有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100D6PD
コニカミノルタ株式会社 研究開発活動 (2018年3月期)
当社グループは、経営理念である「新しい価値の創造」及び「Giving Shape to Ideas」というお客様への約束を掲げ、材料・光学・微細加工・画像の4分野のコア技術に関わる研究開発はもとより、コア技術を高度化し更に複合化・融合化することによるお客様本位の新製品・新技術の開発を進めております。
当連結会計年度においては、中期経営計画「SHINKA2019」に基づいた中期経営戦略基本方針に対応して、「継続的なイノベーション創出」、「技術競争力の実践的強化」の技術戦略の基本方針を定め推進してまいりました。
IoTビジネス領域では、オフィスのITインフラを1つに統合する画期的な企業向けITプラットフォームである「Workplace Hub(ワークプレイス ハブ)」の開発をパートナー企業と実施しております。顧客価値検証を進め、着実に製品化に向けて進捗しております。商業・産業印刷分野では、出力枚数が多く、特に多彩な用紙への対応力と高い生産性が求められるヘビープロダクションプリント領域へ、コニカミノルタ独自のサービス展開と合わせて業容を広げております。さらに、デジタル加飾印刷機メーカーでは業界トップのフランスのMGI社との連携強化により、ラベル・パッケージ業界のデジタル化を加速させる製品ラインアップの拡充を図り、産業印刷分野の強化を推進しております。バイオヘルスケア分野では、米国の遺伝子診断技術をもつAmbry社、創薬支援事業を展開するInvicro社を買収し、当社の保有するタンパク質高感度定量検出技術(HSTT)、Ambry社のグローバルトップレベルの遺伝子診断技術、Invicro社が持つ数値解析技術、バイオマーカー探索技術、画像処理技術、製薬企業への提案力を統合し、新薬開発の飛躍的な生産性向上、そして患者のQOL(Quality of Life)向上、国民が負担する医療費高騰の抑制に貢献してまいります。
また、持続可能な地球・社会の実現をめざし、「環境」をメインテーマとして、省エネルギー、リサイクル可能な環境配慮型製品の開発も進めております。その結果、持続可能な経済を実現させる活動を行う国際NGOのCDP(注1)により最高評価の「気候変動Aリスト」企業として2年連続で認定されました。2050年を見据えた長期環境ビジョン「エコビジョン2050」のもと、新たに「カーボンマイナス」という概念を追加し、より意欲的な目標としました。また、「エコビジョン2050」からのバックキャスティング(注2)により、自社製品のライフサイクル全体におけるCO2排出量について2030年までに2005年度比で60%削減という中間目標を設定し、この目標が、国際的なイニシアチブである「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ(注3)」より、科学的根拠に基づいた目標として承認されました。長年培った多様な環境技術やノウハウを取引先や顧客に提供し、協働で社会全体のCO2排出量削減に努めるとともに、コストダウンや売上貢献といった事業貢献と両立した施策を、ワールドワイドで着実に推進しています。なお、製品ライフサイクルにおけるCO2排出量の2017年度実績は約104万トンで、2050年に2005年度比で80%削減するという長期環境ビジョン「エコビジョン2050」に対して、49.8%削減まで到達しています。
(注1)CDPは、企業や都市の重要な環境情報を測定、開示、管理し、共有するためのグローバルシステムを提供するイギリスの国際的な非営利団体です。
(注2)バックキャスティングは、未来のある時点に目標を設定し、そこから逆算して現在すべきことを考える手法です。
(注3)SBTイニシアチブは、産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑えるための科学的根拠に基づいた温室効果ガスの排出削減目標の達成を推進するために、CDP、国連グローバル・コンパクト、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)の4団体が2015年に共同で設立したものです。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は770億円となりました。そのうち、オフィス事業及びプロフェッショナルプリント事業に係る研究開発費が418億円、ヘルスケア事業に係る研究開発費が50億円、産業用材料・機器事業に係る研究開発費が125億円、バイオヘルスケア分野を含むその他事業及び基礎研究費用が175億円であります。各事業部門別の研究の目的、主要課題及び研究成果は以下のとおりであります。
(1)オフィス事業及びプロフェッショナルプリント事業
オフィス事業及びプロフェッショナルプリント事業においては、主に複合機やデジタル印刷システムの情報機器から資材、各種ソフトウェア、システムソリューションに至るまで幅広く研究開発を実施し、個々のお客様の働き方に合わせたクラウド利用サービス、ワークフローソリューションのご提案を合わせて行っております。
当連結会計年度においては、オフィスユニットでは、モバイル連携を強化し、顧客のワークフロー改善に貢献するA4カラー複合機「bizhub(ビズハブ)C3851」を発売。現行のA3カラー複合機と共通のソリューションプラットフォームを採用することで、印刷管理や認証、メンテナンスや操作性の統一化が可能となり、お客様の業務の利便性と効率化に貢献するとともに、お客様毎に異なる業務の課題に対して幅広く柔軟なソリューションを提供することが可能となりました。A3複合機としては、ハイボリュームオフィスで高いパフォーマンスを発揮するA3モノクロ複合機658eシリーズ5機種と、オフィスの高度な印刷業務を効率化するフラッグシップA3カラー複合機C759シリーズ3機種を発売し、従来機から培ってきた操作性やソリューション連携能力、大量印刷と連続給紙に耐える堅牢性を備え、オフィスの高度な印刷業務の効率化と生産性向上に貢献しております。
プロダクションプリントユニットでは、クラス最高レベルの厚紙対応や長尺印刷などの新機能により用途を拡大し、生産性を向上させたデジタル印刷システム「AccurioPress(アキュリオプレス)C6100」シリーズを開発・商品化いたしました。従来のライトプロダクションプリント(LPP)領域でのユーザーに加えて、生産性と用紙対応力を強化して使用用途を広げ、より多様な印刷を志向するユーザーへの展開拡大を推進しております。また、コニカミノルタの総合力で分光濃度計・測色計と画像処理技術を組み合わせた「IQ-501」を開発・商品化し、「AccurioPress C6100」シリーズにプラスし、デジタル箔押し機やワークフローソフトウェアなどとともに、高い付加価値と生産性を高信頼性で実現するソリューションの提案を印刷企業に対して行っております。
産業印刷ユニットにおいては、従来の捺染印刷(スクリーン印刷)機同様の高い生産性を実現したシングルパス方式インクジェットテキスタイルプリンター「ナッセンジャー SP-1」を拡販し、お客様の業容拡大に貢献しました。さらに、B2サイズの両面印刷を可能にした商業印刷用インクジェットプリンター「AccurioJet(アキュリオジェット)KM-1」は、その画質の良さが高い評価を受け、拡販を続けています。プリントヘッドとインクジェット出力に最適なインク、さらにプリンターの“三位一体”の開発・展開を最大の特長として、拡大し続ける様々なアプリケーション(出力用途)への対応や、各市場からの高画質・高生産性ニーズに対応する研究開発を強化・推進しております。
環境性能面では、再生プラスチックの採用拡大や、業界トップクラスのスリープ待機電力0.5Wを実現しTEC値(注1)を従来機から大幅に削減、加えてCO2排出量の大幅な削減等、環境負荷低減に成功し、お客様のTCO(トータル・コスト・オブ・オーナーシップ)削減にも効果的な製品開発を推進しています。
また「エコビジョン2050」達成に向けて、製品開発活動において省エネ技術、軽量化技術、石油由来資源削減技術、高耐久化技術等を開発してまいりました。2018年1月に上市したA3カラー複合機「bizhub C759 / C659 / C759 Premium」(3機種合わせて、以下「bizhub C759」シリーズ)では、省電力性能を強化し、国際エナジースタープログラムVer.2.0のTEC値基準を大幅にクリアしたうえ、従来機よりもさらに約12-20%の電力削減を実現しました。スリープモード時にCPUの電源をオフにすることで消費電力を従来機の半分となる0.5Wまで低減し、CO2排出量の削減にも貢献しています。また、コニカミノルタ独自のケミカルプロセッシング技術をさらに進化させ、PCR比率(注2)を約70%まで増加させた再生PC/PETを採用しました。これにより、この再生素材の使用量は、本体で使用している総樹脂量の重量比で約30%、表面積比では約64%まで高まりました。再生素材の積極的な採用で資源の有効活用に貢献し企業の環境保全を推進します。
デザイン面では、「bizhub C759」シリーズにおいても「bizhub」シリーズの統一デザインコンセプトである「INFO-Palette(インフォ パレット)」を共通に展開し、シリーズ全体での高い操作性を継承しています。操作パネルを従来から大型化することで、さらなる見やすさ、使いやすさの向上に努めています。A4カラー複合機「bizhub C3851」はA3カラー複合機と共通のファームウェアを採用し、小型操作パネルにおける操作性を統一できました。これにより機種が混在するオフィスにおいてもさらなる利便性と効率化の向上を可能にしています。
ユニバーサルデザインの観点においても、モバイル端末から複合機の遠隔操作や操作パネルのカラーユニバーサルデザインなどのソフト面と、給紙カセットの上下アクセス可能などのハード面の取り組みを従来から継続し、オフィスで働く様々なユーザーに配慮しています。また、モバイル端末から複合機にデータを入出力するアプリケーション「KONICA MINOLTA MobilePrint」はデザインをリニューアルし、モバイルアプリケーションに求められる軽快で明快なUI(ユーザーインターフェース)を提供し、クラウドと連携したプリント、データスキャン操作を高いユーザビリティで実現しています。また、プロダクションプリンターのフラッグシップマシンである「AccurioPress C6100 / C6085」においては、シリーズ統一デザインコンセプトである「Grid & Solid(グリッドアンドソリッド)」を共通に展開し、商業・産業印刷機シリーズ全体での高いブランド性を継承しています。高品位で力強く、安心して使える製品をデザインすることに加え、商業・産業印刷領域でブランドを強固にし、よりマシンの顧客満足度を高めるよう努めております。いずれの製品も、高い操作性や合理的で無駄のない外観形状が高く評価されております。
アプリケーション面においても、UIを共通展開し、操作性の共通化を図っています。クラウド色管理システム「AccurioPro(アキュリオプロ)Cloud Eye」でのインターフェース上の印刷機色再現状態確認を、より簡便でより明確に、「AccurioPro Conductor」では、複数の印刷機を一元管理し、各オペレーションを自動化することで、作業効率の向上、分散印刷処理を可能とし、生産性、印刷稼働率の向上を行っています。
(注1)TEC値とは「Typical Electricity Consumption」の略で、財団法人省エネルギーセンターの「国際エネルギースタープログラム」に適合するための基準となる値です。
(注2)PCR(post-consumer recycling)比率:再生素材中で使用される市中回収材料の割合です。
(2)ヘルスケア事業
ヘルスケア事業においては、デジタルX線撮影装置「AeroDR(エアロディーアール)」のラインナップ拡充や電子カルテ、情報システムと連携した医療機関のIT化を図るシステムソリューションビジネスの強化に加え、超音波画像診断装置のシリーズ拡充等により、大規模病院と地域の診療所等との医療連携、地域連携の実現やヘルスケア事業の中長期的拡大を図る研究開発を実施しております。
当連結会計年度においては、ヘルスケアユニットでは、2011年の発売以来多くの医療現場で高い評価をいただいておりますワイヤレスタイプカセッテ型DR「AeroDR」シリーズのフラッグシップモデルである「AeroDR fine」にフルサイズ(17×17インチ)モデルと四切(10×12インチ)モデルを追加ラインアップいたしました。「AeroDR fine」は、センサーパネルの画素サイズ100μmを実現することで、世界最高レベルの解像度を達成しており、従来の半切(14×17インチ)モデルに加え、立位・臥位専用機や救急ポータブル撮影に最適なフルサイズモデルと、整形・小児領域における利便性向上が期待できる四切モデルの追加により、より幅広い使用シーンでのご利用が可能となりました。また、新たに開発した画像処理エンジン「REALISM(リアリズム)」を組み合わせることで、黒つぶれや白とび等の課題を抑制し、より立体的で奥行き感に優れた高画質化を実現、診断精度の向上に寄与いたしました。「AeroDR fine」の高度な軽量・堅牢・ハンドリング性と高画質性能とを両立させたデザインは多くのご評価をいただき、2017年度グッドデザイン賞を受賞いたしました。また、今後は「AeroDR」システムを活用した動態解析技術(連続画像から肺換気や血流動態に関する情報を取得する技術)の開発に注力し、単なるモノ売りから付加価値を提供する事業へと、その軸足を変えていきます。
超音波画像診断装置では、コンパクトサイズでありながらワンクラス上の画像性能を実現する超音波画像診断装置「SONIMAGE(ソニマージュ) MX1」、「SNiBLE(スナイブル) yb」(以下「SONIMAGE MX1」シリーズ)を発売いたしました。「SONIMAGE MX1」シリーズは、整形外科領域で高いシェアを占め、麻酔領域でも高い評価を得ている2014年発売の「SONIMAGE HS1」シリーズのテクノロジーを継承し、さらに超音波の音響ノイズを抑制して伝達効率を向上させる新技術「Dual Sonic(デュアルソニック)」により軽量・コンパクトでありながらも高精細な画像表示を実現しました。超音波診断措置を手軽に持ち運べることで、場所を選ばない的確な診療をサポートいたします。また、シーメンスヘルスケア株式会社から国内経腟超音波事業を譲受し、日本国内向け経腟用超音波画像診断装置「SONOVISTA(ソノビスタ) FX premium edition」の販売を開始いたしました。本診断装置の販売はウーマンズヘルスケア分野への事業展開を加速するための足がかりの一つと考えており、Ambry社、Invicro社買収によるプレシジョン・メディシン戦略とも融合することで、患者のQOL向上に貢献していきます。
医療ITユニットでは、「連携BOXサービス」や「遠隔読影支援サービス」等の機能を有するクラウド型サービスプラットフォーム「infomity(インフォミティ)」、及び独自の画像処理機能による画像診断・管理をサポートする医用画像管理システム「NEOVISTA I-PACS(ネオビスタ アイパックス)」シリーズの機能向上開発を継続的に行いました。また、パナソニック ヘルスケア株式会社から、PACS(医療用画像保管・転送システム)を中核とした病院及びクリニック向けソリューション事業を展開するパナソニック メディカルソリューションズ株式会社の株式を譲受し、コニカミノルタメディカルソリューションズ株式会社として事業活動を開始いたしました。これにより次世代ITソリューション事業の国内展開拡大を加速し、医療IT市場でのプレゼンスを高めるとともに、画像診断機器とITとを組み合わせたソリューション提供による一層の診療の質向上と効率化に貢献していきます。
(3)産業用材料・機器事業
材料・コンポーネント分野における機能材料ユニットおいては、液晶画面の基幹部材となる偏光板用保護フィルムにおいて耐水型新VA-TACフィルムを開発・販売しました。TACに加えて、新樹脂をプラットフォームにした幅広い要求に応えられる商品で事業拡大を推進しております。また有機ELディスプレイ向けには円偏光反射防止フィルム、インクジェット部材、有機EL素材等を組み合わせた顧客価値提供に向けた提案取り組みを展開しております。当連結会計年度においては、ディスプレイ分野で最大の学会であるSociety for Information Display(SID)が主催する国際学会にて当社の電極補助材料について発表を行い、IDW '17 Best Paper Awardを受賞いたしました。
光学コンポーネントユニットにおいては、長年培ってきたコンポーネント技術やユニット技術を活用した、車載関連・光通信関連などの製品化に注力し、新規事業の立上げに取り組んでおります。
産業用光学システム分野における計測機器ユニットにおいては、ディスプレイ・光源色測定におけるトップメーカーとして、高品質な製品を提供してまいりました。当連結会計年度においては、有機ELなど進化し続けるディスプレイの測定ニーズに対応したカラーアナライザー「CA-410」を発売いたしました。ドイツのInstrument Systems社からはイメージング色彩輝度計LumiTop2700を発表し、アメリカのRadiant社からはイメージング色彩輝度計PrometricシリーズのAR/VR評価用新レンズの発売を行い、主たる測定分野において、さらなる製品拡充を図りました。
また、世の中でニーズが高まっている安全運転支援システムやその実現の為にキーとなる構成製品の開発も行っております。安全運転支援システムの実現に欠かせない主要構成部品の一つとして、車のフロントガラスに三次元で運転手に必要な情報を表示できる全く新しい3D AR HUD(三次元拡張現実ヘッドアップディスプレイ)を開発しておりますが、車載対応の為のさらなる高性能化・高品質化を実現すべく他社との共同開発体制も開始し開発を加速させております。こうした製品やシステムにより、車に限らず、あらゆる移動体での安全運転支援ソリューションの提供を目指してまいります。
当連結会計年度においては、中期経営計画「SHINKA2019」に基づいた中期経営戦略基本方針に対応して、「継続的なイノベーション創出」、「技術競争力の実践的強化」の技術戦略の基本方針を定め推進してまいりました。
IoTビジネス領域では、オフィスのITインフラを1つに統合する画期的な企業向けITプラットフォームである「Workplace Hub(ワークプレイス ハブ)」の開発をパートナー企業と実施しております。顧客価値検証を進め、着実に製品化に向けて進捗しております。商業・産業印刷分野では、出力枚数が多く、特に多彩な用紙への対応力と高い生産性が求められるヘビープロダクションプリント領域へ、コニカミノルタ独自のサービス展開と合わせて業容を広げております。さらに、デジタル加飾印刷機メーカーでは業界トップのフランスのMGI社との連携強化により、ラベル・パッケージ業界のデジタル化を加速させる製品ラインアップの拡充を図り、産業印刷分野の強化を推進しております。バイオヘルスケア分野では、米国の遺伝子診断技術をもつAmbry社、創薬支援事業を展開するInvicro社を買収し、当社の保有するタンパク質高感度定量検出技術(HSTT)、Ambry社のグローバルトップレベルの遺伝子診断技術、Invicro社が持つ数値解析技術、バイオマーカー探索技術、画像処理技術、製薬企業への提案力を統合し、新薬開発の飛躍的な生産性向上、そして患者のQOL(Quality of Life)向上、国民が負担する医療費高騰の抑制に貢献してまいります。
また、持続可能な地球・社会の実現をめざし、「環境」をメインテーマとして、省エネルギー、リサイクル可能な環境配慮型製品の開発も進めております。その結果、持続可能な経済を実現させる活動を行う国際NGOのCDP(注1)により最高評価の「気候変動Aリスト」企業として2年連続で認定されました。2050年を見据えた長期環境ビジョン「エコビジョン2050」のもと、新たに「カーボンマイナス」という概念を追加し、より意欲的な目標としました。また、「エコビジョン2050」からのバックキャスティング(注2)により、自社製品のライフサイクル全体におけるCO2排出量について2030年までに2005年度比で60%削減という中間目標を設定し、この目標が、国際的なイニシアチブである「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ(注3)」より、科学的根拠に基づいた目標として承認されました。長年培った多様な環境技術やノウハウを取引先や顧客に提供し、協働で社会全体のCO2排出量削減に努めるとともに、コストダウンや売上貢献といった事業貢献と両立した施策を、ワールドワイドで着実に推進しています。なお、製品ライフサイクルにおけるCO2排出量の2017年度実績は約104万トンで、2050年に2005年度比で80%削減するという長期環境ビジョン「エコビジョン2050」に対して、49.8%削減まで到達しています。
(注1)CDPは、企業や都市の重要な環境情報を測定、開示、管理し、共有するためのグローバルシステムを提供するイギリスの国際的な非営利団体です。
(注2)バックキャスティングは、未来のある時点に目標を設定し、そこから逆算して現在すべきことを考える手法です。
(注3)SBTイニシアチブは、産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑えるための科学的根拠に基づいた温室効果ガスの排出削減目標の達成を推進するために、CDP、国連グローバル・コンパクト、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)の4団体が2015年に共同で設立したものです。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は770億円となりました。そのうち、オフィス事業及びプロフェッショナルプリント事業に係る研究開発費が418億円、ヘルスケア事業に係る研究開発費が50億円、産業用材料・機器事業に係る研究開発費が125億円、バイオヘルスケア分野を含むその他事業及び基礎研究費用が175億円であります。各事業部門別の研究の目的、主要課題及び研究成果は以下のとおりであります。
(1)オフィス事業及びプロフェッショナルプリント事業
オフィス事業及びプロフェッショナルプリント事業においては、主に複合機やデジタル印刷システムの情報機器から資材、各種ソフトウェア、システムソリューションに至るまで幅広く研究開発を実施し、個々のお客様の働き方に合わせたクラウド利用サービス、ワークフローソリューションのご提案を合わせて行っております。
当連結会計年度においては、オフィスユニットでは、モバイル連携を強化し、顧客のワークフロー改善に貢献するA4カラー複合機「bizhub(ビズハブ)C3851」を発売。現行のA3カラー複合機と共通のソリューションプラットフォームを採用することで、印刷管理や認証、メンテナンスや操作性の統一化が可能となり、お客様の業務の利便性と効率化に貢献するとともに、お客様毎に異なる業務の課題に対して幅広く柔軟なソリューションを提供することが可能となりました。A3複合機としては、ハイボリュームオフィスで高いパフォーマンスを発揮するA3モノクロ複合機658eシリーズ5機種と、オフィスの高度な印刷業務を効率化するフラッグシップA3カラー複合機C759シリーズ3機種を発売し、従来機から培ってきた操作性やソリューション連携能力、大量印刷と連続給紙に耐える堅牢性を備え、オフィスの高度な印刷業務の効率化と生産性向上に貢献しております。
プロダクションプリントユニットでは、クラス最高レベルの厚紙対応や長尺印刷などの新機能により用途を拡大し、生産性を向上させたデジタル印刷システム「AccurioPress(アキュリオプレス)C6100」シリーズを開発・商品化いたしました。従来のライトプロダクションプリント(LPP)領域でのユーザーに加えて、生産性と用紙対応力を強化して使用用途を広げ、より多様な印刷を志向するユーザーへの展開拡大を推進しております。また、コニカミノルタの総合力で分光濃度計・測色計と画像処理技術を組み合わせた「IQ-501」を開発・商品化し、「AccurioPress C6100」シリーズにプラスし、デジタル箔押し機やワークフローソフトウェアなどとともに、高い付加価値と生産性を高信頼性で実現するソリューションの提案を印刷企業に対して行っております。
産業印刷ユニットにおいては、従来の捺染印刷(スクリーン印刷)機同様の高い生産性を実現したシングルパス方式インクジェットテキスタイルプリンター「ナッセンジャー SP-1」を拡販し、お客様の業容拡大に貢献しました。さらに、B2サイズの両面印刷を可能にした商業印刷用インクジェットプリンター「AccurioJet(アキュリオジェット)KM-1」は、その画質の良さが高い評価を受け、拡販を続けています。プリントヘッドとインクジェット出力に最適なインク、さらにプリンターの“三位一体”の開発・展開を最大の特長として、拡大し続ける様々なアプリケーション(出力用途)への対応や、各市場からの高画質・高生産性ニーズに対応する研究開発を強化・推進しております。
環境性能面では、再生プラスチックの採用拡大や、業界トップクラスのスリープ待機電力0.5Wを実現しTEC値(注1)を従来機から大幅に削減、加えてCO2排出量の大幅な削減等、環境負荷低減に成功し、お客様のTCO(トータル・コスト・オブ・オーナーシップ)削減にも効果的な製品開発を推進しています。
また「エコビジョン2050」達成に向けて、製品開発活動において省エネ技術、軽量化技術、石油由来資源削減技術、高耐久化技術等を開発してまいりました。2018年1月に上市したA3カラー複合機「bizhub C759 / C659 / C759 Premium」(3機種合わせて、以下「bizhub C759」シリーズ)では、省電力性能を強化し、国際エナジースタープログラムVer.2.0のTEC値基準を大幅にクリアしたうえ、従来機よりもさらに約12-20%の電力削減を実現しました。スリープモード時にCPUの電源をオフにすることで消費電力を従来機の半分となる0.5Wまで低減し、CO2排出量の削減にも貢献しています。また、コニカミノルタ独自のケミカルプロセッシング技術をさらに進化させ、PCR比率(注2)を約70%まで増加させた再生PC/PETを採用しました。これにより、この再生素材の使用量は、本体で使用している総樹脂量の重量比で約30%、表面積比では約64%まで高まりました。再生素材の積極的な採用で資源の有効活用に貢献し企業の環境保全を推進します。
デザイン面では、「bizhub C759」シリーズにおいても「bizhub」シリーズの統一デザインコンセプトである「INFO-Palette(インフォ パレット)」を共通に展開し、シリーズ全体での高い操作性を継承しています。操作パネルを従来から大型化することで、さらなる見やすさ、使いやすさの向上に努めています。A4カラー複合機「bizhub C3851」はA3カラー複合機と共通のファームウェアを採用し、小型操作パネルにおける操作性を統一できました。これにより機種が混在するオフィスにおいてもさらなる利便性と効率化の向上を可能にしています。
ユニバーサルデザインの観点においても、モバイル端末から複合機の遠隔操作や操作パネルのカラーユニバーサルデザインなどのソフト面と、給紙カセットの上下アクセス可能などのハード面の取り組みを従来から継続し、オフィスで働く様々なユーザーに配慮しています。また、モバイル端末から複合機にデータを入出力するアプリケーション「KONICA MINOLTA MobilePrint」はデザインをリニューアルし、モバイルアプリケーションに求められる軽快で明快なUI(ユーザーインターフェース)を提供し、クラウドと連携したプリント、データスキャン操作を高いユーザビリティで実現しています。また、プロダクションプリンターのフラッグシップマシンである「AccurioPress C6100 / C6085」においては、シリーズ統一デザインコンセプトである「Grid & Solid(グリッドアンドソリッド)」を共通に展開し、商業・産業印刷機シリーズ全体での高いブランド性を継承しています。高品位で力強く、安心して使える製品をデザインすることに加え、商業・産業印刷領域でブランドを強固にし、よりマシンの顧客満足度を高めるよう努めております。いずれの製品も、高い操作性や合理的で無駄のない外観形状が高く評価されております。
アプリケーション面においても、UIを共通展開し、操作性の共通化を図っています。クラウド色管理システム「AccurioPro(アキュリオプロ)Cloud Eye」でのインターフェース上の印刷機色再現状態確認を、より簡便でより明確に、「AccurioPro Conductor」では、複数の印刷機を一元管理し、各オペレーションを自動化することで、作業効率の向上、分散印刷処理を可能とし、生産性、印刷稼働率の向上を行っています。
(注1)TEC値とは「Typical Electricity Consumption」の略で、財団法人省エネルギーセンターの「国際エネルギースタープログラム」に適合するための基準となる値です。
(注2)PCR(post-consumer recycling)比率:再生素材中で使用される市中回収材料の割合です。
(2)ヘルスケア事業
ヘルスケア事業においては、デジタルX線撮影装置「AeroDR(エアロディーアール)」のラインナップ拡充や電子カルテ、情報システムと連携した医療機関のIT化を図るシステムソリューションビジネスの強化に加え、超音波画像診断装置のシリーズ拡充等により、大規模病院と地域の診療所等との医療連携、地域連携の実現やヘルスケア事業の中長期的拡大を図る研究開発を実施しております。
当連結会計年度においては、ヘルスケアユニットでは、2011年の発売以来多くの医療現場で高い評価をいただいておりますワイヤレスタイプカセッテ型DR「AeroDR」シリーズのフラッグシップモデルである「AeroDR fine」にフルサイズ(17×17インチ)モデルと四切(10×12インチ)モデルを追加ラインアップいたしました。「AeroDR fine」は、センサーパネルの画素サイズ100μmを実現することで、世界最高レベルの解像度を達成しており、従来の半切(14×17インチ)モデルに加え、立位・臥位専用機や救急ポータブル撮影に最適なフルサイズモデルと、整形・小児領域における利便性向上が期待できる四切モデルの追加により、より幅広い使用シーンでのご利用が可能となりました。また、新たに開発した画像処理エンジン「REALISM(リアリズム)」を組み合わせることで、黒つぶれや白とび等の課題を抑制し、より立体的で奥行き感に優れた高画質化を実現、診断精度の向上に寄与いたしました。「AeroDR fine」の高度な軽量・堅牢・ハンドリング性と高画質性能とを両立させたデザインは多くのご評価をいただき、2017年度グッドデザイン賞を受賞いたしました。また、今後は「AeroDR」システムを活用した動態解析技術(連続画像から肺換気や血流動態に関する情報を取得する技術)の開発に注力し、単なるモノ売りから付加価値を提供する事業へと、その軸足を変えていきます。
超音波画像診断装置では、コンパクトサイズでありながらワンクラス上の画像性能を実現する超音波画像診断装置「SONIMAGE(ソニマージュ) MX1」、「SNiBLE(スナイブル) yb」(以下「SONIMAGE MX1」シリーズ)を発売いたしました。「SONIMAGE MX1」シリーズは、整形外科領域で高いシェアを占め、麻酔領域でも高い評価を得ている2014年発売の「SONIMAGE HS1」シリーズのテクノロジーを継承し、さらに超音波の音響ノイズを抑制して伝達効率を向上させる新技術「Dual Sonic(デュアルソニック)」により軽量・コンパクトでありながらも高精細な画像表示を実現しました。超音波診断措置を手軽に持ち運べることで、場所を選ばない的確な診療をサポートいたします。また、シーメンスヘルスケア株式会社から国内経腟超音波事業を譲受し、日本国内向け経腟用超音波画像診断装置「SONOVISTA(ソノビスタ) FX premium edition」の販売を開始いたしました。本診断装置の販売はウーマンズヘルスケア分野への事業展開を加速するための足がかりの一つと考えており、Ambry社、Invicro社買収によるプレシジョン・メディシン戦略とも融合することで、患者のQOL向上に貢献していきます。
医療ITユニットでは、「連携BOXサービス」や「遠隔読影支援サービス」等の機能を有するクラウド型サービスプラットフォーム「infomity(インフォミティ)」、及び独自の画像処理機能による画像診断・管理をサポートする医用画像管理システム「NEOVISTA I-PACS(ネオビスタ アイパックス)」シリーズの機能向上開発を継続的に行いました。また、パナソニック ヘルスケア株式会社から、PACS(医療用画像保管・転送システム)を中核とした病院及びクリニック向けソリューション事業を展開するパナソニック メディカルソリューションズ株式会社の株式を譲受し、コニカミノルタメディカルソリューションズ株式会社として事業活動を開始いたしました。これにより次世代ITソリューション事業の国内展開拡大を加速し、医療IT市場でのプレゼンスを高めるとともに、画像診断機器とITとを組み合わせたソリューション提供による一層の診療の質向上と効率化に貢献していきます。
(3)産業用材料・機器事業
材料・コンポーネント分野における機能材料ユニットおいては、液晶画面の基幹部材となる偏光板用保護フィルムにおいて耐水型新VA-TACフィルムを開発・販売しました。TACに加えて、新樹脂をプラットフォームにした幅広い要求に応えられる商品で事業拡大を推進しております。また有機ELディスプレイ向けには円偏光反射防止フィルム、インクジェット部材、有機EL素材等を組み合わせた顧客価値提供に向けた提案取り組みを展開しております。当連結会計年度においては、ディスプレイ分野で最大の学会であるSociety for Information Display(SID)が主催する国際学会にて当社の電極補助材料について発表を行い、IDW '17 Best Paper Awardを受賞いたしました。
光学コンポーネントユニットにおいては、長年培ってきたコンポーネント技術やユニット技術を活用した、車載関連・光通信関連などの製品化に注力し、新規事業の立上げに取り組んでおります。
産業用光学システム分野における計測機器ユニットにおいては、ディスプレイ・光源色測定におけるトップメーカーとして、高品質な製品を提供してまいりました。当連結会計年度においては、有機ELなど進化し続けるディスプレイの測定ニーズに対応したカラーアナライザー「CA-410」を発売いたしました。ドイツのInstrument Systems社からはイメージング色彩輝度計LumiTop2700を発表し、アメリカのRadiant社からはイメージング色彩輝度計PrometricシリーズのAR/VR評価用新レンズの発売を行い、主たる測定分野において、さらなる製品拡充を図りました。
また、世の中でニーズが高まっている安全運転支援システムやその実現の為にキーとなる構成製品の開発も行っております。安全運転支援システムの実現に欠かせない主要構成部品の一つとして、車のフロントガラスに三次元で運転手に必要な情報を表示できる全く新しい3D AR HUD(三次元拡張現実ヘッドアップディスプレイ)を開発しておりますが、車載対応の為のさらなる高性能化・高品質化を実現すべく他社との共同開発体制も開始し開発を加速させております。こうした製品やシステムにより、車に限らず、あらゆる移動体での安全運転支援ソリューションの提供を目指してまいります。
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ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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