有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100DHMD
株式会社髙松コンストラクショングループ 研究開発活動 (2018年3月期)
当社グループは、当社の技術研究所(髙松コンストラクショングループ技術研究所)のもと、中核子会社の髙松建設㈱および青木あすなろ建設㈱にそれぞれ研究所を設け、各社が得意とする技術分野において、研究開発活動をおこなっております。その主なものは次のとおりであり、当連結会計年度における研究開発費の総額は429百万円であります。なお、研究開発費につきましては各セグメントに配分しておりません。
(1)髙松建設㈱
①TAS(Takamatsu Aoki-asunaro Support)工法
コンクリート打設後の型枠支保工を一部のサポートを残し、数日で全てを解体できる工法を開発しました。FEM解析といわれる高度な構造計算をおこなうことで、最低限必要な支保工を算出し、サポート本数の大幅な削減を実現、次工程への早期着手や型枠材の転用等による工期の短縮、材料等のコスト削減をはかりました。
更に型枠支保工の作業効率をはかるため、支持力の大きい軽量なアルミ製サポート材についてFEM解析、載荷試験により計算方法を擁立、大幅な施工効率向上を実現しました。
②外壁診断調査システムの開発
建築基準法では「タイル張り外壁、モルタル塗り外壁」の定期検診が定められており、建築物の所有者、管理者または占有者は経年劣化等による外壁剥離の診断が義務付けられています。しかし、外壁の診断は足場やゴンドラ等の高所作業で危険を伴うことが多く、仮設や安全対策が大がかりとなり診断費用は割高になります。そのため、外壁を走行できるロボットを用い、外壁の打診診断や目視調査が実施できるシステムを共同開発しております。打診診断に関する技術は確立済みであり、本年度より実際の物件での検証を実施導入してまいります。
③ロングスパン解析の基礎的研究
近年、流通施設や工場等の広い無柱空間が必要とされる建築物に限らず、事務所ビルや診療施設においても開放的な間取りが要求される事例が増加しており、S造による柱スパンの大きい空間設計が求められております。これらの設計においては、建物毎に最適な梁の断面、柱から梁の接合部の形状等、また製造しやすく施工性の優れた設計が必要となります。FEM解析であれば従来型構造分析(2次元フレーム解析)と異なり、構造物の応力状態が3次元的に確認できるため、応力状態に応じた経済設計が可能となります。
現在、FEM解析に必要な解析モデル、入力データを実際の建物での振動測定により検証しながら研究をおこなっております。
④サイホン排水システムの研究
サイホン排水システムとは従来の重力式排水システムと異なり、排水管内を満流にし、その排水の落差(サイホン作用)を活用する小口径で無勾配な排水管の設置が可能となる排水システムです。無勾配で小口径の配管システムによりキッチン等の水回り設備の自由な配置が可能となり、将来の改装時も既存の設備配置にとらわれない大幅な間取り変更が可能となります。
また、強力なサイホン作用による満流で高速の排水は自浄作用もあり、排水管内の汚れが付きにくくメンテナンス性に優れた排水システムです。当社が施工する賃貸マンションに適した平面配置での排水システムを目指し研究を進めております。
⑤中断熱工法
省エネルギー基準が強化される中、RC構造においても断熱材の使用による躯体の高断熱化が必須となっております。一方、RC建築の特徴的なコンクリート打放しのデザインを好まれるお客様も多く、断熱性能とデザインを両立させることが要望されております。本工法は50㎜の断熱材の両面に厚さ120㎜の鉄筋コンクリートの壁を作り、断熱材を埋め込んで耐震構造壁としたもので、断熱性能とデザインの両立と共に断熱材の施工性向上をはかったものであり、構造実験により240㎜のコンクリート壁と同等の構造耐力のあることを確認しております。
⑥省エネルギー仕様の開発
「我が国のエネルギー基本計画」において、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の普及目標が「2030年までに新築建物の平均でZEBの実現」、「2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現」と設定されています。地球温暖化対策や災害時におけるエネルギー自給の観点からZEHおよびZEBの普及が当社としても重要と認識しており、ZEH、ZEBを実現するための断熱仕様や、様々な環境配慮技術の効果をエネルギー消費性能計算プログラムにより算出、また部材費や施工効率をふまえた最適な仕様・設備の検討をおこなっております。
(2)青木あすなろ建設㈱
①既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究
2013年6月に首都高速道路株式会社が公募した共同研究テーマ「既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究」について、摩擦ダンパーを既設橋梁に応用する研究を実施しています。今期は摩擦ダンパーを現場に適用する際に必要となる技術データを検討するために加振実験や振動台実験を実施しました。同時に、摩擦ダンパーをRC橋脚に取り付けるための方法として、独自のあと施工アンカー工法に関しても研究し特許申請をおこないました。②コンクリートの品質向上技術の工場
コンクリートひび割れ制御システムを開発し、養生温度・湿度を遠隔で自動運転管理することで省人化をは
かるとともに、品質の向上を実現しました(博多港橋梁下部工事で運用中)。また、水中コンクリートの連続
打設管理システムを開発し、打設状況を見える化することで潜水作業を軽減し省力化をはかるとともに、型枠
の隅々まで材料分離の無いコンクリートを連続打設することで品質の向上を実現しました。
③制震ブレースを用いた耐震補強工法
日本大学と共同開発した摩擦ダンパーを用いた既存建物の制震補強工法で、高性能・居ながら補強・短工期・低コストを特長としており、制震補強工法として、我が国で初めて日本建築防災協会技術評価を取得しております。今期は、前期に引き続き実施適用物件に対する振動測定をおこない、データの蓄積をはかりました。④折返しブレースを用いた耐震補強工法
折返しブレースは断面の異なる3本の鋼材を一筆書きの要領で折り返して接合させた形状を有し、優れた変形性能を示し、合理的な鉄骨造建物を建設できます。今期は、円形鋼管タイプの性能確認実験を成功裡に終了し、信頼性の向上をはかりました。
⑤耐震天井工法(AA-TEC工法)の開発
大地震時の大空間建物の天井被害を軽減するため、耐震天井の開発に取り組んでいます。従来の耐震天井よ
りも約1.5倍の耐震性能に優れた工法を開発し、2016年10月には建築技術性能証明を取得しました。今期は、天
井の吊り長さの適用範囲を1.5mから3.0mに拡大するための性能確認実験をおこない、建築技術性能証明を更
新しました。また今期は本工法が初採用され1件受注しました。
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ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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