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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100D8DH

有価証券報告書抜粋 西日本旅客鉄道株式会社 事業等のリスク (2018年3月期)


従業員の状況メニュー研究開発活動


有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日において当社グループが判断したものであります。

(1)安全対策について
鉄道事業においては、事故が発生した場合、お客様の生命・財産に係る大きな被害をもたらすことがあり、経営に対しても甚大な影響を及ぼすことがあります。
鉄道を基幹事業とする当社においては、安全で安心され信頼される質の高い輸送サービスを提供していくことが、最重要課題であると考えております。
しかしながら、2005年4月25日、福知山線塚口駅~尼崎駅間において極めて重大な事故を惹き起こしました。決してこのような事故を起こさないとの決意のもと、企業としてのめざすべき姿、価値観を示した「企業理念」及び安全に関する具体的行動指針として「安全憲章」を新たに制定し、これらの具現化に向けた取り組みを進めております。2018年2月には「JR西日本グループ鉄道安全考動計画2022」を策定し、さらなる安全レベル向上をめざし、重大な事故や労働災害の未然防止に向けた取り組みを開始しております。
また、2006年に施行された改正鉄道事業法に基づき制定した「鉄道安全管理規程」のもと、安全管理体制の確立に努めております。

(2)鉄道事業に係る法律関連事項について
① 鉄道事業法(1986年法律第92号)
鉄道事業者は、本法の定めにより、営業する路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の許可を受けなければならない(第3条)とともに、運賃及び一定の料金の上限について国土交通大臣の認可を受け、その範囲内での設定・変更を行う場合は、事前届出を行うこととされております(第16条)。また、鉄道事業の休廃止については、国土交通大臣に事前届出(廃止は廃止日の1年前まで)を行うこととされております(第28条、第28条の2)。
② 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律(以下「JR会社法改正法」という。)(2001年法律第61号)
東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社及び西日本旅客鉄道株式会社(以下「本州旅客会社」という。)を「旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(以下「JR会社法」という。)(1986年法律第88号)」の適用対象から除外するJR会社法改正法が2001年12月1日(以下「施行日」という。)に施行されました。すなわち、本州旅客会社においては、JR会社法に定められる発行する株式等の募集及び長期借入金の認可(第5条)、重要な財産の譲渡等の認可(第8条)等の全ての規定の適用から除外されております。
なお、本法附則により、国土交通大臣は、国鉄改革の経緯を踏まえ、利用者の利便の確保等を図るため、本州旅客会社及びその鉄道事業の全部又は一部を譲受・合併・分割・相続により施行日以後経営するもののうち国土交通大臣が指定するもの(以下「新会社」という。)がその事業を営むに際し、当分の間配慮すべき事項に関する指針として以下の3点について定めることとされております。この指針は2001年11月7日に告示され、2001年12月1日から適用となっております。国土交通大臣は、指針を踏まえた事業経営を確保する必要があるときには新会社に対し指導及び助言をすることができ、さらに新会社が正当な理由がなく指針に反する事業経営を行ったときには勧告及び命令をすることができるとされております。

・指針に定められる事項
(a)会社間(新会社の間又は新会社と北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社及び貨物会社との間をいう。以下同じ。)における旅客の運賃及び料金の適切な設定、鉄道施設の円滑な使用その他の鉄道事業に関する会社間における連携及び協力の確保に関する事項
(b)日本国有鉄道の改革の実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえた現に営業している路線の適切な維持及び駅その他の鉄道施設の整備に当たっての利用者の利便の確保に関する事項
(c)新会社がその事業を営む地域において当該事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動に対する不当な妨害又はその利益の不当な侵害を回避することによる中小企業者への配慮に関する事項
また、施行日の前に本州旅客会社が発行した社債について、JR会社法第4条の一般担保の規定が施行日以後もなおその効力を有するとするなど、一定の経過措置が定められております。

(3)運賃及び料金の設定又は変更について
①運賃及び料金の認可の仕組みと手続き
鉄道運送事業者が運賃及び新幹線特急料金(以下「運賃等」という。)の上限を定め、又は変更しようとする場合、国土交通大臣の認可を受けなければならないことが法定されております(鉄道事業法第16条第1項)。
また、その上限の範囲内での運賃等の設定・変更並びに在来線特急料金等その他の料金の設定・変更については、事前の届出で実施できることとなっております(鉄道事業法第16条第3項及び第4項)。
鉄道運送事業者の申請を受けて国土交通大臣が認可するまでの手続きは、大手民営鉄道事業者における近年の例によれば次のようになっております。



(注) 1. 鉄道事業法第64条の2に基づく手続きであります。また、国土交通省設置法(1999年法律第100号)第23条では、運輸審議会が審議の過程で必要があると認めるとき又は国土交通大臣の指示等があったときに公聴会が開かれることが定められております。
2. 鉄道営業法第3条第2項で、運賃その他の運送条件の加重をなす場合に7日以上の公告をしなければならないことが定められております。

なお、各旅客会社における独自の運賃改定の実施の妨げとなるものではありませんが、国鉄改革の実施に際し利用者の利便の確保等を図るため、旅客会社では、現在、2社以上の旅客会社間をまたがって利用する旅客及び荷物に対する運賃及び料金に関し、旅客会社間の契約により通算できる制度とし、また、運賃について、遠距離逓減制を加味したものとしております。

②運賃改定に対する当社の考え方
ア. 当社では、1987年4月の会社発足以降、消費税等を転嫁するための運賃改定(1989年4月、1997年4月及び2014年4月)を除くと、これまで運賃改定を実施しておりません。
大手民営鉄道事業者の場合、兼業部門も含めた総合的な経営判断に立って鉄道事業部門の税引後当期純利益に先行き赤字が見込まれる場合に運賃改定の申請が行われ、上記の手続きを経て改定が実施されている例が多いと見受けられます。当社の場合、兼業部門収入の全収入に占める割合が著しく小さいことなどを踏まえた上で、適正利潤を確保し得るような運賃改定を適時実施する必要があるものと考えております。
イ.事業経営に当たっては、収入の確保と合理化努力を進め能率的な経営に努めますが、適正利潤についてはこのような努力を前提とした上で、株主に対する配当に加え、将来の設備投資や財務体質の強化等を可能なものとする水準にあることが是非とも必要であると考えております。
ウ.鉄道事業の原価構成に大きな影響を与える設備投資については、事業者の明確な経営責任の下で主体的に取り組むことが必要であると認識しているところであります。
③国土交通省の考え方
当社の運賃改定に関し、国土交通省からは、次のような考え方が示されております。
ア.西日本旅客鉄道株式会社を含む鉄道事業の運賃の上限の改定に当たっては、鉄道事業者の申請を受けて、国土交通大臣が、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの(以下「総括原価」という。)を超えないものであるかどうかを審査して認可することとなっている(鉄道事業法第16条第2項)。
なお、原価計算期間は3年間とする。
イ.総括原価を算定するに当たっては、他の事業を兼業している場合であっても鉄道事業部門のみを対象として、所要の配当を含めた適正な利潤を含む適正な原価を算定することとなっている。また、通勤・通学輸送の混雑等を改善するための輸送力の増強、旅客サービス向上等に関する設備投資計画の提出を求め、これについて審査を行い、必要な資本費用については原価算入を認めているところである。
ウ.総括原価を算定する方法としては、当該事業に投下される資本に対して、機会費用の考え方による公正・妥当な報酬を与えることにより資本費用(支払利息、配当等)額を推定するレートベース方式を用いる方針であり、総括原価の具体的な算定は以下によることとしている。
総括原価=営業費等(注1)+事業報酬
・事業報酬=事業報酬対象資産(レートベース)×事業報酬率
・事業報酬対象資産=鉄道事業固定資産+建設仮勘定+繰延資産+運転資本(注2)
・事業報酬率=自己資本比率(注3)×自己資本報酬率(注4)+他人資本比率(注3)×他人資本報酬率(注4)

(注)1.鉄道事業者間で比較可能な費用について、経営効率化を推進するため各事業者間の間接的な競争を促す方式(ヤードスティック方式)により、比較結果を毎事業年度終了後に公表するとともに、原価の算定はこれを基に行うこととしている。
2.運転資本=営業費及び貯蔵品の一部
3.自己資本比率30%、他人資本比率70%
4.自己資本報酬率は、公社債応募者利回り、全産業平均自己資本利益率及び配当所要率の平均、他人資本報酬率は借入金等の実績平均レート

エ.なお、認可した上限の範囲内での運賃等の設定・変更、又はその他の料金の設定・変更は、事前の届出で実施できることとなっているが、国土交通大臣は、届出された運賃等が、次の(ア)又は(イ)に該当すると認めるときは、期限を定めてその運賃等を変更すべきことを命じることができるとされている(鉄道事業法第16条第5項)。
(ア)特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるとき
(イ)他の鉄道運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものであるとき

(4)整備新幹線計画について
①整備新幹線の建設計画
整備新幹線とは、1970年に制定された全国新幹線鉄道整備法に基づき整備計画が決定された、北陸新幹線(東京都・大阪市)、北海道新幹線(青森市・札幌市)、東北新幹線(盛岡市・青森市)、九州新幹線(鹿児島ルート[福岡市・鹿児島市])及び九州新幹線(長崎ルート[福岡市・長崎市])の5路線を指し、このうち当社は北陸新幹線(上越市・大阪市)の営業主体となっております。
この5路線については、国鉄の経営悪化等のため建設が見合わされておりましたが、以下のとおり、JR発足後財源問題等の解決等整備スキームの構築が図られ、順次着工されてまいりました。これまでに北陸新幹線(長野・金沢間)、東北新幹線(盛岡・新青森間)、九州新幹線(博多・鹿児島中央間)及び北海道新幹線(新青森・新函館北斗間)が開業し、現在、北陸新幹線(金沢・敦賀間)、北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)及び九州新幹線(長崎ルート[武雄温泉・長崎間])の3路線において、建設主体である独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構により工事が進められております。
[整備スキームの構築]
・ 1988年8月(政府・与党申合せ) 3線5区間の着工優先順位及び整備規格等を決定
・ 1990年12月(政府・与党申合せ) 並行在来線はJRから経営分離すること等を決定
・ 1996年12月(政府与党合意) JR負担は受益の範囲内の貸付料等とすること等を決定
・ 2000年12月(政府・与党申合せ) 新たな着工区間、整備規格・整備期間の見直し等を決定
・ 2004年12月(政府・与党申合せ) 新たな着工区間、整備規格・整備期間の見直し等を決定
・ 2011年12月(政府・与党確認事項) 今後の整備新幹線の取扱いについて確認

新たな区間については、収支採算性と投資効果を改めて確認した上で、以下の条件が整い、かつ、課題について対応が示されていることを確認した区間から、所要の認可等の手続きを経て着工。

区間認可・着工に先立ち満たすべき条件想定完成・開業時期
白山総合車両
基地・敦賀間
・JR西日本の同意
・並行在来線の経営分離に関する沿線
地方自治体の同意
長野・白山総合車両基地間の開業(2014年度末)から概ね10年強後


・ 2015年1月(政府・与党申合せ) 今後の整備新幹線の取扱いについて確認

北陸新幹線金沢・敦賀間の完成・開業時期を2025年度から3年前倒しし、2022年度末の完成・開業をめざす。

[北陸新幹線のうち当社管内の着工・開業]
・ 1992年8月 石動・金沢間(24㎞) 新幹線鉄道規格新線(スーパー特急方式)着工
・ 2001年4月 上越・富山間(110㎞) フル規格着工
(うち糸魚川・黒部宇奈月温泉間は1993年9月に新幹線鉄道規格新線〔スーパー特急方式〕として着工され、この時点でフル規格化された。)
・ 2005年4月 富山・金沢間(59㎞) フル規格着工
(うち石動・金沢間は1992年8月に新幹線鉄道規格新線〔スーパー特急方式〕として着工され、この時点でフル規格化された。)
福井駅部 着工
・ 2006年4月 白山総合車両所 着工
・ 2012年6月 白山総合車両所・敦賀間(114km) 着工
・ 2015年3月 長野・金沢間 開業

②整備新幹線建設の費用負担
整備新幹線の建設費は、1996年12月の政府与党合意に基づき1997年に全国新幹線鉄道整備法及び関連法令が改正され、「国、地方公共団体及び旅客会社が負担すること」、「旅客会社の負担は、整備新幹線の営業主体となる旅客会社が支払う受益の範囲を限度とした貸付料等をあてること」と定められております。
また、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構の交付する既設新幹線の譲渡収入の一部を財源とする交付金については、国の負担すべき費用の一部とみなすこととされております。
なお、整備新幹線の営業主体であるJRが支払う貸付料の額については、「独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構施行令」第6条において、当該新幹線開業後の営業主体の受益に基づいて算定された額(定額部分)に、貸付けを受けた鉄道施設に関して同機構が支払う租税及び同機構の管理費の合計額を加えた額を基準として、同機構において定めるものとされております。
北陸新幹線上越妙高・金沢間の貸付料につきましては、同機構により算定された定額部分の年額80億円が当該新幹線開業に伴う当社の受益の範囲内にあると判断し、2015年3月に同機構との合意に至るとともに、当該貸付料の額について、同機構は2015年3月に国土交通大臣の認可を受けております。
今後開業が予定されている区間の貸付料につきましても、同様に、当社と同機構との合意を経て決定されるものと認識しております。
③北陸新幹線に対する当社の考え方
2011年12月の政府・与党確認事項に基づき、国土交通省から当社に対して、白山総合車両基地・敦賀間の建設着工の同意、並びに軌間可変電車を導入し新幹線と在来線との間で直通運転を行う計画についての意向確認がありました。
当社としては、新幹線整備により大幅な時間短縮効果が見込まれることから、早期の大阪までの全線開業が望ましいと考えております。しかし、関西・中京圏と北陸圏との結節点である敦賀までの整備であっても、一定の時間短縮効果が期待されることに加え、軌間可変電車で運行すれば敦賀での乗換が回避されることから、2012年4月、白山総合車両基地・敦賀間の建設着工に同意するとともに、軌間可変電車を導入する計画についても異存ない旨、国土交通省へ回答しております。なお、軌間可変電車の導入にあたっては、安全性、耐久性及び保守性の確認と雪対策等の課題への対応を十分見極める必要があると考えております。
その後、2015年1月の政府・与党申合せにおいては、金沢・敦賀間の完成・開業時期を2025年度から3年前倒しし、2022年度末の完成・開業をめざすこととなりました。
当社としては、大阪までの全線開業に向けた着実な前進であると受け止めておりますが、2025年度の導入に向けてそれまで開発を進めてきた軌間可変電車の開発期間には余裕がないことから、2022年度末の金沢・敦賀間の開業には軌間可変電車の導入が間に合わない見込みです。
一方、2017年10月には国土交通省から鉄道・運輸機構に対して北陸新幹線金沢・敦賀間の工事実施計画(その2)が認可されました。これを受けて、敦賀駅では幹在の乗換利便性を高めるべく、上下乗換設備の工事が開始されております。営業主体である当社としては、同設備を活用し、可能な限り円滑に乗り換えていただけるよう取り組んでまいります。
次に、敦賀以西については、2017年3月に与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームより出された結論に基づき、「小浜京都ルート」(敦賀駅-小浜市(東小浜)附近-京都駅-京田辺市(松井山手)附近-新大阪駅)の詳細調査が現在進められております。当社としては、当該調査の内容を引き続き注視してまいります。
なお、全線開業に向けた着工区間の延伸に際しても「当社の負担は受益の範囲内であること」、「並行在来線の経営分離」という従前からの基本原則が守られる必要があると考えております。


(5)少子高齢化等人口動態の変化について
2017年4月に国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の将来推計人口(出生中位・死亡中位推計)」によると、日本の総人口は、2015年時点の1億2,709万人から、以後長期の人口減少過程に入り、2053年には1億人を割って9,924万人まで減少すると推計されております。また、生産年齢(15~64歳)人口は、1995年の8,726万人をピークに減少局面に入り、2015年時点の7,728万人から、2029年には6,950万人まで減少する一方、老年(65歳以上)人口は、2015年時点の3,386万人から、2029年には3,699万人まで増加すると推計されております。
当社グループは、西日本地域を主な営業エリアとして、鉄道事業、流通業、不動産業及びホテル業等の事業を展開しております。当社グループの営業エリアである西日本地域においても人口減少や少子高齢化が今後進展することが予測されており、同地域の人口減少や少子高齢化が進行した場合、長期的には輸送人員の減少、これに伴う当社グループ施設・店舗の利用者減少など当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、当社グループの事業運営を支える従業員の確保に影響を与える可能性があります。

(6)競合について
①鉄道事業
当社グループは、鉄道事業において、他の鉄道会社及び航空会社、自動車、バス等の対抗輸送機関と競合していることに加え、日本経済の情勢とりわけ主な営業エリアである西日本地域における景気動向の影響を受けており、今後の競合動向や経済情勢が、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
特に、航空会社との間では、増便、航空運賃の引下げ等、航空機の利便性向上に伴う激しい競争に直面しております。
新幹線においては、山陽新幹線への新ATCの導入等により、所要時間の短縮と乗り心地の向上を図るとともに、臨時「みずほ」の増発や「スマートEX」、「e5489」等のインターネット予約サービスの充実等により、利便性の向上を図っております。また、アーバンネットワークにおいては、他の鉄道会社等と競合しておりますが、ご利用の多い時間帯の列車を増発するとともに、新快速を終日12両編成で運転するなど、快適性と利便性の向上によりご利用促進を図っております。加えて、お客様にご利用していただきやすい鉄道づくりに向け、エレベーターやエスカレーター等のバリアフリー設備の整備を進めております。
今後は、フリークエントユーザーへの優遇サービスや、機動的な価格設定等により、新幹線の競争力を強化するとともに、ICOCAポイントの導入をはじめ、ICカードの利便性を高めることで、一層のご利用促進を図ってまいります。
②鉄道以外の事業
当社グループは、鉄道事業以外に、流通業、不動産業及びその他(ホテル業等)の事業を展開しております。これらの事業は、日本経済の情勢とりわけ主な営業エリアである西日本地域における景気動向の影響を受けており、今後の経済情勢が当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
また、流通業においては周辺における他社の小売店舗の新規進出、不動産業においても、他社の新規進出や周辺商業施設のリニューアル、その他については、ホテル業における外資系高級ホテル、国内他社による低価格ビジネスホテルの進出など既存及び新規の事業者との競合により、それぞれ競争が激しくなっており、当社グループの収益に影響を与える可能性があります。
しかしながら、当社グループは主に駅及びその周辺で事業を展開していることから、立地は良く競争においては有利な立場にあるものと考えております。
当社グループは、鉄道を利用されるお客様や沿線で生活される皆様の期待に応える質の高い商品やサービスの提供、地域ビジネスの創造や育成等を通じて、線区価値及び地域価値の向上を実現し、定住人口、交流人口の拡大をめざします。


(7)長期債務について
1987年の会社設立に際し、当社は、日本国有鉄道改革法(1986年法律第87号)に基づき、国鉄の長期債務のうち1兆158億円を承継いたしました。さらに、1991年10月1日、当社は、新幹線鉄道に係る鉄道施設の譲渡等に関する法律(1991年法律第45号)に基づき、保有機構より山陽新幹線に係る鉄道施設(車両を除く。)を9,741億円で譲り受けました。保有機構との契約により、譲受価格のうち8,591億円については25.5年、1,149億円については60年の元利均等半年賦により鉄道整備基金(現:独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構)に支払うこととなっており、これらの未払金は鉄道施設購入長期未払金として計上しております。なお、譲受価格のうち8,591億円については、2017年1月に返済を完了しています。
2018年3月31日現在、連結長期債務残高は前期比0.5%減の1兆322億円(1年以内返済分を含む。)となっており、2016年3月期、2017年3月期及び2018年3月期の支払利息は、それぞれ241億円、223億円及び209億円であります。
当社グループでは、引き続き経営の安定性を保つために長期債務残高や支払利息の水準を注視してまいりますが、不測の事態の発生等により十分なキャッシュ・フローが確保できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

(8)主要なプロジェクト(おおさか東線)について
①経緯と現状
・ 1981年4月 日本国有鉄道法に基づき運輸大臣認可がなされた。
・ 1987年4月 西日本旅客鉄道株式会社発足により、上記認可を承継した。
・ 1996年5月 1996年度政府予算において、「幹線鉄道等活性化事業費補助」の対象事業として承認を受けた。
・ 1996年11月 第三セクター「大阪外環状鉄道株式会社」が設立された。
・ 1996年12月 西日本旅客鉄道株式会社が第二種鉄道事業、大阪外環状鉄道株式会社が第三種鉄道事業免許を取得した。
・ 1999年2月 工事の施行の認可(都島~久宝寺間)を受けた。
・ 2002年12月 工事の施行の認可(新大阪~都島間)を受けた。
・ 2005年2月 工事完成期限の延長の認可(新大阪~久宝寺間)を受けた。
・ 2007年8月 路線名・駅名(2008年春開業の5駅)を決定した。
・ 2008年3月 放出~久宝寺間が開業した。
・ 2009年9月 工事完成期限の延長の認可(新大阪~放出間)を受けた。
・ 2013年7月 新駅の設置(JR長瀬~新加美間)について、事業基本計画の変更の認可を受けた。
・ 2018年3月 JR長瀬~新加美間に「衣摺加美北駅」が開業した。
②計画の概要
ア.建設主体大阪外環状鉄道株式会社(第三種鉄道事業者)
イ.運営主体西日本旅客鉄道株式会社(第二種鉄道事業者)
ウ.予定する路線起点東海道本線新大阪駅
終点関西本線久宝寺駅
延長20.3㎞
エ.駅数 14駅(新大阪、久宝寺駅を含む。)
オ.総建設費 約1,200億円(新駅の設置を除く。)
カ.建設計画 1997年度~2018年度
(放出~久宝寺間は2007年度完成)

③当社の考え方
当路線は、貨物線として使用されている片町線放出~八尾、鴫野~吹田間(通称:城東貨物線)を活用し、大阪市外縁部において放射状鉄道を相互に連絡するものであり、沿線の発展に寄与するとともに、淡路地区、放出・竜華地区等大阪東部地域の再開発の促進並びに災害に強い多重型鉄道ネットワークが形成される等、今後の近畿圏の発展に貢献するものであると考えております。しかしながら、各種の環境の変化等により計画が予定通り進捗しない場合や、期待した効果が発揮されない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

(9)コンピュータシステムについて
当社グループは、列車運行に関わるシステム、指定席等の販売に関わるシステムのほか、事業全般にわたり様々な分野のシステムを有し、コンピュータシステムが重要な役割を果たしております。したがって、そのコンピュータシステムに人的ミス、自然災害、停電及びコンピュータウイルス等による障害が生じた場合にその事業遂行に影響を受ける可能性があります。
また、コンピュータウイルスの感染や誤操作等によりコンピュータシステム上の個人情報などが外部に流出した場合、当社グループの信用の低下等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える場合があります。
当社グループでは、自社システムの点検、機能向上や社員教育を実施し障害防止及び事故防止に努めるとともに、障害及び事故が発生した場合においても、その影響を最小限のものとするよう、速やかな初動体制の構築等に努めております。また、業務におけるIT依存度も一層高まっており、コンピュータシステムの安定稼動を維持するための設備・インフラ面の強化・見直し等、自然災害による被災対策を計画的に進めております。

(10)自然災害等の発生について
地震、台風、地すべり、洪水等の自然災害やテロ等によって、当社グループの事業及び輸送網インフラは大きな被害を受ける可能性があります。特に1995年1月に発生した阪神・淡路大震災では、山陽新幹線及び東海道本線を中心に大きな被害を受けました。
当社としては、将来においても、事業にもたらす影響の大きな自然災害等による被害を最小限のものとするよう、防災や減災に努めているところです。具体的には、新幹線における早期地震検知警報システムや在来線も含めた緊急地震速報システム等の対策や、今後発生が予想される南海トラフ地震に備えた高架橋柱や駅舎の耐震補強工事等を着実に実施するほか、津波に備えて避難誘導標等を整備し、「津波避難誘導心得」を制定するなど速やかな避難・誘導等が行えるように取り組みを進めるとともに、実践的訓練を進めております。また、2004年10月の新潟県中越地震での新幹線脱線を踏まえ、新幹線の地震対策の検討や関連する技術開発を推進することを目的に設置された「新幹線脱線対策協議会」の提言等を受け、地震動により走行中の列車が逸脱し被害が拡大することを防止するために、山陽新幹線において逸脱防止ガードの整備を進めており、2015年12月に新大阪・姫路間の整備が完了し、姫路・博多間において、引き続き整備を進めております。また、近年、短期間に集中化する豪雨による災害が激甚化しており、2015年3月に、近年の降雨形態の変化や過去の災害雨量を考慮し、在来線における降雨時運転規制について、規制値・雨量指標等を一部見直しました。さらに、大雨や落石への防護設備等の対策を実施するなど、重大な被害の発生を可能な限り回避するための取り組みを推進してまいります。
なお、当社では、これらの自然災害等に備えるため、地震が発生した場合でもあらかじめ定めた条件によって資金調達が可能な震災対応型コミットメントラインを金融機関から導入するとともに、主な鉄道施設を対象とする地震保険を含めた損害保険に加入しておりますが、必ずしもこれらの方策によって全ての被害をカバーできない可能性があります。
また、上記のような直接の被害のほかにも、大規模な自然災害に伴い、電力不足等が生じた場合には、鉄道事業をはじめとする当社グループの事業に支障が出る可能性があります。


(11)感染症の発生・流行について
2003年に出現したSARS(重症急性呼吸器症候群)や強毒性新型インフルエンザのような感染症が、長期間にわたり西日本エリアにおいて流行した場合、経済活動が制限されたり、お客様が出控えたりするなどのおそれがあり、当社グループの業績にも影響を与える可能性があります。
当社グループとしては、新型インフルエンザ等の発生時において、2013年4月に施行された新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、政府関係機関・各自治体等と緊密に連携しながら、適切な輸送を実施できるよう必要な措置を講じております。

(12)コンプライアンスについて
当社においては、事業活動を営む上で、会社法、金融商品取引法、独占禁止法、個人情報の保護に関する法律など一般に適用される法令のほかに、鉄道事業法など業態ごとに適用される法令、さらには事業種別に応じて規制当局の監督を受けております。これらの法的規制等に違反したり、規制当局からの調査対象となることによって、また、場合によっては何らかの処分を受けた場合、当社グループの社会的な信用低下を招き、加えて対策費用が発生するおそれがあり、かかる事態が発生した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
なお、当社は、2009年9月に福知山線列車事故に関する航空・鉄道事故調査委員会の調査の過程で発生したコンプライアンス上の重大な問題に対して、国土交通大臣から実態調査を行うとともに、調査結果を踏まえた再発防止策等の改善措置を講じて報告するよう命令を受けました。
当社としては、同年11月に社外有識者からなるコンプライアンス特別委員会や社長直属の社内チームによる実態調査の結果及び再発防止等の改善措置を取りまとめ、国土交通大臣に報告し、再発防止とコンプライアンス体制の強化に取り組んでおります。具体的には、コンプライアンス推進機能を集約した「企業倫理・リスク統括部」及び企業倫理の確立に向けた「企業倫理委員会」を設置したほか、コンプライアンスに関する相談・連絡の窓口として、「倫理相談室」及び「公益通報窓口」に加え、当社グループ役員・社員のための相談窓口を社外にも設置するとともに、企業倫理教育の拡充に努めてまいりました。2010年12月にはこれらの取り組みをはじめとする改善措置の実施状況について、国土交通大臣に報告を行い、2012年2月には、これまでの議論及びそれらを踏まえた提言を取りまとめた報告書が「企業倫理委員会」から提出され、その提言内容を今後の取り組みに反映いたしました。
また、リスクの多様化に伴い、当社グループ経営に重大な影響を及ぼす重要リスクを当社社長以下、責任ある立場のものが適切に把握し、一元的なリスクの管理と低減に努めるリスクマネジメントスタイルの定着を図るため、2017年4月に「リスクマネジメント委員会」を新たに設置し、従来のリスクマネジメント体制を強化いたしました。

(13)福知山線列車事故について
当社は、2005年4月25日、福知山線塚口駅~尼崎駅間において、106名のお客様の尊い命を奪い、500名を超えるお客様を負傷させるという、極めて重大な事故を惹き起こしました。
被害に遭われた方々への対応につきましては、引き続きご被害者の皆様のご意見等に真摯に向き合い、一層の努力を重ねてまいります。
なお、今後も事故に伴う補償などの支出が見込まれますが、これらについては、現時点では金額等を合理的に見積もることは困難であります。

従業員の状況研究開発活動


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