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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100ERPG

有価証券報告書抜粋 浜松ホトニクス株式会社 研究開発活動 (2018年9月期)


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当社グループの研究開発活動は、「光の本質に関する研究及びその応用」をメインテーマとし、主に当社の中央研究所、筑波研究所及び各事業部において行っております。
光の世界は未だその本質すら解明されていないという、多くの可能性を秘めた分野であり、光の利用という観点からみても、光の広い波長領域のうち、ごく限られた一部しか利用することができていないのが現状であります。こうした中、当社の中央研究所及び筑波研究所においては、光についての基礎研究と光の利用に関する応用研究を進めており、また、各事業部においては、製品とその応用製品及びそれらを支える要素技術、製造技術、加工技術に関する開発を行っております。
当連結会計年度の研究開発費の総額は、12,830百万円であり、これを事業のセグメントでみますと、電子管事業2,740百万円、光半導体事業2,946百万円、画像計測機器事業757百万円、その他事業357百万円及び各事業区分に配賦できない基礎的研究6,027百万円であります。
当連結会計年度における主要な研究開発の概要は次のとおりであります。


マトリックスフリーを実現したイオン化支援基板
質量分析とは、試料にレーザ光や電子線等を照射することで試料の原子、分子をイオン化し質量を測定することで、その種類や量、分子構造などを精密に分析する手法で、近年、環境、食品、生命科学等の幅広い分野で需要が高まっております。この質量分析におけるイオン化法の1つであるMALDI(注1) TOF-MS(注2)では、レーザ光によるイオン化効率を高める物質(マトリックス)を試料に混合するため、その前処理に時間がかかることや、低分子領域の測定ではマトリックスそのものがイオン化され、測定の妨げになるなどの問題がありました。この度開発したイオン化支援基板(注3)は、試料に乗せるだけで貫通孔の毛細管現象(注4)により試料の分子を基板表面に上昇させるため、マトリックスを使用せずに分子へのレーザ照射によるイオン化ができ、従来のMALDI TOF-MSに比べて前処理時間の大幅な短縮及び低分子領域での高精度な測定が可能となります。今後は、構造設計の改良によりイオン化効率を高め、幅広い用途に対応可能な製品を開発してまいります


ハイパースペクトラルイメージングに用いられる近赤外イメージセンサ
ハイパースペクトラルイメージング(HSI)とは、通常のカメラでは得ることのできない波長情報をもった画像を取得する技術です。対象物の反射光を波長毎に細分化し、その波長毎の光の強度を測定することで、含有成分等を特定することができます。HSIが可能な波長域は使用するイメージセンサ毎に異なりますが、近赤外領域ではInGaAs(インジウムガリウムヒ素)イメージセンサが有効です。当社製InGaAsイメージセンサは既にHSIで用いられておりますが、この度、当社で培ってまいりました化合物プロセス技術により、さらなる長波長化、高感度化、低ノイズ化、高速読み出しを実現した新製品を開発いたしました。これにより、HSIにおける識別率の向上や高解像度化が可能となります。本製品はプラスチックの組成の特徴が表れやすい近赤外領域に高い感度をもつことから、ペットボトルのリサイクル等に用いられることで環境への貢献が期待されるほか、食品成分検査への応用も見込まれております。


幅広い用途で使用可能なX線ラインセンサカメラ
X線ラインセンサカメラは、ベルトコンベアなどで搬送される対象物の内部を撮影するカメラで、食品や電子部品等の非破壊検査で広く使用されております。特に、近年、対象物の多様化により幅広い用途で使用可能な製品が求められております。このような中、当社は、センサ構造の根本的な見直しにより低ノイズ化かつ高感度化を実現したことで、検出可能範囲を大幅に拡大したX線ラインセンサカメラを新たに開発いたしました。本製品により、微弱なX線を使用する薄く軽い対象物から多量のX線を使用する厚く密度が高い対象物まで、幅広い用途での検査が可能となります。さらに、従来製品に比べ、2倍のスキャン速度を実現したことで検査時間が短縮でき、小型化し、かつ防水・防塵機能を備えたことで様々な現場で使用可能です。今後も、市場ニーズに対応した製品開発を継続することで、高精度な非破壊検査に対応してまいります。



医療の分野におきましては、ホウ素中性子捕捉療法への新たな観点からのアプローチを進めております。ホウ素中性子捕捉療法とは、体内に投与したホウ素化合物ががん細胞に集積した後に熱中性子を患部に照射することで、ホウ素と熱中性子との核反応で発生する粒子によりがん細胞を破壊する治療法です。この粒子はがん細胞以外の正常細胞には全く影響を及ぼさないことから、従来の放射線治療と比べて患者の身体的な負担が軽い治療法です。しかしながら、従来のホウ素化合物ではがん細胞への集積が必ずしも十分ではなく、より集積性の高いホウ素化合物の開発が求められておりました。このような中、ホウ素化合物に含まれるアミノ酸をL体からD体に変換した薬剤を新たに開発し、ラットによる実験でPETによりがん細胞への集積性を確認したところ、従来の5倍の集積性があることが確認できました。本研究成果は、新たに開発した薬剤がPETによるがん診断にも有用であることを示しており、ホウ素中性子捕捉療法による効果的ながん治療の確立に貢献することが期待できます。
光情報処理の分野におきましては、波面制御を利用した生体イメージングの研究を進めております。近年、遺伝子改変技術や情報処理技術の進歩により、様々な分野で生体の三次元観察が重要視されております。その有効な手法として二光子励起蛍光顕微鏡(TPM)による観察(注5)が知られておりますが、生体深部では、試料そのものによって光学的なボケ(収差)が発生するため、鮮明な画像の取得が困難でした。このような中、当社で培ってまいりました波面制御技術をベースに、試料の表面形状などのパラメータから収差を補正する計算手法を新たに開発し、当社製空間光変調器を組み込んだTPMに適用して試料深部の鮮明な画像を取得することに成功いたしました(注6)。従来の計算手法では表面が平らな試料に限定されていた収差補正が、新しい方法では表面が湾曲した試料にも適用可能となりました。本成果は、生体深部観察への貢献のほか、脳科学や再生医療、次世代レーザ加工など、様々な分野での応用が期待されます。
半導体レーザ分野におきましては、独自の結晶生成技術により、レーザの波長を近赤外から深紫外に高効率で変換可能なホウ酸セシウムリチウム(CLBO)素子の大型化に成功し、当社製大出力レーザと組み合わせることで、世界で初めて、深紫外固体レーザによる1ジュール(注7)超のパルス出力を達成いたしました。このレーザは高いエネルギーをもつため、特定の物質に照射することで、その照射部分の分子結合を分離する光分解加工の実現が期待できます。光分解加工は、自動車、航空機、建築、医療、産業用ロボット等あらゆる分野での応用が期待されている炭素繊維強化プラスチック等の新たな加工方法として注目されております。この度、さらなる大出力化・高効率化・高繰り返し化を目指し、ビームパターンの改善とビームの高密度化により波長変換効率を改善いたしました。今後も、CLBO素子の大型化・高品質化とともに波長変換効率の改善を推進することで、光分解加工の実現をはじめ、大出力レーザの産業応用等を目指してまいります。

(注)1 Matrix Assisted Laser Desorption / Ionization(マトリックス支援レーザ脱離イオン化法)の略称です。
2 Time of Flight Mass Spectrometryの略称です。イオンが検出器に到達するまでの空間に電位差を設けることでイオンを質量毎に分離し、検出器に到達する時間差を利用することで質量を測定することができます。
3 本開発成果は、光産業創成大学院大学と共同で開発したものです。
4 細い管の内側の液体が管の中を移動する現象です。
5 蛍光分子に光子を2個同時に吸収させて励起し、蛍光を観察する手法です。生体透過性の高い近赤外光が使えるため、従来の蛍光顕微鏡に比べてより深い部分の観察が可能です。
6 本研究成果は、浜松医科大学との共同研究によるものです。
7 ジュールとはエネルギーの単位で、1ジュールは0.24カロリーの熱量に相当します。新開発の深紫外固体レーザでは、この熱量を1億分の1秒に集中し、繰り返し出力することが可能です。


経営上の重要な契約等株式の総数等


このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E01955] S100ERPG)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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