有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100ICLB (EDINETへの外部リンク)
株式会社ヘリオス 事業の内容 (2019年12月期)
当社は、「『生きる』を増やす。爆発的に。」というミッションの下、幹細胞技術をもって難治性疾患を罹患された方々に治癒と希望を届けるべく、体性幹細胞再生医薬品分野、及びiPS細胞に関連する技術を活用した再生医療等製品(iPSC再生医薬品)の研究・開発・製造を行うiPSC再生医薬品分野において事業を推進しております。
なお、当社の事業セグメントは、医薬品事業のみの単一セグメントであります。
以下の表は、当事業年度末現在の当社の開発品並びにその適応症、市場、開発段階及び進捗状況を示しております。
なお、製品の開発に際しては様々なリスクを伴うため、当社として各製品に関する製造販売承認の取得又はその時期を保証できるものではありません。当社製品の開発リスクの概要については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」のとおりであります。
(注)1.「前臨床試験」、「第Ⅰ相試験」、「第Ⅱ相試験」及び「第Ⅲ相試験」とは、医薬品の製造販売承認を得るために必要となる試験の各段階を示すものであります。
2.条件及び期限付き承認制度に基づく承認を取得する場合は、従来の医薬品のような開発の相(第Ⅰ相、第Ⅱ相、第Ⅲ相)の考え方は適用されません。
(1)体性幹細胞再生医薬品分野
① 概要
体性幹細胞再生医薬品は、生体のさまざまな組織にある幹細胞である「体性幹細胞」を利用して、現在有効な治療法のない疾患等に対する新たな治療法を開発することを目的とする製品です。
なお、体性幹細胞には、神経幹細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞など複数の種類があり、生体のさまざまな組織に存在します。限定された種類の細胞にのみ分化(細胞が特定の機能を持った細胞に成熟することをいいます。)するものや、複数の種類の細胞に分化するものもありますが、iPS細胞等との比較においては、分化する細胞の種類は一般に限られています。
② 体性幹細胞再生医薬品分野のパイプライン(HLCM051)
(ⅰ)日本向け脳梗塞急性期に対する治療法開発
当社は、2016年1月、新規パイプラインとしてHLCM051を導入いたしました。これは、米国Athersys, Inc.(以下、アサシス社といいます。)が特許権・特許実施許諾権を有する幹細胞製品MultiStem®を用いた脳梗塞に対する細胞治療医薬品の開発・販売に関する国内の独占的なライセンス契約を締結したことによるものです。
当該ライセンス契約に基づき、当社はアサシス社に対して、開発段階に応じた開発マイルストンとして最大で合計30百万米ドルを支払います。また、発売後は、アサシス社は当社に製品を供給し、当社はアサシス社に対して、販売額に応じたランニングロイヤルティを支払います。
同製品の販売に関しては、自社あるいはアライアンスによる販売体制の構築の検討を進めています。
本パイプラインの対象疾患である脳梗塞は、脳の血管が詰まることにより、その先に酸素や栄養分が届かなくなり、詰まった先の神経細胞が時間の経過とともに壊死していく病気です。日本の年間発症患者数は23万人~33万人(総務省資料及びDatamonitor等を基に当社推定)、死亡者数は年間約6万2千人(厚生労働省 人口動態統計)と推定され、発症した患者さんの中には死亡を免れても機能障害が残り、寝たきりや日常生活に介護が必要となる場合があることが知られています。
脳梗塞に対しては、脳の血管に詰まった血の塊を溶かす血栓溶解剤t-PAを用いた治療が行われていますが、血栓溶解剤の処方は発症後4時間半以内に限定されており、脳梗塞発症後に治療できる時間がより長い新薬の開発が待たれる疾患領域となっています。アサシス社が創製した幹細胞製品MultiStemは、静脈注射により投与され、脾臓に分布して炎症免疫細胞の活性化を抑制する事により炎症や免疫反応を抑えて神経細胞の損傷を抑制し、神経保護物質を産生して治療効果を発揮すると考えられています。
本製品は、すでにアサシス社によって欧米にて第Ⅱ相試験が行われており、脳梗塞発症後36時間以内の患者さんに対する治療法となりうる可能性が示されております。当社は、この欧米での試験結果を参考とし、脳梗塞発症後18時間から36時間以内の患者さんを対象とした、有効性及び安全性を検討するプラセボ対照二重盲検第Ⅱ/Ⅲ相試験(治験名称:TREASURE試験)を実施しております。2017年11月より被験者への投与が開始され、2019年5月には、40施設強の治験施設全てに治験製品の設置を完了しました。
なお、本治験の情報について、米国国立医学図書館が管理するウェブサイト“ClinicalTrials.gov”に登録・公開をしております。(https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02961504)
(ⅱ)日本向け急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対する治療法開発
当社は2018年5月、アサシス社とのライセンス契約拡大により、同社の創製した幹細胞製品MultiStemを用いたARDSに対する治療法の日本国内における開発・販売権を獲得し、新規に開発を開始いたしました。
当該ライセンス契約に基づき、当社はアサシス社に対して開発段階に応じた開発マイルストンとして最大30百万米ドルを支払います。また発売後は、アサシス社は当社に製品を供給し、当社はアサシス社に対して販売額に応じたランニングロイヤルティを支払います。
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、単一の疾患ではなく、基礎疾患や外傷などによって好中球等の免疫系が過剰に誘発され、炎症を起こすことにより肺が傷害を受け肺水腫となり、その結果、重度の呼吸不全となる症状の総称です。日本国内での年間発症患者数は、調査手法により7千人から12千人程度(日本救急医学会雑誌2007; 18(6): 219-228及びJAMA.2016;315(8):788-800を基に当社推定)とされ、死亡率が30~58%(ARDS診療ガイドライン2016)と、予後が非常に悪い病気です。
ARDSに対する治療として、集中治療室で人工呼吸器を用いた呼吸管理を中心とする全身管理が行われます。ただし、人工呼吸器の使用が長期化すると、患者の予後が悪くなることが知られています。また薬物治療も行われますが、対症療法であり、患者の生命予後を改善する治療薬はありません。そのため、ARDSは非常にアンメットメディカルニーズが高く、新たな治療の選択肢が望まれている疾患と言えます。
当社が開発を進めるARDSに対する新規の細胞治療法は、現在実施中の脳梗塞急性期患者を対象とした臨床試験と同様に、アサシス社が創製した幹細胞製品MultiStemを、ARDSと診断された患者に一定の時間内に静脈投与するものです。MultiStemは、炎症性T細胞を中心とした炎症免疫細胞の活性化を抑制することにより、肺での過剰炎症や毛細血管内皮の損傷を抑制し、肺水腫の状態を改善することで呼吸機能を正常化する効果があると考えられています。その結果、ARDS患者における人工呼吸器の使用期間を減らす、または死亡率を低下させる可能性があると考えられます。
アサシス社は、欧米においてARDS患者に対するMultiStemの安全性と有効性を探索する第Ⅰ/Ⅱ相試験を実施しており、2019年1月には結果速報が発表されました。本試験は統計的に有意差を検出することを目的とはしていませんでしたが、ARDS患者20人に対してMultiStemを、10人に対してプラセボを投与して実施した第Ⅱ相二重盲検試験において、死亡率、投与後28日間の人工呼吸器を使用しなかった日数及び集中治療室での管理を必要としなかった日数などの指標においてMultiStem投与群では改善傾向が見られました。
当社は、2018年10月、日本国内における肺炎を原因疾患とするARDSを適応疾患とした臨床試験の実施につき治験計画届書を提出し、治験段階に入っております。本治験は、非盲検下で標準治療を対照とし、組入症例数は30を予定しており、全国20施設以上の医療機関で治験を実施中です。2019年4月より被験者組み入れを開始しており、同年11月には、当社の開発するHLCM051が、ARDSを対象とした希少疾病用再生医療等製品として厚生労働大臣より指定されました。本治験の情報は米国国立医学図書館が管理するウェブサイト“ClinicalTrials.gov”に登録・公開をしております。(https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03807804)
(2)iPSC再生医薬品分野
① 概要
iPSC再生医薬品は、iPS細胞を分化誘導(細胞を特定の機能を持った細胞、例えば神経細胞・皮膚細胞などに人為的に変化させることをいいます。)して作製した人体と近似の機能を持つ細胞を移植することによって、機能不全に陥った細胞等を置換して機能を回復することを目的とする製品であります。
iPS細胞(人工多能性幹細胞)とは、2006年に国立大学法人京都大学(以下、京都大学といいます。)の山中伸弥教授が世界で初めて作製に成功し、2012年にその功績からノーベル生理学・医学賞を受賞したことで広く知られるようになった、皮膚などの体細胞にいくつかの遺伝子(山中因子)を導入することによって作り出される、様々な組織や臓器の細胞に分化する能力(多能性)と、ほぼ無限に増殖する能力(増殖能)を持った細胞であります。
ヒトの体は約60兆個の細胞からなりますが、それらの細胞は全て元々一つの細胞であった受精卵が細胞分裂を繰り返し、それぞれ臓器・器官等を構成する細胞へと分化したものであります。受精卵が特定の細胞に分化していく流れは一方通行であり、従来の技術では一度分化した細胞を分化する前の細胞に戻すことはできませんでした。ところが、皮膚細胞などの成熟した細胞にいくつかの遺伝子を導入することにより、新たに様々な細胞に分化する能力(多能性)とほぼ無限に増殖する能力(増殖能)を持たせることに成功したものがiPS細胞であります。iPS細胞のような多能性幹細胞は、いずれも自然に特定の細胞に分化していく訳ではないため、特定の細胞に分化を誘導するためにはiPS細胞の作製とは別の技術が必要となります。
加えて、近年、細胞医薬品分野においては、罹患者自身から採取した細胞(自家細胞)由来の幹細胞を用いたもののみならず、安全性が確認された他人の細胞(他家細胞)由来の幹細胞を活用した医薬品などの研究開発が進んでおります。
② iPSC再生医薬品分野のパイプライン(HLCR011、HLCR012、HLCL041、HLCN061)
(ⅰ)日本向け他家iPS細胞由来網膜色素上皮(RPE)細胞による加齢黄斑変性の治療法開発(HLCR011)
当社は、他家iPS細胞を正常な網膜色素上皮細胞(以下、RPE細胞といいます。)に分化誘導し、純化した上で、iPS細胞由来RPE細胞懸濁液という形で罹患者に移植し、加齢黄斑変性の治療を行うiPSC再生医薬品の開発を進めております。
網膜は、光や色を感じる視細胞を含む感覚網膜(神経性網膜)と、RPE細胞と呼ばれる組織から構成されます。RPE細胞は、網膜の外側にある一層の細胞で、感覚網膜への栄養補給や老廃物の分解を担っています。そのため、RPE細胞の機能が低下すると視機能を担う感覚網膜の機能も低下してしまいます。
加齢黄斑変性(AMD:Age-related Macular Degeneration)は、網膜変性疾患の一種であり、網膜の中でも視力を保つために極めて重要な役割を果たす「黄斑部」に障害が生じる病気で、発症すると次第に視力が低下し、見え方に異常が生じるなどの症状が現われます。
加齢黄斑変性は、滲出型(ウェット型)と萎縮型(ドライ型)に大別され、その原因は、黄斑部を支えるRPE細胞が老化等の原因により感覚網膜への栄養補給や老廃物の分解ができなくなってしまうことにあるものとされております。
日本人に多いウェット型は、黄斑部を支えるRPE細胞の機能不全に伴い、RPE細胞内に貯まった老廃物を分解するために、その外周にある脈絡膜から、脈絡膜新生血管と呼ばれる異常な血管が生えてくるのが特徴であります。この血管は正常な血管とは異なり、もろくて透過性が高いため、破れて出血し、又は水がしみだしてしまうため、網膜が浮腫を起こし、黄斑部の機能が阻害され、視力の低下や視野の歪みなどを生じます。
これに対して、欧米人に多いドライ型は、RPE細胞が加齢により萎縮してしまうことにより、網膜に障害が生じて視力が徐々に低下していく病気であります。
加齢黄斑変性の詳しい発症原因は未だ解明されておらず、根本的な治療法も確立しておりません。加齢黄斑変性は、欧米のような先進国では成人の失明原因として最も多く、公益財団法人難病医学研究財団 難病情報センターのホームページの記載によると、日本での推定罹患者数は2007年時点で69万人(但し、罹患者数を正確に把握できないため、2007年に福岡県内の人口約1万人の久山町において行われた調査結果を日本の人口に換算した推定値)と推定されております。
また、米国国立眼病研究所(National Eye Institute)のホームページにおいて公開されている統計データによると、2010年時点で米国において207万人いると推定される加齢黄斑変性の罹患者は、2030年には366万人に増加すると予測されております。
当社は、罹患者自身ではない第三者の細胞から作製され、安全性等に関する基準を満たしたiPS細胞から作製したRPE細胞を含む懸濁液(懸濁液とは、液体中に個体粒子が分散しているものを言います。)を移植し、患部に定着させることにより感覚網膜への栄養補給や老廃物の分解機能を回復させ、視機能を改善させることを目指す、新しい治療法開発を進めております。
この治療法の開発のため、当社は、2013年2月にiPSアカデミアジャパン株式会社との間でRPE細胞を有効成分として含有する細胞製品を対象とする全世界を許諾領域としたiPS細胞樹立基本技術に関する特許実施権許諾契約を締結して非独占的ライセンスを受けるとともに、理化学研究所との間で同年3月にiPS細胞を含む多能性幹細胞由来RPE細胞を有効成分として含有する再生医療製品を対象とする全世界を許諾領域とした特許実施許諾契約を締結して独占的ライセンスを受けております。
また、当社は、かかるRPE細胞製品を用いた加齢黄斑変性の治療法の開発を迅速かつ確実に進めるべく、2013年12月に、大日本住友製薬株式会社(以下、大日本住友製薬といいます。)との間で、日本におけるRPE細胞製品の開発を共同して行うことを合意し、同社との間で①当社の保有する知的財産権の実施許諾に関する実施許諾契約書(サブライセンス契約)、②共同開発を行う上での役割分担や費用負担を定めた共同開発契約書、並びに、③当該製品の製造や販売促進業務を受託する合弁会社の設立と同社への業務委託料等を定めた合弁契約書を締結いたしました。上記合弁契約に基づき、両社共同出資により2014年2月に株式会社サイレジェン(以下、サイレジェンといいます。)を設立、国内における製造等を委託する事に合意しております。
このような共同開発体制のもと製品化に向けた研究・開発を進めてまいりましたが、iPS細胞を用いた治療法の実現には当社と大日本住友製薬のみならず様々なステークホルダーも交えた長期的な開発体制が必要となることから、資源配分の有効性を考慮したうえで共同開発体制の変更が適切であると判断するに至りました。その結果、2019年6月、今後は大日本住友製薬が主体となって治験を進めることとなりました。同社との合弁会社であるサイレジェンは、大日本住友製薬の建設した再生・細胞医薬製造プラントSMaRT内の施設において、製造体制の構築に向けた準備を進めております。
(ⅱ)欧米向け他家iPS細胞由来RPE細胞による加齢黄斑変性の治療法開発(HLCR012)
HLCR012は、萎縮(ドライ)型加齢黄斑変性を適応症としたiPS細胞由来RPE細胞懸濁液(又はシート)の移植による治療法であり、米国・欧州におけるiPSC再生医薬品候補であります。
当社は、米国及び欧州での治験に用いる治験薬製造の準備のため、まずは欧米での治験に使用することを想定したiPS細胞マスターセルバンクの製造を完了しております。そのiPS細胞マスターセルバンクを用いて、2018年5月より米国眼科研究所(NEI)との共同研究開発を進めております。本共同研究開発の結果等を参考にしながら、当社は米国における開発戦略の検討を進めて参る予定です。
また、欧州については、米国の第Ⅰ相/第Ⅱ相試験の結果を活用して、第Ⅲ相試験から治験を実施することを検討しております。
(ⅲ)臓器原基を用いた3次元臓器(HLCL041)
当社は2014年10月、公立大学法人横浜市立大学(以下、横浜市立大学といいます。)と臓器のもとになる臓器原基を人為的に作製する新規の細胞培養操作技術を用いた機能的なヒト臓器の作製技術に関し、全世界における独占的な特許実施許諾契約を締結いたしました。同技術は、胎内で細胞同士が協調し合って臓器が形成される過程を模倣するという発想から開発されたもので、3種類の細胞(内胚葉細胞、血管内皮細胞、間葉系幹細胞)を一緒に培養することで臓器のもとになる立体的な臓器原基(臓器の芽)を人為的に創出する新規の細胞培養操作技術です。
この実用化に向け、当社は、肝疾患を対象とした再生医療等製品(肝臓原基)を開発するべく横浜市立大学との共同研究を進めています。肝臓は、たんぱく質など身体に必要なさまざまな物質を合成し、不要有害な物質を解毒、排泄するなど約500種類もの機能を、約2000種類以上の酵素を用いて果たしている体内の化学工場といえる臓器です。HLCL041は、肝臓へ肝臓原基を注入し機能的な肝臓に育てることで、生産できない酵素を生産できるように肝臓機能を改善させることを目的とした再生医療等製品であり、ヒトへの移植が可能なヒト肝臓原基の大量製造方法の構築、さらに作製されたヒト肝臓原基の評価方法や移植方法を検討してまいります。
現在、臓器が適切に機能しない疾患に対しては、機能を損なった臓器を健常な臓器へ置換する臓器移植が有効な治療法として実施されています。しかしながら、年々増大する臓器移植のニーズに対し、ドナー臓器の供給は絶対的に不足しており、iPS細胞等を用いて作製した臓器原基をヒトの体内に移植することによって機能的なヒト臓器を創り出すという新たな再生医療等製品(3次元臓器)は、臓器移植の代替治療としての新たな治療概念を提唱できるプラットフォーム技術として幅広い展開が期待されています。
(ⅳ)がん免疫分野(HLCN061)
遺伝子編集技術により特定機能を強化した他家iPS細胞由来のナチュラルキラー細胞(NK細胞)を用いて、固形がんを対象にしたがん免疫細胞療法の研究を進めていましたが、2020年1月に、開発品目(パイプライン)への追加を決定いたしました。
これまで当社が培ってきたiPS細胞を取り扱う技術と遺伝子編集技術を用いることで、殺傷能力を高めた免疫細胞を大量かつ安定的に作製することによる、次世代のがん免疫療法とすべく自社研究開発を進めております。
※ナチュラルキラー細胞(NK細胞):人間の体に生まれながらに備わっている防衛機構で、がん細胞やウイルス感染細胞などを攻撃する白血球の一種です。さらに白血球の分類においてはリンパ球に分類されます。NK細胞を用いた治療の有効性としては延命効果、症状の緩和や生活の質の改善、治癒が期待されています。
③ iPSC再生医薬品分野における新しい取り組み
当社は、iPSC再生医薬品の将来の基盤技術となりうる新規技術・ノウハウをいち早く確立し、実用化を加速させるため、国内外の公的研究機関や企業等との提携のみならず自社研究開発にも積極的に取り組んでおります。
この方針の下、遺伝子編集技術を用いた、HLA型に関わりなく免疫拒絶のリスクの少ない次世代iPS細胞に関する研究活動など、再生医療の産業化に向けて必要な革新的な基盤技術の確立を目指しています。
なお、当社の事業セグメントは、医薬品事業のみの単一セグメントであります。
以下の表は、当事業年度末現在の当社の開発品並びにその適応症、市場、開発段階及び進捗状況を示しております。
なお、製品の開発に際しては様々なリスクを伴うため、当社として各製品に関する製造販売承認の取得又はその時期を保証できるものではありません。当社製品の開発リスクの概要については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」のとおりであります。
(注)1.「前臨床試験」、「第Ⅰ相試験」、「第Ⅱ相試験」及び「第Ⅲ相試験」とは、医薬品の製造販売承認を得るために必要となる試験の各段階を示すものであります。
2.条件及び期限付き承認制度に基づく承認を取得する場合は、従来の医薬品のような開発の相(第Ⅰ相、第Ⅱ相、第Ⅲ相)の考え方は適用されません。
(1)体性幹細胞再生医薬品分野
① 概要
体性幹細胞再生医薬品は、生体のさまざまな組織にある幹細胞である「体性幹細胞」を利用して、現在有効な治療法のない疾患等に対する新たな治療法を開発することを目的とする製品です。
なお、体性幹細胞には、神経幹細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞など複数の種類があり、生体のさまざまな組織に存在します。限定された種類の細胞にのみ分化(細胞が特定の機能を持った細胞に成熟することをいいます。)するものや、複数の種類の細胞に分化するものもありますが、iPS細胞等との比較においては、分化する細胞の種類は一般に限られています。
② 体性幹細胞再生医薬品分野のパイプライン(HLCM051)
(ⅰ)日本向け脳梗塞急性期に対する治療法開発
当社は、2016年1月、新規パイプラインとしてHLCM051を導入いたしました。これは、米国Athersys, Inc.(以下、アサシス社といいます。)が特許権・特許実施許諾権を有する幹細胞製品MultiStem®を用いた脳梗塞に対する細胞治療医薬品の開発・販売に関する国内の独占的なライセンス契約を締結したことによるものです。
当該ライセンス契約に基づき、当社はアサシス社に対して、開発段階に応じた開発マイルストンとして最大で合計30百万米ドルを支払います。また、発売後は、アサシス社は当社に製品を供給し、当社はアサシス社に対して、販売額に応じたランニングロイヤルティを支払います。
同製品の販売に関しては、自社あるいはアライアンスによる販売体制の構築の検討を進めています。
本パイプラインの対象疾患である脳梗塞は、脳の血管が詰まることにより、その先に酸素や栄養分が届かなくなり、詰まった先の神経細胞が時間の経過とともに壊死していく病気です。日本の年間発症患者数は23万人~33万人(総務省資料及びDatamonitor等を基に当社推定)、死亡者数は年間約6万2千人(厚生労働省 人口動態統計)と推定され、発症した患者さんの中には死亡を免れても機能障害が残り、寝たきりや日常生活に介護が必要となる場合があることが知られています。
脳梗塞に対しては、脳の血管に詰まった血の塊を溶かす血栓溶解剤t-PAを用いた治療が行われていますが、血栓溶解剤の処方は発症後4時間半以内に限定されており、脳梗塞発症後に治療できる時間がより長い新薬の開発が待たれる疾患領域となっています。アサシス社が創製した幹細胞製品MultiStemは、静脈注射により投与され、脾臓に分布して炎症免疫細胞の活性化を抑制する事により炎症や免疫反応を抑えて神経細胞の損傷を抑制し、神経保護物質を産生して治療効果を発揮すると考えられています。
本製品は、すでにアサシス社によって欧米にて第Ⅱ相試験が行われており、脳梗塞発症後36時間以内の患者さんに対する治療法となりうる可能性が示されております。当社は、この欧米での試験結果を参考とし、脳梗塞発症後18時間から36時間以内の患者さんを対象とした、有効性及び安全性を検討するプラセボ対照二重盲検第Ⅱ/Ⅲ相試験(治験名称:TREASURE試験)を実施しております。2017年11月より被験者への投与が開始され、2019年5月には、40施設強の治験施設全てに治験製品の設置を完了しました。
なお、本治験の情報について、米国国立医学図書館が管理するウェブサイト“ClinicalTrials.gov”に登録・公開をしております。(https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02961504)
(ⅱ)日本向け急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対する治療法開発
当社は2018年5月、アサシス社とのライセンス契約拡大により、同社の創製した幹細胞製品MultiStemを用いたARDSに対する治療法の日本国内における開発・販売権を獲得し、新規に開発を開始いたしました。
当該ライセンス契約に基づき、当社はアサシス社に対して開発段階に応じた開発マイルストンとして最大30百万米ドルを支払います。また発売後は、アサシス社は当社に製品を供給し、当社はアサシス社に対して販売額に応じたランニングロイヤルティを支払います。
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、単一の疾患ではなく、基礎疾患や外傷などによって好中球等の免疫系が過剰に誘発され、炎症を起こすことにより肺が傷害を受け肺水腫となり、その結果、重度の呼吸不全となる症状の総称です。日本国内での年間発症患者数は、調査手法により7千人から12千人程度(日本救急医学会雑誌2007; 18(6): 219-228及びJAMA.2016;315(8):788-800を基に当社推定)とされ、死亡率が30~58%(ARDS診療ガイドライン2016)と、予後が非常に悪い病気です。
ARDSに対する治療として、集中治療室で人工呼吸器を用いた呼吸管理を中心とする全身管理が行われます。ただし、人工呼吸器の使用が長期化すると、患者の予後が悪くなることが知られています。また薬物治療も行われますが、対症療法であり、患者の生命予後を改善する治療薬はありません。そのため、ARDSは非常にアンメットメディカルニーズが高く、新たな治療の選択肢が望まれている疾患と言えます。
当社が開発を進めるARDSに対する新規の細胞治療法は、現在実施中の脳梗塞急性期患者を対象とした臨床試験と同様に、アサシス社が創製した幹細胞製品MultiStemを、ARDSと診断された患者に一定の時間内に静脈投与するものです。MultiStemは、炎症性T細胞を中心とした炎症免疫細胞の活性化を抑制することにより、肺での過剰炎症や毛細血管内皮の損傷を抑制し、肺水腫の状態を改善することで呼吸機能を正常化する効果があると考えられています。その結果、ARDS患者における人工呼吸器の使用期間を減らす、または死亡率を低下させる可能性があると考えられます。
アサシス社は、欧米においてARDS患者に対するMultiStemの安全性と有効性を探索する第Ⅰ/Ⅱ相試験を実施しており、2019年1月には結果速報が発表されました。本試験は統計的に有意差を検出することを目的とはしていませんでしたが、ARDS患者20人に対してMultiStemを、10人に対してプラセボを投与して実施した第Ⅱ相二重盲検試験において、死亡率、投与後28日間の人工呼吸器を使用しなかった日数及び集中治療室での管理を必要としなかった日数などの指標においてMultiStem投与群では改善傾向が見られました。
当社は、2018年10月、日本国内における肺炎を原因疾患とするARDSを適応疾患とした臨床試験の実施につき治験計画届書を提出し、治験段階に入っております。本治験は、非盲検下で標準治療を対照とし、組入症例数は30を予定しており、全国20施設以上の医療機関で治験を実施中です。2019年4月より被験者組み入れを開始しており、同年11月には、当社の開発するHLCM051が、ARDSを対象とした希少疾病用再生医療等製品として厚生労働大臣より指定されました。本治験の情報は米国国立医学図書館が管理するウェブサイト“ClinicalTrials.gov”に登録・公開をしております。(https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03807804)
(2)iPSC再生医薬品分野
① 概要
iPSC再生医薬品は、iPS細胞を分化誘導(細胞を特定の機能を持った細胞、例えば神経細胞・皮膚細胞などに人為的に変化させることをいいます。)して作製した人体と近似の機能を持つ細胞を移植することによって、機能不全に陥った細胞等を置換して機能を回復することを目的とする製品であります。
iPS細胞(人工多能性幹細胞)とは、2006年に国立大学法人京都大学(以下、京都大学といいます。)の山中伸弥教授が世界で初めて作製に成功し、2012年にその功績からノーベル生理学・医学賞を受賞したことで広く知られるようになった、皮膚などの体細胞にいくつかの遺伝子(山中因子)を導入することによって作り出される、様々な組織や臓器の細胞に分化する能力(多能性)と、ほぼ無限に増殖する能力(増殖能)を持った細胞であります。
ヒトの体は約60兆個の細胞からなりますが、それらの細胞は全て元々一つの細胞であった受精卵が細胞分裂を繰り返し、それぞれ臓器・器官等を構成する細胞へと分化したものであります。受精卵が特定の細胞に分化していく流れは一方通行であり、従来の技術では一度分化した細胞を分化する前の細胞に戻すことはできませんでした。ところが、皮膚細胞などの成熟した細胞にいくつかの遺伝子を導入することにより、新たに様々な細胞に分化する能力(多能性)とほぼ無限に増殖する能力(増殖能)を持たせることに成功したものがiPS細胞であります。iPS細胞のような多能性幹細胞は、いずれも自然に特定の細胞に分化していく訳ではないため、特定の細胞に分化を誘導するためにはiPS細胞の作製とは別の技術が必要となります。
加えて、近年、細胞医薬品分野においては、罹患者自身から採取した細胞(自家細胞)由来の幹細胞を用いたもののみならず、安全性が確認された他人の細胞(他家細胞)由来の幹細胞を活用した医薬品などの研究開発が進んでおります。
② iPSC再生医薬品分野のパイプライン(HLCR011、HLCR012、HLCL041、HLCN061)
(ⅰ)日本向け他家iPS細胞由来網膜色素上皮(RPE)細胞による加齢黄斑変性の治療法開発(HLCR011)
当社は、他家iPS細胞を正常な網膜色素上皮細胞(以下、RPE細胞といいます。)に分化誘導し、純化した上で、iPS細胞由来RPE細胞懸濁液という形で罹患者に移植し、加齢黄斑変性の治療を行うiPSC再生医薬品の開発を進めております。
網膜は、光や色を感じる視細胞を含む感覚網膜(神経性網膜)と、RPE細胞と呼ばれる組織から構成されます。RPE細胞は、網膜の外側にある一層の細胞で、感覚網膜への栄養補給や老廃物の分解を担っています。そのため、RPE細胞の機能が低下すると視機能を担う感覚網膜の機能も低下してしまいます。
加齢黄斑変性(AMD:Age-related Macular Degeneration)は、網膜変性疾患の一種であり、網膜の中でも視力を保つために極めて重要な役割を果たす「黄斑部」に障害が生じる病気で、発症すると次第に視力が低下し、見え方に異常が生じるなどの症状が現われます。
加齢黄斑変性は、滲出型(ウェット型)と萎縮型(ドライ型)に大別され、その原因は、黄斑部を支えるRPE細胞が老化等の原因により感覚網膜への栄養補給や老廃物の分解ができなくなってしまうことにあるものとされております。
日本人に多いウェット型は、黄斑部を支えるRPE細胞の機能不全に伴い、RPE細胞内に貯まった老廃物を分解するために、その外周にある脈絡膜から、脈絡膜新生血管と呼ばれる異常な血管が生えてくるのが特徴であります。この血管は正常な血管とは異なり、もろくて透過性が高いため、破れて出血し、又は水がしみだしてしまうため、網膜が浮腫を起こし、黄斑部の機能が阻害され、視力の低下や視野の歪みなどを生じます。
これに対して、欧米人に多いドライ型は、RPE細胞が加齢により萎縮してしまうことにより、網膜に障害が生じて視力が徐々に低下していく病気であります。
加齢黄斑変性の詳しい発症原因は未だ解明されておらず、根本的な治療法も確立しておりません。加齢黄斑変性は、欧米のような先進国では成人の失明原因として最も多く、公益財団法人難病医学研究財団 難病情報センターのホームページの記載によると、日本での推定罹患者数は2007年時点で69万人(但し、罹患者数を正確に把握できないため、2007年に福岡県内の人口約1万人の久山町において行われた調査結果を日本の人口に換算した推定値)と推定されております。
また、米国国立眼病研究所(National Eye Institute)のホームページにおいて公開されている統計データによると、2010年時点で米国において207万人いると推定される加齢黄斑変性の罹患者は、2030年には366万人に増加すると予測されております。
当社は、罹患者自身ではない第三者の細胞から作製され、安全性等に関する基準を満たしたiPS細胞から作製したRPE細胞を含む懸濁液(懸濁液とは、液体中に個体粒子が分散しているものを言います。)を移植し、患部に定着させることにより感覚網膜への栄養補給や老廃物の分解機能を回復させ、視機能を改善させることを目指す、新しい治療法開発を進めております。
この治療法の開発のため、当社は、2013年2月にiPSアカデミアジャパン株式会社との間でRPE細胞を有効成分として含有する細胞製品を対象とする全世界を許諾領域としたiPS細胞樹立基本技術に関する特許実施権許諾契約を締結して非独占的ライセンスを受けるとともに、理化学研究所との間で同年3月にiPS細胞を含む多能性幹細胞由来RPE細胞を有効成分として含有する再生医療製品を対象とする全世界を許諾領域とした特許実施許諾契約を締結して独占的ライセンスを受けております。
また、当社は、かかるRPE細胞製品を用いた加齢黄斑変性の治療法の開発を迅速かつ確実に進めるべく、2013年12月に、大日本住友製薬株式会社(以下、大日本住友製薬といいます。)との間で、日本におけるRPE細胞製品の開発を共同して行うことを合意し、同社との間で①当社の保有する知的財産権の実施許諾に関する実施許諾契約書(サブライセンス契約)、②共同開発を行う上での役割分担や費用負担を定めた共同開発契約書、並びに、③当該製品の製造や販売促進業務を受託する合弁会社の設立と同社への業務委託料等を定めた合弁契約書を締結いたしました。上記合弁契約に基づき、両社共同出資により2014年2月に株式会社サイレジェン(以下、サイレジェンといいます。)を設立、国内における製造等を委託する事に合意しております。
このような共同開発体制のもと製品化に向けた研究・開発を進めてまいりましたが、iPS細胞を用いた治療法の実現には当社と大日本住友製薬のみならず様々なステークホルダーも交えた長期的な開発体制が必要となることから、資源配分の有効性を考慮したうえで共同開発体制の変更が適切であると判断するに至りました。その結果、2019年6月、今後は大日本住友製薬が主体となって治験を進めることとなりました。同社との合弁会社であるサイレジェンは、大日本住友製薬の建設した再生・細胞医薬製造プラントSMaRT内の施設において、製造体制の構築に向けた準備を進めております。
(ⅱ)欧米向け他家iPS細胞由来RPE細胞による加齢黄斑変性の治療法開発(HLCR012)
HLCR012は、萎縮(ドライ)型加齢黄斑変性を適応症としたiPS細胞由来RPE細胞懸濁液(又はシート)の移植による治療法であり、米国・欧州におけるiPSC再生医薬品候補であります。
当社は、米国及び欧州での治験に用いる治験薬製造の準備のため、まずは欧米での治験に使用することを想定したiPS細胞マスターセルバンクの製造を完了しております。そのiPS細胞マスターセルバンクを用いて、2018年5月より米国眼科研究所(NEI)との共同研究開発を進めております。本共同研究開発の結果等を参考にしながら、当社は米国における開発戦略の検討を進めて参る予定です。
また、欧州については、米国の第Ⅰ相/第Ⅱ相試験の結果を活用して、第Ⅲ相試験から治験を実施することを検討しております。
(ⅲ)臓器原基を用いた3次元臓器(HLCL041)
当社は2014年10月、公立大学法人横浜市立大学(以下、横浜市立大学といいます。)と臓器のもとになる臓器原基を人為的に作製する新規の細胞培養操作技術を用いた機能的なヒト臓器の作製技術に関し、全世界における独占的な特許実施許諾契約を締結いたしました。同技術は、胎内で細胞同士が協調し合って臓器が形成される過程を模倣するという発想から開発されたもので、3種類の細胞(内胚葉細胞、血管内皮細胞、間葉系幹細胞)を一緒に培養することで臓器のもとになる立体的な臓器原基(臓器の芽)を人為的に創出する新規の細胞培養操作技術です。
この実用化に向け、当社は、肝疾患を対象とした再生医療等製品(肝臓原基)を開発するべく横浜市立大学との共同研究を進めています。肝臓は、たんぱく質など身体に必要なさまざまな物質を合成し、不要有害な物質を解毒、排泄するなど約500種類もの機能を、約2000種類以上の酵素を用いて果たしている体内の化学工場といえる臓器です。HLCL041は、肝臓へ肝臓原基を注入し機能的な肝臓に育てることで、生産できない酵素を生産できるように肝臓機能を改善させることを目的とした再生医療等製品であり、ヒトへの移植が可能なヒト肝臓原基の大量製造方法の構築、さらに作製されたヒト肝臓原基の評価方法や移植方法を検討してまいります。
現在、臓器が適切に機能しない疾患に対しては、機能を損なった臓器を健常な臓器へ置換する臓器移植が有効な治療法として実施されています。しかしながら、年々増大する臓器移植のニーズに対し、ドナー臓器の供給は絶対的に不足しており、iPS細胞等を用いて作製した臓器原基をヒトの体内に移植することによって機能的なヒト臓器を創り出すという新たな再生医療等製品(3次元臓器)は、臓器移植の代替治療としての新たな治療概念を提唱できるプラットフォーム技術として幅広い展開が期待されています。
(ⅳ)がん免疫分野(HLCN061)
遺伝子編集技術により特定機能を強化した他家iPS細胞由来のナチュラルキラー細胞(NK細胞)を用いて、固形がんを対象にしたがん免疫細胞療法の研究を進めていましたが、2020年1月に、開発品目(パイプライン)への追加を決定いたしました。
これまで当社が培ってきたiPS細胞を取り扱う技術と遺伝子編集技術を用いることで、殺傷能力を高めた免疫細胞を大量かつ安定的に作製することによる、次世代のがん免疫療法とすべく自社研究開発を進めております。
※ナチュラルキラー細胞(NK細胞):人間の体に生まれながらに備わっている防衛機構で、がん細胞やウイルス感染細胞などを攻撃する白血球の一種です。さらに白血球の分類においてはリンパ球に分類されます。NK細胞を用いた治療の有効性としては延命効果、症状の緩和や生活の質の改善、治癒が期待されています。
③ iPSC再生医薬品分野における新しい取り組み
当社は、iPSC再生医薬品の将来の基盤技術となりうる新規技術・ノウハウをいち早く確立し、実用化を加速させるため、国内外の公的研究機関や企業等との提携のみならず自社研究開発にも積極的に取り組んでおります。
この方針の下、遺伝子編集技術を用いた、HLA型に関わりなく免疫拒絶のリスクの少ない次世代iPS細胞に関する研究活動など、再生医療の産業化に向けて必要な革新的な基盤技術の確立を目指しています。
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