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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100DAE0

有価証券報告書抜粋 オンコセラピー・サイエンス株式会社 研究開発活動 (2018年3月期)


事業等のリスクメニュー株式の総数等

当連結会計年度における研究開発費の総額は2,931百万円です。
(1)当社の事業基盤について
国立大学法人東京大学との共同研究の成果は当社の技術基盤となるものです。
① cDNAマイクロアレイについて
コンピューターのマイクロチップは大量の情報を高速に処理する道具として開発されたものですが、cDNA(※10)マイクロアレイ(※11)と呼ばれる技術も同様に小さな基盤上に非常に高密度にDNAを配置して、それらを手がかりに大量の遺伝子情報を獲得するために開発されたものです。また、遺伝子情報の解析においては、このように一度に全体像を捉え網羅的に解析するシステムは有用なものとして考えられております。
当社が共同研究において使用しているのは上述のcDNAをマイクロアレイ上の特定の区画に固定している(これを「スポットしている」といい、このスポットを実施する機械を「スポッター」といいます)cDNAマイクロアレイであります。これは共同研究先である東京大学医科学研究所および当社研究施設でスポッターを利用し、cDNAと、それをスポットしたcDNAマイクロアレイを作製しております。
このcDNAの作製方法は、大変に時間と労力のかかるものですが、以下に簡単にご説明いたします。
まず研究用に市販されているヒトの各種正常臓器の細胞からとったmRNA(※10)と同時に、発生過程の初期のmRNAもつかまえるために胎児のmRNAを入手します。そして、逆転写酵素でcDNAを作ります。さらに、このcDNAをもとにPCR法と呼ばれる方法でcDNAを増幅します。
このcDNAマイクロアレイの特長は、主に以下の2点です。
a 現在32,000種類の遺伝子をスポットしていること
2003年4月に発表されたヒトゲノムの完全解読終了時の情報では、約35,000個の遺伝子があるとされておりましたが、その後の解析では25,000-30,000個と一般的には考えられております。当社のマイクロアレイは32,000種類のcDNAをスポットしていることから、ほぼ全遺伝子を網羅しております。
またマイクロアレイにスポットするcDNAの合成は、ヒトの12種類の臓器よりプールしたmRNAにより実施しているため、およそヒトの発生過程以降に発現する遺伝子はほぼ検出することができます。これをマイクロアレイ上にスポットして使っているため、ヒトの細胞内での実際の遺伝子発現に近い状態で、かつ機能が未知の遺伝子まで解析することができます。
b cDNAを利用していること
マイクロアレイには、合成で作った25~50個くらいの核酸塩基からなるオリゴDNAとよばれるものを用いる方法と、cDNAを用いる方法があり、導入の簡便性からオリゴDNAを用いる方法が一般的です。当社はcDNAを用いる方法を採用しておりますが、これはオリゴDNAに比較してシステム構築に手間がかかる欠点はありますが、cDNAが200から1,100個までの長い核酸塩基からなっており個々の塩基の結合力が強く、マイクロアレイ洗浄時に、より厳しい条件(塩濃度や温度等の条件)で洗浄可能なため、その結果正常(相補性が正しい)な結合のみがマイクロアレイ上に残ることになり、再現性の面でオリゴDNAの方式より優れていると考えております。

② 抗がん剤探索のための網羅的ながん遺伝子の解析方法について


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LMM法による細胞切片からのがん細胞の切り出し
がん組織を顕微鏡下で観察すると正常細胞とがん細胞が複雑に入り混じっており、精度の高いがん遺伝子解析のためには、まずこのような組織からがん細胞の集団のみを取り出す必要があります。当社共同研究においては、LMM(Laser Microbeam Microdissection)(※12)法と呼ばれる技術を採用しております。

がん細胞で特異的に発現する遺伝子を特定
ステップ①で回収したがん細胞からRNA(※10)を抽出し、逆転写酵素を用い蛍光色素で標識したcDNAを作成し、がん細胞に対応する正常細胞からも同様にRNAを抽出してがん細胞とは異なる蛍光色素で標識したcDNAを作成します。
これらを、cDNAマイクロアレイ上でがん細胞と正常細胞での遺伝子発現量の比を検出し、がん細胞で特異的に発現する遺伝子を特定します。

がんの分子標的治療薬の標的となり得る候補遺伝子の選択
上記で特定した候補遺伝子について、がんの分子標的治療薬のターゲットとなり得るか否かを下記の実験により検証します。
a がん細胞の増殖に関与しているか否かを、遺伝子を直接細胞に入れた際の細胞増殖促進効果の有無で確認する。
b 遺伝子の働きを阻害することにより、がん細胞の増殖が阻害されるか否かを確認する。
c 心臓や肺など、生命の維持に重要な臓器で発現が低いか否かを、cDNAマイクロアレイで得た正常臓器における発現データベース等により確認する。

③ 研究の特徴について
当該共同研究における主な特徴は、以下の通りであります。当社は、これらの各要素を組み合わせた解析スキームに研究の優位性があり、各種のがんにおいて得られた遺伝子情報等は、治療効果が高く、かつ副作用が少ない抗がん剤等の開発や、特異性の高いがん診断薬の開発に有用であると認識しております。なお、現時点においては、第三者が同様の遺伝子解析を高精度で大規模に実施することは極めて困難であるものと考えておりますが、新たな研究手法等が確立された場合においては、今後における当該優位性が継続する保証はありません。

a 臨床症例に基づいた研究成果であること
当社の東京大学との共同研究は、同大学の医科学研究所が協力医療機関から収集した臨床症例に基づくものであり、各がん種について多数の症例の解析が可能となっております。

b LMM法によるがん細胞の分離により精度の高い解析が可能であること
従来の研究開発においては、がん組織から直接RNAを回収していたので、がん細胞に加え正常細胞の混入も多く、結果としてがん細胞での遺伝子発現変化が反映できないことが少なからず生じておりました。当社共同研究においては、高度な病理学的知識を有する研究者ががん細胞および正常細胞を判別した上でLMM法によりがん組織からのがん細胞の切り出し作業を実施しており、多くの手間と時間が必要となるものの、ほぼ100%の純度のがん細胞分離が可能であり、当該がん細胞のみを解析に用いることにより解析結果の正確性が向上しております。

c 遺伝子解析においてcDNAマイクロアレイを利用していること
当社が使用しているcDNAマイクロアレイは、元東京大学医科学研究所教授である中村祐輔氏が独自に開発したものであり、その特徴として、ア)精度を高めるため独自に開発したcDNAのセットを利用していること、イ)現在32,000種類の遺伝子をスポットしていること、ウ)機能未知の遺伝子および新規遺伝子も解析対象となること、等であります。

d 特定された候補遺伝子とがんとの関連を複数の実験により検証していること
前述の通り、近年においては分子標的治療薬という概念が確立し、肺がん、乳がんおよび慢性骨髄性白血病に対する抗がん剤の開発がなされており、特定のがん患者に対して一定の効果が生じているものと考えられます。しかしながら、当社においては、これらの抗がん剤について効果、特異性や副作用の観点から見ると必ずしも十分なものではないと認識しております。
抗がん剤のターゲットとなる遺伝子はがん細胞のみに特異的に発現するのではなく、多くの正常臓器にも共通に発現している場合があることから、それらの副作用の原因として、抗がん剤が正常細胞に対しても作用してしまうことが考えられます。当該解析スキームにおいては、マイクロアレイによる解析から特定されたがん細胞で特異的に発現上昇している候補遺伝子について、ア)細胞の増殖に関与するもの、イ)働きを阻害するとがん細胞が増殖を停止する、もしくは死滅するもの、ウ)生命の維持に不可欠な臓器では発現していないもの等の条件により、分子標的抗がん剤のターゲットとして適当か否かを複数の実験により検証し、絞込みを行っており、がん細胞に対してより特異的で、かつ副作用の少ない抗がん剤等の開発に結びつくシーズの提供が可能になるものと考えております。

(2)研究開発活動
当社グループは、元東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター長中村祐輔教授と共同で、ほぼ全てのがんを対象とした網羅的な遺伝子発現解析等を実施し、既にがん治療薬開発に適した多くの標的分子を同定しております。また、それらの標的に対し、低分子医薬、がん特異的ペプチドワクチン、抗体医薬等の、各領域における創薬研究を積極的に展開し、これら創薬研究の成果を基にした複数の臨床試験を実施しており、臨床試験準備中の医薬品候補物質も複数有しております。
このような、「医薬品の研究及び開発」並びにこれらに関連する事業に加えて、当連結会計年度より、がんプレシジョン医療関連事業を開始致しました。
がんは遺伝子の異常により引き起こされる病気です。がん細胞での遺伝子の網羅的な解析は、がんの診断ならびにがん治療薬・治療法を選択するために非常に重要です。この解析を利用して、予防に役立てたり、がん患者さん一人ひとりの遺伝子情報に基づいた治療薬・治療法の選択をすることや新規の免疫療法につなげていくことをがんプレシジョン医療といい、近年、より効果的ながん治療をがん患者さんに提供できる手段として注目されています。
当社は、グローバルなゲノム・トランスクリプトム・エピゲノム等の次世代シーケンス解析サービスを行っているTE社と合弁で、がん遺伝子の大規模解析検査ならびに、がん免疫療法の研究開発を行う子会社として、CPM社を設立し、さらに、当社の事業部門であり、オンコアンチゲンをはじめとしたがん免疫療法の研究開発、及び最先端の取組みとして次世代シーケンサーを用いてT細胞/B細胞受容体の解析サービスを行っている腫瘍免疫解析部を、会社分割(簡易分割)により、CPM社に事業を承継させ、がんプレシジョン医療関連事業を開始致しました。
なお、2018年3月31日現在、当社は全世界で480件の特許を取得しております。

◇「医薬品の研究及び開発」並びにこれらに関連する事業◇

創薬ターゲットの特定等を行う基礎研究領域においては、ヒト全遺伝子の遺伝子発現パターンを網羅的に検索できるcDNAマイクロアレイのシステムによる大腸がん、胃がん、肝臓がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、食道がん、前立腺がん、膵臓がん、乳がん、腎臓がん、膀胱がん及び軟部肉腫等について発現解析が終了しております。これらの発現解析情報からがんで発現が高く正常臓器では発現がほとんどない遺伝子を選択し、さらに機能解析により、がん細胞の生存に必須な多数の遺伝子を分子標的治療薬の標的として同定しております。

医薬品候補物質の同定及び最適化を行う創薬研究領域においては、医薬品の用途毎に、より製品に近い研究を積極的に展開しております。
低分子医薬につきましては、7種のがん特異的タンパク質を標的とする創薬研究を進めております。そのうち1種の標的であるリン酸化酵素(キナーゼ)については、医薬品候補化合物の臨床試験を実施中です。(詳細は、以下、低分子医薬をご覧ください。)他の1種のリン酸化酵素については、これまでに得た高活性化合物に基づきリード最適化作業を進め、in vivoで強力な腫瘍増殖抑制効果を示す複数の高活性化合物を同定しております。これらについては、医薬品候補化合物として臨床開発する為の薬効薬理・薬物動態・毒性試験を進めております。さらに、別の3種の標的酵素タンパク質に関して、これまでの構造活性相関研究の結果得られた多数の高活性化合物に基づき、リード最適化作業を進めております。それにより得た有望化合物につき、in vivoでの薬効試験を実施するとともに、薬効向上のためのさらなる最適化作業を実施しております。また、さらに別の2種の標的タンパク質に関して、大規模化合物ライブラリのスクリーニングから得た高活性化合物骨格につき、リード化合物獲得に向けた新規化合物合成と構造活性相関研究を進めております。
がん特異的ペプチドワクチンにつきましては、これまでに日本人及び欧米人に多く見られるHLA-A*24:02及びA*02:01を中心に、大腸がん、胃がん、肺がん、膀胱がん、腎臓がん、膵臓がん、乳がん及び肝臓がんなどを標的とした計43遺伝子を対象としたエピトープペプチドを既に同定しておりますが、それら以外にもA*11:01, A*33:03, A*01:01及びA*03:01など、様々なHLAに対応したより多くのエピトープペプチドを同定しております。
このように、独創的な分子標的治療薬の創製を目指した創薬研究を中心に積極的に展開しております。

医薬開発領域においては、当社グループ独自で、ならびに複数の製薬企業との提携による開発を、以下の通りそれぞれ進めております。
低分子医薬
がん幹細胞の維持に重要な分子であるMELK(Maternal Embryonic Leucine zipper Kinase) を標的としたOTS167については、急性骨髄性白血病に対する第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を米国シカゴ大学及びコーネル大学にて実施しております。この臨床試験は、急性骨髄性白血病の患者さんを対象とし、OTS167の静脈内反復投与における安全性及び推奨投与量の確認を行い、確認後には、急性骨髄性白血病を含む予後不良の各種白血病についてのPOC(Proof of Concept : 有効性や安全性を含めて作用機序などが臨床において妥当であることの証明)を獲得することを目的とするものです。また、OTS167の乳がんに対する第Ⅰ相臨床試験を米国コーネル大学及びテキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターにて実施しております。この臨床試験は、トリプルネガティブ乳がんを含む乳がんの患者さんを対象とし、OTS167のカプセル剤による経口投与における安全性及び推奨投与量の確認を主目的とし、副次的にトリプルネガティブ乳がんに対する臨床上の有効性を確認するものです。なお、OTS167は、オーストラリアで実施しておりました健常成人を対象とした経口投与による消化管吸収性(バイオアベイラビリティ)の確認を主たる目的とする臨床試験において、ヒトでの良好な経口吸収性が確認されています。
OTS167の標的は、新規キナーゼのMELK (Maternal Embryonic Leucine zipper Kinase)であり、がん幹細胞に高発現し、その維持に重要な役割をしているタンパク(キナーゼ)です。そのキナーゼを阻害し、強い細胞増殖抑制効果が期待できる新しい作用機序(ファースト・イン・クラス)の分子標的治療薬です。 OTS167 は、すでに動物試験において、肺がん、前立腺がん、乳がん、膵臓がんなどに対し、強力な抗腫瘍効果が確認されています。
また、細胞分裂に重要ながん特異的新規標的分子(TOPK)に対する複数の最終化合物を同定しております。動物実験で、顕著な結果が得られたことから、製剤化検討及び非臨床試験を進めております。
がん特異的ペプチドワクチン
がん特異的ペプチドワクチンにつきましては、提携先製薬企業との戦略的対話を促進し、提携先が実施する臨床開発の側面支援、後方支援を強化して参りました。
塩野義製薬株式会社とは、当社がライセンスアウトしているがん特異的ペプチドワクチンS-588410の臨床開発を支援する目的で、食道がん患者さんを対象とした第Ⅲ相臨床試験実施に関する覚書を締結しており、塩野義製薬株式会社が臨床試験を実施しております。この臨床試験におきましては、2018年3月に最後の患者登録が完了しております。なお、塩野義製薬株式会社は、S-588410の食道がん第Ⅲ相臨床試験のほか、膀胱がんを対象としたS-588410について日欧で第Ⅱ相臨床試験(目標症例数登録完了)を、頭頸部がんを対象としたS-488210は欧州で第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を、それぞれ実施しております。
抗体医薬
がん治療用抗体医薬OTSA101 については、肉腫治療の世界的権威であり、欧州がん研究・治療機構(European Organization for Research and Treatment of Cancer:EORTC)元会長のJean-Yves Blay 教授主導のもと、軟部肉腫の1種である滑膜肉腫に対する第Ⅰ相臨床試験を実施しておりましたが、臨床試験の主目的であった、安全性と体内集積につきまして良好な結果が確認でき終了致しました。今回の臨床試験の結果を踏まえ、企業主導の次の臨床試験を計画し、日米欧の承認申請を目指して参ります。
また、当社連結子会社であるイムナス・ファーマ株式会社が協和発酵キリン株式会社にライセンスアウトしております抗アミロイドβ(Aβ)ペプチド抗体KHK6640については、協和発酵キリン株式会社が、アルツハイマー型認知症に対する第Ⅰ相臨床試験を欧州ならびに日本にて実施しております。
◇がんプレシジョン医療関連事業◇

がん遺伝子の大規模解析検査ならびにがん免疫療法の研究開発を行う合弁会社設立
当社は、2017年7月24日、がん遺伝子の大規模解析検査ならびにがん免疫療法の研究開発を行う子会社として、CPM社を設立致しました。CPM社に対しては、グローバルなゲノム・トランスクリプトム・エピゲノム等の次世代シーケンス解析サービスを行っているTE社が資本参加・業務提携したことからCPM社は、当社とTE社との合弁会社となっております。また、当社の事業部門であり、オンコアンチゲンをはじめとしたがん免疫療法の研究開発、及び次世代シーケンサーを用いてT細胞/B細胞受容体の解析サービスを行っている腫瘍免疫解析部について、会社分割(簡易分割)をし、CPM社に事業を承継させました。CPM社は、日本におけるがんプレシジョン医療を加速するため、次世代シーケンス解析、ネオアンチゲンの予測、リキッドバイオプシー(※13)、TCR / BCRレパトア解析及び免疫モニタリングを提供または今後提供する予定です。さらに、CPM社は、ネオアンチゲン樹状細胞療法及びTCR導入T細胞療法などの新しい個別化免疫療法の研究も行っております。
TCR/BCR解析サービス
がん免疫療法における最先端の取組みとして、シカゴ大学医学部中村祐輔研究室において開発された、次世代シーケンサーを用いてT/B細胞受容体を解析する方法を導入し、製薬企業、医療機関、研究機関等に対してTCR/BCR解析サービスを提供する事業を行っております。また、ワクチン投与前後の腫瘍組織及び末梢血におけるT細胞受容体遺伝子解析をおこなうことにより、ワクチン投与によるペプチド特異的T細胞の増加を科学的に検証し、免疫チェックポイント阻害剤との併用による相乗効果に関する検討を進めております。
DCワクチンコンソーシアムとの樹状細胞療法による治療法の共同研究の開始
当社は、大阪、福岡、東京を拠点とする3医療法人(医療法人 協林会 大阪がん免疫化学療法クリニック、医療法人 慈生会 福岡がん総合クリニック、医療法人社団 ビオセラ会 ビオセラクリニック)からなる樹状細胞免疫療法懇話会(DCワクチンコンソーシアム)と、当社がライセンスを保有するペプチドワクチンについて、その非独占的実施権をDCワクチンコンソーシアムに供与し、樹状細胞療法による治療法の研究・開発を共同で進めております。この共同研究により、当社及び子会社であるCPM社が支援する、がん臨床領域での個別化医療の実施において、オンコアンチゲンやネオアンチゲンを利用した免疫療法に大きな役割を果たすと考えております。
IMSグループとの共同研究契約の締結
CPM社は、IMSグループ(医療法人社団明芳会、医療法人財団明理会、株式会社アイル)と、リキッドバイオプシーによる胃がん及び大腸がんの手術後のがん細胞の残存、再発の早期発見法の検討にかかる共同研究契約を締結しております。本共同研究は胃がん及び大腸がんの患者さんに対し、リキッドバイオプシーの手法を用いた遺伝子配列解析により、手術前後の特定遺伝子における突然変異の検出によるがん細胞の残存、がん再発の早期発見可能性の探究を目的とするもので、本共同研究には、中村祐輔教授(シカゴ大学教授、元東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター長)ならびにIMSグループの3医療機関が参加して実施致します。
本共同研究による成果を確認した後、IMSグループ各医療機関において、がん診断のためにリキッドバイオプシーを臨床応用する予定であり、さらに、CPM社とIMSグループ各医療機関とは、がん患者さん一人ひとりの遺伝子解析のためのクリニカルシーケンスなど「がんプレシジョン医療」について幅広く提携して参ります。
Thermo Fisher Scientificとの新規リキッドバイオプシープラットフォーム評価のための提携
CPM社は、Thermo Fisher Scientificと提携し、同社が発売を開始したリキッドバイオプシープラットフォームの評価を実施しております。この契約により両社は、がん患者さんから採取した血液サンプルの解析にあたり、Ion Torrent™ Oncomine™ Pan-Cancer Cell-Free Assayによるリキッドバイオプシープラットフォームの評価をするために相互に協力を行って参ります。本提携期間において、両社はデータ評価のために協働してがんの早期発見におけるリキッドバイオプシーの応用研究に取組みます。本提携の長期的なゴールは、技術的なプラットフォームの改良から迅速な臨床応用に至るエリアにおいて、両社が継続的な協力関係を構築することです。
公益財団法人がん研究会とのリキッドバイオプシーによるがん遺伝子変異の検出に係る共同研究の実施
CPM社は、公益財団法人がん研究会(以下「がん研」)と、リキッドバイオプシーによるがん遺伝子変異の検出に係る共同研究を実施しております。この共同研究は、固形がん(肺がん、大腸がん、乳がんなど)の診断を目的として、特定遺伝子における突然変異のリキッドバイオプシー技術・改良、新規技術(新規遺伝子パネルを含む)の研究開発を共同で実施し、それらの臨床応用可能性を探求するもので、固形がん患者から採取した血液・尿などを利用した、がん研独自技術を含むリキッドバイオプシーの評価、がんのスクリーニング、分子標的治療薬の選択、再発のモニタリングなど、いろいろなレベルでのリキッドバイオプシー技術の課題抽出とそれらの解決法の検討を共同で行って参ります。


[用語解説]
(※10)mRNA、cDNA、RNA
RNAはリボ核酸、mRNAはRNAのうち、メッセンジャーすなわち「伝令」の役割をするものであります。人間の体は約60兆個の細胞によって作られていますが、体の構造や働きはおもにタンパク質によって決まっております。そのタンパク質の設計図は遺伝子であり、そして、遺伝子の本体はDNAであります。このDNAは細胞の核の中にある染色体に存在しておりますが、タンパク質は設計図であるDNAから直接作られるのではなく、一旦、DNAからRNAが作られ、そのRNAが翻訳されてタンパク質となります。この一旦作られるRNAを「伝令」すなわちメッセンジャーRNA(mRNA)といいます。つまり、遺伝子情報の流れはDNA→mRNA→タンパク質というようになっております。cDNAは、mRNAから逆転写酵素を用いた逆転写反応によって合成されたDNAで、イントロンを含まない状態の遺伝子(塩基配列)を知ることができることから、遺伝子のクローニングに広く利用されております。
(※11)マイクロアレイ
小さな基盤上に非常に高密度にDNAを配置し、それらを手がかりに大量の遺伝子情報を獲得することを目的として開発されたシステム。現在、遺伝子発現情報の解析において有用なものであると考えられております。
(※12)LMM(Laser Microbeam Microdissection)
がん組織を顕微鏡下で観察すると正常細胞とがん細胞が複雑に入り混じっており、がん遺伝子の解析のためには、まずこのような組織からがん細胞の集団だけを取り出す必要があります。当社では共同研究において、LMM(Laser Microbeam Microdissection)法と呼ばれる技術を採用しております。LMM法による手順の概要は、以下の通りであります。
イ)ガラススライドに置いた組織片上に特別なフィルムを貼り付ける。
ロ)コンピューターの画面を見ながら顕微鏡下に取り出したい部分を指定する。
ハ)その部分だけにレーザー光を当てることによって、フィルムの基質を溶かし、目的の組織部分をフィルムに固定し、がん細胞だけを取り出す。
(※13)リキッドバイオプシー
がんは、遺伝子の異常によって引き起こされる病気です。シーケンス技術の進展により血液や尿などの液体(リキッド)を利用して、がんの存在を見つけることができるようになりました。がん細胞に由来するDNAが非常少量ですが血液中や尿中に混入しており、これを高感度に検出することができるようになったからです。この液体を利用して調べる方法を、リキッドバイオプシーと呼んでいます。CTなどの画像診断よりも早く、再発を見つけることができる可能性があります。また、がん組織を採取することは患者さんに大きな負担となり、合併症の危険を伴いますが、リキッドバイオプシーは、負担が非常に軽いので頻回に検出を行うことができます。

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