,386,709 | △4,169,657 | △4,683,230 |
資本金 | (千円) | 9,848,427 | 11,552,853 | 14,847,066 | 15,214,941 | 17,651,190 |
純資産額 | (千円) | 1,703,887 | 3,414,403 | 7,556,177 | 4,017,595 | 3,777,897 |
総資産額 | (千円) | 2,146,939 | 3,790,381 | 8,049,938 | 4,572,839 | 4,452,862 |
(注) 1 「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号 2013年9月13日)等を適用し、当連結会計年度より、「当期純損失」を「親会社株主に帰属する当期純損失」としております。
(注) 2 事業収益には消費税等は含まれておりません。
当社グループは、事業のステージが先行投資の段階にあるため、現時点では、上記記載のように、第14期から第18期において親会社株主に帰属する当期純損失を計上しておりますが、現在の事業計画に沿って研究開発を着実に進め、将来、医薬品の販売から得られる収益によって損益を改善し、さらには利益を拡大する計画であります。
ただし、現在の事業計画に沿った医薬品の研究開発や販売が実現しない場合には、当社グループが将来においても親会社株主に帰属する当期純利益を計上できない可能性もあります。
また、上記記載のように、第14期から第18期においては、営業活動によるキャッシュ・フローもマイナスであり、現状の事業計画に沿った医薬品の研究開発や販売が実現しない場合には、将来においても営業活動によるキャッシュ・フローがプラスにならない可能性もあります。
(9)経営上の重要な契約等について
当社のビジネス展開上重要と思われる契約の内容を本報告書「第一部 企業情報 第2 事業の状況 5 経営上の重要な契約等」に記載しております。なお、当社グループは、これらの契約に関して、いずれも当社グループの根幹に関わる重要な契約であると認識しております。したがって、当該契約の破棄が行われた場合、当社グループにとって不利な契約改定が行われた場合及び契約期間満了後に契約が継続されない場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)組織体制について
① 人材の確保
当社グループの競争力は研究開発力にあり、専門性の高い研究及び開発担当者の確保が不可欠です。また、事業の成長拡大を支えるためには事業開発、営業、製造、内部管理等の人材も充実させる必要があります。当社グループは、優秀な人材の確保及び社内人材の教育に努めますが、人材の確保及び社内人材の教育が計画どおりに進まない場合には、当社グループの業務に支障をきたす可能性があります。
一方、当社グループは、業務遂行体制の充実に努めますが、小規模組織であり、限りある人的資源に依存しているために、社員に業務遂行上の支障が生じた場合、あるいは社員が社外流出した場合には、当社グループの業務に支障をきたす可能性があります。
② 特定人物への依存
当社グループの事業の推進者は、代表取締役である山田英です。代表取締役山田英は、当社グループの最高責任者として、当社グループの経営戦略の決定、研究開発、事業開発及び管理業務の遂行に大きな影響力を有しております。また、当社メディカルアドバイザーである森下竜一には、研究開発の面でアドバイスを受けております。
当社グループではこれらの特定人物に過度に依存しない体制を構築すべく、経営組織の強化を図っていますが、当面の間はこれらの特定人物への依存度が高い状態で推移すると見込まれます。このような状況のなかで、これらの特定人物が何らかの理由により当社グループの業務を継続することが困難になった場合には、当社グループの事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(11)訴訟について
当社グループは、医薬品の副作用、製造物責任、知的財産権及び労務問題等に関して、訴訟を提起される可能性があります。将来、当社グループが提訴された場合には、その内容次第で当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
(12)配当政策について
当社グループは、創薬系バイオベンチャーであり、2008年4月よりムコ多糖症Ⅵ型治療薬「ナグラザイム®」を販売しているものの、主要なプロジェクトにおいては医薬品を開発中であり、事業のステージは、先行投資の段階にあります。このため、現時点においては、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しており、剰余金の配当は実施しておりません。
ただし、株主への利益還元については重要な経営課題と認識しており、将来、現在開発中の新薬が上市され、その販売によって利益が計上され分配可能額が生じる時期においては、経営成績及び財政状態を勘案しながら、剰余金の配当を検討したいと考えております。
(13)新株予約権の付与(ストック・オプション)制度について
当社はストック・オプション制度を採用しております。当該制度は会社法第236条、第238条及び第239条の規定に基づき、新株予約権を付与する方式により、当社従業員並びに当社子会社の取締役及び従業員に対して付与することを株主総会において決議されたものです。
これらの新株予約権の目的となる株式の数は2016年12月31日現在で合計21,000株となり、発行済株式数の0.03%となっております。これらの新株予約権の行使が行われた場合には、当社の1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。
(14)外国為替変動について
当社グループは、事業活動をグローバルに展開しており、海外での研究開発活動、海外企業とのライセンス、海外からの製品及び治験薬の仕入等において外貨建取引が存在します。また、当社グループが現在開発を行っている製品は、日本のみならず、米国を含む海外市場での販売が見込まれます。そのため、急激な為替変動によって為替リスクが顕在化した場合には、当社グループの事業戦略や業績が影響を受ける可能性があります。
(15)継続企業の前提に関する重要事象等について
医薬品事業は、製品化までに多額の資金と長い時間を要する等特性があり、創薬ベンチャーである当社グループにおいては、継続的な営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上している状況にあります。そのため、一部のプロジェクトにおいては提携先を確保し、開発協力金等を得ることにより開発資金の低減に努めているほか、ムコ多糖症Ⅵ型治療薬「ナグラザイム®」の販売を行っておりますが、全ての開発投資を補うに足る収益は生じておりません。当社グループは、当連結会計年度末において現金及び預金9億95百万円を有しているものの、全てのプロジェクトを継続的に進めるための十分な資金が不足していることから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。
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このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E05301] S100A0HN)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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