有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100ARAS
株式会社 熊谷組 研究開発活動 (2017年3月期)
事業等のリスクメニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当社グループの研究開発活動は、企業業績に対して即効性のある技術、商品の開発、各種技術提案に直結した技術の開発、中長期的市場の変化を先取りした将来技術の研究、開発技術の現業展開と技術部門の特性を生かした技術営業、総合的技術力向上のための各種施策からなっており、社会経済状況の変化に対し機動的に対応できる体制をとっている。
当連結会計年度は、研究開発費として17億円を投入した。
当連結会計年度における主な研究開発活動は、次のとおりである。
(1) 土木事業
① 遠隔吹付け機の開発
導入後30年を経た山岳工法(NATM)では、主要な支保部材である吹付けコンクリートの高強度化、低粉塵化の技術開発が行われ、坑内環境は改善してきている。しかし、圧縮空気を利用した吹付け作業では粉塵の発生をなくすことは困難であり、作業員の健康面や労働負担が大きな課題となっている。労働負荷を大幅に低減するため、無人化施工技術を活用し、危険な切羽側での吹付け作業位置を環境の良い操作室に移動することで、安定した吹付け作業を行うことができる遠隔吹付けシステムを開発した。遠隔吹付け機にはカメラを3台設置し、切羽から離れた場所に設置した操作室のモニタを見ながら、吹付け作業を行う。実際のトンネル現場において試験施工を行い、実現性を確認した。吹付け作業時に切羽から作業員がいなくなれば、粉塵発生量が問題とならないため、大容量吹付けが可能となり、施工効率の向上も可能となる。今後は積極的に遠隔吹付けシステムを実現場に投入する。なお、この技術は西尾レントオール株式会社との共同開発である。
② 注水併用エアクーリング工法の開発
コンクリート構造物における品質確保として、ひび割れ抑制対策は重要である。特に、施工時の水和熱による温度ひび割れは、ひび割れ幅も大きく、構造物の耐久性に大きく影響を及ぼす。対策の一つとして、施工後のコンクリートのピーク温度を下げるクーリング工法があるが、今回、中規模の構造物(函渠や橋脚など)を対象として、従来のエアクーリング工法(冷却媒体として空気が主)に注水を併用した新しいクーリング工法(注水併用エアクーリング工法)を開発し、その適用性について確認した。本工法は、送風しているクーリング管中に水をミスト状にして少量滴下し、その気化熱を利用して冷媒となる空気温度を低下させ、送風による冷却効果を高めたものである。現在までに、函渠構造物や橋脚での施工事例やトンネル覆工での試験施工を実施し効果を確認済みである。今後も施工実績を増やして、データを増やすとともに実用化を図っていく予定である。
③ 高難度災害適用へのネットワーク対応型無人化施工技術
雲仙普賢岳の災害対策以来、長年、無人化施工技術の開発、高度化に取り組んできた。その成果が阿蘇大橋地区での緊急防災対策で大いに効果を発揮した。昨年、熊本地震により阿蘇大橋地区では大規模な斜面崩壊が発生し、不安定土砂除去、土留盛土築堤等の緊急対策工事を行うこととしたが、余震や降雨等によりさらなる崩壊が懸念された。このため、全工程無人化とし、そのうえで最大限の効率を追求することとした。その中核として導入したのがネットワーク対応型無人化施工システムである。これは建設機械の操作、画像、施工データを一括してIP(インターネット・プロトコル)化し、光ファイバケーブルや無線LANを使用して伝送するシステムで、現場状況に適応させて開発した。また、その技術に対応した新技術開発を並行して行い、CAN-LAN変換器を適用したICT建設機械の導入、操作映像の向上に高精細画像伝送システムを導入するなどIoT、ICTを高度に活用したシステムを現場状況に合わせて組合せることができる。また、無人化施工システムの迅速な立上げを実現するために、予め遠隔操作室のシステム機器設置と設定が完了した高機能遠隔操作室を開発し、無人化施工の早期立上げを実現した。その災害対応における総合力はその成果とともに高く評価されている。
(2) 建築事業
① コンクリートの乾燥収縮ひずみ制御を確立
コンクリートの乾燥収縮ひずみを低減することのできる材料をコンクリートに使用し、その量を調整することによって、乾燥収縮ひずみを通常より小さく(0~800μの範囲)制御できる技術を確立した。また、その効果検証のため、収縮ゼロから通常のコンクリートまでの5種類の調合を用い、壁及びデッキスラブの実大試験体実験を実施した。コンクリート打設後1年を経過しているが、対策を施した試験体については、乾燥収縮ひび割れは発生していない。コンクリートの乾燥による収縮ひび割れは、建築物の耐久性と美観に大きく影響するため、その制御については様々な取り組みが行われており、社会的要請も年々高まっている。最近では、日本建築学会からの仕様書・同解説及び指針等に従った材料・調合面での対策として、石灰石粗骨材の使用や収縮低減剤、膨張材を適用する事例が多くみられるが、収縮低減剤と膨張材の併用やセメント種類が異なる場合の影響など、不明な点が多く残されている。このような背景から、収縮低減剤と膨張材の調合見直しやセメント種類による影響の確認実験を実施することにより、「収縮ゼロコンクリート(乾燥収縮ひずみを0~100μまで低減)」の使用によるコンクリートの乾燥収縮ひずみを0~800μの範囲で制御できる技術を確立した。1㎥当たりの価格は、普通コンクリートと比較して約1.3倍から2.0倍となり、予算や要求性能レベルに応じた調合方法を選定できる。この技術により、要求性能とコストを考慮しつつ、長期にわたり性能や美観を維持した高品質のコンクリートの提供が可能であり、工場・倉庫などの床、打放し仕上げのRC造施設などの物件で展開していく。また、2017年度まで、試験体の観察や解析を継続し、乾燥収縮ひび割れの制御技術を検証していく。なお、本案件は当社、株式会社安藤・間、佐藤工業株式会社、戸田建設株式会社、西松建設株式会社、株式会社フジタ及び前田建設工業株式会社の建設7社による共同開発である。
② 風を効果的に低減するパネルを開発
防風パネルや建物の目隠しパネルなど、屋外の風の影響を受けやすい設置物に作用する風力を低減する技術を開発した。近年、大型台風や急速に発達した低気圧に伴う強風により、工作物や建物外装材の被害が増加している。これは、建物の屋上や隅角部付近に設置される目隠しパネル、広告塔や看板、マンションのバルコニー隔て板や手摺ガラスに作用する大きな風力が原因である。対策として、パネル部材や取り付けの強度を増す方法があるが、コストアップに繋がっていた。今般シミュレーションや風洞実験を繰り返してパネルに作用する風力を詳細に把握し、パネルの形状に工夫を重ねた結果、効果的に風力を低減できるパネルを考案した。パネルに作用する風力低減方法については、敢えて風がパネルを通り抜ける構造とし、さらに部材形状を風が各部材間を滑らかに流れて部材に作用する風力が小さくなる形状とした。また、パネルの機能維持に配慮し奥の景色が透けて見えない構造にし、同時にパネル表面に文字や絵などを描けるようにした。風力低減効果については、正面風の場合、風力低減パネルに作用する風力は、平板に作用する風力に比べてほぼ半減、風力低減パネルの背後ではさらに風速が半分以下に減少するため、パネル背後に設置する物体に作用する風力は、パネルを設置しない場合に比べて1/4程度に減少すると推測できる。この技術は土木・建築分野で採用される防風パネル、目隠しパネルのほか、広告塔や看板、バルコニー手摺や隔て板など、屋外の風の影響を受けやすい設置物に幅広く適用が可能である。今後、試作品による風騒音の検討も重ねていきながら、2年後の製品化を目指す。
③ 国内メーカーでは初めて乾式浮床での「石貼り仕様」を開発 ―床衝撃音遮断性能に優れた「乾式浮床ベースケア」―
首都圏(特に東京都)や九州圏では、共同住宅は乾式二重床で設計されることが圧倒的に多い。しかしながら、京都市、川崎市及び横浜市エリアなどの高さ制限のある地域では、階高を抑えるために直貼り床で計画されることが多くなる。こうしたことを踏まえ、当社は床仕上げ高さを抑えても床衝撃音遮断性能が高く、転倒時衝撃力が小さい「乾式浮床ベースケア」を開発、商品化してきた。一般的に、共同住宅に用いられる直貼り床の厚みは13㎜程度であり、仕上げ材に天然大理石(無垢大理石)やタイルを用いると、その薄さがひび割れや欠けなどの破損の原因となる恐れがあり、直床貼りで「高級感のある石貼り仕上げ」という要望に応えられなかった。こうしたニーズに対応するため、当社は「乾式浮床ベースケア」の床衝撃音遮断性能や転倒時衝撃力性能を損なうことなく、直貼り床でも石やタイルを施工できる「乾式浮床ベースケア石貼り仕様」を開発した。乾式パネルの上に2枚の下地材(ガラス繊維不織布入りせっこう板と針葉樹合板)を用いることで、石のひび割れや欠けを防ぎながら床仕上げ高さも抑えて、優れた床衝撃音遮断性能を実現した。また、本仕様の転倒時衝撃力は、JIS規格の推奨値である100G以下を確保しており、居室内でも石貼り仕様で施工することができる。当社では、過去に発表した「乾式浮床ベースケア」の内装用・土足用に続き、新たに「石貼り仕様」を商品ラインナップに加えて発注者や設計事務所などに積極的に提案し、多様な要望に応えたいと考えている。なお、本案件は大建工業株式会社及び野原産業株式会社との共同開発である。
④ 福島産土着藻類による燃料生産実証事業を開始
当社を含む会員8社(注)が参画する一般社団法人藻類産業創成コンソーシアムは、経済産業省資源エネルギー庁の2016年度「微細藻類燃料生産実証事業費補助金」の採択を受け、福島県の土着藻類による燃料生産実証事業を開始した。同コンソーシアムは2013年10月より福島県震災復興事業「福島県再生可能エネルギー次世代技術開発事業」を受託し、福島県の土着藻類の大量培養から燃料化までの一連の流れを確立し、福島県南相馬市に実証実験施設「藻類バイオマス生産開発拠点」を設置している。今後は約3年間で得られたノウハウや設備を活用し、排熱・排ガス(CO₂)、下水を利用した土着藻類バイオマスの高い生産量の実現を図る。また、脱水、濃縮・抽出過程の効率化や抽出後の残渣再資源化の検討・実施実験を行い、エネルギーや生産コスト(藻類燃料単価)の削減を目指し、燃料生産を実証していく。
(注)当社、株式会社相双環境整備センター、藻バイオテクノロジーズ株式会社、高砂熱学工業株式会社、国立大学法人筑波大学、株式会社富士通システムズ・ウエスト、ヴェオリア・ジェネッツ株式会社、三菱化工機株式会社
⑤ 「シリーズ建築の音環境入門100号記念号」を刊行
当社らで構成する床衝撃音研究会(注)は、このたび山下恭弘信州大学名誉教授監修のもと「シリーズ建築の音環境入門100号記念号」を刊行した。床衝撃音研究会では、2008年からデベロッパーや設計事務所、建設会社などの技術者向けに小冊子「建築の音環境入門」をシリーズ化して発刊してきた。本号では、これまで要望の多かった「実務者のための建築音響設計法」を取り上げた。建物の設計や施工に携わる技術者が、音環境についての疑問点のあるときに本号を見て、必要に応じてどのような音環境対策を行ったら良いかなどをわかりやすい構成で解説した。今後も引き続き共同住宅の音環境に関する重要なツールとして位置づけ、デベロッパーや設計事務所などに対して積極的に提供していく予定である。
(注)共同住宅のより良い音環境の研究を目的として、2006年に当社、有限会社泰成電機工業、フジモリ産業株式会社、野原産業株式会社、万協株式会社及び有限会社音研が設立した組織。
(3) 子会社
株式会社ガイアート
① 橋舗装工法の開発
社会インフラの老朽化、とりわけ橋梁の掛け替えが急務となる情勢を受け、急速施工が可能なプレキャスト床版掛け替え工法が注目を集めており、その工法に適した新たな橋面舗装の開発を行っている。室内試験でプレキャスト床版ジョイント部の動きに追従できるよう開発した特殊基層混合物が、現場で施工可能かを試験施工で確認した。また、ジョイント部の動きの影響を緩和できるシートの効果を室内試験で検証した。
② 移動式たわみ測定装置の実用化に関する共同研究
舗装の効率的な管理に向けて、定期的な点検・維持修繕が求められている。構造的な舗装の健全度の調査には、FWDによるたわみ測定が一般的に用いられるが、交通規制が必要であり、定期的な点検には適さない。移動しながらたわみを測定する移動式たわみ測定装置の開発が求められるなか、主に測定精度向上の検討を実施してきた。現在、2つの公的機関、1つの大学、5つの民間企業で移動式たわみ測定装置の実用化に関する共同研究に着手している。
当連結会計年度は、研究開発費として17億円を投入した。
当連結会計年度における主な研究開発活動は、次のとおりである。
(1) 土木事業
① 遠隔吹付け機の開発
導入後30年を経た山岳工法(NATM)では、主要な支保部材である吹付けコンクリートの高強度化、低粉塵化の技術開発が行われ、坑内環境は改善してきている。しかし、圧縮空気を利用した吹付け作業では粉塵の発生をなくすことは困難であり、作業員の健康面や労働負担が大きな課題となっている。労働負荷を大幅に低減するため、無人化施工技術を活用し、危険な切羽側での吹付け作業位置を環境の良い操作室に移動することで、安定した吹付け作業を行うことができる遠隔吹付けシステムを開発した。遠隔吹付け機にはカメラを3台設置し、切羽から離れた場所に設置した操作室のモニタを見ながら、吹付け作業を行う。実際のトンネル現場において試験施工を行い、実現性を確認した。吹付け作業時に切羽から作業員がいなくなれば、粉塵発生量が問題とならないため、大容量吹付けが可能となり、施工効率の向上も可能となる。今後は積極的に遠隔吹付けシステムを実現場に投入する。なお、この技術は西尾レントオール株式会社との共同開発である。
② 注水併用エアクーリング工法の開発
コンクリート構造物における品質確保として、ひび割れ抑制対策は重要である。特に、施工時の水和熱による温度ひび割れは、ひび割れ幅も大きく、構造物の耐久性に大きく影響を及ぼす。対策の一つとして、施工後のコンクリートのピーク温度を下げるクーリング工法があるが、今回、中規模の構造物(函渠や橋脚など)を対象として、従来のエアクーリング工法(冷却媒体として空気が主)に注水を併用した新しいクーリング工法(注水併用エアクーリング工法)を開発し、その適用性について確認した。本工法は、送風しているクーリング管中に水をミスト状にして少量滴下し、その気化熱を利用して冷媒となる空気温度を低下させ、送風による冷却効果を高めたものである。現在までに、函渠構造物や橋脚での施工事例やトンネル覆工での試験施工を実施し効果を確認済みである。今後も施工実績を増やして、データを増やすとともに実用化を図っていく予定である。
③ 高難度災害適用へのネットワーク対応型無人化施工技術
雲仙普賢岳の災害対策以来、長年、無人化施工技術の開発、高度化に取り組んできた。その成果が阿蘇大橋地区での緊急防災対策で大いに効果を発揮した。昨年、熊本地震により阿蘇大橋地区では大規模な斜面崩壊が発生し、不安定土砂除去、土留盛土築堤等の緊急対策工事を行うこととしたが、余震や降雨等によりさらなる崩壊が懸念された。このため、全工程無人化とし、そのうえで最大限の効率を追求することとした。その中核として導入したのがネットワーク対応型無人化施工システムである。これは建設機械の操作、画像、施工データを一括してIP(インターネット・プロトコル)化し、光ファイバケーブルや無線LANを使用して伝送するシステムで、現場状況に適応させて開発した。また、その技術に対応した新技術開発を並行して行い、CAN-LAN変換器を適用したICT建設機械の導入、操作映像の向上に高精細画像伝送システムを導入するなどIoT、ICTを高度に活用したシステムを現場状況に合わせて組合せることができる。また、無人化施工システムの迅速な立上げを実現するために、予め遠隔操作室のシステム機器設置と設定が完了した高機能遠隔操作室を開発し、無人化施工の早期立上げを実現した。その災害対応における総合力はその成果とともに高く評価されている。
(2) 建築事業
① コンクリートの乾燥収縮ひずみ制御を確立
コンクリートの乾燥収縮ひずみを低減することのできる材料をコンクリートに使用し、その量を調整することによって、乾燥収縮ひずみを通常より小さく(0~800μの範囲)制御できる技術を確立した。また、その効果検証のため、収縮ゼロから通常のコンクリートまでの5種類の調合を用い、壁及びデッキスラブの実大試験体実験を実施した。コンクリート打設後1年を経過しているが、対策を施した試験体については、乾燥収縮ひび割れは発生していない。コンクリートの乾燥による収縮ひび割れは、建築物の耐久性と美観に大きく影響するため、その制御については様々な取り組みが行われており、社会的要請も年々高まっている。最近では、日本建築学会からの仕様書・同解説及び指針等に従った材料・調合面での対策として、石灰石粗骨材の使用や収縮低減剤、膨張材を適用する事例が多くみられるが、収縮低減剤と膨張材の併用やセメント種類が異なる場合の影響など、不明な点が多く残されている。このような背景から、収縮低減剤と膨張材の調合見直しやセメント種類による影響の確認実験を実施することにより、「収縮ゼロコンクリート(乾燥収縮ひずみを0~100μまで低減)」の使用によるコンクリートの乾燥収縮ひずみを0~800μの範囲で制御できる技術を確立した。1㎥当たりの価格は、普通コンクリートと比較して約1.3倍から2.0倍となり、予算や要求性能レベルに応じた調合方法を選定できる。この技術により、要求性能とコストを考慮しつつ、長期にわたり性能や美観を維持した高品質のコンクリートの提供が可能であり、工場・倉庫などの床、打放し仕上げのRC造施設などの物件で展開していく。また、2017年度まで、試験体の観察や解析を継続し、乾燥収縮ひび割れの制御技術を検証していく。なお、本案件は当社、株式会社安藤・間、佐藤工業株式会社、戸田建設株式会社、西松建設株式会社、株式会社フジタ及び前田建設工業株式会社の建設7社による共同開発である。
② 風を効果的に低減するパネルを開発
防風パネルや建物の目隠しパネルなど、屋外の風の影響を受けやすい設置物に作用する風力を低減する技術を開発した。近年、大型台風や急速に発達した低気圧に伴う強風により、工作物や建物外装材の被害が増加している。これは、建物の屋上や隅角部付近に設置される目隠しパネル、広告塔や看板、マンションのバルコニー隔て板や手摺ガラスに作用する大きな風力が原因である。対策として、パネル部材や取り付けの強度を増す方法があるが、コストアップに繋がっていた。今般シミュレーションや風洞実験を繰り返してパネルに作用する風力を詳細に把握し、パネルの形状に工夫を重ねた結果、効果的に風力を低減できるパネルを考案した。パネルに作用する風力低減方法については、敢えて風がパネルを通り抜ける構造とし、さらに部材形状を風が各部材間を滑らかに流れて部材に作用する風力が小さくなる形状とした。また、パネルの機能維持に配慮し奥の景色が透けて見えない構造にし、同時にパネル表面に文字や絵などを描けるようにした。風力低減効果については、正面風の場合、風力低減パネルに作用する風力は、平板に作用する風力に比べてほぼ半減、風力低減パネルの背後ではさらに風速が半分以下に減少するため、パネル背後に設置する物体に作用する風力は、パネルを設置しない場合に比べて1/4程度に減少すると推測できる。この技術は土木・建築分野で採用される防風パネル、目隠しパネルのほか、広告塔や看板、バルコニー手摺や隔て板など、屋外の風の影響を受けやすい設置物に幅広く適用が可能である。今後、試作品による風騒音の検討も重ねていきながら、2年後の製品化を目指す。
③ 国内メーカーでは初めて乾式浮床での「石貼り仕様」を開発 ―床衝撃音遮断性能に優れた「乾式浮床ベースケア」―
首都圏(特に東京都)や九州圏では、共同住宅は乾式二重床で設計されることが圧倒的に多い。しかしながら、京都市、川崎市及び横浜市エリアなどの高さ制限のある地域では、階高を抑えるために直貼り床で計画されることが多くなる。こうしたことを踏まえ、当社は床仕上げ高さを抑えても床衝撃音遮断性能が高く、転倒時衝撃力が小さい「乾式浮床ベースケア」を開発、商品化してきた。一般的に、共同住宅に用いられる直貼り床の厚みは13㎜程度であり、仕上げ材に天然大理石(無垢大理石)やタイルを用いると、その薄さがひび割れや欠けなどの破損の原因となる恐れがあり、直床貼りで「高級感のある石貼り仕上げ」という要望に応えられなかった。こうしたニーズに対応するため、当社は「乾式浮床ベースケア」の床衝撃音遮断性能や転倒時衝撃力性能を損なうことなく、直貼り床でも石やタイルを施工できる「乾式浮床ベースケア石貼り仕様」を開発した。乾式パネルの上に2枚の下地材(ガラス繊維不織布入りせっこう板と針葉樹合板)を用いることで、石のひび割れや欠けを防ぎながら床仕上げ高さも抑えて、優れた床衝撃音遮断性能を実現した。また、本仕様の転倒時衝撃力は、JIS規格の推奨値である100G以下を確保しており、居室内でも石貼り仕様で施工することができる。当社では、過去に発表した「乾式浮床ベースケア」の内装用・土足用に続き、新たに「石貼り仕様」を商品ラインナップに加えて発注者や設計事務所などに積極的に提案し、多様な要望に応えたいと考えている。なお、本案件は大建工業株式会社及び野原産業株式会社との共同開発である。
④ 福島産土着藻類による燃料生産実証事業を開始
当社を含む会員8社(注)が参画する一般社団法人藻類産業創成コンソーシアムは、経済産業省資源エネルギー庁の2016年度「微細藻類燃料生産実証事業費補助金」の採択を受け、福島県の土着藻類による燃料生産実証事業を開始した。同コンソーシアムは2013年10月より福島県震災復興事業「福島県再生可能エネルギー次世代技術開発事業」を受託し、福島県の土着藻類の大量培養から燃料化までの一連の流れを確立し、福島県南相馬市に実証実験施設「藻類バイオマス生産開発拠点」を設置している。今後は約3年間で得られたノウハウや設備を活用し、排熱・排ガス(CO₂)、下水を利用した土着藻類バイオマスの高い生産量の実現を図る。また、脱水、濃縮・抽出過程の効率化や抽出後の残渣再資源化の検討・実施実験を行い、エネルギーや生産コスト(藻類燃料単価)の削減を目指し、燃料生産を実証していく。
(注)当社、株式会社相双環境整備センター、藻バイオテクノロジーズ株式会社、高砂熱学工業株式会社、国立大学法人筑波大学、株式会社富士通システムズ・ウエスト、ヴェオリア・ジェネッツ株式会社、三菱化工機株式会社
⑤ 「シリーズ建築の音環境入門100号記念号」を刊行
当社らで構成する床衝撃音研究会(注)は、このたび山下恭弘信州大学名誉教授監修のもと「シリーズ建築の音環境入門100号記念号」を刊行した。床衝撃音研究会では、2008年からデベロッパーや設計事務所、建設会社などの技術者向けに小冊子「建築の音環境入門」をシリーズ化して発刊してきた。本号では、これまで要望の多かった「実務者のための建築音響設計法」を取り上げた。建物の設計や施工に携わる技術者が、音環境についての疑問点のあるときに本号を見て、必要に応じてどのような音環境対策を行ったら良いかなどをわかりやすい構成で解説した。今後も引き続き共同住宅の音環境に関する重要なツールとして位置づけ、デベロッパーや設計事務所などに対して積極的に提供していく予定である。
(注)共同住宅のより良い音環境の研究を目的として、2006年に当社、有限会社泰成電機工業、フジモリ産業株式会社、野原産業株式会社、万協株式会社及び有限会社音研が設立した組織。
(3) 子会社
株式会社ガイアート
① 橋舗装工法の開発
社会インフラの老朽化、とりわけ橋梁の掛け替えが急務となる情勢を受け、急速施工が可能なプレキャスト床版掛け替え工法が注目を集めており、その工法に適した新たな橋面舗装の開発を行っている。室内試験でプレキャスト床版ジョイント部の動きに追従できるよう開発した特殊基層混合物が、現場で施工可能かを試験施工で確認した。また、ジョイント部の動きの影響を緩和できるシートの効果を室内試験で検証した。
② 移動式たわみ測定装置の実用化に関する共同研究
舗装の効率的な管理に向けて、定期的な点検・維持修繕が求められている。構造的な舗装の健全度の調査には、FWDによるたわみ測定が一般的に用いられるが、交通規制が必要であり、定期的な点検には適さない。移動しながらたわみを測定する移動式たわみ測定装置の開発が求められるなか、主に測定精度向上の検討を実施してきた。現在、2つの公的機関、1つの大学、5つの民間企業で移動式たわみ測定装置の実用化に関する共同研究に着手している。
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ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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