有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100AJM3
旭化成株式会社 研究開発活動 (2017年3月期)
事業等のリスクメニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ)の主たる研究開発活動の概要、成果及び研究開発費(総額79,566百万円)は以下のとおりです。
なお、第1四半期連結会計期間より、報告セグメントを従来の「ケミカル・繊維」「住宅・建材」「エレクトロニクス」「ヘルスケア」の4報告セグメント及び「その他」の区分から、「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3報告セグメント及び「その他」の区分に変更しています。
「マテリアル」セグメント
(繊維事業)
繊維事業では、グループ内外との連携により、研究開発機能を充実・高度化させるとともに、成果実現のスピードアップを図っています。主力製品であるポリウレタン弾性繊維「ロイカ™」、キュプラ繊維「ベンベルグ™」、ナイロン66繊維「レオナ™」及び各種不織布において、独自性を活かした新たな価値商品の創出や、生産プロセスの革新を進めています。また、「健康で快適な生活」「環境との共生」に寄与する新事業領域の創出にも注力しており、新規セルロース素材の事業化や、高機能テキスタイル、新基軸不織布の開発などに取り組んでいます。
(ケミカル事業)
石油化学事業では、石化原料の多様化に向けた新技術として、エタンなどさまざまなエチレン性原料やバイオエタノールを原料にプロピレンを高効率的に製造するE-FLEXプロセス及びブテンからブタジエンを製造するBB-FLEXプロセスの実用化に向けた検討を行っています。また、水島製造所内に炭酸ガスを原料とするジフェニルカーボネートの実証プラントが完成し、本年1月から実証運転を開始しました。
高機能ポリマー事業では、新たなポリマー設計による高剛性・易成形性のポリアミドや次世代省燃費タイヤ用変性SBRなどの開発が進捗しています。さらに、独自CAE(Computer Aided Engineering)技術の高度化を推進し、機能樹脂事業において新規用途開拓と海外展開を加速していきます。
高機能マテリアルズ事業・消費財事業では、環境・エネルギー関連として、太陽電池や自動車などに使用される高機能コーティング剤の開発を進めています。さらに、再生可能エネルギーや省エネ関連素材の開発も進捗しており、社内外の技術を融合して開発を加速し、新製品・新事業の創出と立上げを推進していきます。
(エレクトロニクス事業)
セパレータ事業では、高分子設計・合成や、製膜加工、表面微細加工などのコア技術を活かして、「省資源・省エネルギー」「環境負荷軽減」「健康で快適な暮らし」に貢献する新規材料の開発を推進しています。民生・車載用途に展開するリチウムイオン二次電池用高機能セパレータや鉛蓄電池用セパレータなどの環境・エネルギー関連素材の展開に注力していきます。
電子部品事業では、IoT社会の進展に対応して、「磁気」「音」「可視外光」を主軸に「エンドユーザーのベネフィット」に繋がるソリューションを提供できる技術及び製品の開発を推進しています。豊富な技術資産と柔軟なエンジニア組織運営により、ミクスドシグナルLSI・化合物半導体・高機能パッケージなどを融合し、独自のソフトウェアを活かした高機能電子部品の開発のみならず、モジュール型製品への展開にも積極的に取り組んでいきます。
当セグメントに係る研究開発費の金額は31,527百万円です。
「住宅」セグメント
(住宅事業)
住宅事業では、「ロングライフ住宅の実現」を支えるコア技術について重点的な研究開発を続けています。
シェルター技術については、安全性(耐震・制震・免震技術、火災時の安全性向上技術)、耐久性(耐久性向上・評価技術、維持管理技術、リフォーム技術)に加えて、居住性(温熱・空気環境技術、遮音技術)、環境対応性(省エネルギー技術、低炭素化技術)の開発を行っています。住ソフト技術については、二世帯同居などの住まい方についての研究を、評価・シミュレーション技術については、ITなどの活用により直感的に理解可能な環境シミュレーションシステムの構築を、それぞれ進めています。また、住宅における生活エネルギー消費量削減とともに、人の生理・心理から捉えた快適性を研究し、健康・快適性と省エネルギーを両立させる環境共生的住まいを実現する技術開発に注力しています。
(建材事業)
建材事業では、「絶えざる改善・革新で、お客様に安全、安心、快適を提供します」を事業ビジョンとし、軽量気泡コンクリート(ALC)、フェノールフォーム断熱材、高機能基礎システム、鉄骨造構造資材の4つの事業分野において基盤技術の強化を推進しています。また、断熱分野においては人びとの健康・快適に貢献する温熱空間の実現を目指しており、本年1月に茨城県猿島郡に優れた温熱環境を体験・学習できる「快適空間ラボラトリー™」をオープンしました。
当セグメントに係る研究開発費の金額は3,364百万円です。
「ヘルスケア」セグメント
(医薬事業)
医薬事業では、自社オリジナル製品の研究開発で培った経験をもとに、整形外科領域(骨、疼痛など)及び救急領域を中心に有効な治療方法がない医療ニーズを解決することによって、「健康でいたい」と願う世界中の人びとのQOLの向上を図ることを目指して積極的な研究開発を行っています。
創薬技術については、世界中の優れた技術を持つ企業や大学とのコラボレーションを積極的に推進することによって、絶えざる革新を日々進めています。
(医療事業)
医療事業では、治療の可能性を広げ、医療水準を向上させる製品、技術、サービスを提供するために、グループ総力をあげた研究開発に取り組んでいます。これまで培ってきた豊富な基礎技術と研究開発の応用により、人工腎臓、血液浄化技術、白血球やウイルスの除去技術をさらに発展させていきます。
(クリティカルケア事業)
クリティカルケア事業では、突然の心停止からの生存率を向上する技術開発を原点とし、新規領域にも研究を広げています。急性心筋梗塞・脳卒中・敗血症・呼吸困難など、予後の悪い数多い緊急疾病に対する新規治療法や技術が求められている昨今、私たちは全ての事業にわたり、患者と臨床医に役立つことを共通の使命としています。
当セグメントに係る研究開発費の金額は31,106百万円です。
「その他」
エンジニアリング分野等に関する研究開発を行っています。当セグメントに係る研究開発費の金額は62百万円です。
当社グループでは、昨年4月の事業持株会社制への移行に伴い、研究開発組織の再編を行うことで、社内融合を促進させる体制としました。また、中期経営計画「Cs for Tomorrow 2018」をスタートさせ、多彩な技術と多角的な事業を展開している当社グループの強みを結合し、「コア技術の育成・獲得」「高付加価値化の追求」「マーケットチャネルの活用」の3軸の視点で研究開発を進め、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)や共同研究など外部との連携を深めながら新事業の創出を目指しています。
当期においては、「環境・エネルギー」「自動車」「ヘルスケア」の3分野を重点領域に定め、積極的に経営資源を投入し、新規事業の開発を進めました。
「環境・エネルギー」分野では、二酸化炭素を原料とする非ホスゲン法ポリカーボネート法の新製法として、ジアルキルカーボネートを経由してポリカーボネートの原料であるジフェニルカーボネートを製造するプロセスの実証プラントが岡山県倉敷市で稼働しました。本法は、従来の当社非ホスゲン法と異なりエチレンオキシドを原料としないため、エチレンセンターの所在に依存せず製造場所の立地制約が緩和され、新たなCO2化学として期待されています。また、再生可能エネルギーから低コストで水素を製造するアルカリ水電解プロセスの実証試験においては、2015年11月にNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託を受けて神奈川県横浜市に設置した商用機仕様の大型電解装置で、8,000時間を超えて安定的に稼働することが確認できました。
「自動車」分野では、ナイロン66繊維とガラス繊維を混繊して原反とし、ハイブリット成型することで、設計自由度が高く、比強度に優れるコンポジットテキスタイルや、セルロースナノファイバー不織布シートといった高機能複合材の開発を進め、自動車材料の軽量化に対応した金属代替材料の事業化を目指しています。
「ヘルスケア」分野では、社外の先進的な技術や革新的なビジネスモデルを積極的に活用するため、米国マサチューセッツ州にも新たにCVCの拠点を設け、ベンチャー企業に対し、従来より出資枠を引き上げて投資活動を行いました。また、水・空気・表面殺菌に使用可能な高出力殺菌用深紫外LED「Klaran™」の販売を昨年5月から開始しましたが、今後は医療用途への展開も視野に入れています。
全社に係る研究開発費の金額は13,507百万円です。
事業等のリスク財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
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