有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100DFUV
太平電業株式会社 研究開発活動 (2018年3月期)
当社グループの研究開発は、工事施工の能率および安全性の向上を目的とした機械・工具等の開発・改良と、受注領域拡大のための新分野技術の研究・習得を主体として行っております。開発品および開発工法を通じ、社員指導教育も合わせて実施することで社員の専門知識の向上、技術レベルの向上を目指し活動を行っております。
当連結会計年度における各種プラント設備の建設、補修、維持関連の研究開発費はグループ全体で89百万円であり、その主なものは次のとおりであります。なお、当社グループの研究開発活動においては、各セグメントに関連したものが非常に多いため、セグメント別の記載はしておりません。
(1) 強制振動によるカップリング抜取方法
カップリング(軸継手)とは、モータなどの駆動軸と従動軸をつなぎ、動力を伝達する機械要素部品です。モータの点検等でカップリングを取り外す時、カップリング自体をガスバーナー等にて加熱することでカップリングと軸との隙間を作ってから引き抜きます。しかし、カップリングと軸との隙間が十分でない状態でカップリングを無理に引き抜くと、軸やカップリングに傷をつける恐れがあります。
そこで、当社ではカップリングに与えた振動の軸への伝わり方が隙間の発生により変化することに着目し、振動の変化を捉えて適切なタイミングで軸からカップリングを引き抜く工法を開発しました。今年度は、この開発に関連する「焼き嵌め部材の引き抜き方法および装置」で3件の特許を取得しました。火力原子力発電技術協会の会誌「火力原子力発電」に本工法の論文を掲載し、同協会主催の仙台大会で発表・展示を行いました。また、火力発電の建設・保守運用に関連するプラント部品、エンジニアリング技術が集結する「次世代火力発電 EXPO」にモックアップ装置を出展し、本開発をアピールしました。
今後は、現場で実用可能な小型装置の製作を進めていきます。
(2) 原子力タンク内スラッジ収納方法
当社が施工対象としている原子力タンク内には、樹脂塔にてイオン交換された放射性粒状廃樹脂(以下、スラッジ)が堆積しており、この処理方法のひとつに回収したスラッジを遮蔽ドラム缶等の遮蔽容器に収納し、この遮蔽容器を所定の場所に保管する必要があります。
そこで重要なことは、スラッジを遮蔽容器に収納する際に、スラッジに含まれる水分を除去することならびにスラッジの回収、収納工程に至るまでの間に受ける被ばく量を最小限に抑えることです。
今年度は、スラッジの回収と収納、水分除去、網袋への収納それぞれの工程において、出来る限り遠隔で行うための工法を立案し、全作業工程モックアップ試験を実施しました。その結果、工法の成立性確認と1日あたりの回収量を把握することができました。一方、放射線被ばく量については、全作業工程において時間・距離・遮蔽の対策を実施した場合、対策を実施しなかった場合と比較して、約1/11の被ばく低減になると試算しました。
本工法を「遮蔽容器へのスラッジの収納方法」として、特許出願を行いました。
(3) 廃止措置工事に向けた福井工業大学との共同研究
原子力発電設備の廃止措置分野は、今後、廃炉ユニットの数が増えていくのと同時に活発化が予想されます。原子力発電所に常駐する当社の強みは、廃止措置におけるニーズや技術的課題をいち早くつかむことができることです。また、それらの課題が解決できれば、廃止措置工事においても工期短縮や作業効率向上を図ることができます。そこで、原子力発電設備の廃止措置工事に適応可能な技術について、福井工業大学(以下、福井工大)と次の3テーマについて共同研究を行いました。
(1)廃止措置工事に向けた作業の安全性評価 ………補足:ヒューマンエラー分析評価
(2)拭き取り除染技術の改善 …………………………補足:ゲルを用いた除染
(3)遮蔽体(鉛)の効率的解体・減容技術 …………補足:鉛を低融点合金化して切断
今年度の成果は、下記の通りです。(両カッコ番号は、上記テーマに対応)
(1)福井工大が所有するヒューマンエラー分析ソフトが、当社現場作業に適応できるか検討した結果、工事内
容に対してヒューマンエラーの発生率を視覚的(定量的)に表現する方法を提案することができました。
(2)ゲルを作製するための手順を定め、2件の特許出願を行いました。
(3)基礎研究の段階でありますが、錫ビスマス合金を用いた鉛の低融点合金化の方法を確立し、2件の特許出
願を行いました。
今後は、福井工大と上記テーマの共同研究を継続し、廃止措置工事への適応可能な技術の確立を目指します。
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ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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