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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100D9RK

有価証券報告書抜粋 シスメックス株式会社 研究開発活動 (2018年3月期)


事業等のリスクメニュー株式の総数等

当社グループは既存の体外診断領域の拡充を図ると共に、個人毎の特性に応じた個別化医療の推進と、より患者様の近くで検査を提供するプライマリケアの推進に取り組んでおります。
個別化医療においては、医薬品の投与に関わるコンパニオン診断薬の開発や、血液からより多くの情報を得るためのリキッドバイオプシー技術の開発に取り組んでおり、プライマリケアにおいては、患者負担の少ない検査法の樹立や、装置の小型化、操作性の向上を目指した開発などに取り組んでおります。
当連結会計年度における研究開発活動により製品化したものは、以下のとおりであります。

(1) 「塗抹標本作製装置 SP-50」及び「多項目自動血球分析装置XNシリーズ XN-9100、XN-3100、XN-1500」の発売
当社は血球計数検査分野の「多項目自動血球分析装置 XNシリーズ」の製品ラインアップを拡充し、新製品である「塗抹標本作製装置 SP-50」を含めた新たな「多項目自動血球分析装置XNシリーズ XN-9100、XN-3100、XN-1500」をグローバルに発売いたしました。
新たなXNシリーズは、搬送ラインの小型化を行うことでシステム設置スペースを縮小すると共に、SP-50では設置面積を従来装置の約60%に小型化することを実現いたしました。また、SP-50にオプションの濃縮試薬を使用することで、試薬交換回数の大幅な減少による業務の効率化と共に試薬在庫スペースの軽減にも貢献いたします。XN-9100は搬送ラインの小型化に加え、1つの搬送ライン内での装置設置台数増加を実現し、設置面積当たりの検体処理能力を向上させることで、大学病院、検査センターなどの大規模施設における検査業務のさらなる効率化に寄与いたします。また、XN-3100及びXN-1500を製品ラインアップに加えることで、中規模施設における顧客の多様なニーズにも対応してまいります。
(2) 抗凝固療法モニタリングの主要検査項目プロトロンビン時間の測定試薬「レボヘム PT」の発売
当社は心筋梗塞や脳梗塞などの血栓が原因とされる疾患への抗凝固療法※1モニタリング主要検査項目である、プロトロンビン時間(PT)の測定試薬「レボヘム PT」を国内で発売いたしました。本試薬は国産では初めて、カイコで量産したリコンビナントタンパク質を用いたPT試薬であります。
2012年の世界における死亡原因※2の1位である虚血性心疾患及び2位の脳卒中は、血栓が原因とされており、それらの治療には抗凝固療法が広く普及しております。PT検査は抗凝固療法に用いられる薬剤の1つであるワルファリンのモニタリングなどを目的とした、血栓止血検査の主要検査項目であります。
従来のPT試薬は、主要成分である組織因子に動物由来(ウサギ大脳、ヒト胎盤など)の原料を使用しており、原料の安定した調達に課題がありましたが、自社の生産技術であるカイコ・バキュロウイルス発現系※3を用いたリコンビナントタンパク質を適用することで安定した原料生産が可能となりました。また、リコンビナントタンパク質と合成原料を用いることで、ロット間差を低減するとともに、溶解性・溶解後安定性に優れた試薬を実現いたしました。
なお、本試薬は「全自動血液凝固測定装置 CSシリーズ」、「全自動血液凝固測定装置 CAシリーズ」及び「半自動血液凝固測定装置 CA-101/104」で使用が可能であります。今後は、自社リコンビナントタンパク質生産技術を他検査項目試薬にも展開してまいります。
※1 抗凝固療法:
抗凝固薬を用いて血液の凝固能を低下させ、心臓、動脈や静脈、体外循環回路内の凝固を阻止する治療法。
※2 出典:The top 10 causes of death (WHO, 2014)
※3 カイコ・バキュロウイルス発現系:
バキュロウイルス(昆虫を主な宿主として感染する核多角体病ウイルス)のDNAに、目的とする遺伝子を組み込み、この遺伝子組み換えバキュロウイルスをカイコの幼虫あるいは蛹(さなぎ)に注入して感染させ、目的タンパク質の生産を行わせるもの。細胞内に微量しか存在しないタンパク質を大量に作りだすことが可能。
(3) 凝固第Ⅷ因子定量試薬「レボヘムFVIII 合成基質」の発売
当社は血液凝固検査分野の新製品である、凝固第Ⅷ因子定量試薬「レボヘムFVIII 合成基質」を国内で発売いたしました。
血友病※4には、不足している凝固因子のタイプによって、血友病Aと血友病Bの2種類があります。血友病Aは、血液中の凝固第Ⅷ因子が欠乏するために止血機能が低下する出血性疾患であります。血友病Aの診断には、凝固第Ⅷ因子定量検査が行われ、さらにその治療に用いられる凝固第Ⅷ因子製剤の投与後のモニタリングとしても本検査が行われます。

凝固第Ⅷ因子定量検査には、主に凝固一段法による検査(APTT試薬を用いる検査)と合成基質法による検査があり、これまで凝固一段法が広く用いられてきました。しかし、凝固一段法は用いる試薬の種類によって測定値が一致しないケースがあることが知られております。 そのため、欧州では合成基質法の普及が進んでおり、欧州薬局方(European Pharmacopoeia)を発行している欧州評議会(Council of Europe)は全ての凝固因子製剤の力価は合成基質法で測定するよう求めております。また、日本においても日本血栓止血学会より、合成基質法による第Ⅷ因子定量検査を導入することが求められております。※5
さらに近年、血友病Aの治療における、第Ⅷ因子製剤の投与回数の低減を目指した「半減期延長血液凝固因子製剤」※6の開発が進んでおりますが、合成基質法による凝固第Ⅷ因子の定量検査は、半減期延長血液凝固因子製剤投与におけるモニタリングへの活用や、軽症血友病Aの診断補助における臨床症状と測定値の一致性の高さなど、有用性が示されております。
本試薬は合成基質法による凝固第Ⅷ因子の定量検査を行う試薬で、当社の「全自動血液凝固測定装置 CSシリーズ」で使用が可能であります。これにより、国内外における学会の推奨検査法に対応するとともに、試薬ラインアップ拡充により顧客の多様なニーズに対応してまいります。
※4 血友病:
血液中の血を固めるタンパク質(凝固因子)の一部が欠乏、又はうまく働かないために止血異常を引き起こす疾患。血友病には血友病Aと血友病Bの2種類が存在し、11種類の凝固因子のうち、8番目の因子(血液凝固第Ⅷ因子)の欠乏又は機能低下による疾患が血友病A、9番目の因子(血液凝固第Ⅸ因子)の欠乏又は機能低下による疾患が血友病Bである。第Ⅷ因子及び第Ⅸ因子の活性が40%未満の場合に血友病と診断され、活性が1%未満は重症、1%以上から5%未満は中等症、5%以上は軽症と分類される。
※5 血友病部会, 日本血栓止血学会, 2015, 26(4), 468-469.
※6 半減期延長血液凝固因子製剤:
従来の血液凝固因子製剤よりも血漿中消失半減期が延長されており、3~5日間隔の定期的な投与や、患者の状態によっては週1回の投与も可能となり、従来よりも静脈注射の回数が減ることで患者への負担軽減が期待される。
(4)「研究用全自動高感度免疫測定装置 HI-1000」の発売
当社はリキッドバイオプシーによる個別化医療実現を目指し、「研究用全自動高感度免疫測定装置 HI-1000」を発売いたしました。
リキッドバイオプシーは、血液や尿などの体液中に存在する病気由来の成分(遺伝子、タンパク質、細胞など)を測定し診断などに活用するものです。病巣から血液や体液中に放出されたごく微量の成分を検出する必要があるため、腫瘍など組織の一部を採取して行っていた従来の生体検査より、はるかに高感度な測定技術が求められます。
HI-1000は、CLEIAをベースに、非特異結合※7由来のバックグラウンドノイズを低減することにより高感度を実現する免疫複合体転移法※8を搭載した研究用全自動免疫測定装置です。従来法と比較し数十倍から数千倍の高感度化※9を実現することで、pg/mL未満のタンパク質を検出することが可能となり、従来は困難であったごく微量な血中バイオマーカーの測定を実現します。また、反応時間や温度など複数のパラメータを任意で設定可能な仕様とすることで、お客様がターゲットとするバイオマーカーに適した測定が可能となります。
さらに、お客様の新たなバイオマーカーの実用化に向けて、HI-1000で自動測定するために必要となる試薬開発や測定条件の設定、自社リコンビナントタンパク質生産技術を活用した試薬開発のための原料開発や生産に加え、開発した試薬を用いたエビデンス蓄積のための測定受託など、さまざまなサービスの提供を予定しております。
今後も、個別化医療の実現を目指して、価値の高いバイオマーカーの実用化に向けた研究開発を促進してまいります。
※7 非特異結合:
抗体を用いた検出系において、検出対象以外の物質に抗体が反応すること。免疫測定においては、多くの非特異結合が要因となって高感度化を妨げており、特に標識抗体の固相表面(ビーズ)への非特異結合が、バックグラウンドノイズになることが知られている。
※8 免疫複合体転移法:
測定対象を含む免疫複合体(抗原抗体反応の結合物)を、ビーズなどの担体に形成させた後に、複合体の形を保ったまま担体上から解離させ、次に解離した免疫複合体を別の担体で捕らえて、測定を行う。これにより、非特異結合に起因するバックグラウンドノイズを抑え、高感度測定が可能となる。
※9 酵素免疫測定法および化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)と比較した場合(当社調べ)。対照法、測定項目によって異なります。

なお、当連結会計年度における研究開発費は16,754百万円であります。また、2018年3月31日現在取得の工業所有権の総数は7,321件(海外を含む)となっております。

事業等のリスク株式の総数等


このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E02015] S100D9RK)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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