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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100AHS7

有価証券報告書抜粋 株式会社 神戸製鋼所 研究開発活動 (2017年3月期)


事業等のリスクメニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

当社グループ(当社及び連結子会社)は、幅広い技術分野での高度な技術力を原動力として、当社グループならではの顧客価値を実現する製品の創出と、それに必要な「ものづくり力」の強化を中心に取り組み、また拡販における技術支援、ソリューション提案など多くの成果をあげております。
当社技術開発本部では、各事業の基盤と競争力強化に向けた研究開発に加え、将来に向けた新製品・プロセスを具現化する高度で先端的な技術の開発も先導して行なっており、自動車分野、航空機分野、エネルギー分野などでの新たなメニュー創出とそれらを支えるものづくり力を強化していきます。
また、当社各部門及び連結子会社の技術開発部門では、事業の競争力強化に直結する製品及び生産技術の開発を行なっております。今後とも、グループ全体にわたる研究開発への経営資源の投入を効果的に行なってまいります。
当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、301億円であります。なお、本費用には、当社技術開発本部で行なっている事業部門横断的又は基礎的研究開発などで、各事業区分に配分できない費用として計上する費用52億円が含まれております。
主な事業の種類別セグメント毎の研究開発活動の状況は、以下のとおりであります。

[鉄鋼]
鉄鋼では、輸送機分野(自動車、船舶、航空機)を中心に特殊鋼や高強度鋼、鋳鍛鋼、チタン、鉄粉の商品力・強みを生かした商品開発と「ものづくり力」の強化に向けた生産技術の開発に引き続き注力して取り組んでおります。
当連結会計年度の主な成果として、鋼材分野では、須磨地区潜堤築造工事(神戸市)において、鉄鋼スラグ製品である鉄鋼スラグ水和固化体を海域工事で初めて納入しました。これまでの海域実証試験で海藻付着性が良好であったことを評価頂いた結果であり、県内の海域工事で初めて鉄鋼スラグ製品が適用されました。
また、当社の橋梁用鋼板のひとつである、ロングライフ塗装用鋼板(商品名:エコビュー®)が、2016年12月6日付けで橋梁用厚鋼板としては初めて国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)の「VR」技術認定を受けました。「エコビュー®」は、鋼橋の塗装の塗り替え周期延長を可能とするとともに耐久性向上にもつながる厚鋼板で、約40橋の実績があります。これは、「エコビュー®」が複数の国土交通省直轄工事で採用され、国土交通省が直接、「エコビュー®」の優れた耐食性能を評価、確認した技術であることが証明されたことを示すものです。
さらに、プレスの生産性に優れたホットスタンプ用冷延鋼板(焼入れ後強度1470MPa級)を開発し、トヨタ自動車(株)・プリウス向けのボディ骨格部品を受注し、順調に量産を行なっています。今回当社が開発したホットスタンプ用鋼板は、主に鋼板の成分を工夫することにより焼入れ性(高温加熱の後冷却することによる鋼板の硬化のし易さのこと)を大幅に向上させております。そのため、従来のホットスタンプ用鋼板の課題であったプレスの生産性を従来比で2~4倍程度、改善することが可能になりました。加えて、冷却ムラによる強度不足の問題が発生しにくい特長も有しています。
鋳鍛鋼分野では、世界最大クラスのコンテナ船・タンカーに搭載されるエンジン向け超大型クランク軸のスローに対して、従来法より疲労強度を約20%向上させる「型入れ鍛造法」(2014年当社開発済)を適用することに成功し、一般財団法人日本海事協会より設計上の余裕度であるK-factor1.05の認証を取得しました。これにより、当社材は設計段階で疲労強度に5%の余裕度が認められ、高強度な軽量部材の提供が可能となります。既に取得済の中・小型クランク軸スローに対する同認証と合わせて、世界で唯一、大型から小型まで全ての2サイクルエンジンにおける認証を取得したこととなります。
また、船舶の舵廻り部品であるラダーホーンやラダーストック等向けの部材においては、高強度に加えて、本部品と船体の溶接工程における熱処理を必要としない「予熱レス高強度鋳鋼」を開発しました。これにより、造船所での溶接工程を阻害せず高強度化(薄肉化)が図れるものと期待されます。
チタン分野では、当社と日本エアロフォージ(株)は、日本で初めて着陸装置用チタン大型鍛造品の開発・量産に成功し、航空機用着陸装置製造の世界最大手であるサフラン・ランディング・システムズ社向けに、エアバス社の最新鋭中型ワイドボディ機「A350 XWB」の着陸装置に使用されるチタン大型鍛造品の量産供給を開始しました。
また、米GE社が製造する民間航空機向け大型エンジンに使用されるチタン合金鍛造品のサプライヤーとして、同エンジンの共同開発パートナーである(株)IHI社より認定を頂き、同社にチタン合金鍛造品(シャフト)の供給を開始いたしました。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、70億円であります。

[溶接]
溶接では、HT610MPa級鋼に溶接後熱処理が必要とされる案件に対応したフラックス入りワイヤ「TRUSTARCTM DW-A62LSR」を開発しました。溶接金属部の組成及び組織を最適化し、従来困難であった溶接熱処理後の機械的性質を確保しました。これにより、大型・高圧化が進む球形タンクや圧力容器等の構造物への拡販が期待されます。
また、台北市の超高層デザイナーズマンション「陶朱隠園」に、「建築用780N/mm2厚鋼板(KBSA630®)」及びこれに対応する溶接材料「TRUSTARCTM MG-S88A」「TRUSTARCTM US-80LT/TRUSTARCTM PF-H80AK」を受注・納入しました。「陶朱隠園」では高い意匠性と優れた耐震性の両立が求められ、台湾で引張強度780N/mm2級の厚鋼板・溶接材料が建築用途で適用された初めての事例となります。
また、従来にないウィービング動作により高速・高品質な溶接施工を可能にし、顧客の生産性向上に貢献するとともに、教示ペンダントの使いやすさなど、溶接初心者から熟練者まで安心して使用できるように操作性を追求したアーク溶接ロボット向けの新型コントローラ「CBコントローラ」を開発しました。
さらに、情報技術を活用した「造船大組立ロボット溶接システム」を新たにリリースしました。一般的な溶接ロボットでは、溶接線位置をロボットに記憶する教示作業が必要になりますが、設計された船の3D-CADデータから教示データを自動生成する「CAD連係機能」を開発しました。小さなスペースへの進入を可能にする「小型ロボット」と「ロボットキャリー」や、最適な溶接ワイヤとその溶接施工条件も合わせて開発しました。溶接工不足、溶接品質向上を課題にする国内外の造船市場向けに拡販が期待されます。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、35億円であります。
[アルミ・銅]
アルミ・銅では、短期収益力と中長期事業競争力の強化に向け自動車関連部材等「成長分野」への効率的な技術開発に注力しております。あわせて缶用材料、電子機器材料等の「ボリュームゾーン分野」でのさらなる品質向上と生産技術の開発を継続的に推進しております。
アルミ板分野では、中国の新会社である神鋼汽車鋁材(天津)有限公司において、中国市場を中心に欧州や北米の自動車メーカーの要求特性に合わせて独自開発した自動車パネル材の認定取得がほぼ完了し量産を開始しました。新規採用が引き続き順調に増加しております。また、日系自動車メーカー向けには材料・表面処理技術の開発とともに接合や解析技術の提案によるソリューション技術も充実させ、アルミパネル採用部位の拡大に大きく貢献しております。飲料缶用材料では、当社の高い技術力により高強度・薄肉化やボトル缶用高成形性材料の開発を推進しており、需要家からも高い評価を得ております。
鋳鍛分野では、自動車サスペンション用アルミ鍛造部品において北米・中国での需要が拡大しており、サスペンション部品の生産性向上、さらなる品質向上のための技術開発を推進しています。また、他社との差別化を図るために、高強度合金開発や構造設計の両面から材料の軽量化に注力し、需要家からも高く評価されています。航空機用部品においても軽量化ニーズは高まっており、砂型鋳造品のさらなる品質向上と生産性改善を図り、採用拡大を目指しています。さらに将来の差別化と当社の優位性確保のため、耐熱材料の開発も進めています。
押出分野でも、アルミ製バンパーシステムや車両骨格部材などの自動車用押出形材に対して、軽量で衝突安全性に優れた材料のニーズが高まっております。当社が開発した耐応力腐食割れ性と強度を高次に兼ね備えた独自7000系合金の押出形材は、北米自動車メーカーに採用され供給(輸出)を開始しました。また、米国の生産拠点として溶解鋳造から押出、加工まで一貫で生産する工場を建設中(2018年度下期稼働予定)であり、日米両極での供給体制整備を進めております。
銅板分野では、低摩擦係数と耐熱性に優れた錫めっき(新リフローめっき)技術が高く評価され、自動車向け電装部品用端子材料として国内外で採用が拡大しております。欧州につづき米国伸銅メーカーへも「新リフローめっき」技術のライセンスを供与し、グローバル供給体制の拡充を構築しました。また、導電率と耐熱性を兼備した高性能合金を、HEV、EVなど次世代自動車用の電子部品向けに開発し、需要家での評価が進んでおります。さらに、スマートフォン用などの散熱部材への開発合金の採用も拡大しております。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、28億円であります。

[機械]
機械では、環境、省エネ(CO2削減)をキーワードに、オンリーワン・ナンバーワン技術/商品を創出することで独自性を徹底追求するとともに、マーケット及び生産の両面からさらなるグローバル化を推進し、世界トップレベルの「ものづくり力」の実現を目指しています。
当連結会計年度では、(株)神鋼環境ソリューション、(株)神鋼エンジニアリング&メンテナンス、筑波大学と共同で環境省の技術開発・実証事業として、「中規模(1.5kg/h 程度)の高圧水素を製造する再エネ由来水素ステーション関連技術の開発・実証」を開始しました。水電解装置を当社水素ステーション設備に併設し、水電解水素を従来型水素ステーションの水素と混合しFCVへ供給するシステムを検証することに向け、実証設備の建設に入ります。
また、旭海運(株)、三浦工業(株)との共同で開発を進めていた、「舶用バイナリー発電システム」について、2015年9月の陸上試験合格に続き、2016年12月に実船搭載での海上試験に合格し、一般社団法人日本海事協会の認証を取得しました。
さらに、世界最速のサイクルタイムと、世界最高の繰り返し測定精度とを両立させたタイヤ試験機「Librota-GS」、世界最高クラスのエネルギー効率と低騒音を実現し、最新のIoT技術による遠隔通信サービスを搭載したオイルフリー式汎用空気圧縮機「Emeraude-ALE」及び米国の定置式水素ステーション向けに高圧水素圧縮機、冷凍機、蓄圧器に加え、ディスペンサーをセットにした「HyAC mini-A」の販売を開始しました。その他、LNG船向け舶用二元燃料焚きエンジンへの燃料供給用途としては世界で初めて、スクリュ式の圧縮機を受注しました。
なお、当連結会計年度における研究開発費は37億円であります。

[エンジニアリング]
エンジニアリングでは、独自プロセス・技術のさらなる差別化、競争力強化に向けた開発を継続するとともに、将来の成長が見込まれる有望分野において、積極的に開発を推進しております。
原子力関連分野では、原子力発電所の廃炉に伴う廃棄物の処理技術の開発に取り組んでおります。
還元鉄関連分野では、天然ガスを還元剤とした製鉄法(MIDREXプロセス:世界No.1シェア)の競争力維持・強化に向けた開発を継続しております。
水処理関連分野では、下水汚泥から得られたバイオガスを原料にして水素を製造する技術の開発を開始しました。また、これまで研究開発を進めてきたユーグレナを食品原料として供給開始しました。
廃棄物処理関連分野では、廃棄物発電の高効率化を達成するために廃熱ボイラの高温高圧化の開発に取り組み、実機でのボイラ過熱器管材料の耐食性評価試験を実施しました。その結果、流動床炉においては従来よりも高温高圧の蒸気条件が採用可能となりました。
化学・食品機械関連分野では、グラスライニング製機器について、業界をリードする機能性グラスの改良、洗浄技術の開発などに取り組み、差別化技術を磨きました。また、無摺動コンタミフリー撹拌装置「スイングスター」の大型化に取り組み、商品ラインナップの充実を図っています。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、20億円であります。

[建設機械]
建設機械では、主力製品である油圧ショベル、クローラクレーンなどの安全性向上、省エネ性向上、排ガス対応・騒音低減などの環境対応に加え、建設リサイクル機械・金属リサイクル機械の開発に取り組んでいます。また、コベルコ建機(株)は、国立大学法人広島大学と包括的な連携を行うことで合意し、2016年6月に包括的研究協力に関する協定書を締結しました。
ショベル関連分野では、25t・33t・47tの3クラスにおいて、オフロード法2014年基準に適合した中大型油圧ショベルを、2016年9月より順次販売を開始しました。また、「低燃費のコベルコ」としてのフラッグシップ機として「SK200H-10」を開発、2016年11月より販売開始しました。今回販売を開始した製品は、より一層の燃費性向上を達成するとともに、予防保全機能の搭載、新車保証期間の延長などにより高い耐久性を持った機械となります。
クレーン関連分野では、クレーン能力の向上と、効率のよい分解・輸送性能を実現した国内最大級のクローラクレーン「SL16000J(最大つり上げ能力1,000t)」/「SL16000J-H(最大つり上げ能力1,250t)」を開発し、2016年5月より国内向けに販売を開始しました。
また、最新の排出ガス2014年規制適合エンジンを搭載し、独自開発の省エネシステム「Gモード」を機能アップ、輸送性能・操作性能をさらに改善したクローラクレーン「Mastertech7070G(最大つり上げ能力70t)」「Mastertech7090G(最大つり上げ能力90t)」「Mastertech7120G(最大つり上げ能力120t)」を開発し、2016年9月より国内向けに販売を開始しました。また、「Mastertech7050G(最大つり上げ能力50t)」、基礎土木対応クローラクレーン「BM800G(最大つり上げ能力80t)」、「BM1000G(最大つり上げ能力100t)」を開発し、2017年1月より国内向けに販売を開始しました。
同じく最新の排出ガス2014年規制適合エンジンを搭載し、安全性と作業領域の広さを誇るラフテレーンクレーン「PANTHER250(最大つり上げ能力25t)」、「PANTHER700(最大つり上げ能力70t)」を開発し、2017年1月より国内向けに販売を開始しました。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、47億円であります。

[その他]
(株)コベルコ科研では、エネルギー、自動車、エレクトロニクス、土木・建築、環境など広範囲にわたる分析・試験技術を蓄積するとともに、高度で先端的な評価・解析技術の開発を進めています。さらに、液晶テレビなどのフラットパネルディスプレイ(FPD)用の配線に用いられる薄膜用のターゲット材料や半導体等の検査装置の開発に取り組んでおります。
当連結会計年度においては、世界的な温室効果ガスの排出削減から電動駆動化が拡大している自動車分野で、インバータの大容量化など開発が活況な車載用パワーデバイス・モジュール関連の故障箇所解析並びにパワーサイクル試験技術を確立し、上市しました。また、検査装置では前年度に上市したサブナノ精度でシリコンウェーハの平坦度が測定できる装置の高精度化に取り組むとともに、微小表面形状測定装置を開発し、上市しました。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、9億円であります。

事業等のリスク財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析


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