有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100AHMC
住友化学株式会社 研究開発活動 (2017年3月期)
事業等のリスクメニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当社グループ(当社および連結子会社)は、事業拡大と収益向上に寄与すべく、独自の優位性ある技術の確立を基本方針とし、各社が独自に研究開発活動を行っているほか、当社グループ全体としての効率性を念頭に置きながら、互いの研究開発部門が密接に連携して共同研究や研究開発業務の受委託等を積極的に推進している。
当連結会計年度においては、2016年度から2018年度までの中期経営計画に従い、引き続き環境・エネルギー、ICT(情報・通信技術)、ライフサイエンスの3分野に研究資源を重点投入するとともに、異分野技術融合による新規事業の芽の発掘とその育成に取り組んできた。
これに基づき、当連結会計年度の研究開発費は、前連結会計年度に比べ18億円増加し、1,576億円となった。
セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりである。
石油化学分野では、事業のグローバル競争力強化のために、プロピレンオキサイド、カプロラクタム、メタアクリルモノマーを中心とする既存バルク製品の触媒・プロセス改良、合成樹脂の製造プロセスの改良、既存素材の高性能化や新規高付加価値製品の開発に積極的に取り組んでいる。当連結会計年度において、プロピレンオキサイドでは、ここ数年注力しているライセンス活動に対応して、プロセスの最適化検討を並行して行い、よりコスト競争力の高い製造技術を目指した改良研究を実施している。ポリエチレン、ポリプロピレンでは温室効果ガスの削減の取り組みに呼応し、自動車の軽量化や低環境負荷包装などに求められる高性能材料およびその製造プロセスの開発に進展が見られた。メタアクリルモノマーに関しては、性能が大幅に向上した触媒の製造を2015年度から開始し、当期から使用を開始した。新製品開発では、ハロゲン原子を含まない、柔軟性を合わせ持った難燃樹脂や、樹脂本来の特性である耐水性、耐薬品性などの機能を維持しつつ、手づくりのような自然な風合いを持たせた意匠性樹脂フィルムを上市した。また、蓄熱性能を有する樹脂材料の実用化に向けた技術開発が進展した。
なお、石油化学部門の研究開発費は60億円であった。
エネルギー・機能材料分野では、リチウムイオン二次電池用部材、スーパーエンジニアリングプラスチックス、低燃費タイヤ用の高性能ゴムなどの環境・エネルギー関連事業拡大のため、無機材料、合成ゴム材料、機能性樹脂材料などの幅広い分野で、新規製品創出や既存製品の競争力強化に向けた研究開発に取り組んでいる。当連結会計年度において、無機材料関連では、リチウムイオン電池用のアルミナについて品質改良品を開発し、併せてその生産性向上についても検討を進めた。アルミニウム関連では、高純度アルミニウムを使用した耐食性合金の用途開発が進捗した。合成ゴム関連では、様々な要求性能を満たす新規グレードの開発に目途を得、顧客評価が進んでおり、機能性ゴム薬品についてもタイヤ用途向け接着樹脂の試製造を実施し、顧客評価を受けている。機能樹脂関連では、従来の電気・電子分野に加えて自動車基材分野においても開発が進展し、顧客採用が順調に進んでいる。電池部材関連では、2016年10月31日における株式会社田中化学研究所の子会社化に伴い、エネルギー・機能材料研究所に二次電池用正極材の開発グループを新設し、当該製品の開発力強化・事業化推進を図っており、耐熱セパレータでは製造設備増強に伴う生産性向上・コスト削減技術開発を加速している。
なお、エネルギー・機能材料部門の研究開発費は91億円であった。
情報電子化学分野では、日本国内に留まらず情報電子化学部門内のグローバルな技術・研究開発能力を結集し、IT関連の先端技術に対応する新規材料・部材・デバイスに関する新製品の開発に、引き続き積極的に取り組んでいる。当連結会計年度は、機能性光学フィルム分野において、当社が培ってきた差別化技術に基づく最先端製品の開発・工業化をさらに推進した。具体的には、大型化の進む液晶TV向け光学フィルム分野において顧客製品の信頼性向上に寄与する低透湿の製品を投入した。また、独自の材料技術を駆使した新しいタイプの偏光板を開発し、OLED用光学フィルムに参入するとともに、フレキシブルディスプレイ用部材開発を手掛け、実用可能な技術水準を達成することができた。これらの開発を通じて確立した要素技術にさらに磨きをかけ、成長が続くモバイル機器・車載機器向けの光学フィルム分野への展開を進めている。
電子材料分野においては、高性能液晶パネル向け高輝度・高色再現性カラーレジストや半導体前工程向け液浸ArFレジスト、半導体後工程向け厚膜i線レジスト等、独自性の高い分子設計技術・有機合成技術を活かした製品を市場投入し、国内外の大手需要家から高い評価を得ている。また、化合物半導体分野では、今後成長が見込まれるパワーデバイス分野においてさらなる開発の効率化と競争優位を獲得すべく、国内プロジェクトへの参画等を通じて、GaNエピ基板の量産技術開発を進めるとともに、国内子会社であるサイオクス社との連携により最先端分野での技術開発を推し進めている。
表示デバイス分野においては、タッチセンサーパネルに関する設計・開発・製造を韓国の子会社東友ファインケム社にて精力的に実施している。顧客企業の旺盛な需要に応えるべく生産能力拡大の新規投資を実施する一方、フレキシブルディスプレイ用途への展開が期待されるフィルムベースタッチセンサーの量産技術を確立するとともに革新的生産技術の開発を進めている。また、フレキシブルディスプレイに用いられる様々な新規部材の開発をグループ横断的に推し進めており、ウィンドウフィルム、塗布型偏光板等の開発には目途をつけつつあり、今後は量産化技術を確立し市場投入を進めていく。
なお、情報電子化学部門の研究開発費は160億円であった。
健康・農業関連事業分野では、新製品、新技術の開発や製造プロセスの改善・向上に積極的に取り組み、コア事業の強化と周辺事業への展開および川下化を推進し、健康・農業関連事業を取り巻く環境の変化に柔軟に対応している。当連結会計年度において、農業関連事業については、国内では新規農薬・肥料製品の上市により製品ラインナップの拡充を図るとともに、2014年度から開始したコメ事業の本格展開に向けた研究活動を推進している。また、グループ会社において、種子、種苗、培土、灌水資材、農業フィルムや非農耕地分野である家庭用園芸、ゴルフ場、森林防除等向けの農薬・肥料製品の拡充を図っている。海外では新規有効成分の殺菌剤を米国においてシバ向けに、韓国では果樹向けに上市した。また、海外での新規製品開発を加速させるために研究開発拠点の拡充を積極的に進めており、米国では中西部農業研究センターの新設、およびバイオラショナル製品(天然物由来などの微生物農薬、植物生長調整剤、微生物農業資材など)の開発促進を目的としたバイオラショナルリサーチセンターの建設に着手し、ブラジルではラテン・アメリカ・リサーチ・センターを開所した。その他の取り組みとしては、バナナやオイルパームなどのプランテーション向け農業関連資材の拡充と世界的な普及を本格化し、シンガポールではシンガポール農食品獣医庁と共同で進めている都市型農業の研究プロジェクトを第2段階に移行した。他社との協業においては、米国の種子・バイオ大手であるモンサント社との間で、雑草防除に関して新たなグローバル協力関係を構築することに合意し、当社は新規剤を含むPPO阻害型除草剤の開発を担うこととなった。また、現在資本提携している豪州農薬会社ニューファーム社とは混合剤新製品の商業化に向けた開発に取り組んでいる。さらに、米国子会社のベーラント・バイオサイエンス社では、バイオラショナル製品拡充のため、米国リドケム社と新規生物防除技術のライセンス契約を締結するとともに、アルゼンチンのリゾバクター社と根圏におけるバイオラショナル分野での長期的な協力関係を構築した。生活環境事業については、家庭用殺虫剤・業務用殺虫剤・動物用殺虫剤・ヒューマンヘルスケア・エアプロテクション・熱帯感染症剤の各重点分野における新製品開発を推進している。エアプロテクション分野では、静電噴霧技術を用いた業務用芳香消臭剤の新製品の開発を加速している。熱帯感染症分野では、アフリカ諸国で上市したピレスロイド抵抗性媒介蚊に有効なマラリア対策用防虫蚊帳の普及を推進するとともに、熱帯感染症に対する総合防除に係る製品強化のため、新しいコンセプトのピレスロイド抵抗性対策蚊帳、さらに室内残留散布剤や幼虫防除剤などの蚊帳以外の防除手段の開発も引き続き推進している。アニマルニュートリション事業については、2018年半ばに予定しているメチオニン生産能力の増強に向けて、製造プロセスの更なる合理化研究を推進している。また、マレーシアのアニマルニュートリションテクノロジーセンターでは、飼料分析サービスの対応地域を拡充すべく、関連研究拠点(ブラジル、中国)への技術移転に着手した。医薬化学品事業については、ジェネリック原薬の製法開発に引き続き注力するとともに、原薬・中間体の受託製造案件の拡充にも積極的に取り組んでいる。新規分野である核酸医薬原薬の製造においては、スケールアップ検討および品質管理体制の整備を進め、GMP(Good Manufacturing Practice)対応の生産に成功した。
なお、健康・農業関連事業部門の研究開発費は278億円であった。
医薬品分野では、自社研究、技術導入、ベンチャーやアカデミアとの共同研究等あらゆる方法で、最先端の技術を 取り入れて、研究開発活動に取り組んでおり、精神神経領域とがん領域を重点領域とし、革新的な医薬品の創製を目指している。さらに、治療薬のない疾患分野や再生医療・細胞医薬といった新規分野において、世界に先駆けて事業展開を図っていく。当連結会計年度においては、大日本住友製薬株式会社、日本メジフィジックス株式会社保有の先端技術を活かした創薬研究等を進めるとともに、国内外の大学を含む研究機関等とのアライアンスも積極的に進めている。
研究初期段階では、スーパーコンピューターを活用したインシリコ創薬技術、iPS細胞等の最先端サイエンスを創薬や再生医療・細胞医薬に応用する取り組みを進めている。また、当期においては、独創的な抗がん剤の創出を目指して大日本住友製薬株式会社と京都大学との協働研究(DSKプロジェクト)の第2期を開始した。さらに、国内の研究機関および研究者を対象に、当社グループの創薬研究ニーズと合致するアイデアを募集する公募型オープンイノベーション活動「PRISM」を2015年度から実施しており、当期においては、複数のアイデアについて共同研究契約を締結した。
研究後期および開発段階では、研究重点領域および新規分野を中心に、グローバルな視点からグループ全体でのポートフォリオの最適化を行っている。加えて、製品価値の最大化を目指した剤形展開等の製品ライフサイクルマネジメントやドラッグ・リポジショニングにも積極的に取り組んでいる。
精神神経領域では、次の進展があった。①ブロナンセリンについて、中国において、統合失調症を適応とした承認を2017年2月に取得した。②dasotraline(開発コード:SEP-225289)について、米国において、小児の注意欠如・多動症(ADHD)を対象としたフェーズ2/3試験の主要評価項目を達成し、並行して実施していたフェーズ3試験も完了した。また、過食性障害(BED)を対象としたフェーズ2/3試験の主要評価項目を達成し、新たに別のフェーズ3試験を開始した。③SEP-363856について、米国において、統合失調症のフェーズ2試験およびパーキンソン病に伴う精神病症状のフェーズ2試験を開始した。
がん領域では、次の進展があった。①ナパブカシンについて、米国等において、胃または食道胃接合部腺がんおよび結腸直腸がんを対象とした併用での国際共同フェーズ3試験を進め、これに加えて、米国において、膵がんを対象とした併用での国際共同フェーズ3試験を開始した。また、カナダにおいて膠芽腫を対象としたフェーズ1/2試験のフェーズ2段階を開始した。②DSP-7888について、日本において、小児悪性神経膠腫のフェーズ1/2試験のフェーズ2段階を開始した。
再生医療・細胞医薬の領域では、大日本住友製薬株式会社が京都大学iPS細胞研究所と共同して実用化に向けて取り組んでいる「非自己iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞」について、2017年2月、厚生労働省より再生医療等製品の先駆け審査指定制度の指定品目に選定された。
その他の領域では、グリコピロニウム臭化物(開発コード:SUN-101)について、米国において、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の長期維持療法を対象とした承認申請を2016年7月に行った。
当社グループは、開発パイプラインの拡充を目指して買収および開発品の導入にも積極的に取り組んでいる。当期においては、大日本住友製薬株式会社が買収したシナプサス社のアポモルヒネ塩酸塩水和物(開発コード:APL-130277)およびトレロ社のalvocidibの開発をそれぞれ次のとおり実施している。① アポモルヒネ塩酸塩水和物について、米国において、パーキンソン病に伴うオフ症状を対象としたフェーズ3試験を実施している。② alvocidibについて、米国において、急性骨髄性白血病(AML)を対象とした併用でのフェーズ2試験を実施している。
上記以外にも、日本におけるルラシドン塩酸塩や米国、カナダおよび日本におけるamcasertib(開発コード:BBI503)の開発等を進めている。
放射性医薬品では、2003年度にライセンス導入した新規がん診断用PET製剤の開発を継続中であり、2013年度にライセンス導入したアルツハイマー診断剤については、医薬品としての製造販売承認申請を行った。また、RI治療事業の増強のため、小線源治療用医療機器の品目拡充を図り、2015年度に承認を取得した新製品2品目の販売を開始した。
なお、医薬品部門の研究開発費は831億円であった。
全社共通およびその他の研究分野では、上記5事業分野の事業領域を外縁部へ積極拡大するための研究およびマテリアルズ・インフォマティクス等の計算機科学をはじめとする共通基盤技術開発とともに、既存事業の枠に属さない新規事業分野への展開を図るべく、環境・エネルギー、ICT、ライフサイエンスの各分野で研究開発に取り組んでいる。当連結会計年度においては、次の進展があった。ICT分野では、ディスプレイ用途において、引き続き高分子有機EL材料の性能向上、および想定パネル生産プロセスにおける性能発現について開発を継続した。環境・エネルギー分野では、高分子有機EL照明において、フレキシブル基板ベースの一般照明パネルの開発、生産プロセスの検討を継続して実施した。また、膜分離法によるCO2分離技術では、国内化学メーカーへの商業設備導入が決定し、設置工事および試運転に向けての作業を進めている。ライフサイエンス分野では、培養細胞を用いた、生体を使わない化学品安全性評価システムの構築に取り組んでいる。さらに上記3分野のうち、複数の分野の技術を融合させた研究開発も進めている。例えば、ICT分野とライフサイエンス分野にまたがる領域の研究開発として、バイオセンサーの開発を進めている。3分野にまたがった研究開発としては、プリンテッド・エレクトロニクス技術の開発に引き続き注力中である。
また、次世代事業の早期戦列化に向け、より効率的な運営を図るため、2016年4月1日の組織改正により、筑波開発研究所と先端材料探索研究所を統合して先端材料開発研究所とした。
なお、全社共通部門の研究開発費は155億円であった。
このように、事業拡大および競争力強化を図るべく、新製品・新技術の研究開発および既存製品の高機能化・既存技術の一層の向上に取り組み、各事業分野において着実に成果を挙げつつある。
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