有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100DIXZ
株式会社リボミック 研究開発活動 (2018年3月期)
当社は、創薬事業及びこれに付随する事業を行う単一セグメントであります。
(1)研究開発戦略
当社は研究開発を事業とすることから、事業戦略とは研究開発戦略でもあります。当社は、アプタマー創薬に関する当社の競争優位性や強みを梃子として、以下の基本ポリシーのもとで、研究開発を推進しております。
① 自社創薬におけるパイプラインの一層の拡充・進展を図り、研究成果をいち早く知財化して競争優位性を維持、強化しライセンス・アウトを目指す。
② 共同研究を積極的に展開し、早期での収益の確保及びライセンス・アウトを目指す。
③ 最適な自社製品については自社で臨床試験を実施し、収益の最大化を図る。
④ アプタマー創薬における当社の「RiboARTシステム」の更なる向上、発展を図るべく、次のアプタマーの創製にチャレンジする。
1)アゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)
2)細胞内への取り込み可能な(DDS作用を有する)アプタマー
3)細胞膜複数回貫通型のタンパク質(GPCR受容体等)と結合するアプタマー
4)次世代シークエンサーとコンピュータ科学を利用したアプタマー探索の人工知能技術の開発
5)脳関門通過技術の開発と神経疾患治療への応用
⑤ アプタマー医薬品としての特性を最大限に生かしうる開発品・疾患については、過大な経済的負担を避けつつ、付加価値を高める観点から自社での臨床POC取得のための臨床試験を実施する。
⑥ 大学や研究機関との緊密な連携を図り、大学や研究機関での基礎研究成果を医薬品開発に応用するトランスレーショナル・リサーチを推進することにより、アカデミアにおける研究成果をいち早くアプタマー創薬に活かす。
(2)研究開発費
当事業年度における研究開発費は663百万円となっております。
(3)研究開発の特徴について
① 核酸医薬品の中でもアプタマーの創薬研究に特化
核酸医薬は、現在巨大な市場を形成しつつある抗体医薬に続く、次世代の医薬品として注目されている新しいカテゴリーの医薬品です。
当社は、その核酸医薬の中で、RNAが多様な立体構造を作り、標的となる疾患関連タンパク質に結合してその作用を阻害することに注目して、RNAアプタマーの医薬品への応用を図るための研究開発を行っております。
アプタマーを創薬のシーズとするのは、以下のような優れた特性があるためです。
1)標的となるタンパク質分子への結合という点で似たような作用を持つ抗体と比較しても、その結合活性が非常に高いことが多く知られています。
2)アプタマーは様々な化学修飾によって活性や体内動態等を改善することが可能です。
3)副作用に関しても、抗体は生物製剤であるため、免疫原性の影響は無視できませんが、アプタマーは合成品であるため、そのような懸念は今のところ報告されていません。
4)アプタマーは他の核酸医薬のように細胞内に入らなければその効果を発揮しないものと異なり、細胞内に導入する必要がないので非常に効率的です。
② アプタマー創薬に関するプラットフォーム「RiboARTシステム」
当社が有するアプタマー創薬に関するプラットフォーム「RiboARTシステム」は広汎な分野に応用可能な技術であるため、特定の疾患や領域に特化されないアプタマーの創製を行っております。
当社は、現在の技術的優位性に安住することなく、5年先、10年先の技術動向を見据え、新たなSELEX法や、抗体で難しいとされる受容体に直接作用するアゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)、さらに細胞内に他の医薬を運搬するためのDDSに利用可能なアプタマー等の実現を目指しております。
「RiboARTシステム」のコアとなる技術の一つは、目標とする創薬ターゲット(タンパク質)に結合するアプタマーを取得するSELEX法に関する技術です。この技術は、2011年6月までは米国のアルケミックス社が全世界で権利を有し、その高価なライセンスの対価と同社の政策により、容易に第三者が商業目的でSELEX法を実施することができませんでした。当社は、2006年2月以降、アルケミックス社からSELEX法に関する基本特許等の使用許諾を受け、各種のアプタマーを開発するとともにSELEX法に関する技術の向上を図ってまいりました。他社に先駆けてSELEX法を実施し様々なアプタマーを創製してきたこと及びアカデミアとの連携が、「RiboARTシステム」として結実し、現在及び将来のアプタマー創薬における当社の競争優位性をもたらしております。
SELEX法の基本特許が2011年6月に日本及びヨーロッパで、2014年9月にアメリカで失効したため、世界各国の大手製薬企業がアプタマー創薬に参入してくることは十分に考えられます。一部の大手製薬企業が参入を開始しておりますが、当社は「RiboARTシステム」の発展を図り、核酸創薬、特にアプタマー創薬の分野において、主導的役割を果たしてまいりたいと考えております。
③ トランスレーショナル・リサーチの推進
当社の研究開発が他の創薬ベンチャー企業と際立って異なる点は、アカデミアでの研究成果を事業化のための開発に移行させるトランスレーショナル・リサーチを、長期間継続して行ってきたことであります。これにより、アカデミアにおける最新のRNA研究の内容や成果を、当社での事業化に直接反映させることができます。
④ 大学内の研究施設の活用と共同研究
当社は、東京大学医科学研究所と2005年よりRNA科学やアプタマーに関連する共同研究を行ってまいりました。2012年4月からは新たに社会連携講座(「RNA医科学」社会連携研究部門)を設置し、その下で産学連携での共同研究による、製品・技術開発を推進しております。
(4)研究開発体制について
当社の研究開発活動は研究開発本部と事業開発部が密に連携して実施しております。研究開発本部には探索研究部、開発研究部、臨床開発部を設置し、SELEX法を駆使して目標のタンパク質に結合する医薬品用途のアプタマーの創製、創製されたアプタマーの薬効と安全性を調査、確認、創製されたアプタマーの臨床開発までをそれぞれの部が緊密に連携し研究開発を行っております。また、事業開発部では、医薬品開発で培ったノウハウを基に医薬品以外のアプタマー開発等の新規事業プロジェクトを推進しております。
2018年3月31日現在、研究開発本部及び事業開発部に所属する研究員は15名であり、内7名が博士号を取得しています。同時に東京大学をはじめとした国内外のアカデミアとも共同研究を行っており、最先端のRNA研究の成果やアプタマーに関する技術動向の把握に努めております。
また、医薬品開発に必要なノウハウなどは大手製薬企業との共同開発を通じて蓄積するとともに、大手製薬企業でのグローバルな医薬品開発の経験を有する人材を社内に擁し、研究開発のプロセスを効果的に管理、運営できる体制をとっております。
医薬品の中でもとりわけ核酸医薬のような最先端の技術が関係する場合、知財は極めて重要であり、その対応には万全を期す必要があります。当社は医薬品、バイオ技術・製品に精通した複数の知財専門家と顧問契約を結び、緊密な連携のもと、対応を図っております。
なお、選定した品目について、自社での臨床試験の実施に向けた体制の整備を進めております。
(5)新薬候補化合物の主な開発状況
本書提出日現在における新薬候補化合物の主な開発状況は「第1 企業の概況 3.事業の内容」の項で示したとおりです。
(1)研究開発戦略
当社は研究開発を事業とすることから、事業戦略とは研究開発戦略でもあります。当社は、アプタマー創薬に関する当社の競争優位性や強みを梃子として、以下の基本ポリシーのもとで、研究開発を推進しております。
① 自社創薬におけるパイプラインの一層の拡充・進展を図り、研究成果をいち早く知財化して競争優位性を維持、強化しライセンス・アウトを目指す。
② 共同研究を積極的に展開し、早期での収益の確保及びライセンス・アウトを目指す。
③ 最適な自社製品については自社で臨床試験を実施し、収益の最大化を図る。
④ アプタマー創薬における当社の「RiboARTシステム」の更なる向上、発展を図るべく、次のアプタマーの創製にチャレンジする。
1)アゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)
2)細胞内への取り込み可能な(DDS作用を有する)アプタマー
3)細胞膜複数回貫通型のタンパク質(GPCR受容体等)と結合するアプタマー
4)次世代シークエンサーとコンピュータ科学を利用したアプタマー探索の人工知能技術の開発
5)脳関門通過技術の開発と神経疾患治療への応用
⑤ アプタマー医薬品としての特性を最大限に生かしうる開発品・疾患については、過大な経済的負担を避けつつ、付加価値を高める観点から自社での臨床POC取得のための臨床試験を実施する。
⑥ 大学や研究機関との緊密な連携を図り、大学や研究機関での基礎研究成果を医薬品開発に応用するトランスレーショナル・リサーチを推進することにより、アカデミアにおける研究成果をいち早くアプタマー創薬に活かす。
(2)研究開発費
当事業年度における研究開発費は663百万円となっております。
(3)研究開発の特徴について
① 核酸医薬品の中でもアプタマーの創薬研究に特化
核酸医薬は、現在巨大な市場を形成しつつある抗体医薬に続く、次世代の医薬品として注目されている新しいカテゴリーの医薬品です。
当社は、その核酸医薬の中で、RNAが多様な立体構造を作り、標的となる疾患関連タンパク質に結合してその作用を阻害することに注目して、RNAアプタマーの医薬品への応用を図るための研究開発を行っております。
アプタマーを創薬のシーズとするのは、以下のような優れた特性があるためです。
1)標的となるタンパク質分子への結合という点で似たような作用を持つ抗体と比較しても、その結合活性が非常に高いことが多く知られています。
2)アプタマーは様々な化学修飾によって活性や体内動態等を改善することが可能です。
3)副作用に関しても、抗体は生物製剤であるため、免疫原性の影響は無視できませんが、アプタマーは合成品であるため、そのような懸念は今のところ報告されていません。
4)アプタマーは他の核酸医薬のように細胞内に入らなければその効果を発揮しないものと異なり、細胞内に導入する必要がないので非常に効率的です。
② アプタマー創薬に関するプラットフォーム「RiboARTシステム」
当社が有するアプタマー創薬に関するプラットフォーム「RiboARTシステム」は広汎な分野に応用可能な技術であるため、特定の疾患や領域に特化されないアプタマーの創製を行っております。
当社は、現在の技術的優位性に安住することなく、5年先、10年先の技術動向を見据え、新たなSELEX法や、抗体で難しいとされる受容体に直接作用するアゴニスト・アプタマー(受容体作動薬)、さらに細胞内に他の医薬を運搬するためのDDSに利用可能なアプタマー等の実現を目指しております。
「RiboARTシステム」のコアとなる技術の一つは、目標とする創薬ターゲット(タンパク質)に結合するアプタマーを取得するSELEX法に関する技術です。この技術は、2011年6月までは米国のアルケミックス社が全世界で権利を有し、その高価なライセンスの対価と同社の政策により、容易に第三者が商業目的でSELEX法を実施することができませんでした。当社は、2006年2月以降、アルケミックス社からSELEX法に関する基本特許等の使用許諾を受け、各種のアプタマーを開発するとともにSELEX法に関する技術の向上を図ってまいりました。他社に先駆けてSELEX法を実施し様々なアプタマーを創製してきたこと及びアカデミアとの連携が、「RiboARTシステム」として結実し、現在及び将来のアプタマー創薬における当社の競争優位性をもたらしております。
SELEX法の基本特許が2011年6月に日本及びヨーロッパで、2014年9月にアメリカで失効したため、世界各国の大手製薬企業がアプタマー創薬に参入してくることは十分に考えられます。一部の大手製薬企業が参入を開始しておりますが、当社は「RiboARTシステム」の発展を図り、核酸創薬、特にアプタマー創薬の分野において、主導的役割を果たしてまいりたいと考えております。
③ トランスレーショナル・リサーチの推進
当社の研究開発が他の創薬ベンチャー企業と際立って異なる点は、アカデミアでの研究成果を事業化のための開発に移行させるトランスレーショナル・リサーチを、長期間継続して行ってきたことであります。これにより、アカデミアにおける最新のRNA研究の内容や成果を、当社での事業化に直接反映させることができます。
④ 大学内の研究施設の活用と共同研究
当社は、東京大学医科学研究所と2005年よりRNA科学やアプタマーに関連する共同研究を行ってまいりました。2012年4月からは新たに社会連携講座(「RNA医科学」社会連携研究部門)を設置し、その下で産学連携での共同研究による、製品・技術開発を推進しております。
(4)研究開発体制について
当社の研究開発活動は研究開発本部と事業開発部が密に連携して実施しております。研究開発本部には探索研究部、開発研究部、臨床開発部を設置し、SELEX法を駆使して目標のタンパク質に結合する医薬品用途のアプタマーの創製、創製されたアプタマーの薬効と安全性を調査、確認、創製されたアプタマーの臨床開発までをそれぞれの部が緊密に連携し研究開発を行っております。また、事業開発部では、医薬品開発で培ったノウハウを基に医薬品以外のアプタマー開発等の新規事業プロジェクトを推進しております。
2018年3月31日現在、研究開発本部及び事業開発部に所属する研究員は15名であり、内7名が博士号を取得しています。同時に東京大学をはじめとした国内外のアカデミアとも共同研究を行っており、最先端のRNA研究の成果やアプタマーに関する技術動向の把握に努めております。
また、医薬品開発に必要なノウハウなどは大手製薬企業との共同開発を通じて蓄積するとともに、大手製薬企業でのグローバルな医薬品開発の経験を有する人材を社内に擁し、研究開発のプロセスを効果的に管理、運営できる体制をとっております。
医薬品の中でもとりわけ核酸医薬のような最先端の技術が関係する場合、知財は極めて重要であり、その対応には万全を期す必要があります。当社は医薬品、バイオ技術・製品に精通した複数の知財専門家と顧問契約を結び、緊密な連携のもと、対応を図っております。
なお、選定した品目について、自社での臨床試験の実施に向けた体制の整備を進めております。
(5)新薬候補化合物の主な開発状況
本書提出日現在における新薬候補化合物の主な開発状況は「第1 企業の概況 3.事業の内容」の項で示したとおりです。
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