有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100D6JZ
鹿島建設株式会社 研究開発活動 (2018年3月期)
当社グループは、多様化する社会及び顧客のニーズに対応し、受注並びに生産への貢献を目的に、建設事業の品質及び生産性向上のための技術をはじめとして、将来的なニーズを先取りする技術まで幅広い課題に関する研究開発活動を大学、公共機関や他企業との共同研究も推進しながら、効率的に実施している。
当連結会計年度における研究開発費の総額は103億円であり、主な成果は次のとおりである。なお、当社は研究開発活動を土木事業、建築事業のセグメントごとに区分していないため建設事業として記載している。
(建設事業)
1 当社
(1) 設計・施工合理化技術
① 快適な光環境
近年、人が室内空間全体から感じる明るさの印象(明るさ感)に着目した光環境の評価手法が広く用いられるようになっているが、従来の手法では室内空間から目に入ってくる光の量の平均から明るさ感を求めていたため、評価結果と実際の明るさ感にズレが生じていた。そこで、当社は明るさ感が視野内の輝度の「対比」の影響を受けることに着目して、光環境を評価する新手法を開発し、人の感覚により近い明るさ感の評価と室内空間の明暗の制御によるきめ細かな光環境デザインを可能にした。② 大型既存杭の解体工法
都市部の再開発工事においては、既存建物の基礎や杭を解体する必要があるが、地下の狭あいな場所での非効率的な作業や騒音、振動等による周辺環境への影響が課題であった。そこで、2011年に開発した微少発破による建物基礎の解体工法である「鹿島MB工法※」をより深い場所まで一度に発破できるように改良した「パイルMB工法※」を国立研究開発法人産業技術総合研究所、カヤク・ジャパン㈱と共同で開発した。これにより、従来の約5~6倍の深さまで一度に発破することが可能となり、都内再開発工事の大型既存杭解体工事に適用した結果、騒音・振動の低減、解体工期の削減に大きな効果があることを確認した。③ 小型地盤調査車
軟弱な地盤に建物を構築する場合には、杭を硬質な支持層に確実に到達させる必要があり、敷地の地盤状況を正確に把握することが不可欠である。当社では、複雑な地盤を正確に把握するための独自装置として、地盤調査車「GEO-EXPLORER※」(ジオ・エクスプローラー)を1994年に開発し継続的に運用を進めてきた。昨今の支持層確認ニーズの高まりを踏まえ、不整地や狭小地への適用性を高めるため、本装置の主要機能を引継ぎ大幅に小型化した小型地盤調査車「miniGeo※」(ミニジオ)を新たに開発し、運用を開始した。④ 配筋検査の省力化
コンクリート構造物における配筋検査は、鉄筋径を区別するマーキングや鉄筋の間隔を示すスケールスタッフの設置など検査前の準備作業に多くの手間がかかり、省力化が強く望まれていたため、日本電気㈱、オリンパス㈱と共同でステレオカメラ(*1)とタブレット端末を連動させた自動配筋検査システムを開発した。本システムの適用により、配筋した検査対象を撮影するだけで、鉄筋径、間隔、本数の自動計測が瞬時にできるため、配筋検査の大幅な省力化の実現とヒューマンエラーのない確実な検査の実施が可能となった。*1:立体写真撮影用のカメラ。対象物を異なる方向から同時に撮影することにより、その奥行き方向の情報も記録できる。
(2) 社会基盤構築技術
① トンネル前方地下水モニタリング
山岳トンネル工事において、切羽(トンネルにおける掘削面)から100m程度先までの地質等を調査する中尺ボーリングを活用して、切羽前方の湧水区間の水圧を連続的にモニタリングするシステム「中尺「スイリモ※」(中尺ボーリング版 水(すい)リサーチ・モニター)」を鉱研工業㈱と共同で開発した。湧水圧の変動を正確に把握することで適切な対策を事前に検討することができるようになったため、トンネル掘削における安全性の向上と工程遅延リスクの低減が期待できる。② 都市部トンネル構築技術
建設業では、将来的な熟練作業員不足が懸念される中、現場作業の省力化による生産性の向上が課題となっている。そこで、都市部の道路トンネルなどを開削工法により構築するにあたり、現場作業を低減するプレキャスト化のメリットを活かしつつ、コストは従来工法と同等としながらも大幅な省力化と工程短縮を実現する「スーパーリング※工法」を開発した。本工法のコストは従来の場所打ちコンクリートによるボックスカルバートと同等ながら、現場での作業員数を約90%削減するとともに、躯体構築の工程も約50%短縮を可能とした。③ 都市部の地下空間構築
当社は複雑化する都市部の地下空間構築のため、矩形シールド・推進工法「VERSATILE BOX※工法」のラインナップの充実に向けて開発を行っている。高速道路出口ランプ部の構築においては、非開削工法の密閉型矩形シールドマシン「アポロカッター※」を用いてさまざまな安全対策と切羽の厳格な土圧管理を実施し、地表面への影響を最小限に抑えながら掘削を行った。また、地下連絡通路の構築においては、密閉型矩形シールド「EX-MAC(*2)(イー・マック)」を用いて、伸縮カッターに連動して動く土圧変動抑制装置を左右2箇所に装備することで、泥土圧を安定させ、都心の地下で安全な掘進を実施した。*2:EX-MAC:EXcavation Method of Adjustable Cutter
(3) 震災対策関連技術
地震時の安全性を備えた天井システム
一般的な下地材とボード類により構成される吊り天井は、概ね10kg/㎡以上の重量があり、また固く割れやすい面材を用いると、大きな地震による破壊・脱落によって人的被害が発生するおそれがある。そこで、脱落しにくい軽量な吊り天井を実現することにより、安全性・生産性・経済性の向上を目指した「セーフティ・ダイア※‐K」を開発した。高く広い天井にも適用可能であり、超軽量、かつ脱落しにくい構造により、地震時にも重大な人的被害の回避が期待できる。(4) 地球環境技術
汚染土壌対策
2010年の土壌汚染対策法改正により、環境基準値を超過する自然由来の重金属含有土も法律の適用範囲となり、シールド工事において重金属を含む地盤を掘削する場合も土壌汚染への対応が求められている。そこで、砒素等の重金属に汚染された土壌を現場で磁気分離処理して浄化する技術「M(エム)・トロン※」を泥土圧・流体圧送シールド工事で適用し、砒素汚染掘削土砂(泥水性状)の連続浄化に成功した。また、そこで得た知見から、汚染泥水の発生量が膨大な大断面シールド工事においても連続浄化を可能とする処理フローを開発した。(国内関係会社)
1 鹿島道路㈱
舗装に関する新技術の開発既存技術の適用性拡大のため、ヒートスティック工法を用いた薄層凍結抑制舗装を開発し、実路において、凍結抑制効果と共用性を確認した。また、生産性向上を目指しICT(情報通信技術)を活用した「i-Pavement(舗装)対応技術」等について、引続き研究開発を進めている。加えて、重機災害防止に向け、人や障害物を感知すると自動的にブレーキが作動する舗装用重機自動ブレーキアシスト装置を開発し、良好な試験結果を得た。
2 ケミカルグラウト㈱
高強度耐久グラウトの開発地震による液状化現象対策の一つとして薬液注入工法が有効である。薬液注入工法でレベル2地震動による液状化現象を抑止することを目指し、 耐久グラウト「エコリヨン※」を従来強度(qu=50~100kN/㎡(*3))の2倍程度となる高強度配合を開発した。この高強度配合を用いて模擬地盤に実物大の薬液注入を行い、従来と同等の施工方法によっても目標とする高強度の改良体を造成できることを確認した。今後、地震動の大きさに応じた対策工法として、従来の薬液注入による低強度改良と高圧噴射撹拌工法による高強度改良に加えて、その中間領域への適用を提案していく方針である。
*3:qu:室内試験で土のせん断強さを求める方法の一つである一軸圧縮試験から得られる圧縮強さ。土に対して水平方向から力を加えない状態で鉛直方向に圧縮したときに抵抗する最大値の応力。
(開発事業等及び海外関係会社)
研究開発活動は特段行われていない。(注) 工法等に「※」が付されているものは、当社及び関係会社の登録商標である。
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ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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