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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100DB5S

有価証券報告書抜粋 株式会社LTTバイオファーマ 事業の内容 (2018年3月期)


沿革メニュー関係会社の状況

当社グループ(当社及びその他の関係会社)は、医薬品の研究開発・販売を主たる業務としております。なお、関連会社1社は休眠中のため重要性の判断から記載を省略しております。

当社は、聖マリアンナ医科大学発ベンチャーである株式会社エルティーティー研究所(1988年設立)の創薬事業を継承した企業であります。当社の経営理念は、最先端の科学技術を医療に応用し、世界中の人々の健康と命を守ることです。
創設者で初代会長の水島裕は、ドラッグデリバリーシステム(DDS)研究の草分け的存在であり、リポPGE1(パルクス、リプル)を始め、多くの新薬開発を成功に導きました。また、いち早く中国での医薬品ビジネスの将来性を見抜き、1995年に中国政府系病院と共同で北京泰德制药股份有限公司を設立し、リポPGE1を始め多くの新薬を開発しました。2008年に会長を引き継いだ水島徹は、わが国にドラッグ・リポジショニング(DR)を広めた研究者です。現在北京泰德制药股份有限公司の副薫事長として同社の研究所での指導や医薬品開発の支援も行っています。
このような沿革からお分かり頂けますように当社には他のバイオベンチャーにはない、以下に挙げる多くの特徴(財産)を持っています。
①DDSとDRという効率的な創薬手法において、世界をリードするコア技術
②産学官に広がる人的ネットワーク(特に、アカデミアとの繋がり)
③中国有数の製薬企業に成長した北京泰德制药股份有限公司との強い繋がり
④会社の継続実績に基づく信頼と、創薬ノウハウの蓄積(経験豊かな社員・役員)
また、当社はこれまでの創薬の更なる発展を目指すと共に、新たな試みを開始しております。一つは大学や他企業との共同研究により、新たなパイプラインを増やしていくことです。二つ目は北京泰德制药股份有限公司との密接な連携による創薬です。さらに、他企業やアカデミアが持つ候補医薬品を当社がライセンスインし、一緒に開発を進める事業を開始しました。これらの試みは全て、前述の当社の財産を活かしたものであり、当社にしか出来ないものです。
この新しい試みの成果も産まれ始めています。例えば、2018年3月にはノーベルファーマ株式会社との間で共同開発契約を結び、協力してDRに関する医薬品開発を行うことを開始しました。また当事業年度には静岡県立大学との共同研究により新たな既承認薬の効果を発見し、共同で特許を出願しました。北京泰德制药股份有限公司との連携による創薬も進んでおります。今後も当社独自のパイプラインを進展させると共に、これら新しい取り組みにも邁進して参ります。

(1)DDSについて
DDSは、医薬品を必要な場所に、必要な時間、必要な量だけ送達する技術です。この技術によって薬物量や投与回数の軽減が可能になります。つまり薬の効用を高める一方で副作用を軽減することで、患者様の負担を減らすことができます。DDSは、既に臨床で使用されている既承認薬(既に疾患治療薬として承認されている医薬品)を使用しますので、一部の安全性試験などを省略でき、効率的かつ高い成功確率で医薬品を開発できます。また、望ましい薬効がありながら、その副作用や製剤上の理由で開発を断念した薬物をDDSにより実用化することも可能です。このようにDDSにより、新薬開発に要する開発期間の大幅な短縮とコストの削減、開発リスクの低減、及び上市の早期実現が可能になります。
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当社はDDS分野でリーディングカンパニーであると自負しています。当社の開発したDDS製剤・リポPGE1はピーク時の日本での売り上げが500億円を超える医薬品となりました。また当社のその他の関係会社・北京泰德制药股份有限公司は、中国でのリポPGE1の上市に成功し、その売上は300億円を超えています(全医薬品中、売上10位以内)。リポPGE1は脂肪微粒子に封入することによりPGE1の失活を防ぐと共に、疾患部位へターゲッティングするDDS製剤で、脂肪微粒子を使ったDDS製剤としては世界初でした。我々はこの技術を応用し、リポNSAIDなど複数の脂肪微粒子製剤の開発に成功しました。なお、リポNSAIDも北京泰徳製薬の主力医薬品に成長し、その売上は200億円を超えています。

(脂肪微粒子の構造)
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その後も、世界初の新しいDDS技術を開発し、医薬品としての上市を目指して来ました。例えば、当社が現在一番力を入れて開発しているPC-SOD(LT-1001、LT-1002)は、SODというタンパク質にリン脂質を結合させ(レシチン化)、その医薬品としての活性を格段に高めたDDS製剤です。タンパク質のレシチン化技術を持っているのは当社のみであり、この技術は他のタンパク質にも適応可能です。

(SOD(2量体)にリン脂質(phosphatidylcholine)を4分子共有結合させたDDS製剤)
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また、我々が開発したステルス型ナノ粒子も画期的なDDS技術です。これまでのDDS技術は、ターゲッティング(疾患部位に薬物を選択的に送達させる)、あるいは徐放化(薬物を徐々に放出させる)のどちらかだけを狙っていましたが、ステルス型ナノ粒子は、この両方の目的を同時に達成した世界初のDDS製剤です。例えば、この粒子にPGE1を封入したナノ粒子(ナノPGE1、LT-2003)は、血管病変部に集積しそこでPGE1を放出するため、我々が上市したリポPGE1よりも、少ない量と投与回数でもより高い薬効を発揮します。
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(2)DRについて
当社は、DRも推進しています。DRとは、ヒトでの安全性・体内動態が充分に証明されている既承認薬の新しい薬理効果を発見し、その薬を別の疾患治療薬として開発(適応拡大)することです。
DRのメリットは、既に臨床で使われている医薬品なので、ヒトでの安全性や体内動態などがよく分かっており、臨床試験で予想外の副作用や体内動態の問題が発見され開発が失敗する可能性が少ない、即ち医薬品開発の成功確率が高いことです。さらに、既にあるデータ(試験管内での毒性試験、動物での毒性試験やADME試験、第Ⅰ相臨床試験など)を再利用し、開発にかかる時間とコストを削減できることもDRのメリットです。
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既承認薬の適応拡大はこれまでも行われていましたが、臨床の現場でたまたま見つかった効果を基にした適応拡大であったり、製薬企業が自社医薬品の適応を類似疾患へ拡大したりするパターンでした。これに対し当社では、網羅的・体系的・科学的なDRを行っています。具体的には、日本で承認された薬(既承認薬)だけを集めた化合物ライブラリーを独自に構築し、これを用いて様々なスクリーニングを行いDRを進めてきました(COPD、ドライアイ、機能性ディスペプシアなど)。また、このライブラリーを無償で提供し共同でDRを進める共同事業を展開しています。さらに、スクリーニングで得られた既承認薬の薬効をさらに高めるために、あるいは物質特許を得るために当社は、既承認薬をリード化合物として誘導体を合成し、新規物質を創製してきました(LT-3001、LT-3002など)。
臨床での安全性は確認されたものの、薬効不足などにより臨床開発が中断した化合物(お蔵入り新薬)を抱える製薬企業は多く、DRにより新たな薬理効果を発見し別の疾患治療薬として開発することができれば、大きなメリットとなります。当社は大手企業からこのようなDRを受託するビジネスも展開しています。
欧米では、2007年頃からメガファーマが急激にDRへ創薬戦略をシフトし、DRによる成果も次々に産まれています。一方、我が国ではDRへのシフトが遅れていました。しかし、当社の研究成果がマスコミ等で紹介された結果、我が国でもDRが注目されるようになってきました。このように我が国でDRへの関心が急速に高まっている中で、DRのリーディングカンパニーである当社は、その更なる推進を図っています。
(3)北京泰德制药股份有限公司と連携した医薬品開発について
1995年に当社と中国の政府系病院が設立した北京泰德制药股份有限公司は、中国有数の大手製薬企業に成長しました。自社MRが1300人以上在籍し、販売網は中国全域をカバーしており、その販売力には定評があります。また、多くの医薬品の中国での上市に成功しておりその開発力も抜群です。当社は北京泰徳製薬と業務資本提携、並びに包括的支援契約を結び、密接に連携してきました。さらに最近は、北京泰徳製薬の成長を取り込むために、北京泰徳製薬が必要としている薬を当社が研究開発したり、他社の中国での医療ビジネス展開を支援したりする新たなビジネスを開始しました。

(4)パイプラインについて
①脳梗塞、心筋梗塞、ARDS治療薬としてのPC-SOD
PC-SODは、活性酸素(スーパーオキシドアニオン)を生体内で消去する酵素(スーパーオキシドジスムターゼ、SOD)にレシチン誘導体分子を共有結合させた、タンパク医薬の製剤です。多くの病気の根本的な原因となっている活性酸素を効果的に消去するPC-SODは、様々な疾患の治療薬として有望です。実際、特発性肺線維症と潰瘍性大腸炎に関しては、当社が行った臨床試験で有効性が示唆されています。また動物モデルで有効性が示された疾患は、この二つの疾患に加えて、COPD、ドライマウス、脳梗塞、脊髄損傷、熱傷、外傷性脳損傷、移植時傷害、心筋梗塞、強皮症、ARDSなど多岐に渡っています。まず、注射剤(LT-1001)として第Ⅱ相臨床試験まで研究開発を進めましたが、静脈内投与では患者様が長期の入院を余儀なくされるため、通院のみで治療が可能な新しい投与方法(ネブライザーを用いた吸入投与、LT-1002)を考案しました。しかし特発性肺線維症を対象とした臨床試験では、安全性は確認できたものの、有効性を証明することが出来ませんでした。そこで現在では、急性、かつ臨床ニーズが高い疾患を対象に、注射剤での開発を進めています。特に、脳梗塞、心筋梗塞、ARDSに注目しています。この内心筋梗塞に関しては、北京泰徳製薬が中国で第一・二相臨床試験実施の許可を得て既に開始しています。
開発コード:LT-1001(注射剤)、LT-1002(吸入剤)(PC-SOD)
対象疾患:脳梗塞、心筋梗塞、ARDS、潰瘍性大腸炎、特発性肺線維症など
開発ステージ:第Ⅰ相臨床試験終了、一部第Ⅱ相臨床試験終了
知財:物質特許、用途特許、製剤特許

②集積性と徐放性を併せ持つDDSキャリア・ステルス型ナノ粒子
これまでのDDSキャリアは、集積性、あるいは徐放性のどちらかだけを目指したものでしたが、当社はその両者を同時に達成するステルス型ナノ粒子の開発に世界で初めて成功しました。次に記載の③と④はこの技術を利用したものです。

③末梢動脈閉塞症治療薬としてのナノPGE1
当社が開発したリポPGE1は、多くの患者様の治療に貢献してきました。しかし、毎日注射をする必要があり、QOLの点では問題がありました。そこで当社は、集積性と徐放性を併せ持つDDSキャリア・ステルス型ナノ粒子にPGE1を封入したナノPGE1を開発しました。この製剤は、二週間に一回程度の投与で、リポPGE1の毎日投与を上回る効果が期待されています。
開発コード:LT-2002(ナノPGE1)
対象疾患:末梢動脈閉塞症
開発ステージ:基礎研究
知財:製剤特許

④肺高血圧症治療薬としての、ナノPGI2誘導体
現在、肺高血圧症の治療には、PGI2のポンプによる持続投与、あるいはPGI2誘導体の経口投与が行われていますが、前者はQOLの面で、後者は効果の面で問題があります。そこで当社は、集積性と徐放性を併せ持つDDSキャリア・ステルス型ナノ粒子に、PGI2誘導体を封入したナノPGI2誘導体を開発しました。この製剤は血管病変部に集積し、そこでPGI2誘導体を徐放しますので、二週間に一回程度の投与でも、十分な効果を発揮することが期待されます。
開発コード:LT-2003(ナノPGI2誘導体)
対象疾患:肺高血圧症
開発ステージ:基礎研究
知財:製剤特許

※QOL(Quality of Life)とは、生活を物質的な面から量的にのみとらえるのではなく、精神的な豊かさや満足度も含めて、質的にとらえる考え方であります。

⑤胃潰瘍を起こしにくく、かつ速効性に優れた新規NSAID
非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は、解熱鎮痛抗炎症薬として臨床上必要不可欠ですが、胃潰瘍副作用が大きな問題になっています。当社は、既存のNSAIDに比べ,格段に胃潰瘍を起こしにくく、かつより速やかに鎮痛効果を発揮する新規NSAID(LT-3001)を発見しました。
開発コード:LT-3001(新規物質)
対象疾患:炎症性疾患
開発ステージ:非臨床試験実施中
知財:物質特許

⑥長時間作用性の気管支拡張効果と抗炎症効果を併せ持つCOPD治療薬
COPD治療には現在、症状を改善するための長時間作用型気管支拡張薬と、病気の進行を抑制するためのステロイドが使用されています。これに対して当社が発見したLT-3002は、動物実験において、既存の気管支拡張薬よりも長く気管支を拡張するだけでなく、ステロイドよりも強力な抗炎症作用を発揮します。このようにLT-3002はCOPD治療薬として大変有望な新規物質です。
開発コード:LT-3002(新規物質)
対象疾患:COPD
開発ステージ:非臨床試験実施中
知財:物質特許

⑦気管支拡張効果と抗炎症効果を併せ持つCOPD治療薬(既承認薬)
COPD治療には現在、症状を改善するための長時間作用型気管支拡張薬と、病気の進行を抑制するためのステロイドの両者が使用されています。これに対して当社では、既承認薬ライブラリーから、気管支拡張効果と抗炎症効果を併せ持つ既承認薬LT-4001を発見しました。
開発コード:LT-4001(既承認薬)
対象疾患:COPD
開発ステージ:既承認薬のため、非臨床試験は完了
知財:用途特許、製剤特許

⑧新しいメカニズムのドライアイ治療薬
ドライアイに対しては、様々なメカニズムの医薬品が上市・開発されていますが、未だ治療法は確立されていません。現在、涙液の高浸透圧化による傷害から角膜を守る薬がないことに着目し、当社では医薬品を既承認薬ライブラリーから検索し、既承認薬LT-4002を発見しました。また、第Ⅱ相臨床試験を実施し有効性と安全性を確認しました。なお、同様の効果を持つ別の既承認薬LT-4003も発見しています。
開発コード:LT-4002、LT-4003(既承認薬)
対象疾患:ドライアイ
開発ステージ:第Ⅱ相臨床試験終了
知財:用途特許、製剤特許

⑨胃排出遅延と適応性弛緩不全の両者を改善する、新規機能性ディスペプシア治療薬
機能性ディスペプシア(FD)は、器質的な変化がないにも関わらず胃もたれや胃痛を起こす疾患であり、全人口の15~20%が罹患していると言われていますが、その治療法は確立されていません。FD(胃もたれ)の原因は胃排出遅延と適応性弛緩不全です。当社は動物モデルで胃排出能を回復する医薬品を検索し、既承認薬LT-4005を発見しました。LT-4005は、拘束ストレス依存に低下した適応性弛緩を回復させ、その効果はアコチアミドと同等でした。このようにLT-4005は、FD(胃もたれ)において重要な役割を果たしている胃排出遅延と適応性弛緩不全の両者に有効な薬です。
開発コード:LT-4005(既承認薬)
対象疾患:FD
開発ステージ:既承認薬のため、非臨床試験は完了
知財:用途特許

⑩ストレス性下痢と内臓知覚過敏の両者を改善する、新規IBS治療薬
敏性腸症候群(IBS)は器質的な変化がないにも関わらず排便異常や腸の痛みを起こす疾患であり、全人口の10%以上が罹患していると言われていますが、その治療法は確立されていません。当社は動物モデルで精神ストレス依存の排便、及び幼少期の精神ストレス依存の内臓(腸)知覚過敏を抑制する医薬品を検索し、既承認薬LT-4006を発見しました。このようにLT-4006は、下痢型IBSにおいて重要な役割を果たしているストレス性下痢と内臓知覚過敏の両者に有効な薬です。
開発コード:LT-4006(既承認薬)
対象疾患:下痢型IBS
開発ステージ:既承認薬のため、非臨床試験は完了
知財:用途特許

⑪オートファージー制御薬
オートファジーは細胞が持っている細胞内のタンパク質を分解するための仕組みの一つであり、自食作用とも呼ばれています。最近の基礎研究から、オートファジーを高めたり阻害したりする薬物が、癌や神経変性疾患などに有用であることが分かってきました。そこで当社は、東京大学に既承認薬ライブラリーを提供し、共同でオートファジーを高めたり阻害したりする既承認薬を検索しました。その結果、オートファジーを高める既承認薬(LT-4007、神経変性疾患に有効であると予想される)とオートファジーを阻害する既承認薬(LT-4008、癌に有効であると予想される)を発見し、東京大学と共同で特許を出願しました。
開発コード:LT-4007(既承認薬)、LT-4008(既承認薬)
対象疾患:神経変性疾患、癌
開発ステージ:既承認薬のため、非臨床試験は完了
知財:用途特許


〔事業系統図〕
研究開発に係る事業系統図は次のとおりであります。また、関連会社である株式会社I&L Anti-Aging Managementについては企業活動を休止し、休眠中のため重要性の判断から記載を省略しております。

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(注)北京泰德制药股份有限公司は、その他の関係会社であります。

沿革関係会社の状況


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