有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100AF55
鹿島建設株式会社 研究開発活動 (2017年3月期)
経営上の重要な契約等メニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当社グループは、多様化する社会及び顧客のニーズに対応し、受注並びに生産への貢献を目的に、建設事業の品質及び生産性向上のための技術をはじめとして、将来的なニーズを先取りする技術まで幅広い課題に関する研究開発活動を大学、公共機関や他企業との共同研究も推進しながら、効率的に実施している。
当連結会計年度における研究開発費の総額は82億円であり、主な成果は次のとおりである。なお、当社は研究開発活動を土木事業、建築事業のセグメントごとに区分していないため建設事業として記載している。
(建設事業)
1 当社
(1) 設計・施工合理化技術
① 溶接ロボットの現場適用
近く予想される溶接技能工不足や将来的な溶接技能工の高齢化への対策として、建築工事において「汎用可搬型溶接ロボット」を有効に活用するための手法を㈱横河ブリッジと共同で開発し、複数工事の鉄骨溶接作業に適用して良好な結果を得た。また、今後、全国の建築工事へ溶接ロボットによる施工を迅速に普及・展開させるとともに、施工品質を保証する体制を鹿島グループ全体で確立するため、グループ会社である鹿島クレス㈱に溶接事業部を発足させ、同社の社員を溶接ロボットのオペレータとして育成する取り組みを開始した。② 建設機械による自動化施工
熟練技能者の減少への対応や土木工事全般の生産性及び安全性の向上を目指し、建設機械の自動化技術による次世代の建設生産システム「A4CSEL※(クワッドアクセル※)」の高度化に取り組んでおり、今般、㈱小松製作所と共同で大分川ダム堤体盛立工事において自動ダンプトラックの導入試験を行い、盛立部におけるダンプトラックの運搬・荷下ろし作業の自動化に成功した。既に開発している自動振動ローラと自動ブルドーザを組み合わせることで、ダム工事や造成工事において大きな比率を占める複数の建設機械による連携作業全体の自動化が可能であることを確認した。③ 医療機関における睡眠環境の改善
病院の多床室(相部屋)に入院する患者個々に対して、睡眠に与える影響力の大きい「温熱」・「音」・「光」環境を最適化し、睡眠環境を向上する技術を構築した。本技術により、患者の睡眠環境を整え生体リズムを安定させることで療養環境が向上するだけでなく、夜間のナースコール呼出の減少により医療スタッフの業務負荷が軽減されることが期待できる。本技術の構築にあたり、東北大学大学院医学系研究科 尾崎教授と共同で多床室の環境特性と患者の睡眠状態の実態調査を実施するとともに、東京睡眠医学センター長・慶應義塾大学医学部睡眠医学講座 遠藤教授の監修のもとで被験者実験を実施した。(2) 社会基盤構築技術
① 山岳トンネルの掘削技術
岩手県で施工中の国道45号唐丹第3トンネル工事において、掘削工事の高速化のため、さまざまな施工の合理化を図った結果、NATM(*1)による大断面トンネルとしては国内最高記録となる月進(月間掘削距離)270mを達成した。また、本トンネル工事では、山岳トンネルの効率的かつ高速な施工を目的として、ドリルジャンボ(発破用の爆薬の装填やロックボルトの孔を開けるための施工機械)の新しい削孔誘導システム「MOLEs(*2)(モールス)」を㈱演算工房と共同で開発し、初適用した。*1:NATM:New Austrian Tunneling Method 地山自体の保持力を利用してトンネルを支保する工法
*2:MOLEs:Mograss Operate with Laser scanning Engine system
② ドローンによるレーザ測量
ドローンを使ったレーザ測量技術を㈱ニコン・トリンブル及びルーチェサーチ㈱と共同で実施し、大分川ダム建設工事において、日本で初めてドローンによるレーザ測量を行い、高密度・高精度の測量が可能であることを確認した。従来技術のドローンによる写真測量では、予め基準点を地表面に複数設置する必要があるが、本測量では地表面に向けてレーザを照射することで得られる距離と、機体に内蔵されたGNSS(*3)とジャイロセンサーにより機体の位置情報を得られるため、基準点の設置が不要となった。また、レーザは樹木の隙間を通り地表面まで到達するため、伐採・除根前に地山を計測することが可能である。*3:GNSS:Global Navigation Satellite System(全球測位衛星システム) GPS、GLONASS、Galileo、準天頂衛星(QZSS)等の衛星測位システムの総称
③ 光ファイバーによるPC張力計測技術
光ファイバーを用いたひずみ計測技術を応用し、PC(プレストレストコンクリート)に使用するPCケーブルの張力を計測する技術を住友電工スチールワイヤー㈱及びヒエン電工㈱と共同で開発した。本計測技術を国道115号月舘高架橋上部工工事に適用し、PCケーブルの緊張作業時の張力並びに定着後や施工完了後の導入張力(コンクリートを圧縮する力)の分布を現場で高い精度で計測できることを確認した。本技術を適用することで、従来困難であったPCケーブルの張力管理を施工時から維持管理まで的確に行うことが可能となった。(3) 震災対策関連技術
① 長周期地震動対策
既存超高層ビル「サンシャイン60」において、巨大地震が発生した際に予想される長周期地震動に対する安全性を一層高めることを目的として、新たに開発された変形制御ダンパ「S-Lockダンパ※」を含む3種類のダンパを組み合わせる日本初の工法による長周期地震動対策工事を実施した。「サンシャイン60」は既に新耐震設計基準により設計された建築物と同等以上の耐震性を有しているが、本対策により建物の安全性を更に確かなものとした。② 福島第一原子力発電所 汚染水対策
東京電力福島第一原子力発電所における汚染水対策として、原子炉建屋群の周囲に水を通さない壁(陸側遮水壁)を造成することとなり、当社は遮水性や施工性に優れた凍土方式による遮水壁を提案し、2013年に採用された。2015年度末から凍土壁の造成を段階的に進めた結果、地下水位の変化から凍土壁が遮水壁として機能していることが確認された。遮水壁は造成後も長期にわたり安定して運用する必要があるため、地中の壁の健全性を温度で常時確認することができるモニタリングシステムや、万一、凍結管が損傷しても凍結管を容易に交換できる三重管構造など、様々な安全対策を構築した。(4) 地球環境技術
① コンクリート技術
高い環境性能・品質・経済性を兼ね備えた新しい環境配慮型コンクリート「エコクリート※BLS(*4)」を開発した。建築物を構築する上で不可欠な材料であるセメントは製造過程で大量のCO2を排出することから、CO2排出量の少ない低炭素セメントを用いたコンクリートの使用が求められている。本コンクリートは、低炭素セメントである高炉セメントA種(*5)を改良し、製造時におけるCO2排出量を一般的なセメントより25%削減しながらも、高いひび割れ抵抗性と汎用性を兼ね備えるとともに、普通コンクリートと同レベルのコストを実現したものである。*4:BLS:Blast-furnace slag(高炉スラグ)Low Shrinkage(低収縮)
*5:高炉スラグ含有率が5~30%のセメント
② 土質改良材
環境負荷が小さい土質改良材「泥CURE※(デイキュア)」を開発した。本土質改良材を岩手県で施工中の二級河川閉伊川筋藤原地区河川災害復旧(23災662号)水門土木工事に適用した結果、軟弱な河床堆積物が、24時間後には調査のための重機走行が可能な状態となった。本土質改良材は、重金属等の有害物質を含まず、中性~弱アルカリ性の複数の無機材料を組み合わせたものであり、生息する魚類等の生育環境への配慮が必要な水域での掘削・埋戻し作業に適用可能である。(国内関係会社)
1 鹿島道路㈱
舗装に関する新材料、新工法の開発既存技術の適用性拡大に向け技術の改善及び拡充を図り、試験施工を実施した。今後は、試験施工箇所の性能を評価した上で、実工事に順次適用していく予定である。また、ICT(情報通信技術)を活用した「i-Pavement(舗装)対応技術」や低騒音性と遮水性の両方の特長を併せ持つ「ハイブリッドコンクリート舗装」等について、引続き研究開発を進めている。
2 ケミカルグラウト㈱
新凍結工法「ICECRETE(アイスクリート)※工法」の実用化フロン排出規制の国際的な枠組みへの対応が求められる中、自然冷媒であるCO2気液混合流体を活用した新凍結工法「ICECRETE(アイスクリート)※工法」を海底シールドトンネルの地中接続工事に初めて適用し、接続部の周辺土壌を事前に凍結させることで、シールド内への海水及び土砂の流入を防ぐことに成功した。新凍結工法では、液化したCO2を凍結管に循環させ気化潜熱で地盤から効率良く熱を奪うことにより、従来工法に比べ、冷媒量を大幅に削減することができるため、冷凍機、配管等の設備の小型化、省電力化が可能となった。また、設備の小型化により、シールド内の作業スペースが広がったことで、それまで段階的に行っていた作業を並行して進めることが可能となり、同工事の大幅な工期短縮に寄与した。
(開発事業等及び海外関係会社)
研究開発活動は特段行われていない。(注) 工法等に「※」が付されているものは、当社及び関係会社の登録商標である。
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