有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100COA9
ルネサスエレクトロニクス株式会社 研究開発活動 (2017年12月期)
事業等のリスクメニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
(1) 研究開発活動の体制および方針
当社グループの研究開発活動は、現在必要な、または近い将来に必要となるであろうデバイス、ソフトウェアおよびシステムなどの開発につき、車載制御、車載情報に関する製品はオートモーティブソリューション事業本部が、スマートファクトリー、スマートホームおよびスマートインフラに関する産業関連製品はインダストリアルソリューション事業本部が、分野を問わない幅広い用途を対象とした製品はブロードベースドソリューション事業本部が担当して取り組んでおります。デバイス・プロセス技術、新規実装技術、設計手法などの部門横断的な共通技術については、各事業本部と生産本部とが協力しながら担当する体制としております。
また、コンソーシアムや外部研究機関などへの研究委託や、幅広い分野やお客様へ最適なサポートを行うためのサード・パーティの活用など、自社の研究開発リソースのみならず社外のリソースも必要に応じて活用しております。
電子機器や社会インフラの急速なネットワーク化により訪れるスマート社会では、これまでマイコンが主に使われてきた制御機器と、システムLSIが主に使われてきたIT機器が急速に融合しており、マイコンを軸にした新たな制御機器市場の拡大が期待されます。当社グループは、こうした市場変化に対応するため、マイコンとアナログ&パワー半導体などを組み合わせたセットを提供するキットソリューションを強化するとともに、アプリケーションごとに共通して使用できるIP(設計資産)やOSなどのソフトウェアをプラットフォームとして提供するための研究開発活動を通じて、新市場での成長を実現してまいります。
(2) 主な研究開発の成果
① 自動運転向けのトータル・ソリューションのプラットフォームとして「Renesas autonomy™」を発表
自動運転時代において、自動車はセンシング(感知)機能や車両制御機能だけでなく、クラウドサービスと連動するものに進化しています。あらゆる機能が広範囲に連動し、より高い信頼性が求められる一方、個々の技術への要求もより高度となり、トータル・ソリューションの要求が高まっています。
当社グループは、自動車市場で長年培った経験と実績、技術力をもとに、これらの要求に対応した複雑かつ高度な技術をオープンなプラットフォームとして提供すべく、自動運転時代に向けた新たなトータル・ソリューションとして、「Renesas autonomy™」を発表しました。本ソリューションは、安全なクラウドへの接続や、センシングから判断・制御に至るまで、ADASや自動運転システムの全領域をカバーするソリューションです。
本ソリューションのラインナップには、車載情報・ADAS用SoC「R-Car」や車載制御用マイクロコントローラ「RH850」をはじめ、将来も広く活用できるソリューションが含まれており、車載システム開発者は、これらを用いることで、効率的でタイムリーなシステム開発が可能となります。また、本ソリューションは、その技術的な構成要素として、高性能と低消費電力性を両立する革新的なハードウェア・アクセラレータをはじめ、多様なIPコア(注)を含んでおり、高度な機能安全性にも対応しています。当社グループは、これらの複合的な技術から構成される本ソリューションをオープンな開発プラットフォームとして、230社を超えた当社グループの「R-Carコンソーシアム」のパートナ企業各社とともに、その拡充に努めています。
本ソリューションについては、R-CarやRH850がトヨタ自動車㈱と㈱デンソーにおいて開発中の自動運転車に採用されたことに加え、日産自動車㈱の電気自動車「リーフ」にも採用されるなど、世界的な広がりを見せています。また、2018年1月にアメリカ・ラスベガスで開催されたCES 2018では、自動運転化・コネクテッド化されたデモカーとともに、パートナ企業との先端ソリューションを出展しました。世界中の自動車メーカーやその部品メーカーの経営幹部が数多く訪れ、今後一層グローバルに普及することが期待されます。
当社グループは、オープンで革新性と高い信頼性を備えた自動運転車向けプラットフォームであるRenesas autonomy™を今後さらに拡充し、自動運転システムの開発スピードを格段に加速させ、これからの自動運転時代を牽引します。
(注)IPコア:LSI(大規模論理回路)を構成する部分的な回路情報です。
② AIによる深層学習結果を組み込み機器に搭載可能とする「e-AIソリューション」を開発し、その一環として提供を開始した「AIユニットソリューション」により、AIを活用したスマートファクトリーを実現
近年、機械学習や深層学習(ディープラーニング)といったAIを構成する技術の進化は著しく、その応用範囲は、これまでのIT領域を中心としたクラウド市場から、組み込みシステム市場へ急速に拡大しています。そのため、今後は、AIに関連したソフトウェアだけでなく、サービスロボットなど、AIを搭載した組み込み機器の開発が加速すると予想されています。
そこで、当社グループは、スマート社会の実現に向けて、IoTのネットワークの末端の装置(エンドポイント)にAIを実装する「e-AI」を注力技術の一つと位置づけ、マイクロコントローラやマイクロプロセッサにAIを搭載する技術の開発に取り組んできましたが、このたび、深層学習結果をエンドポイントの組み込み機器に実装するための開発ツールを業界で初めて開発し、「e-AIソリューション」の第一弾として無償提供を開始しました。
本ソリューションは、深層学習結果をマイクロコントローラやマイクロプロセッサの開発環境で使用可能な形式に変換する「e-AIトランスレータ」など、これらの開発環境にAI学習環境を繋ぐことを可能としました。これにより、当社製マイクロコントローラやマイクロプロセッサ上に様々な学習結果を搭載してAIを実行でき、エンドポイントの装置に新たな機能、性能を導入できます。
また、当社グループは、AIを活用したスマートファクトリーの実現を目指し、e-AIソリューションの一環として、「AIユニットソリューション」の提供も開始しました。本ソリューションは、「AIユニット」というハードウェア開発のためのリファレンスデザイン(参照設計図)とAI処理を実現したソフトウェアで構成されています。本ソリューションを生産設備・機械に用いることにより、ユーザーは生産工程におけるデータの収集から加工、分析、評価・判定までの一連のプロセスを容易に実現し、精度の高い異常検知や予知保全が可能となり、生産性を大幅に向上できます。
本ソリューションは、当社グループの生産工場である那珂工場での2年間にわたる実証実験の経験とノウハウに基づき開発しました。この実証実験では、AIユニットの試作機をエンドポイントにあたる半導体製造装置に取り付け、従来と比較して約20倍の高速サンプリング速度でデータを取得し、AIによる分析を行うことによって、異常検知の精度を6倍以上に高めることができました。
当社グループは、今後も引き続きe-AIソリューションの提供・強化を通じて、スマート社会の実現を目指すとともに、エンドポイントの設備・機械を容易に効率化できる新ソリューションを提案し、工場の生産性や品質向上に貢献してまいります。
(3)研究開発費
当連結会計年度の研究開発費は、1,270億円となり、前年同一期間の1,053億円と比べ216億円増加しました。これは主に、製品設計、システム開発、デバイス開発、プロセス技術開発、実装技術開発に使用しました。
なお、当社グループは半導体事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載は省略しております。
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ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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