有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100CY8A
アンリツ株式会社 研究開発活動 (2018年3月期)
当連結会計年度の研究開発投資(無形資産に計上された開発費を含む)の内訳は、次のとおりであります。
また、セグメント別の主な研究開発成果は次のとおりです。
(1) 計測事業
計測事業は、当社、Anritsu Company(米国)、Azimuth Systems, Inc.(米国)、Anritsu Ltd.(英国)、Anritsu A/S(デンマーク)等において、保有する技術を相互補完することによりシナジー効果を上げるべく協調して開発を進めております。当連結会計年度においては、フィリピンに開発センターのAnritsu Philippines, Inc.を設立しました。
1) ラジオ コミュニケーション テストステーション MT8000Aの開発
第5世代通信システム(5G)が、「超高速」「高信頼・低遅延」「多数同時接続」といった様々な要求条件に対応できるネットワークとして検討が進んでいます。
MT8000Aは、5Gシステムの開発用テストプラットフォームです。5Gの擬似基地局機能を有し、5Gで使用するサブ6GHz帯とミリ波帯の両方の帯域に1台で対応します。OTA(Over The Air) Chamberと組み合わせることで、3GPPで規定された呼接続によるミリ波帯のRF測定や、ビームフォーミング試験もサポートします。
また、モジュラーアーキテクチャによる柔軟性と拡張性を備えた先進のデザインを採用し、高速大容量通信だけでなく、今後広がる超高信頼低遅延、超多端末接続などの新しい5G試験需要にフレキシブルに対応します。さらに、長年の市場実績があり最先端機能を網羅しているLTEテストプラットフォームを活かした試験環境を提供します。お客様のLTE試験環境やシナリオなどの試験資産を活用し、5GとLTEのNSA(ノンスタンドアローン)をシミュレートする連動試験環境をスムーズに構築できます。
今後、5Gサービスの早期普及に寄与する計測ソリューションを提供し、4Gから5Gシステムへのスムーズな移行に貢献いたします。
2) PCIe Gen4に対応したMP1900Aシグナルクオリティアナライザ-Rの開発
スマートフォンやモバイル端末によるデータ通信量の増加に伴い、データセンタ内のネットワークインタフェースは200Gbpsおよび400Gbpsイーサネットに、通信機器バスインタフェースはPCIe Gen4(16.0GT/s)に高速化されようとしています。PCIeは、それまでほとんどのコンピュータに採用されていたPCI(Peripheral Com-ponent Interconnect)バスを高速化する目的でシリアル化され、2002年に初めて2.5GT/sのGen1が公開されました。その後ボトルネックを解消する目的で2006年に5.0GT/sのGen2、2010年に8.0GT/sのGen3と高速化が図られました。そして2017年には、16.0GT/sのGen4の規格化が完了し、今後テスト方法などの規定が予定されています。
PCIeの規格はPCI-SIGという規格団体により策定されており、そこにはチップベンダ、IP(Intellectual Property)ベンダ、測定器ベンダが参画し、相互接続性を考慮したコンプライアンステストとして、そのテスト手法だけでなく、使用する測定器や治具が細かく規定されています。Gen4の規格化は予定より1年ほど遅れましたが、これは16.0GT/sの高速化を実現することが当初の想定以上に困難であったことが要因です。現在規格化が開始された32.0GT/sのGen5ではさらにその難易度が高まると思われます。
我々はこれまで10Gbps、25Gbps、および100Gbpsイーサネット等の光モジュールや高速デバイスの品質評価・管理を目的とした幅広い測定需要に応えるため、MP1800Aシグナルクオリティアナライザ(以下、SQA)をリリースしています。今までのSQAの試験と異なり、PCIeでジッタ耐力試験を行う場合には、測定に先立ち、被測定物(DUT: Device Under Test)と測定器の間でリンクトレーニングを行い、DUTをループバック状態に遷移させなければなりません。
PCIeに対応するため、MP1900Aシグナルクオリティアナライザ-R(以下、SQA-R)では以下を開発しました。
・DUTとのリンクトレーニング機能を提供する、Link Training and Status State Machine(LTSSM)
・PCIeの測定要求である高速エンファシス切り替えに対応したパルスパターン発生器MU195020A 21G/32G bit/s SI PPG(以下、SI PPG)
・高精度Continuous Time Linear Equalizer(CTLE)を備えた誤り検出器 MU195040A 21G/32G bit/s SI ED(以下、SI ED)
・さまざまなストレス用ノイズを印加可能なMU195050A Noise Generator(以下、Noise Gen)
・DUTとのリンクトレーニングを制御するMX183000A-PL021 PCIeリンクトレーニングソフトウェア
さらに、SQA-Rではコンプライアンステストの対応だけでなく、開発初期段階の不具合などを解析可能なLTSSMの解析、イベントトリガ発生機能などを含み、設計検証時間の短縮を可能としています。同時に将来のソフトウェアアップデートによりGen5対応も可能な性能を装備し、投資コスト低減に貢献します。
3) MP2110Aサンプリングオシロスコープの開発
クラウドコンピューティングサービスの普及に伴う情報量の増大により、データセンタで使用されているサーバやネットワーク機器の伝送容量を増やすことが急務となっています。データセンタではサーバやネットワーク機器の光インタフェース化が進んでおり、光トランシーバの需要が急増しています。特に25GbE(25 Gigabit Ethernet)用SFP28や、100GbE(25Gbit/s×4レーン)用のQSFP28と呼ばれるフォームファクタを採用した光トランシーバの需要は2016年以降急増しています。
光トランシーバの製造・開発にはBERT(Bit Error Rate Tester)とアイパターン解析用のサンプリングオシロスコープが必要となり、2015年に光トランシーバの製造・開発用に4ch BERTとサンプリングオシロスコープを1台に搭載したMP2100Bを開発しました。しかしMP2100Bは測定可能なビットレートが最大12.5Gbit/sであり、25GbEや100GbE用光トランシーバ測定に対応できていませんでした。
そこで25Gbit/sに適した4ch BERTとサンプリングオシロスコープを1台に搭載するMP2110Aを開発しました。これによりSFP28やQSFP28といった光トランシーバモジュールのBER測定とサンプリングオシロスコープによる光出力波形測定を1台で実施できるようになります。MP2110Aの開発では、25Gbit/s信号を観測するため、サンプリングオシロスコープの全面的な設計変更を行いました。具体的には、アナログ入力帯域の広域化のため、光帯域40GHzのO/E(Optical to Electrical)変換モジュールと電気帯域40GHzのサンプラモジュールを新規設計しました。また新しいトリガシステムを採用し、測定器内部で生じる残留ジッタを平均200fs rms以下に低減しています。
今後もBERやアイパターン等を評価するための最適なソリューションを提供することで、高速・大容量の通信インフラを支えるさまざまな光トランシーバの開発・生産効率の改善や評価品質の向上に貢献していきます。
4) IEEE 802.11ac WLANネットワークモードに対応したワイヤレスコネクティビティテストセットの開発
インターネット、モバイル通信環境の普及に伴い、スマートフォンをはじめとした通信端末機器にはWLAN(Wireless LAN)が標準的な通信インタフェースとして搭載されています。加えて、家電製品や自動車など、従来想定された通信機器以外の近距離無線インフラとしてWLANの利用範囲が広がり続けています。近年注目されているIoT(Internet of Things)機器においても、WLANはその中心的な通信技術として重視されています。
WLANはIEEE 802.11として標準化されていますが、RF(Radio Frequency)性能評価の手順は明示されておらず、ダイレクトモード(チップベンダ独自のテストモード)による評価が主流となっています。一方でダイレクトモードが使用できない完成品状態でのRF性能評価や、CTIA CWG(Cellular Telecommunications and Internet As-sociation Converged Wireless Group)で標準化されているOTA(Over The Air)試験など、ネットワーク接続状態を前提とした試験要求が高まっています。
そこで現在主流となっているIEEE 802.11acのWLANネットワーク接続機能に対応したRF測定器としてMT8862Aを開発しました。従来のダイレクトモードでは困難であった完成品状態でWLAN性能評価やネットワーク接続を前提としたRF測定機能を提供します。ネットワーク接続を利用したセットアップの容易さ、ウェブGUIによる操作の利便性によって、WLANデバイスの製品評価を手軽に実現する環境を提供し、IoT技術を含めて今後も広く普及が見込まれるWLAN機器の品質の向上に貢献していきます。
5) 標準化活動
計測事業における研究開発活動の重要な取り組みの1つとして、国内外の標準化活動へ積極的に参画しています。情報通信産業における最先端の知識・技術を常に製品へ反映し、競争力に優れたソリューションをタイムリーに提供するために、主要な標準団体として現在3GPP(注1)、ITU-T(注2)、IEEE(注3)等へ参加し、4G/5G、データセンタ、IoT/M2M(注4)、コネクテッドカー(注5)といった有線・無線通信事業の戦略立案や情報収集に役立てています。
特に移動通信システムの規格を策定する3GPPにおいては、基地局と携帯端末の通信手順試験を可能とするコンフォーマンステスト(端末認証試験)仕様策定に際し、LTE/LTE-Advancedの規格策定段階から数多くの寄書を行い、2017年度は国内外の通信オペレータ、チップセットベンダー、端末ベンダーとも協力しつつ第5世代移動通信システム関連規格を含むリリース15(注6)の早期公開に貢献しました。2018年度も引き続きリリース15、リリース16(注6)の規格化に参画し、2020年の5Gサービス提供開始へ向け貢献をしていきます。
(注1)3GPP
The 3rd Generation Partnership Projectの略。各国・各地域の標準化団体所属企業による、移動通信システム規格の国際標準化プロジェクト。
(注2)ITU-T
International Telecommunication Union-Telecommunicationの略。国際電気通信連合の電気通信標準化部門。
(注3)IEEE
The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.の略。アメリカ合衆国に本部を持つ電気工学・電子工学技術の学会。IEEE 802.11(WiFi)や、IEEE802.3(Ethernet)などの規格を策定している。
(注4)IoT/M2M
Internet of Things、Machine to Machineの略。コンピュータなどの情報・通信機器だけでなく、世の中に存在するあらゆる物に通信機能を持たせ、インターネットに接続したり人手を介さずに相互に通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行う技術。
(注5)コネクテッドカー
ICT端末としての機能を有する自動車のこと。車両の状態や周囲の道路状況などの様々なデータをセンサーにより取得し、ネットワークを介して集積・分析することで、新たな価値を生み出すことが期待されている。
(注6)リリース15、16
3GPPから公開されている移動通信システム規格の版数。リリース15は2018年1月に公開。リリース16は2018年6月より活動開始予定。
(2) PQA事業
PQA事業は、アンリツインフィビス㈱が研究開発を行っております。
品質保証の厳格化に呼応した新型金属検出機の開発
食品原材料や加工食品の国際流通が進む中、国連食糧農業機関(FAO: Food and Agriculture Organization)と世界保健機関(WHO: World Health Organization)の合同機関であるコーデックス委員会は、食品安全の管理手法であるHACCP (Hazard Analysis and Critical Control Point)のガイドラインを発表して世界各国に推奨しており、我が国においても導入が加速しています。
食品に混入した金属異物を磁界の揺らぎを利用して非接触で検出できる金属検出機は、HACCPにおける最も基本的な危害モニタリング手段の1つとして広く普及しており、現在も需要が拡大しています。
金属検出機は、原理的に検査対象物や外部から飛来する電磁ノイズの影響により検出性能が変化することがあり、検査性能の安定化が従来から課題でした。また、HACCPでは危害のモニタリングが適切に行われていることを検証し記録することが求められ、品質管理工数の軽減が新たな課題となっています。このようなお客様の課題に以前から注目し、検査に有用なセンシング技術の研究と品質保証の高度化に貢献するソリューションの開発に取り組んでおります。
当連結会計年度におきましては、新開発の信号処理回路とアルゴリズムの採用により、検出感度のさらなる向上と使用環境に対する高い安定性を実現した「M6-hシリーズ金属検出機」を開発し販売を開始しました。
M6-hシリーズ金属検出機は、基本性能の向上にとどまらず、設定ミスを未然に防ぐスマートガイド機能、検査の健全性を検証するバリデーション機能、異常動作時の診断機能などHACCPを念頭に置いた各種機能を搭載しており、食品生産ラインにおける品質保証の高度化と生産性の向上に貢献します。
PQA事業は、オリジナルでハイレベルな商品と、お客様の品質保証活動をサポートするサービスのご提供を通じて、「安全・安心」な社会の実現に貢献していきます。
当連結会計年度 | 売上収益比率 | ||
計測事業 | 7,609百万円 | 14.0% | |
PQA事業 | 2,283百万円 | 10.1% | |
その他の事業 | 471百万円 | 5.2% | |
基礎研究開発 | 191百万円 | - | |
合 計 | 10,556百万円 | 12.3% |
また、セグメント別の主な研究開発成果は次のとおりです。
(1) 計測事業
計測事業は、当社、Anritsu Company(米国)、Azimuth Systems, Inc.(米国)、Anritsu Ltd.(英国)、Anritsu A/S(デンマーク)等において、保有する技術を相互補完することによりシナジー効果を上げるべく協調して開発を進めております。当連結会計年度においては、フィリピンに開発センターのAnritsu Philippines, Inc.を設立しました。
1) ラジオ コミュニケーション テストステーション MT8000Aの開発
第5世代通信システム(5G)が、「超高速」「高信頼・低遅延」「多数同時接続」といった様々な要求条件に対応できるネットワークとして検討が進んでいます。
MT8000Aは、5Gシステムの開発用テストプラットフォームです。5Gの擬似基地局機能を有し、5Gで使用するサブ6GHz帯とミリ波帯の両方の帯域に1台で対応します。OTA(Over The Air) Chamberと組み合わせることで、3GPPで規定された呼接続によるミリ波帯のRF測定や、ビームフォーミング試験もサポートします。
また、モジュラーアーキテクチャによる柔軟性と拡張性を備えた先進のデザインを採用し、高速大容量通信だけでなく、今後広がる超高信頼低遅延、超多端末接続などの新しい5G試験需要にフレキシブルに対応します。さらに、長年の市場実績があり最先端機能を網羅しているLTEテストプラットフォームを活かした試験環境を提供します。お客様のLTE試験環境やシナリオなどの試験資産を活用し、5GとLTEのNSA(ノンスタンドアローン)をシミュレートする連動試験環境をスムーズに構築できます。
今後、5Gサービスの早期普及に寄与する計測ソリューションを提供し、4Gから5Gシステムへのスムーズな移行に貢献いたします。
2) PCIe Gen4に対応したMP1900Aシグナルクオリティアナライザ-Rの開発
スマートフォンやモバイル端末によるデータ通信量の増加に伴い、データセンタ内のネットワークインタフェースは200Gbpsおよび400Gbpsイーサネットに、通信機器バスインタフェースはPCIe Gen4(16.0GT/s)に高速化されようとしています。PCIeは、それまでほとんどのコンピュータに採用されていたPCI(Peripheral Com-ponent Interconnect)バスを高速化する目的でシリアル化され、2002年に初めて2.5GT/sのGen1が公開されました。その後ボトルネックを解消する目的で2006年に5.0GT/sのGen2、2010年に8.0GT/sのGen3と高速化が図られました。そして2017年には、16.0GT/sのGen4の規格化が完了し、今後テスト方法などの規定が予定されています。
PCIeの規格はPCI-SIGという規格団体により策定されており、そこにはチップベンダ、IP(Intellectual Property)ベンダ、測定器ベンダが参画し、相互接続性を考慮したコンプライアンステストとして、そのテスト手法だけでなく、使用する測定器や治具が細かく規定されています。Gen4の規格化は予定より1年ほど遅れましたが、これは16.0GT/sの高速化を実現することが当初の想定以上に困難であったことが要因です。現在規格化が開始された32.0GT/sのGen5ではさらにその難易度が高まると思われます。
我々はこれまで10Gbps、25Gbps、および100Gbpsイーサネット等の光モジュールや高速デバイスの品質評価・管理を目的とした幅広い測定需要に応えるため、MP1800Aシグナルクオリティアナライザ(以下、SQA)をリリースしています。今までのSQAの試験と異なり、PCIeでジッタ耐力試験を行う場合には、測定に先立ち、被測定物(DUT: Device Under Test)と測定器の間でリンクトレーニングを行い、DUTをループバック状態に遷移させなければなりません。
PCIeに対応するため、MP1900Aシグナルクオリティアナライザ-R(以下、SQA-R)では以下を開発しました。
・DUTとのリンクトレーニング機能を提供する、Link Training and Status State Machine(LTSSM)
・PCIeの測定要求である高速エンファシス切り替えに対応したパルスパターン発生器MU195020A 21G/32G bit/s SI PPG(以下、SI PPG)
・高精度Continuous Time Linear Equalizer(CTLE)を備えた誤り検出器 MU195040A 21G/32G bit/s SI ED(以下、SI ED)
・さまざまなストレス用ノイズを印加可能なMU195050A Noise Generator(以下、Noise Gen)
・DUTとのリンクトレーニングを制御するMX183000A-PL021 PCIeリンクトレーニングソフトウェア
さらに、SQA-Rではコンプライアンステストの対応だけでなく、開発初期段階の不具合などを解析可能なLTSSMの解析、イベントトリガ発生機能などを含み、設計検証時間の短縮を可能としています。同時に将来のソフトウェアアップデートによりGen5対応も可能な性能を装備し、投資コスト低減に貢献します。
3) MP2110Aサンプリングオシロスコープの開発
クラウドコンピューティングサービスの普及に伴う情報量の増大により、データセンタで使用されているサーバやネットワーク機器の伝送容量を増やすことが急務となっています。データセンタではサーバやネットワーク機器の光インタフェース化が進んでおり、光トランシーバの需要が急増しています。特に25GbE(25 Gigabit Ethernet)用SFP28や、100GbE(25Gbit/s×4レーン)用のQSFP28と呼ばれるフォームファクタを採用した光トランシーバの需要は2016年以降急増しています。
光トランシーバの製造・開発にはBERT(Bit Error Rate Tester)とアイパターン解析用のサンプリングオシロスコープが必要となり、2015年に光トランシーバの製造・開発用に4ch BERTとサンプリングオシロスコープを1台に搭載したMP2100Bを開発しました。しかしMP2100Bは測定可能なビットレートが最大12.5Gbit/sであり、25GbEや100GbE用光トランシーバ測定に対応できていませんでした。
そこで25Gbit/sに適した4ch BERTとサンプリングオシロスコープを1台に搭載するMP2110Aを開発しました。これによりSFP28やQSFP28といった光トランシーバモジュールのBER測定とサンプリングオシロスコープによる光出力波形測定を1台で実施できるようになります。MP2110Aの開発では、25Gbit/s信号を観測するため、サンプリングオシロスコープの全面的な設計変更を行いました。具体的には、アナログ入力帯域の広域化のため、光帯域40GHzのO/E(Optical to Electrical)変換モジュールと電気帯域40GHzのサンプラモジュールを新規設計しました。また新しいトリガシステムを採用し、測定器内部で生じる残留ジッタを平均200fs rms以下に低減しています。
今後もBERやアイパターン等を評価するための最適なソリューションを提供することで、高速・大容量の通信インフラを支えるさまざまな光トランシーバの開発・生産効率の改善や評価品質の向上に貢献していきます。
4) IEEE 802.11ac WLANネットワークモードに対応したワイヤレスコネクティビティテストセットの開発
インターネット、モバイル通信環境の普及に伴い、スマートフォンをはじめとした通信端末機器にはWLAN(Wireless LAN)が標準的な通信インタフェースとして搭載されています。加えて、家電製品や自動車など、従来想定された通信機器以外の近距離無線インフラとしてWLANの利用範囲が広がり続けています。近年注目されているIoT(Internet of Things)機器においても、WLANはその中心的な通信技術として重視されています。
WLANはIEEE 802.11として標準化されていますが、RF(Radio Frequency)性能評価の手順は明示されておらず、ダイレクトモード(チップベンダ独自のテストモード)による評価が主流となっています。一方でダイレクトモードが使用できない完成品状態でのRF性能評価や、CTIA CWG(Cellular Telecommunications and Internet As-sociation Converged Wireless Group)で標準化されているOTA(Over The Air)試験など、ネットワーク接続状態を前提とした試験要求が高まっています。
そこで現在主流となっているIEEE 802.11acのWLANネットワーク接続機能に対応したRF測定器としてMT8862Aを開発しました。従来のダイレクトモードでは困難であった完成品状態でWLAN性能評価やネットワーク接続を前提としたRF測定機能を提供します。ネットワーク接続を利用したセットアップの容易さ、ウェブGUIによる操作の利便性によって、WLANデバイスの製品評価を手軽に実現する環境を提供し、IoT技術を含めて今後も広く普及が見込まれるWLAN機器の品質の向上に貢献していきます。
5) 標準化活動
計測事業における研究開発活動の重要な取り組みの1つとして、国内外の標準化活動へ積極的に参画しています。情報通信産業における最先端の知識・技術を常に製品へ反映し、競争力に優れたソリューションをタイムリーに提供するために、主要な標準団体として現在3GPP(注1)、ITU-T(注2)、IEEE(注3)等へ参加し、4G/5G、データセンタ、IoT/M2M(注4)、コネクテッドカー(注5)といった有線・無線通信事業の戦略立案や情報収集に役立てています。
特に移動通信システムの規格を策定する3GPPにおいては、基地局と携帯端末の通信手順試験を可能とするコンフォーマンステスト(端末認証試験)仕様策定に際し、LTE/LTE-Advancedの規格策定段階から数多くの寄書を行い、2017年度は国内外の通信オペレータ、チップセットベンダー、端末ベンダーとも協力しつつ第5世代移動通信システム関連規格を含むリリース15(注6)の早期公開に貢献しました。2018年度も引き続きリリース15、リリース16(注6)の規格化に参画し、2020年の5Gサービス提供開始へ向け貢献をしていきます。
(注1)3GPP
The 3rd Generation Partnership Projectの略。各国・各地域の標準化団体所属企業による、移動通信システム規格の国際標準化プロジェクト。
(注2)ITU-T
International Telecommunication Union-Telecommunicationの略。国際電気通信連合の電気通信標準化部門。
(注3)IEEE
The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.の略。アメリカ合衆国に本部を持つ電気工学・電子工学技術の学会。IEEE 802.11(WiFi)や、IEEE802.3(Ethernet)などの規格を策定している。
(注4)IoT/M2M
Internet of Things、Machine to Machineの略。コンピュータなどの情報・通信機器だけでなく、世の中に存在するあらゆる物に通信機能を持たせ、インターネットに接続したり人手を介さずに相互に通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行う技術。
(注5)コネクテッドカー
ICT端末としての機能を有する自動車のこと。車両の状態や周囲の道路状況などの様々なデータをセンサーにより取得し、ネットワークを介して集積・分析することで、新たな価値を生み出すことが期待されている。
(注6)リリース15、16
3GPPから公開されている移動通信システム規格の版数。リリース15は2018年1月に公開。リリース16は2018年6月より活動開始予定。
(2) PQA事業
PQA事業は、アンリツインフィビス㈱が研究開発を行っております。
品質保証の厳格化に呼応した新型金属検出機の開発
食品原材料や加工食品の国際流通が進む中、国連食糧農業機関(FAO: Food and Agriculture Organization)と世界保健機関(WHO: World Health Organization)の合同機関であるコーデックス委員会は、食品安全の管理手法であるHACCP (Hazard Analysis and Critical Control Point)のガイドラインを発表して世界各国に推奨しており、我が国においても導入が加速しています。
食品に混入した金属異物を磁界の揺らぎを利用して非接触で検出できる金属検出機は、HACCPにおける最も基本的な危害モニタリング手段の1つとして広く普及しており、現在も需要が拡大しています。
金属検出機は、原理的に検査対象物や外部から飛来する電磁ノイズの影響により検出性能が変化することがあり、検査性能の安定化が従来から課題でした。また、HACCPでは危害のモニタリングが適切に行われていることを検証し記録することが求められ、品質管理工数の軽減が新たな課題となっています。このようなお客様の課題に以前から注目し、検査に有用なセンシング技術の研究と品質保証の高度化に貢献するソリューションの開発に取り組んでおります。
当連結会計年度におきましては、新開発の信号処理回路とアルゴリズムの採用により、検出感度のさらなる向上と使用環境に対する高い安定性を実現した「M6-hシリーズ金属検出機」を開発し販売を開始しました。
M6-hシリーズ金属検出機は、基本性能の向上にとどまらず、設定ミスを未然に防ぐスマートガイド機能、検査の健全性を検証するバリデーション機能、異常動作時の診断機能などHACCPを念頭に置いた各種機能を搭載しており、食品生産ラインにおける品質保証の高度化と生産性の向上に貢献します。
PQA事業は、オリジナルでハイレベルな商品と、お客様の品質保証活動をサポートするサービスのご提供を通じて、「安全・安心」な社会の実現に貢献していきます。
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