有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100CLSU
株式会社資生堂 研究開発活動 (2017年12月期)
経営上の重要な契約等メニュー財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当社グループは、さまざまな技術の融合により画期的な製品、サービスの提供を行うことで、世界中のお客さまの「美と健康」の実現を目指しています。横浜市のリサーチセンター(グローバルイノベーションセンター)をはじめ、米国、フランス、中国、シンガポールの各拠点において、研究開発を推進しています。海外の研究拠点では、現地でのマーケティングと連携しながら、現地のお客さまの肌や化粧習慣の研究、その地域特性にあった製品開発に取り組んでいます。
当社グループは、1世紀以上も前から、最新の皮膚科学と処方開発技術にもとづいた高品質な製品を開発してきました。その研究開発力は外部から高い評価を受け、2017年も化粧品科学領域で最も権威のある研究発表会である「IFSCC(国際化粧品技術者会連盟)Conference」において最優秀賞を受賞しました。
当社グループは、世界中のお客さまに向けた安全・安心、高品質な商品の創出に向けた技術の積み重ねにより、世界の化粧品業界をリードしていきます。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は24,230百万円(売上高比2.4%)であり、商品カテゴリー別の研究成果は、以下のとおりです。なお、研究開発活動については、特定のセグメントに関連付けられないため、セグメント別の記載は行っていません。
(1) スキンケア
女性がしわを気にせず思い切り笑い、豊かな表情で自分らしくいきいきと輝くことを願い、約30年間に及ぶレチノール研究の基盤技術をもとにエイジングケア研究を進め、レチノールによる「しわを改善する」効能効果の承認を厚生労働省から受けました。レチノールはヒアルロン酸の産生を増加させ、皮膚に柔軟性を与えてしわを改善します。この技術を核に、表情あふれる美しい世界の創造に貢献していく、ブランドを横断した「資生堂 表情プロジェクト」を展開し女性たちを本来の豊かな表情へと解放しさらに輝き続けることを応援しています。「エリクシール」向けにプロジェクト対象の第1弾商品を開発し、さらに「SHISEIDO」向けに、美白効果を併せ持つ第2弾商品を開発しました。また、D-アミノ酸の一種「D-グルタミン酸」によるバリア機能回復ソリューションを「アクアレーベル」へ採用しました。D-アミノ酸は資生堂が高感度な分析方法を開発したことによって研究が飛躍的に進み、肌への有効性が注目されるアミノ酸です。D-グルタミン酸が幼児の肌に多く20代以降急激に減少することを発見し、さらに肌のうるおいを守る角層のバリア機能の回復を促す効果があることを、世界で初めてヒトの肌で実証しています。
(2) メイクアップ
美意識が高く本物の高品質を求める女性は、自分史上最高レベルの美しい肌に出会うことを常に望んでいます。肌そのものを活かして美しく見せる新次元の肌づくりを追求し、ブラー効果による仕上がり技術(半透明のオイルゲル基剤の中で光がランダムに広がり、肌悩みをぼかす効果とつや効果を実現)、スキンケア感覚の使用感をもたらす乳化技術(スキンケアオイルの安定配合、スキンケア処方とファンデーション処方の融合により、なめらかでなじみの良い使用性と肌効果を実現)を「クレ・ド・ポー ボーテ」へ採用し、「類まれなる体験を実現する」ラグジュアリーファンデーションを開発しました。アイシャドウの購入理由1位が目を大きく見せるためである一方で、 約半数の方が現状のアイシャドウでは満足していないことが調査により分かりました。アイシャドウが瞳の色と同化することで自然に瞳を大きく見せられる効果があることから、女性の瞳の色(虹彩色)を計測したところ、同じブラウン系でもその明るさや鮮やかさに個人差があることを発見しました。得られた知見を「マキアージュ」へ応用し、瞳の色の研究から得られた分布に沿って5種のブラウンを配置、開発しました。
(3) ヘアケア
30-40代の女性の主な髪悩みはパサつきで、トリートメントでケアしたいと思っているものの、毎日忙しくてなかなかケアできないというギャップに悩んでいることが分かりました。3ステップのトリートメントの浸透・持続技術(髪の美容成分の通り道(CMC)を広げる、美容成分を深く浸透させる、美容成分を髪内部にとどめて密封する)を「ツバキ」に採用し、忙しい女性でも自宅で手間ひまかけずにサロン帰りのような美しい髪を実現するヘアマスクを開発しました。(4) ヘルスケア
ヘルスケア領域では、美と健康をつなぐ食品や一般用医薬品の研究開発を進めています。食品では、継続して進めているコラーゲン研究の成果を「ザ・コラーゲン」へ応用しました。(5) フロンティアサイエンス
敏感な肌に適用する医科向け化粧品「ドゥーエ」、先進の美容皮膚医療用化粧品「ナビジョン」をはじめ、化粧品・医薬品原料など、化粧品開発技術を応用した商品開発を進めています。
また、ユニークなキラルアミノ酸分析技術を基盤とした産官学連携により、健康分野へ貢献する新しいR&D 領域・ビジネスモデルの創生を目指しています。
(6) プロフェッショナル
ケミカルダメージによる髪の扱いにくさの原因が髪のこわばりにあることに着目し、髪の内部を柔軟成分で満たすとともに髪の表面のダメージを補修しながらこわばりをほぐし柔軟にすることで、軽やかで扱いやすい髪へと導く「フローモーションテクノロジー」をサロン専用製品の「ザ・ヘアケア エアリーフロー」へ採用しました。
その他の活動としては、最先端の皮膚科学研究や美容技術の知見にデジタルテクノロジーを掛けあわせることで、スキンケアのパーソナライゼーションを実現する新しいIOT(Internet of Things)スキンケアシステム「Optune」を開発しました。専用マシンが一人ひとり、その時どきの肌環境に適したセラムとモイスチャライザーを抽出・提供します。2018年春にβ版のテスト販売を開始し、改良・開発を進めたうえで早期の本格導入を目指します。また、スマートフォンでの肌測定と肌の状態に基づくパーソナルな美容アドバイスにより生活者の美肌づくりをサポートするアプリケーションソフト「肌パシャ」を無料公開しました。最適なスキンケアアイテムの提案に加え、具体的な商品カタログページへ繫がる機能も搭載しています。今後も、パーソナライズド・ビューティーの提案に取り組んでいきます。
当社開発の育毛有効成分アデノシンについては、この成分が配合された育毛剤を発売後も、ヒトに対する有効性のエビデンス収集を継続的に進めてきました。その成果が専門学会(日本皮膚科学会)によるガイドラインの改訂においてはより推奨度の高い治療法として再評価され、推奨度C1から推奨度B「行うよう勧められる」に位置づけが変更になりました。また、毛髪再生医療の事業化に向け研究を進めています。共同研究先の東京医科大学と東邦大学大橋病院において、2017年に臨床研究が実施されました(当社は細胞培養加工を担当)。今後、安全性、有効性の解析を進めていく予定です。
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