有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100COXH
シンバイオ製薬株式会社 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2017年12月期)
当事業年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、以下のとおりであります。また、現在の当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に大きな影響を及ぼす提携による収益及び研究開発費について記載しております。
なお、文中における将来に関する事項は、本報告書提出日現在において判断したものであります。
(1) 財政状態の分析
当事業年度末における総資産は、商品及び製品が89,789千円、ソフトウエアが23,598千円、敷金及び保証金が20,585千円それぞれ増加した一方、現金及び預金が2,772,266千円、立替金が47,705千円、工具、器具及び備品(純額)24,806千円それぞれ減少したこと等により、前事業年度末に比べ2,626,100千円減少し、4,252,284千円となりました。負債の部については、社債が450,000千円、未払金が221,642千円それぞれ減少した一方、買掛金が282,522千円、未払法人税等が18,226千円それぞれ増加したこと等により、前事業年度末に比べ380,632千円減少の1,012,882千円となりました。純資産の部については、資本金が813,378千円、資本準備金が813,378千円、新株予約権が105,637千円増加した一方、当期純損失の計上により利益剰余金が3,977,862千円減少したこと等により、前事業年度末に比べ2,245,468千円減少の3,239,402千円となりました。この結果、自己資本比率は63.6%と前事業年度末に比べ9.9ポイント減少しました。
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、新株の発行により資金が増加したものの、税引前当期純損失の計上等により、前事業年度末に比べ2,772,266千円減少の2,947,059千円となりました。
(2) 経営成績の分析
当事業年度の売上高は、トレアキシン®の国内向けの製品販売等により、3,444,206千円となりました。製品売上が前年同期比61.1%増加したことから、売上高全体で前年同期比45.4%増加となりました。一方、販売費及び一般管理費は、トレアキシン®、リゴセルチブの注射剤及び経口剤、SyB P-1501の臨床試験の費用が発生したことに加え、トレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI製剤)の導入費用が発生したことにから、研究開発費として3,017,812千円(前年同期比81.0%増)を、その他の販売費及び一般管理費として1,960,514千円(前年同期比43.7%増)を計上したことから、合計で4,978,327千円(前年同期比64.2%増)となりました。
これらの結果、当事業年度の営業損失は3,947,061千円(前年同期は営業損失2,127,049千円)となりました。また、受取利息3,092千円、保険配当金を1,339千円を主とする営業外収益4,506千円を計上した一方、株式交付費14,477千円、為替差損10,421千円、支払手数料9,090千円を主とする営業外費用34,229千円を計上したことにより、経常損失は3,976,784千円(前年同期は経常損失2,316,806千円)、当期純損失は3,977,862千円(前年同期は当期純損失2,313,233千円)となりました。
① 国内
[抗がん剤 SyB L-0501(凍結乾燥注射剤) / SyB L-1701(RTD製剤) / SyB L-1702(RI製剤) / SyB C-0501(経口剤)(一般名:ベンダムスチン塩酸塩、製品名:トレアキシン®)]トレアキシン®については、再発・難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫(2010年10月に製造販売承認を取得)に加え、2016年12月に製造販売承認を受けた未治療(初回治療)の低悪性度非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫並びに2016年8月に製造販売承認を受けた慢性リンパ性白血病を適応症として、業務提携先のエーザイ株式会社(以下「エーザイ」という)を通じ、国内販売を行っています。これらの適応症拡大を受けて薬価ベースの売上は対前年比プラス60.9%と大きく伸長し、それに伴って当社からエーザイへの製品売上についても前年比62.7%増と大幅に伸びました。
本剤については、既に承認を取得した上記の3つの適応症に加え、引き続き新しい治療方法を必要としている患者さんのために、さらに製品価値の最大化を図るべく4つ目の適応症である再発・難治性の中高悪性度非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)の承認取得に取り組んでいます。本適応症については、既に第Ⅱ相臨床試験を終了し、医療ニーズが高いことを受け、医薬品医療機器総合機構との協議を経て、2017年8月に適応症追加に向けた第Ⅲ相臨床試験を開始し、2018年1月に最初の患者登録を完了しています。
以上の追加適応症の拡大に関する従来の取組みに加え、トレアキシン®の製品ライフサイクル・マネジメントをより一層強力に推進すべく、2017年9月にイーグル・ファーマシューティカルズ社(本社:米国ニュージャージー州)との間でトレアキシン®液剤(RTD製剤及びRI製剤(注1))の日本における独占的ライセンス契約を締結しました。これにより患者さんと医療従事者に大きな付加価値を提供し、特許保護を通じてトレアキシン®の製品ライフサイクルを2031年まで延長することが可能となっております。(詳細は、2017年9月21日付開示の「ベンダムスチン液剤(RTD製剤及びRI製剤)に関するライセンス契約締結のお知らせ」に記載しております。)
さらに、経営基盤の強化のためにトレアキシン®を当社事業のより強固な土台とすべく、現在開発・販売中の注射剤に加えて経口剤の開発を推進することにより固形がんや自己免疫疾患に取り組み、さらなる事業拡大を図ってまいります。そのような取り組みの中で、2018年1月に進行性固形がんを対象としてトレアキシン®経口剤の推奨投与量・スケジュール及び忍容性・安全性の検討を行い、がん腫を絞り込むことを目的として、第Ⅰ相臨床試験を開始しました。
(注1) RTD製剤及びRI製剤は、従来の凍結乾燥注射剤(FD)とは異なり既に液化された製剤です。RTD製剤(Ready To Dilute)は調剤作業を大幅に低減し、さらに急速静注であるRI製剤(Rapid Infusion)により点滴時間を従来の60分間から10分間に短縮することにより、FD製剤に比べ患者さんの負担を大幅に軽減し、さらには医療従事者に大きな付加価値を提供することが可能になります。
[抗がん剤 SyB L-1101(注射剤) / SyB C-1101(経口剤)(一般名:Rigosertib Sodium)]
リゴセルチブ注射剤については、導入元であるオンコノバ・セラピューティクス社(本社:米国ペンシルベニア州、以下「オンコノバ社」という)が実施している国際共同第Ⅲ相臨床試験の日本における臨床開発を当社が担当しており、国内では2015年12月に試験が開始され、既に30症例が登録されております。本試験は、現在の標準治療である低メチル化剤による治療において効果が得られない(HMA不応)または治療後に再発した高リスク骨髄異形成症候群(MDS)を対象とし、全世界から20ヶ国以上が参加して実施中です。当社は、国内で2016年7月に最初の患者登録を完了し、現在、症例集積が順調に進行しておりますが、2018年1月に行われた中間解析結果を踏まえ、事前に計画した統計学的な基準に基づき症例数を増加の上で本試験を継続することを決定しております。
リゴセルチブ経口剤については、2015年12月に開始した高リスクMDSを目標効能とした国内第Ⅰ相臨床試験(アザシチジン(注2)との併用試験)において、オンコノバ社からの治験薬の供給遅延により症例登録が進行しておりませんでしたが、今般治験薬の供給が再開されたことにより、同社が米国で実施している初回治療及び再発・難治性の高リスクMDSを対象とした第Ⅱ相臨床試験において追加設定された高用量の安全性を確認するために2017年6月に国内第Ⅰ相臨床試験を新たに開始し、2017年10月に最初の患者登録を完了しました。当社は、同試験で安全性を確認した後、速やかにアザシチジンとの併用試験を開始し、オンコノバ社が計画している初回治療の高リスクMDSを対象としたアザシチジンとの併用による国際共同第Ⅲ相臨床試験に参加することを計画しております。
(注2) アザシチジン(ビダーザ®:販売元 日本新薬株式会社):2011年にMDSに対する第Ⅲ相臨床試験において、初めて生存期間の延長が認められたことから承認された低メチル化剤(注射用)で、現在、造血幹細胞移植が難しいMDS患者に対する第一選択薬として使用されています。MDSは一種の前白血病であり、その病態にはDNAの過剰なメチル化による癌抑制遺伝子の発現の低下が大きく関係していると考えられています。アザシチジンなどの低メチル化剤はDNAのメチル化を阻害する作用により癌抑制遺伝子の発現を回復させ白血病への進行を抑えると考えられています。
[自己疼痛管理用医薬品 SyB P-1501]
当社が、2015年10月にザ・メディシンズ・カンパニー社(本社:米国ニュージャージー州、契約の相手先は同社完全子会社であるインクライン・セラピューティクス社)から導入したSyB P-1501については、入院期間中の短期術後急性疼痛管理を適応対象とした国内第Ⅲ相臨床試験を2016年6月に開始し、2016年11月に最初の患者登録を完了し、その後症例集積が進行しておりました。しかしながら、同社の本製品の事業の継続性について当社が懸念を抱く事実が生じたため、患者さんの利益を最優先する観点から、2017年4月21日より新規症例登録を一時的に中断し、2017年11月30日付にて同社とのライセンス契約を解除しました。
当社はザ・メディシンズ・カンパニー社によるライセンス契約の不履行に起因して生じた損害の賠償として、82百万米ドル(日本円換算で約90億円)の支払を求める仲裁を国際商業会議所の規定に基づき2017年10月11日付で申し立てております。(詳細は、2017年11月13日付開示の「自己疼痛管理用医薬品「SyB P-1501」のライセンサーであるザ・メディシンズ・カンパニーに対する仲裁申し立てについて」及び2017年11月30日付開示「ザ・メディシンズ・カンパニーとのライセンス契約の解約について」に記載しております。)
ライセンス契約の解約に伴い、本製品の開発は2018年2月9日に中止しております。
[新規開発候補品]
当社は常に中長期的な視点に立ち、収益性と成長性を兼ね備えたバイオ製薬企業へと成長を図るため、新薬開発候補品のグローバルのライセンス権利取得に向け探索評価を継続して実施しており、常時、複数のライセンス案件を検討しております。
また、当社は2016年5月に、海外事業展開の戦略的拠点として100%出資の米国子会社 SymBio Pharma USA, Inc(本社:米国カリフォルニア州メンローパーク、以下「シンバイオファーマUSA」という)を設立しました。シンバイオファーマUSAをグローバル事業の拠点として新薬候補品の全世界における権利を積極的に取得することにより、米国、日本、欧州をはじめとする主要市場において開発・商業化を目指して、グローバル・スペシャリティファーマへの転換を進めてまいります。
② 海外
SyB L-0501については、韓国、台湾、シンガポールにおいても販売されており、当社の製品売上は、計画を上回るペースで順調に推移しました。(3) キャッシュ・フロー
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、新株の発行により資金が増加したものの、税引前当期純損失の計上等により、前事業年度末に比べ2,772,266千円減少の2,947,059千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
買掛金282,522千円の増加、株式報酬費用121,205千円の計上、立替金47,705千円の減少、減価償却費29,569千円の計上、為替差損42,195千円等による営業活動資金の増加要因はあったものの、税引前当期純損失3,974,062千円の計上、未払金208,540千円の減少、たな卸資産89,789千円の増加、未収消費税63,674千円の増加等より、全体では3,816,793千円の減少(前年同期は1,960,089千円の減少)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形固定資産の取得による支出10,657千円、無形固定資産の取得による支出46,364千円、敷金及び保証金の差入による支出23,550千円等により、全体では77,507千円の減少(前年同期は43,836千円の減少)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
新株予約権の行使による株式の発行による収入1,146,042千円、新株予約権の発行による収入32,560千円等により、合計で1,164,230千円の増加(前年同期は3,658,177千円の増加)となりました。
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社は、以下における事項が、特に重要な影響を及ぼすと考えています。① 提携による収益について
当社は業務提携先との契約締結にあたり、契約一時金、研究・開発の進捗に応じたマイルストーン及び医薬品上市後の売上等に応じたロイヤリティといった対価を受け入れる契約形態を採用しています。これは、当社単独での医薬品開発には多大な研究開発費が必要であり、かつリスクも高いことから、研究開発費及びリスクを提携先と共同で負担することにより当社の負担を軽減することを目的とするものです。② 研究開発費について
「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載の通り、当社の主たる事業目的は、がん・血液・ペインマネジメントを中心に、空白の治療領域を埋めるために新薬の開発・提供を行うことであり、当社では、開発本部を中心に承認取得に向けた新薬開発業務を行っています。また、第13期事業年度における研究開発費の総額は3,017,812千円と、販売費及び一般管理費の60.6%を占めており、今後も高水準の研究開発費が発生するものと予測しています。
(5) 資金の財源及び資金の流動性について
当社は、新規開発品の導入と、その開発に対して積極的に資金を投下しておりますが、当社は創業間もないベンチャー企業であり、また開発第1号品であるSyB L-0501の販売収益がこれらの資金需要を賄うには未だ十分ではないことから、これらの資金は主に公募増資や第三者割当による新株の発行により調達しています。- 有価証券報告書 抜粋メニュー
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