有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100DGTT
日揮ホールディングス株式会社 研究開発活動 (2018年3月期)
中期経営計画「Beyond the Horizon」の2年目にあたる当連結会計年度は、差別化技術に基づいたビジネス開発を推進してきました。重点戦略を①開発技術の早期商業化とライセンスビジネスの拡大、②成長分野における新規ビジネスの創出と推進、③オープンイノベーションの活用による社外との連携強化とし、資源、環境、ライフサイエンス、新エネルギー、ものづくりの各分野に注力してきました。その結果、海外への技術ライセンス供与などの実績をあげるとともに、成長分野における将来ビジネスの核となる技術の早期獲得を目的とした産官学の連携による開発を促進することができました。なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、58億75百万円(消費税等は含まない)です。
① 総合エンジニアリング事業
設計・調達・建設(EPC)ビジネス分野
コアビジネスである設計・調達・建設(EPC)ビジネス分野においては、積極的な受注活動に取り組み、ハイドロカーボン分野においては、アルジェリアにおける原油集積・処理設備やインドネシアにおけるガス処理プラントの受注、LNG分野においては、米国西海岸初の陸上LNGプラントやアフリカ地域初の洋上LNGプラントの受注などにつなげました。さらに、海外子会社による石油化学プラントの受注、インフラ分野においては従来の国内メガソーラー案件のみならず海外メガソーラー案件も受注し、ビジネスの領域拡大の成果が見え始めています。近年、設計製作から輸送まで難度の高い工法が要求されるプロジェクトが増加する傾向にあり、さらなる工法の開発・工夫による競争力強化に取り組んでいます。
石油資源・精製分野
世界の石油需要が長期的に増大する傾向がある中、豊富な埋蔵量のカナダオイルサンドや南米の超重質油、東アフリカの高流動点原油など、非在来型重質油の開発が注目されています。これら重質原油の多くが未開発である主たる理由として、消費地までのパイプラン輸送が困難であることが挙げられます。独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構と共同で開発した超臨界水を利用したSCWC(Supercritical Water Cracking)プロセスは高流動点原油の流動点を改善できることから今後開発が計画されているウガンダやケニアなどの高流動点原油の改質技術として提案し、我が国の資源獲得に貢献します。
また、天然ガスの需要増加に伴い、その副生物として生産量が増えているコンデンセートは、石油化学原料としても需要が拡大しています。当社が保有するコンデンセートに含まれる硫黄分を一つの反応器で一括して脱硫処理する脱硫技術はコンデンセートを各留分に分けた後に脱硫処理する従来法に比べて、設備費と運転費を大幅に削減できることから、産ガス国に対して継続してプロモーションを行っています。
天然ガス分野
温室効果ガスである二酸化炭素(CO₂)の排出量削減が求められている昨今、当社ではCO₂の排出抑制→分離回収→有効利用・貯留→資源再生というカーボンマネジメント・サイクルの各要素で技術・知見を継続して積上げています。分離回収においては、吸収法による高圧再生型CO₂回収(HiPACT®)プロセスを保有し、天然ガス処理や合成ガス精製過程でCO₂をより高圧で回収することで、地中貯留(CCS: Carbon dioxide Capture and Storage)および原油増進回収(CO₂-EOR: Enhanced Oil Recovery)のために新たに必要となる圧縮エネルギーとコストを大幅に削減することができます。
さらにCO₂-EORにおいては、CO₂を有効に活用するために、特殊なセラミック膜で効率的にCO₂を分離回収することを可能とする技術を開発し、フィールド実証を開始しました。実油田を対象に実施したCO₂-EOR適用可能性調査などの知見と合わせて、産油ガス国/企業向けにCO₂問題に対するトータルソリューションを提供していきます。
また、既設LNGプラント関連のIoTビジネスとして、運転データ解析及び気象解析を通じて得られた知見を基に制御方法改善によるLNG増産サービス等を海外顧客向けに提案中です。
ケミカル分野
シェールガスをはじめとする天然ガスは、液体燃料製造や高付加価値の化学品製造の原料としても期待されています。天然ガスなどから合成されるメタノールを原料とするプロピレン製造プロセス(DTP®)は実用化段階にあり、産ガス国や化学会社などに対して技術適用を目指した営業活動を展開しています。また、次世代の高性能触媒も継続して開発中で、工業化段階にあります。
また、当社の開発したWINTRAY®の技術は、液液抽出に適応されるトレイの技術であり、高体積流束、高効率、汚れに強い、という3つの特徴があり、顧客企業から高い評価を頂いています。石化プラントおよび化学プラントにおける液液抽出塔のトレイとして大きなメリットがあり、この技術をアジアの顧客向けにプロモーションを進めてきた結果、複数社に対して具体的なプラントへの適用検討を実施しています。
さらに、当社は、硫化水素(H₂S)およびこのH₂Sから硫化水素ナトリウム(NaSH)を製造するプロセス技術を保有し、数々の国内外化学メーカーにライセンスを供与してまいりました。H₂Sは、鳥などの動物の飼料に添加する必須アミノ酸であるメチオニンの製造原料となり、NaSHは、電気自動車部品などに用いられるスーパーエンジニアリングプラスチックのPPS(ポリフェニレンスルフィド)の原料となります。いずれも今後の需要の伸びが期待されており、今後も積極的なプロモーション活動を展開してまいります。
環境分野
温室効果ガス排出量削減にむけてCO₂を排出しない水素が注目されており、2017年12月に経済産業省から発表された水素基本戦略には、エネルギーキャリアとしてのアンモニアの活用に向けた技術開発を推進し、2020年代半ばまでに CO₂フリーアンモニアの導入・利用開始を目指すことが明記されました。
当社は、内閣府による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のエネルギーキャリアプロジェクトに参画し、再生可能エネルギーなどからCO₂フリーアンモニアを製造するシステムを開発しており、産業技術総合研究所、大学が開発した新規アンモニア合成触媒を用いた実証試験が2018年3月に産業技術総合研究所福島再生可能エネルギー研究所で開始しました。本開発では、太陽光や風力の不安定な出力を平準化するために、蓄電池や水電気分解などを組み合わせた全体システムとして最適化も検討しています。また、CO₂フリーアンモニア混焼発電のためのサプライチェーンコスト評価を実施し、具体的に産ガス国でCO₂フリーアンモニアを製造し、我が国に輸入するスキームを検討しています。
また、中国やインドでは、環境汚染が社会問題になったことをきっかけに、火力発電所などからの排ガスに対する環境規制が強化されました。排ガスからSOxおよびNOxを効率的に除去する当社の乾式脱硫脱硝システムの技術は、これら新興国の環境規制に対応するための有効な手段であり、既に中国のコークス炉ガスの燃焼排ガスの浄化のために20基以上の技術ライセンス契約を行いました。また、インドでは経済産業省の補助金事業として石炭火力発電向けへの適用検討を実施しました。今後も環境規制が強化される新興国や業界に対して、そのニーズにマッチするように技術改良を加えながら、積極的なプロモーション活動を展開して進めてまいります。
ライフサイエンス分野
バイオ医薬品製造技術として、マイクロバブル発生技術に高性能撹拌技術を付加したバイオリアクターのシングルユース適用技術の開発を行っています。また、医薬品業界の注目度が高まっている原薬および製剤の連続製造に関し、独自の技術開発を進めています。さらに、高薬理活性物質の飛散性測定など、多角的な技術開発を行っています。
また、再生医療分野では、再生医療関連施設の多くの実績を踏まえ、細胞・組織培養環境基準の構築や再生医療関連要素技術の高度化を進めています。
さらに、病院分野ではEPCに加え、運営サービスおよび病院経営にも踏み込んだ展開を国内外で進めた結果、カンボジアで病院建設、運営を行うに至っており、このような実績をベースに海外で日本の高度な医療技術やホスピタリティを生かした病院を開設するなど、医療施設の運営にも積極的に参画しています。
原子力分野
東日本大震災により発生した放射能を含んだ瓦礫、廃棄物、あるいは汚染土壌の一部は焼却処理や熱処理により除染することが検討されています。しかし、このような除染により除去され濃縮された放射能を処分するための処理方法はいまだ決定されていません。そこで、当社では、これらの放射能の高い汚染物に対して、新たな固化体を用いた封じ込め性の高い固化処理技術の開発に着手し成果をあげつつあります。また同固化体を用いて、発電所サイト内に貯蔵されている塩分を含んだ放射性廃液の処理技術の開発も進めています。
新規事業創出分野
CO₂の排出量削減に向けて、バイオマス由来燃料の開発が世界的に進められています。非食物系バイオマスを原料にした酵素法エタノール製造プロセスは、NEDOからの委託事業が終了し、基盤技術を獲得しました。その成果を実用化に結びつけるため、バイオマス利用を目指す企業と共同で実証開発を実施しています。
また、バイオマスを原料とした化学品の製造技術について、原料多様化やCO₂排出量削減に向けた対応技術の一つとして注目し、バイオマス由来のエタノールや1,4-ブタンジオールを原料とする1,3-ブタジエン製造技術の開発を進めています。また、文科省ALCAプロジェクトとして大学、化学会社、製紙会社と共同でバイオマスからHMFを製造する技術の開発に取り組んでいます。
さらに、電力システム分野では、環境省「2016年度CO₂排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」に採択され、太陽光発電所に対する出力制御された電力を、太陽光パネルの最大出力点を維持して、蓄電池に対し充放電制御する電力回収ユニットを開発し、技術研究所にて実証しています。当該技術により、再エネ導入による送配電の不安定化を回避しつつ、抑制された太陽光発電量の回収に貢献します。
なお、当事業での研究開発費は30億25百万円(消費税等は含まない)です。
② 触媒・ファイン事業
石油精製分野
国内では、原油の有効利用を目的としたエネルギー供給構造高度化法施行により、石油精製各社の精製能力削減および経営統合による生産性効率化や重質油の白油化による高付加価値化が進んでいます。発電用燃料油の需要減少に伴う重油市場の減少が見込まれ、より一層、重質油を分解することの重要性が高まっています。一方、東南アジアでは燃料油の堅調な需要増加、石油化学原料も生産する大型石油コンビナートの増設や船舶燃料油の硫黄規制強化への対応の動きが見られるようになってきています。これらの動向に対応すべく、重質油を効率的に分解する流動接触分解触媒の開発を進めており、これまでにない高性能触媒の開発に目途がつきつつあります。石化型流動接触装置に有効なアディティブ触媒として、世界トップクラスのプロピレン増産用アディティブの実績が増えてきていますが、更に残油処理用の新しいプロピレン増産用アディティブの工業化を終え、今後、実証化を進めていきます。
一方、新興国を中心とした環境規制強化に対応する形で、水素化脱硫触媒の需要は堅調に伸びていくと予想されています。高活性と高安定性を兼ね備えた革新的な軽油サルファーフリー触媒が国内製油所で初採用され、その実績を基にさらに拡販を進めていく計画です。さらに高性能な次世代触媒の開発も進めています。船舶燃料油の硫黄規制強化に対応する残油水素化処理触媒に関して、顧客と共同で研究開発を進めています。石油精製会社の研究所と共同開発した軽油サルファーフリー触媒や水素化分解触媒は、製油所ニーズを取り込んで収益向上に貢献しています。
残油水素化処理触媒と残油用流動接触分解触媒の両方を併せ持つ触媒メーカーとして、その強みを生かすべく、両プロセスをトータルで最適化した魅力ある触媒の提案、運転サポートに必要なシミュレーション開発等、ソリューションプロバイダー型の技術サービス体制を整えて、顧客満足に努めています。
石油化学分野
世界的には新興国が牽引役となり、石油化学品は増加基調です。国内では基礎化学品は安価な海外品に対抗するためコスト競争力が重要となっています。一方、高付加価値な機能性化学品は高度な製造技術やノウハウを有している国内メーカーが現在も競争力を保持しています。機能性化学品を製造するために必要な触媒には、より高機能な特性が求められています。このため、顧客の触媒に対する要望を正確に把握し、迅速なケミカル触媒の受託研究・工業化に取り組んでいます。
また、ニッケル触媒や吸着剤など自社触媒の高性能化および品種拡大のための触媒開発や評価技術の確立を実施しています。この中で、ハイドロカーボン中の硫化カルボニルを除去するための吸着剤は、性能改良とテクニカルサービス強化により、新規案件の開拓および獲得に結び付いています。
環境保全分野
環境保全用分野では、省エネの観点から低温排ガス処理のニーズが高まっており、低温脱硝触媒の改良に注力しています。近年、中国鉄鋼コークス炉、セメントキルン等の排ガス規制が強化され、低温活性の高い触媒の拡販を強化しています。石炭火力発電所向け触媒では、国内企業との共同研究によりバイオマス混焼時の耐劣化性能を有した脱硝触媒や水銀除去触媒の開発に取り組んでいます。また、石炭ガス化プラント(IGCC)向け排ガス処理製品の開発にも取り組んでいます。また、ディーゼル車排ガス浄化用触媒用原料として、耐熱性の高い触媒材料の開発に努めています。
クリーンエネルギー分野
政府が2020年夏に東京で開催するオリンピック・パラリンピックに向けて、水素エネルギーの導入を促進する中、定置型燃料電池材料の拡大が予想されます。また、IoTを支える自律型センサーの需要が高まっており、独立電源に用いられる低照度光発電用材料は実証化の段階に入っています。さらに次世代の新エネルギー関連材料についても国内大学との共同開発を通じ進めています。
生活関連・化粧品分野
眼鏡レンズのハードコートラッカー塗料用の高屈折率酸化物ゾルについて、耐候性を改善した開発品等で販売強化すべく展開継続中です。これまでの実績と品質が評価され大手眼鏡メーカーのワールドワイド展開に当社材の採用が決まり拡大が見込まれています。新用途展開としてサングラス用ラッカー塗料は一部採用が始まりました。多用途展開では、光学部材用途へのサンプルワークも始まり、新しい展開分野を探索しています。
化粧品分野では、国連環境計画等において海洋汚染の懸念が指摘されているプラスチック製マイクロビーズの代替材料として開発したシリカビーズが注目されています。数百ミクロンサイズのスクラブ用途に開発した当社材の採用に続いて、数ミクロンサイズの化粧品用途にも代替機運が高まっています。従来使用されてきたプラスチックビーズの感触に近い、軽い感触を目指した開発品も含めて、化粧品用途全般にも当社材の採用検討が進んでいます。
電子材料分野
記録メディア市場はPC向けで一部減少がありますが、高容量サーバー用途は拡大しており、高記憶容量化に向けた研磨面精度が益々求められています。従来の2次仕上げ研磨用に加え、1次研磨用にも当社の高面精度、高研磨速度シリカ研磨砥粒が一部で適用され業界トップシェアを維持しています。また、半導体分野は、スマホ需要による伸びは落ち着きを見せる一方、IoTやAI需要が加わり、今後も伸長の見込みです。半導体CMP用途では半導体の微細化・多層化が進んでおり、低欠陥と高研磨速度が両立する研磨砥粒が依然求められています。開発した無機ハイブリッド型研磨砥粒は引き続き高評価で顧客の採用検討が進んでいます。
光学フィルム用機能性光学材料は、高画質液晶ディスプレイに使用される反射防止フィルム用低屈折率粒子やタッチパネル用導電粒子の需要が順調に拡大する中、有機ELや量子ドットタイプのテレビ向けにも検討が進められています。この用途では新たに開発した次世代用サンプルが高い評価を受けており、更なる需要増が見込まれています。引き続きディスプレイ用途の拡大を図るとともに新しい分野への展開を進めていきます。
ファインセラミックス分野
ハイブリッド車、電気自動車、太陽光発電、LED照明など、高電力用のパワーデバイスを支える放熱用基板としての、「高熱伝導率窒化珪素基板」の性能向上を目的とした開発を行っています。その他、材料による差別化を図るため、非酸化物系セラミックスの材料開発ならびにシリーズ化、セラミックス金属複合材(MMC)の開発に注力しています。
なお、当事業での研究開発費は27億30百万円(消費税等は含まない)です。
また、総合エンジニアリング事業および触媒・ファイン事業に加え、その他の事業において1億19百万円(消費税等は含まない)の研究開発費を計上しております。
① 総合エンジニアリング事業
設計・調達・建設(EPC)ビジネス分野
コアビジネスである設計・調達・建設(EPC)ビジネス分野においては、積極的な受注活動に取り組み、ハイドロカーボン分野においては、アルジェリアにおける原油集積・処理設備やインドネシアにおけるガス処理プラントの受注、LNG分野においては、米国西海岸初の陸上LNGプラントやアフリカ地域初の洋上LNGプラントの受注などにつなげました。さらに、海外子会社による石油化学プラントの受注、インフラ分野においては従来の国内メガソーラー案件のみならず海外メガソーラー案件も受注し、ビジネスの領域拡大の成果が見え始めています。近年、設計製作から輸送まで難度の高い工法が要求されるプロジェクトが増加する傾向にあり、さらなる工法の開発・工夫による競争力強化に取り組んでいます。
石油資源・精製分野
世界の石油需要が長期的に増大する傾向がある中、豊富な埋蔵量のカナダオイルサンドや南米の超重質油、東アフリカの高流動点原油など、非在来型重質油の開発が注目されています。これら重質原油の多くが未開発である主たる理由として、消費地までのパイプラン輸送が困難であることが挙げられます。独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構と共同で開発した超臨界水を利用したSCWC(Supercritical Water Cracking)プロセスは高流動点原油の流動点を改善できることから今後開発が計画されているウガンダやケニアなどの高流動点原油の改質技術として提案し、我が国の資源獲得に貢献します。
また、天然ガスの需要増加に伴い、その副生物として生産量が増えているコンデンセートは、石油化学原料としても需要が拡大しています。当社が保有するコンデンセートに含まれる硫黄分を一つの反応器で一括して脱硫処理する脱硫技術はコンデンセートを各留分に分けた後に脱硫処理する従来法に比べて、設備費と運転費を大幅に削減できることから、産ガス国に対して継続してプロモーションを行っています。
天然ガス分野
温室効果ガスである二酸化炭素(CO₂)の排出量削減が求められている昨今、当社ではCO₂の排出抑制→分離回収→有効利用・貯留→資源再生というカーボンマネジメント・サイクルの各要素で技術・知見を継続して積上げています。分離回収においては、吸収法による高圧再生型CO₂回収(HiPACT®)プロセスを保有し、天然ガス処理や合成ガス精製過程でCO₂をより高圧で回収することで、地中貯留(CCS: Carbon dioxide Capture and Storage)および原油増進回収(CO₂-EOR: Enhanced Oil Recovery)のために新たに必要となる圧縮エネルギーとコストを大幅に削減することができます。
さらにCO₂-EORにおいては、CO₂を有効に活用するために、特殊なセラミック膜で効率的にCO₂を分離回収することを可能とする技術を開発し、フィールド実証を開始しました。実油田を対象に実施したCO₂-EOR適用可能性調査などの知見と合わせて、産油ガス国/企業向けにCO₂問題に対するトータルソリューションを提供していきます。
また、既設LNGプラント関連のIoTビジネスとして、運転データ解析及び気象解析を通じて得られた知見を基に制御方法改善によるLNG増産サービス等を海外顧客向けに提案中です。
ケミカル分野
シェールガスをはじめとする天然ガスは、液体燃料製造や高付加価値の化学品製造の原料としても期待されています。天然ガスなどから合成されるメタノールを原料とするプロピレン製造プロセス(DTP®)は実用化段階にあり、産ガス国や化学会社などに対して技術適用を目指した営業活動を展開しています。また、次世代の高性能触媒も継続して開発中で、工業化段階にあります。
また、当社の開発したWINTRAY®の技術は、液液抽出に適応されるトレイの技術であり、高体積流束、高効率、汚れに強い、という3つの特徴があり、顧客企業から高い評価を頂いています。石化プラントおよび化学プラントにおける液液抽出塔のトレイとして大きなメリットがあり、この技術をアジアの顧客向けにプロモーションを進めてきた結果、複数社に対して具体的なプラントへの適用検討を実施しています。
さらに、当社は、硫化水素(H₂S)およびこのH₂Sから硫化水素ナトリウム(NaSH)を製造するプロセス技術を保有し、数々の国内外化学メーカーにライセンスを供与してまいりました。H₂Sは、鳥などの動物の飼料に添加する必須アミノ酸であるメチオニンの製造原料となり、NaSHは、電気自動車部品などに用いられるスーパーエンジニアリングプラスチックのPPS(ポリフェニレンスルフィド)の原料となります。いずれも今後の需要の伸びが期待されており、今後も積極的なプロモーション活動を展開してまいります。
環境分野
温室効果ガス排出量削減にむけてCO₂を排出しない水素が注目されており、2017年12月に経済産業省から発表された水素基本戦略には、エネルギーキャリアとしてのアンモニアの活用に向けた技術開発を推進し、2020年代半ばまでに CO₂フリーアンモニアの導入・利用開始を目指すことが明記されました。
当社は、内閣府による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のエネルギーキャリアプロジェクトに参画し、再生可能エネルギーなどからCO₂フリーアンモニアを製造するシステムを開発しており、産業技術総合研究所、大学が開発した新規アンモニア合成触媒を用いた実証試験が2018年3月に産業技術総合研究所福島再生可能エネルギー研究所で開始しました。本開発では、太陽光や風力の不安定な出力を平準化するために、蓄電池や水電気分解などを組み合わせた全体システムとして最適化も検討しています。また、CO₂フリーアンモニア混焼発電のためのサプライチェーンコスト評価を実施し、具体的に産ガス国でCO₂フリーアンモニアを製造し、我が国に輸入するスキームを検討しています。
また、中国やインドでは、環境汚染が社会問題になったことをきっかけに、火力発電所などからの排ガスに対する環境規制が強化されました。排ガスからSOxおよびNOxを効率的に除去する当社の乾式脱硫脱硝システムの技術は、これら新興国の環境規制に対応するための有効な手段であり、既に中国のコークス炉ガスの燃焼排ガスの浄化のために20基以上の技術ライセンス契約を行いました。また、インドでは経済産業省の補助金事業として石炭火力発電向けへの適用検討を実施しました。今後も環境規制が強化される新興国や業界に対して、そのニーズにマッチするように技術改良を加えながら、積極的なプロモーション活動を展開して進めてまいります。
ライフサイエンス分野
バイオ医薬品製造技術として、マイクロバブル発生技術に高性能撹拌技術を付加したバイオリアクターのシングルユース適用技術の開発を行っています。また、医薬品業界の注目度が高まっている原薬および製剤の連続製造に関し、独自の技術開発を進めています。さらに、高薬理活性物質の飛散性測定など、多角的な技術開発を行っています。
また、再生医療分野では、再生医療関連施設の多くの実績を踏まえ、細胞・組織培養環境基準の構築や再生医療関連要素技術の高度化を進めています。
さらに、病院分野ではEPCに加え、運営サービスおよび病院経営にも踏み込んだ展開を国内外で進めた結果、カンボジアで病院建設、運営を行うに至っており、このような実績をベースに海外で日本の高度な医療技術やホスピタリティを生かした病院を開設するなど、医療施設の運営にも積極的に参画しています。
原子力分野
東日本大震災により発生した放射能を含んだ瓦礫、廃棄物、あるいは汚染土壌の一部は焼却処理や熱処理により除染することが検討されています。しかし、このような除染により除去され濃縮された放射能を処分するための処理方法はいまだ決定されていません。そこで、当社では、これらの放射能の高い汚染物に対して、新たな固化体を用いた封じ込め性の高い固化処理技術の開発に着手し成果をあげつつあります。また同固化体を用いて、発電所サイト内に貯蔵されている塩分を含んだ放射性廃液の処理技術の開発も進めています。
新規事業創出分野
CO₂の排出量削減に向けて、バイオマス由来燃料の開発が世界的に進められています。非食物系バイオマスを原料にした酵素法エタノール製造プロセスは、NEDOからの委託事業が終了し、基盤技術を獲得しました。その成果を実用化に結びつけるため、バイオマス利用を目指す企業と共同で実証開発を実施しています。
また、バイオマスを原料とした化学品の製造技術について、原料多様化やCO₂排出量削減に向けた対応技術の一つとして注目し、バイオマス由来のエタノールや1,4-ブタンジオールを原料とする1,3-ブタジエン製造技術の開発を進めています。また、文科省ALCAプロジェクトとして大学、化学会社、製紙会社と共同でバイオマスからHMFを製造する技術の開発に取り組んでいます。
さらに、電力システム分野では、環境省「2016年度CO₂排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」に採択され、太陽光発電所に対する出力制御された電力を、太陽光パネルの最大出力点を維持して、蓄電池に対し充放電制御する電力回収ユニットを開発し、技術研究所にて実証しています。当該技術により、再エネ導入による送配電の不安定化を回避しつつ、抑制された太陽光発電量の回収に貢献します。
なお、当事業での研究開発費は30億25百万円(消費税等は含まない)です。
② 触媒・ファイン事業
石油精製分野
国内では、原油の有効利用を目的としたエネルギー供給構造高度化法施行により、石油精製各社の精製能力削減および経営統合による生産性効率化や重質油の白油化による高付加価値化が進んでいます。発電用燃料油の需要減少に伴う重油市場の減少が見込まれ、より一層、重質油を分解することの重要性が高まっています。一方、東南アジアでは燃料油の堅調な需要増加、石油化学原料も生産する大型石油コンビナートの増設や船舶燃料油の硫黄規制強化への対応の動きが見られるようになってきています。これらの動向に対応すべく、重質油を効率的に分解する流動接触分解触媒の開発を進めており、これまでにない高性能触媒の開発に目途がつきつつあります。石化型流動接触装置に有効なアディティブ触媒として、世界トップクラスのプロピレン増産用アディティブの実績が増えてきていますが、更に残油処理用の新しいプロピレン増産用アディティブの工業化を終え、今後、実証化を進めていきます。
一方、新興国を中心とした環境規制強化に対応する形で、水素化脱硫触媒の需要は堅調に伸びていくと予想されています。高活性と高安定性を兼ね備えた革新的な軽油サルファーフリー触媒が国内製油所で初採用され、その実績を基にさらに拡販を進めていく計画です。さらに高性能な次世代触媒の開発も進めています。船舶燃料油の硫黄規制強化に対応する残油水素化処理触媒に関して、顧客と共同で研究開発を進めています。石油精製会社の研究所と共同開発した軽油サルファーフリー触媒や水素化分解触媒は、製油所ニーズを取り込んで収益向上に貢献しています。
残油水素化処理触媒と残油用流動接触分解触媒の両方を併せ持つ触媒メーカーとして、その強みを生かすべく、両プロセスをトータルで最適化した魅力ある触媒の提案、運転サポートに必要なシミュレーション開発等、ソリューションプロバイダー型の技術サービス体制を整えて、顧客満足に努めています。
石油化学分野
世界的には新興国が牽引役となり、石油化学品は増加基調です。国内では基礎化学品は安価な海外品に対抗するためコスト競争力が重要となっています。一方、高付加価値な機能性化学品は高度な製造技術やノウハウを有している国内メーカーが現在も競争力を保持しています。機能性化学品を製造するために必要な触媒には、より高機能な特性が求められています。このため、顧客の触媒に対する要望を正確に把握し、迅速なケミカル触媒の受託研究・工業化に取り組んでいます。
また、ニッケル触媒や吸着剤など自社触媒の高性能化および品種拡大のための触媒開発や評価技術の確立を実施しています。この中で、ハイドロカーボン中の硫化カルボニルを除去するための吸着剤は、性能改良とテクニカルサービス強化により、新規案件の開拓および獲得に結び付いています。
環境保全分野
環境保全用分野では、省エネの観点から低温排ガス処理のニーズが高まっており、低温脱硝触媒の改良に注力しています。近年、中国鉄鋼コークス炉、セメントキルン等の排ガス規制が強化され、低温活性の高い触媒の拡販を強化しています。石炭火力発電所向け触媒では、国内企業との共同研究によりバイオマス混焼時の耐劣化性能を有した脱硝触媒や水銀除去触媒の開発に取り組んでいます。また、石炭ガス化プラント(IGCC)向け排ガス処理製品の開発にも取り組んでいます。また、ディーゼル車排ガス浄化用触媒用原料として、耐熱性の高い触媒材料の開発に努めています。
クリーンエネルギー分野
政府が2020年夏に東京で開催するオリンピック・パラリンピックに向けて、水素エネルギーの導入を促進する中、定置型燃料電池材料の拡大が予想されます。また、IoTを支える自律型センサーの需要が高まっており、独立電源に用いられる低照度光発電用材料は実証化の段階に入っています。さらに次世代の新エネルギー関連材料についても国内大学との共同開発を通じ進めています。
生活関連・化粧品分野
眼鏡レンズのハードコートラッカー塗料用の高屈折率酸化物ゾルについて、耐候性を改善した開発品等で販売強化すべく展開継続中です。これまでの実績と品質が評価され大手眼鏡メーカーのワールドワイド展開に当社材の採用が決まり拡大が見込まれています。新用途展開としてサングラス用ラッカー塗料は一部採用が始まりました。多用途展開では、光学部材用途へのサンプルワークも始まり、新しい展開分野を探索しています。
化粧品分野では、国連環境計画等において海洋汚染の懸念が指摘されているプラスチック製マイクロビーズの代替材料として開発したシリカビーズが注目されています。数百ミクロンサイズのスクラブ用途に開発した当社材の採用に続いて、数ミクロンサイズの化粧品用途にも代替機運が高まっています。従来使用されてきたプラスチックビーズの感触に近い、軽い感触を目指した開発品も含めて、化粧品用途全般にも当社材の採用検討が進んでいます。
電子材料分野
記録メディア市場はPC向けで一部減少がありますが、高容量サーバー用途は拡大しており、高記憶容量化に向けた研磨面精度が益々求められています。従来の2次仕上げ研磨用に加え、1次研磨用にも当社の高面精度、高研磨速度シリカ研磨砥粒が一部で適用され業界トップシェアを維持しています。また、半導体分野は、スマホ需要による伸びは落ち着きを見せる一方、IoTやAI需要が加わり、今後も伸長の見込みです。半導体CMP用途では半導体の微細化・多層化が進んでおり、低欠陥と高研磨速度が両立する研磨砥粒が依然求められています。開発した無機ハイブリッド型研磨砥粒は引き続き高評価で顧客の採用検討が進んでいます。
光学フィルム用機能性光学材料は、高画質液晶ディスプレイに使用される反射防止フィルム用低屈折率粒子やタッチパネル用導電粒子の需要が順調に拡大する中、有機ELや量子ドットタイプのテレビ向けにも検討が進められています。この用途では新たに開発した次世代用サンプルが高い評価を受けており、更なる需要増が見込まれています。引き続きディスプレイ用途の拡大を図るとともに新しい分野への展開を進めていきます。
ファインセラミックス分野
ハイブリッド車、電気自動車、太陽光発電、LED照明など、高電力用のパワーデバイスを支える放熱用基板としての、「高熱伝導率窒化珪素基板」の性能向上を目的とした開発を行っています。その他、材料による差別化を図るため、非酸化物系セラミックスの材料開発ならびにシリーズ化、セラミックス金属複合材(MMC)の開発に注力しています。
なお、当事業での研究開発費は27億30百万円(消費税等は含まない)です。
また、総合エンジニアリング事業および触媒・ファイン事業に加え、その他の事業において1億19百万円(消費税等は含まない)の研究開発費を計上しております。
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- 株式所有者別状況
- 役員の状況
- コーポレートガバナンス状況
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E01575] S100DGTT)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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