有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100DGYX
株式会社 熊谷組 研究開発活動 (2018年3月期)
当社グループの研究開発活動は、企業業績に対して即効性のある技術、商品の開発、各種技術提案に直結した技術の開発、中長期的市場の変化を先取りした将来技術の研究、開発技術の現業展開と技術部門の特性を生かした技術営業、総合的技術力向上のための各種施策からなっており、社会経済状況の変化に対し機動的に対応できる体制をとっている。
当連結会計年度は、研究開発費として19億円を投入した。
当連結会計年度における主な研究開発活動は次のとおりである。
(1) 土木事業
① サンライズビット工法の開発
近年のシールド工事は長距離化傾向にあり、カッタービット交換のニーズも高まっている。掘削の途中でカッタービットを交換する場合、これまでは地盤改良を行い作業員が地中で交換作業を行っていたが、これは事故の危険を伴うと同時に膨大な日数と工事費を要する作業であった。これらの課題を解決するため、ビット交換箇所に作業員が入ることなく遠隔操作で交換作業を行うことが可能なサンライズビット工法を開発した。本工法は、シールド機のスポーク内に複数のカッタービットを有する回転体を装備しておき、油圧ジャッキで回転させることによりビット交換を行うものであり、安全かつ工程に影響を及ぼすことなくビット交換作業を行う事を可能とした。本工法は以下の条件に適用可能である。 1)延長10km程度の超長距離掘進 2)土砂地盤から岩盤までの複合地盤 3)巨礫地盤などビットの摩耗が激しい地盤 4)地盤改良が困難な大深度など。また、回転体に異なる種類のカッタービットを装備しておくことにより、発進時の仮壁切削や地中障害物の切削などに使い分ける事も可能である。今後、様々なシールド工事に提案し普及を図る予定である。
② 山岳トンネルの大量湧水を減水する「RPG(Ring-Post-Grouting)工法」の開発
北薩トンネルは、“高濃度のヒ素”を含む大量湧水に見舞われ、この湧水を大幅に低減させる必要があることから、リング状の地山改良ゾーンを構築するポストグラウチング「RPG工法」を開発した。
トンネルの止水を目的としたポストグラウチングの設計手法は、これまでに確立されておらず、変形・応力と浸透流の連成解析を用いて、トンネルの安定性や水位挙動の予測、地山改良の仕様を決定する手法を確立した。地山の目標改良透水係数4μcm/sを確実に達成するため、従来のグラウチング材料よりも浸透性に優れた「極超微粒子セメント」を岩盤亀裂への注入に初めて採用した。また、地山の透水係数を三次元ルジオンマップによる見える化を図るとともに、ダムのグラウチング技術の応用により、岩盤の性状に応じた最適な注入量や方法を選定し、経済性を向上させた。今回湧水を減水制御できる技術が確立されたことにより、地下水問題を抱える山岳トンネルに対して、合理的な対策として活用できることとなった。
③ 拡張型高機能遠隔操作室
人の立ち入りが危険な災害現場に導入される無人化施工技術は、難易度の高い現場であるほど設備が複雑化し、施工開始までの準備期間が長くなる。災害現場では時間の経過とともに状況が大きく変化するため、無人化設備構築の時間をいかに短縮して、迅速に工事に着手するかが課題となっていた。当社では、この問題を解決するために、IP化した遠隔操作機器類を活用するネットワーク対応型無人化施工システムを開発した(第7回ものづくり日本大賞内閣総理大臣賞受賞)。その中核として高機能遠隔操作室を導入し、阿蘇大橋地区斜面防災対策工事に導入、工事着手後3日目に無人化施工開始という効果を発揮した。当工事に代表されるような近年の災害は、規模の拡大化や複雑化する傾向にあり、遠隔操作で同時に稼働させる建設機械の台数の拡大に柔軟に対応できることが求められている。そこでこの課題を解決するために拡張型高機能遠隔操作室を開発した。当開発の特徴として、高機能遠隔操作室の機能に加え、ハウスの3棟連結と制御対象建設機械の増減を可能にする拡張性、カメラオペレータの操作卓を自在に配置可能とするなどの柔軟性、さらにはネットワークの安定化・ネットワーク管理機能の充実化による信頼性を組み込んだ。当開発は現場への実投入だけでなく、技術研究所(茨城県つくば市)に新設した屋外実験ヤードにおいて、遠隔操作式建設機械の操作訓練や、建設機械の自動走行などのICT建設技術の開発に活用する。
(2) 建築事業
① 「木造建築の3時間耐火」にめど
中大規模の木造建築を念頭に3時間耐火構造の基礎実験を行い、基本性能の確認を行った。その結果、3時間耐火構造の基本性能を確保するとともに、従来よりも「燃え止まり層 (注1)」を薄くし、建物の主要構造部である柱(試験体)の断面を小さくすることに成功した。近年建築物の木造化ニーズは高まりをみせており、2010年10月には、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行されるなど、住宅以外の分野にも拡がっている。一方、法的規制においては、15階建て以上の木造建築物を建築するためには、柱と梁は3時間耐火構造が必要となる。こうした背景を踏まえて、当社では木造建築を新しい市場と捉え、3時間耐火構造の基本性能確保に向けた開発を行ってきた。その結果、燃え止まり層に「石膏ボード」と「断熱耐火パネル」を積層することで、一般に使用されている石膏ボードだけの積層と比較して、燃え止まり層を薄くすることを考案し、民間耐火炉の試験において、1時間耐火試験で3層(37.5㎜)、3時間耐火試験で6層(75.0㎜)の燃え止まり層により、柱芯(集成材)の表面温度が一般的に炭化しない(焦げない)とされる250℃未満となる結果を得た。また、試験後の断面確認でも柱芯(集成材)の表面が炭化していないことを確認した。柱断面を小さくできることは、建物重量の削減、建設費の低減、さらには室内空間の利用可能な床面積拡大にも寄与することができる。今後は、柱(集成材)の1時間耐火での大臣認定取得(柱の耐火構造)に向けて公的機関による試験を実施する。また、今回開発した積層方式は、柱のほか、梁、壁、床の耐火仕様としても利用できることから、主要構造部(梁、壁、床)の大臣認定を目指すとともに、併せて共同住宅向けの「CLT(注2)遮音壁」、「CLT遮音床」の開発も検討していく。
(注)1 仕上材と芯材(集成材等)との間にある燃焼を停止させる層。その基本性能の確認では、耐火加熱中の芯材表面温度が250℃未満であることや、芯材表面が炭化して(焦げて)いないことなどが必要とされる。
2 CLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)は、複数枚のラミナ(ひき板)を木材の繊維方向が直交するように積層させて作った木質構造パネル。
② 二重管式既製コンクリート杭工法「ヘッドギアパイル工法」を開発
既製コンクリート杭の耐震安全性を向上させるヘッドギアパイル工法を開発した。本工法は、建物を支える既製コンクリート杭の頭部に直径の大きい鋼管を設置し、二重管式構造とすることで地震力に対する抵抗性を高めることができる。主として、表層地盤に軟弱な沖積粘性土が堆積する地盤条件で、物流施設、共同住宅、事務所ビルなどの中低層建物に対して効果的である。特に大きな鉛直支持力を確保できる既製コンクリート杭工法と組み合わせることにより合理的な設計が可能になり、場所打ちコンクリート杭や大径の外殻鋼管付きコンクリート杭(SC杭)を用いる場合に比べて杭のコストダウンを図ることができる。今般、実物大の杭を用いた水平載荷試験により、既製コンクリート杭と鋼管の水平荷重の分担を明らかにするとともに、従来の既製杭工事に用いられる施工機械で必要な精度を確保できることを確認した。なお、この二重管部の構造安全性評価の妥当性について、一般財団法人日本建築センターから工法評定(BCJ評定-FD0565-01)を取得している。本案件は、西松建設株式会社、株式会社安藤・間、株式会社トーヨーアサノ及び三谷セキサン株式会社との共同開発である。
③ Virtual Reality(VR)を活用した風環境可視化技術の開発
Virtual Reality(VR)を活用した風環境可視化技術を開発した。本技術は、流体解析とVR技術を組み合わせ、本来は目に見えない3次元の風の流れをVR空間で可視化するものである。建物建設によって風環境が変化する、いわゆるビル風問題は、設計者や事業主、居住者にとって身近な問題となっている。一般に、状況評価や対策検討においては、実測や風洞実験、流体解析結果の一部を切り出した紙媒体(2次元情報)を用いるため、3次元の複雑な風の流れの全体像把握が困難なケースもあり、対策立案が容易ではない場合があった。今回の開発は、目に見えない複雑な風の流れをVR空間で可視化し、3次元でリアルに捉えることができるため、より優れたビル風対策の立案が可能となった。また、特に専門技術を持たない人でも視覚的に風の流れを把握できるため、設計者や顧客へのプレゼンテーション時に合意形成が容易となるほか、強風による注意喚起ツールとしても活用が期待できる。今後は観測データと組み合わせたリアルタイムな風環境の可視化、Augmented Reality(AR)やMixed Reality(MR)への拡張、オンライン(WAN)化等の機能追加を重ねてさまざまなケースで本技術を適用できるよう検討していく予定である。
④ 新型「小型音カメラ」の開発
音を可視化して画像に表示する音カメラ(注)技術を使った小型リアルタイム音カメラをさらに小型軽量化し、操作性と可搬性を向上させた新型「小型音カメラ」を開発した。本体部分の大きさは体積比で半分以下となり、フルハイビジョン(FHD)に対応した高画質画像で音を視覚化できるようにした。また、電源装置の設計を見直し、既製品の小型バッテリを直接使用できるようになった。このためバッテリ駆動では概ね3時間の連続計測が可能となり、電源の確保が難しかった山間部や高所、狭い設備室や車両室内等の小さな空間でも使用できる。なお、計測時にデータ記録とリアルタイムの結果表示が同時に機能し、その場で音の情報確認ができる特性は保持している。今後は音を可視化するツールとして、地方自治体や設計事務所、コンサルティング会社などへの積極的な提案、また、建設物の音響調査だけでなく、大学との共同研究や音楽教育への応用など、幅広く活用していく。
(注)音の発生方向、音の大きさ(音圧レベル:dB)、音の高さ(周波数:Hz)を特定し、デジタルカメラから取り込んだ画像上にそれらを表示するもの。2001年に当社、中部電力株式会社及び山下恭弘信州大学名誉教授と共同で開発している。
⑤ 在宅自立歩行支援器「フローラ・テンダー」を開発
在宅介護等における自立生活支援型の歩行器「フローラ・テンダー」を開発した。本開発は、今後の高齢化社会の進展に伴う在宅医療や在宅介護の重要性を見据えて、在宅での、家族に頼らない、自立生活支援のための開発・環境整備が極めて重要であるとの認識から、以前に開発した「体重免荷式歩行支援機器フローラ(2001年11月プレス発表)」を在宅介護・自立生活支援の観点から見直し、時代のニーズにマッチした新たな開発と改良を行ったものである。本歩行器は屋内専用であり、立ち上がり介助機能を有し、転倒の心配も無く、安心して歩くことができる。また、立ち上がり介助に必要なスリングには、「ジーンズタイプ(スリング・ジーンズ)」を新たに開発し、普通のズボンとして、日常生活でもまったく違和感なく着用できることも特徴である。さらに、本歩行器の効果を最大限に活かしていただくため、グループ会社のケーアンドイー株式会社及び株式会社ファテックが、お客様のご要望に応じて、使用される方の身体や生活の状況に応じたベストな住環境を提案していく。
(3) 子会社
株式会社ガイアート
① 縦溝粗面コンクリート舗装の開発
縦溝粗面アスファルトコンクリートである当社製品のFFPは、開発後、順調に施工量を増やしていることから、コンクリート舗装にも縦溝を設ける工法の開発に着手した。本年度はプレキャストコンクリートと現場打ちコンクリートの両工法について検討を開始した。
② 橋舗装工法の開発
社会インフラの老朽化、とりわけ橋梁の掛け替えが急務となる情勢を受け、急速施工が可能なプレキャスト床版掛け替え工法が注目を集めている。その工法に適した新たな橋面舗装の開発を行った。成果を技術資料にとりまとめ、現場への展開を図った。
③ 移動式たわみ測定装置の実用化に関する共同研究
舗装の効率的な管理に向けて、定期的な点検・維持修繕が求められている。現在、構造的な舗装の健全度を調べるためには、FWDによるたわみ測定が一般的に用いられるが、交通規制が必要で、定期的な点検には適さない。そこで、移動しながらたわみを測定する移動式たわみ測定装置の開発を2016年度~2018年度にかけて、2つの公的機関、1つの大学、5つの民間企業で、移動式たわみ測定装置の実用化に関する共同研究を実施している。本年度は装置の試作機が完成し、来年度にデータ収集と解析を進める予定である。
当連結会計年度は、研究開発費として19億円を投入した。
当連結会計年度における主な研究開発活動は次のとおりである。
(1) 土木事業
① サンライズビット工法の開発
近年のシールド工事は長距離化傾向にあり、カッタービット交換のニーズも高まっている。掘削の途中でカッタービットを交換する場合、これまでは地盤改良を行い作業員が地中で交換作業を行っていたが、これは事故の危険を伴うと同時に膨大な日数と工事費を要する作業であった。これらの課題を解決するため、ビット交換箇所に作業員が入ることなく遠隔操作で交換作業を行うことが可能なサンライズビット工法を開発した。本工法は、シールド機のスポーク内に複数のカッタービットを有する回転体を装備しておき、油圧ジャッキで回転させることによりビット交換を行うものであり、安全かつ工程に影響を及ぼすことなくビット交換作業を行う事を可能とした。本工法は以下の条件に適用可能である。 1)延長10km程度の超長距離掘進 2)土砂地盤から岩盤までの複合地盤 3)巨礫地盤などビットの摩耗が激しい地盤 4)地盤改良が困難な大深度など。また、回転体に異なる種類のカッタービットを装備しておくことにより、発進時の仮壁切削や地中障害物の切削などに使い分ける事も可能である。今後、様々なシールド工事に提案し普及を図る予定である。
② 山岳トンネルの大量湧水を減水する「RPG(Ring-Post-Grouting)工法」の開発
北薩トンネルは、“高濃度のヒ素”を含む大量湧水に見舞われ、この湧水を大幅に低減させる必要があることから、リング状の地山改良ゾーンを構築するポストグラウチング「RPG工法」を開発した。
トンネルの止水を目的としたポストグラウチングの設計手法は、これまでに確立されておらず、変形・応力と浸透流の連成解析を用いて、トンネルの安定性や水位挙動の予測、地山改良の仕様を決定する手法を確立した。地山の目標改良透水係数4μcm/sを確実に達成するため、従来のグラウチング材料よりも浸透性に優れた「極超微粒子セメント」を岩盤亀裂への注入に初めて採用した。また、地山の透水係数を三次元ルジオンマップによる見える化を図るとともに、ダムのグラウチング技術の応用により、岩盤の性状に応じた最適な注入量や方法を選定し、経済性を向上させた。今回湧水を減水制御できる技術が確立されたことにより、地下水問題を抱える山岳トンネルに対して、合理的な対策として活用できることとなった。
③ 拡張型高機能遠隔操作室
人の立ち入りが危険な災害現場に導入される無人化施工技術は、難易度の高い現場であるほど設備が複雑化し、施工開始までの準備期間が長くなる。災害現場では時間の経過とともに状況が大きく変化するため、無人化設備構築の時間をいかに短縮して、迅速に工事に着手するかが課題となっていた。当社では、この問題を解決するために、IP化した遠隔操作機器類を活用するネットワーク対応型無人化施工システムを開発した(第7回ものづくり日本大賞内閣総理大臣賞受賞)。その中核として高機能遠隔操作室を導入し、阿蘇大橋地区斜面防災対策工事に導入、工事着手後3日目に無人化施工開始という効果を発揮した。当工事に代表されるような近年の災害は、規模の拡大化や複雑化する傾向にあり、遠隔操作で同時に稼働させる建設機械の台数の拡大に柔軟に対応できることが求められている。そこでこの課題を解決するために拡張型高機能遠隔操作室を開発した。当開発の特徴として、高機能遠隔操作室の機能に加え、ハウスの3棟連結と制御対象建設機械の増減を可能にする拡張性、カメラオペレータの操作卓を自在に配置可能とするなどの柔軟性、さらにはネットワークの安定化・ネットワーク管理機能の充実化による信頼性を組み込んだ。当開発は現場への実投入だけでなく、技術研究所(茨城県つくば市)に新設した屋外実験ヤードにおいて、遠隔操作式建設機械の操作訓練や、建設機械の自動走行などのICT建設技術の開発に活用する。
(2) 建築事業
① 「木造建築の3時間耐火」にめど
中大規模の木造建築を念頭に3時間耐火構造の基礎実験を行い、基本性能の確認を行った。その結果、3時間耐火構造の基本性能を確保するとともに、従来よりも「燃え止まり層 (注1)」を薄くし、建物の主要構造部である柱(試験体)の断面を小さくすることに成功した。近年建築物の木造化ニーズは高まりをみせており、2010年10月には、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行されるなど、住宅以外の分野にも拡がっている。一方、法的規制においては、15階建て以上の木造建築物を建築するためには、柱と梁は3時間耐火構造が必要となる。こうした背景を踏まえて、当社では木造建築を新しい市場と捉え、3時間耐火構造の基本性能確保に向けた開発を行ってきた。その結果、燃え止まり層に「石膏ボード」と「断熱耐火パネル」を積層することで、一般に使用されている石膏ボードだけの積層と比較して、燃え止まり層を薄くすることを考案し、民間耐火炉の試験において、1時間耐火試験で3層(37.5㎜)、3時間耐火試験で6層(75.0㎜)の燃え止まり層により、柱芯(集成材)の表面温度が一般的に炭化しない(焦げない)とされる250℃未満となる結果を得た。また、試験後の断面確認でも柱芯(集成材)の表面が炭化していないことを確認した。柱断面を小さくできることは、建物重量の削減、建設費の低減、さらには室内空間の利用可能な床面積拡大にも寄与することができる。今後は、柱(集成材)の1時間耐火での大臣認定取得(柱の耐火構造)に向けて公的機関による試験を実施する。また、今回開発した積層方式は、柱のほか、梁、壁、床の耐火仕様としても利用できることから、主要構造部(梁、壁、床)の大臣認定を目指すとともに、併せて共同住宅向けの「CLT(注2)遮音壁」、「CLT遮音床」の開発も検討していく。
(注)1 仕上材と芯材(集成材等)との間にある燃焼を停止させる層。その基本性能の確認では、耐火加熱中の芯材表面温度が250℃未満であることや、芯材表面が炭化して(焦げて)いないことなどが必要とされる。
2 CLT(Cross Laminated Timber:直交集成板)は、複数枚のラミナ(ひき板)を木材の繊維方向が直交するように積層させて作った木質構造パネル。
② 二重管式既製コンクリート杭工法「ヘッドギアパイル工法」を開発
既製コンクリート杭の耐震安全性を向上させるヘッドギアパイル工法を開発した。本工法は、建物を支える既製コンクリート杭の頭部に直径の大きい鋼管を設置し、二重管式構造とすることで地震力に対する抵抗性を高めることができる。主として、表層地盤に軟弱な沖積粘性土が堆積する地盤条件で、物流施設、共同住宅、事務所ビルなどの中低層建物に対して効果的である。特に大きな鉛直支持力を確保できる既製コンクリート杭工法と組み合わせることにより合理的な設計が可能になり、場所打ちコンクリート杭や大径の外殻鋼管付きコンクリート杭(SC杭)を用いる場合に比べて杭のコストダウンを図ることができる。今般、実物大の杭を用いた水平載荷試験により、既製コンクリート杭と鋼管の水平荷重の分担を明らかにするとともに、従来の既製杭工事に用いられる施工機械で必要な精度を確保できることを確認した。なお、この二重管部の構造安全性評価の妥当性について、一般財団法人日本建築センターから工法評定(BCJ評定-FD0565-01)を取得している。本案件は、西松建設株式会社、株式会社安藤・間、株式会社トーヨーアサノ及び三谷セキサン株式会社との共同開発である。
③ Virtual Reality(VR)を活用した風環境可視化技術の開発
Virtual Reality(VR)を活用した風環境可視化技術を開発した。本技術は、流体解析とVR技術を組み合わせ、本来は目に見えない3次元の風の流れをVR空間で可視化するものである。建物建設によって風環境が変化する、いわゆるビル風問題は、設計者や事業主、居住者にとって身近な問題となっている。一般に、状況評価や対策検討においては、実測や風洞実験、流体解析結果の一部を切り出した紙媒体(2次元情報)を用いるため、3次元の複雑な風の流れの全体像把握が困難なケースもあり、対策立案が容易ではない場合があった。今回の開発は、目に見えない複雑な風の流れをVR空間で可視化し、3次元でリアルに捉えることができるため、より優れたビル風対策の立案が可能となった。また、特に専門技術を持たない人でも視覚的に風の流れを把握できるため、設計者や顧客へのプレゼンテーション時に合意形成が容易となるほか、強風による注意喚起ツールとしても活用が期待できる。今後は観測データと組み合わせたリアルタイムな風環境の可視化、Augmented Reality(AR)やMixed Reality(MR)への拡張、オンライン(WAN)化等の機能追加を重ねてさまざまなケースで本技術を適用できるよう検討していく予定である。
④ 新型「小型音カメラ」の開発
音を可視化して画像に表示する音カメラ(注)技術を使った小型リアルタイム音カメラをさらに小型軽量化し、操作性と可搬性を向上させた新型「小型音カメラ」を開発した。本体部分の大きさは体積比で半分以下となり、フルハイビジョン(FHD)に対応した高画質画像で音を視覚化できるようにした。また、電源装置の設計を見直し、既製品の小型バッテリを直接使用できるようになった。このためバッテリ駆動では概ね3時間の連続計測が可能となり、電源の確保が難しかった山間部や高所、狭い設備室や車両室内等の小さな空間でも使用できる。なお、計測時にデータ記録とリアルタイムの結果表示が同時に機能し、その場で音の情報確認ができる特性は保持している。今後は音を可視化するツールとして、地方自治体や設計事務所、コンサルティング会社などへの積極的な提案、また、建設物の音響調査だけでなく、大学との共同研究や音楽教育への応用など、幅広く活用していく。
(注)音の発生方向、音の大きさ(音圧レベル:dB)、音の高さ(周波数:Hz)を特定し、デジタルカメラから取り込んだ画像上にそれらを表示するもの。2001年に当社、中部電力株式会社及び山下恭弘信州大学名誉教授と共同で開発している。
⑤ 在宅自立歩行支援器「フローラ・テンダー」を開発
在宅介護等における自立生活支援型の歩行器「フローラ・テンダー」を開発した。本開発は、今後の高齢化社会の進展に伴う在宅医療や在宅介護の重要性を見据えて、在宅での、家族に頼らない、自立生活支援のための開発・環境整備が極めて重要であるとの認識から、以前に開発した「体重免荷式歩行支援機器フローラ(2001年11月プレス発表)」を在宅介護・自立生活支援の観点から見直し、時代のニーズにマッチした新たな開発と改良を行ったものである。本歩行器は屋内専用であり、立ち上がり介助機能を有し、転倒の心配も無く、安心して歩くことができる。また、立ち上がり介助に必要なスリングには、「ジーンズタイプ(スリング・ジーンズ)」を新たに開発し、普通のズボンとして、日常生活でもまったく違和感なく着用できることも特徴である。さらに、本歩行器の効果を最大限に活かしていただくため、グループ会社のケーアンドイー株式会社及び株式会社ファテックが、お客様のご要望に応じて、使用される方の身体や生活の状況に応じたベストな住環境を提案していく。
(3) 子会社
株式会社ガイアート
① 縦溝粗面コンクリート舗装の開発
縦溝粗面アスファルトコンクリートである当社製品のFFPは、開発後、順調に施工量を増やしていることから、コンクリート舗装にも縦溝を設ける工法の開発に着手した。本年度はプレキャストコンクリートと現場打ちコンクリートの両工法について検討を開始した。
② 橋舗装工法の開発
社会インフラの老朽化、とりわけ橋梁の掛け替えが急務となる情勢を受け、急速施工が可能なプレキャスト床版掛け替え工法が注目を集めている。その工法に適した新たな橋面舗装の開発を行った。成果を技術資料にとりまとめ、現場への展開を図った。
③ 移動式たわみ測定装置の実用化に関する共同研究
舗装の効率的な管理に向けて、定期的な点検・維持修繕が求められている。現在、構造的な舗装の健全度を調べるためには、FWDによるたわみ測定が一般的に用いられるが、交通規制が必要で、定期的な点検には適さない。そこで、移動しながらたわみを測定する移動式たわみ測定装置の開発を2016年度~2018年度にかけて、2つの公的機関、1つの大学、5つの民間企業で、移動式たわみ測定装置の実用化に関する共同研究を実施している。本年度は装置の試作機が完成し、来年度にデータ収集と解析を進める予定である。
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