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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100ITE5 (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 株式会社かんぽ生命保険 事業等のリスク (2020年3月期)


従業員の状況メニュー研究開発活動


有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況並びに企業価値を表すEV(エンベディッド・バリュー)等の指標に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、当社グループでは、事業等のリスクを「最も重要なリスク」、「重要なリスク」、「上記以外のリスク」に分類しております。当該リスクの分類及び各リスク情報の記載にあたっては、当社グループの経営陣の各リスクの影響、発生可能性、対応策及び影響等に関する認識を適切に反映させるため、2020年3月末日現在の一定の役職以上の執行役に対して、事業等のリスクに関するアンケートを実施し、その集計結果を踏まえ、リスク管理委員会及び経営会議で協議を行うとともに、社外取締役からの意見聴取も行っております。
文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

Ⅰ 最も重要なリスク
(1) 募集品質・コンプライアンスに関するリスク
① 保険募集プロセスの品質事案に関するリスク
当社は、2019年3月期からの中期経営計画において、お客さま本位の業務運営の徹底を主要戦略のひとつとして掲げ、日本郵便株式会社と連携しながら、保険募集プロセスの品質向上やご家族同席などの高齢者募集対応をはじめとした諸課題に取り組んでまいりました。しかしながら、上記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 経営戦略及び対処すべき課題」に記載のとおり、お客さまのご意向に沿わず不利益が生じた契約乗換等に係る事案及び法令違反又は社内ルール違反が認められた事案の発生により、当社グループに対する株主、投資家、お客さま、その他ステークホルダーからの信用は大きく毀損されている状況にあり、早期の信用回復が最重要課題と認識しております。
当社グループにおいては、かかる事案に対処するため、2020年1月31日付けで金融庁に提出した業務改善計画に基づき、健全な組織風土の醸成・適正な営業推進態勢の確立、適正な募集管理態勢の強化及び取締役会等によるガバナンスの強化などの施策や取り組み等を実施し、保険募集プロセスの品質改善を通じ、お客さま本位の業務運営を徹底することとしておりますが、これらの取り組みが期待された効果を発揮しない又は効果の発揮までに想定以上の時間を要する場合には、当社グループに対するステークホルダーからの信用回復に影響を及ぼす可能性があります。さらに取り組みによる効果が発揮されるまでの間に再度同種の事案が発生する等の場合には、当社グループの社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
当社及び日本郵便株式会社は、多数契約等の全ご契約調査の更なる深掘調査や、これらに関連する保険契約を受理した募集人調査等を継続して行っておりますが、これらの調査については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、計画が遅れる可能性があります。また、今後、当該調査等を通じて、お客さまのご意向に沿わず不利益となる他の事例や法令違反又は社内ルール違反となる他の事例が追加で判明する等の場合には、当社グループの社会的信用にさらに影響を与える可能性があります。また、今後行われる募集人処分(業務停止等)の規模や程度によっては、新契約の獲得の減少又は既存契約の解約数の増加を招く可能性があるほか、さらに追加での調査やお客さまの不利益の解消に向けた保険契約に関するお手続き(契約復元等)のための追加的な費用を要する可能性があります。

2019年7月以降、郵便局及び当社支店からの積極的な当社商品のご提案を控えていたことに加えて、2019年12月27日に金融庁から業務停止命令を受けたことに伴い、2020年1月1日から2020年3月31日までの間、当社商品に係る保険募集及び保険契約の締結を停止しておりました。本書提出日時点においては、当該業務停止命令期間は終了しているものの、上記のご契約調査に関する対応や募集品質の改善に向けた取り組みに最優先で対応するため、積極的な当社商品のご提案を控えている状況にあります。その結果、通常よりも新契約の獲得が進まないなどの理由により、当社グループの業務運営及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。かかる経営成績等への影響は、手数料支払の減少による利益の増加が先行するという当社の利益構造の特性により、短期的には顕在化しにくいものの、積極的な当社商品のご提案を控える期間がより長期にわたり継続する場合には、当社グループの経営成績、財政状態及びEV等の指標に影響を及ぼす可能性があります。また、当社の保険商品の営業社員が報酬の低下等により離職する、又はモチベーションを喪失することにより、当社の通常の営業活動の再開に影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社及び日本郵便株式会社からお客さまに対する通常のご提案が可能となったとしても、当社グループへの信用の毀損等により、当社の新契約の獲得が回復しない可能性があります。
当社グループは、保険業法及び郵政民営化法に基づき、金融庁及び総務省の監督に服しており、当社は2019年12月27日、金融庁より保険業法第132条第1項に基づく業務停止命令及び業務改善命令を受けました。当該処分を受けて、当社は、2020年1月31日付けで、業務改善計画を金融庁に提出しております。今後は、当該業務改善計画の実施完了までの間、3カ月ごとの進捗及び改善状況を報告することとなりますが、当該計画の進捗及び改善状況について監督当局がそれらを不十分であると判断した等の場合には、さらなる行政処分を受ける可能性があり、当社グループの業務運営の存続や方法に重大な影響を及ぼす可能性や当社グループへの信用がさらに毀損する可能性があります。また、保険募集プロセスの品質事案に関連して、保険契約者等から訴訟を提起された場合にも、当社グループの社会的信用、業務運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

② コンプライアンス違反、不正・不祥事に関するリスク(従業員、代理店、業務委託先、保険契約者等の不正により損害を被るリスクを含む)
当社グループは、保険業法及び郵政民営化法に基づき、金融庁及び総務省の監督に服しております。加えて、保険法、消費者契約法、個人情報の保護に関する法律、犯罪による収益の移転防止に関する法律等、生命保険契約を取り扱う事業者として、各種関係法令の遵守の義務を負っております。
当社グループにおいては、「コンプライアンス・プログラム」を策定し、当社役職員への定期的なコンプライアンス研修、情報管理の徹底、犯罪防止・マネー・ローンダリング対策の強化等を通じ、法令遵守の徹底を図っておりますが、役職員による作為若しくは不作為による法令等の違反が発生した場合、又は法令等の違反を防止するための対策が効果を発揮しなかった場合には、当社グループの社会的信用及び業務運営に影響を及ぼす可能性があります。
特に、当社の業務を行う日本郵便株式会社の従業員に対しては、従来から法令等の遵守、お客さま本位の営業活動の徹底についての指導・教育を行ってまいりましたが、上記「① 保険募集プロセスの品質事案に関するリスク」に記載の契約乗換等に係る事案が発生したことから、お客さま本位の理念に基づく行動規範等を策定し、郵便局等の営業現場まで浸透させるための研修を実施するなど、全社を挙げて、より一層のコンプライアンスの強化に取り組んでおります。しかしながら、これらの指導・教育が十分に行われない、又は十分に行われたとしても効果を発揮しないこと等により、同社従業員による不適正な募集活動などの法令等の違反が発生した場合、特に当社が、日本郵便株式会社の従業員による不適正な活動の実態を適時かつ適切に把握することができていない場合には、当社グループの社会的信用及び業務運営に影響を及ぼす可能性があります。
当社は膨大な保険契約や業務委託・物品購入等の契約を締結していますが、当社の契約の相手方による詐欺的行為の被害を受けた場合、反社会的勢力との契約を締結した場合等には、当社グループの社会的信用及び業務運営に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、従業員、代理店、業務委託先、保険契約者等による詐欺その他の不正による潜在的な損失リスクにさらされております。当社の営業職員及び代理店は、保険契約者との対話を通じて、保険契約者の個人情報及び家計情報を熟知しており、違法な販売手法、詐欺、なりすまし、個人情報の紛失・漏えい又は不適切な利用等が発生してしまう可能性は否定できません。当社はこのような違法行為等を未然に防止し、又は発見するための対策を講じておりますが、当社の取り組みがこれらを排除できない場合には、当社グループの社会的信用及び業務運営に影響を及ぼす可能性があります。

③ 当社の企業風土又は組織文化に関するリスク
上記「① 保険募集プロセスの品質事案に関するリスク」に記載の契約乗換等に係る事案の事実関係及び原因等の究明に関して、「かんぽ生命保険契約問題 特別調査委員会」が2019年12月18日付けで公表した調査報告書では、当社グループにおいて、「リスク事象を探知した際の原因追究・解決の先送り」、「問題の矮小化」並びに「部門間の横での連携不足及び上意下達のもとでの情報伝達の目詰まり」といった企業風土又は組織文化が従前から存在してきたことが指摘されていました。当社グループにおいては、経営陣主導のもと、かかる企業風土又は組織文化の健全化に取り組んでおりますが、かかる取り組みが功を奏しない又は功を奏するまでに想定以上の時間を要する場合には、類似の事案が発生する結果となり、当社グループの社会的信用がさらに毀損される、又は当社グループの事業の持続可能性、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 日本郵便との関係に関するリスク
① ユニバーサルサービスの提供に関するリスク
日本郵便株式会社は、郵政民営化法上のユニバーサルサービスに係る規定を遵守するため、当社と生命保険募集・契約維持管理業務委託契約及び保険窓口業務契約を締結して当社の保険代理業務を受託し、全国の各郵便局において、当社の商品及びサービスを提供しております(かかる契約の詳細については「4 経営上の重要な契約等」に記載のとおりであります。)。特に、保険窓口業務契約は、期間の定めのない契約であり、本契約に定める特段の事情がない限り当社から一方的に解除することはできないこととされております。また当社の定款上、当社は日本郵便株式会社との間で、保険窓口業務契約を締結する旨の規定が存在し、当該契約を終了させる場合には当社の定款変更が必要となります。したがって、当社が日本郵便株式会社との間の保険窓口業務契約を終了させるには、これらの手続等を充足する必要があります。
このように、当社が、ユニバーサルサービスの提供義務を負う日本郵便株式会社との間で、解除することが困難な保険窓口業務契約を締結していることで、日本郵便株式会社がユニバーサルサービスを提供する上での関連保険会社としての地位を維持する契約上の義務を負うため、当社の柔軟な事業展開が困難となる可能性があります。また、今後ユニバーサルサービスの確保に関する政府の施策、法令や規制等の改正等の内容によっては、当社グループの業務運営や経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、2018年12月1日付けでの独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法の一部を改正する法律の施行により、従来は日本郵便株式会社と関連銀行・関連保険会社との間の契約に基づく委託手数料により賄われていた郵便局ネットワーク維持に要する費用のうち、ユニバーサルサービス確保のために不可欠な費用(日本郵便株式会社が負担すべき額を除く)は、同法に基づき、2020年3月期から、当社及び株式会社ゆうちょ銀行からの拠出金を原資として郵政管理・支援機構から日本郵便株式会社に交付される交付金で賄われることとなっております。この点、拠出金・交付金の額の算出に必要な当該不可欠な費用は、直近の郵便局ネットワークの維持の状況を基礎とした以下の費用の合計額として算定されるものであり、最終的には関係法令に基づき郵政管理・支援機構が算定するため、当社の意向が反映されるものではありません(なお、当該不可欠な費用及び交付金・拠出金の算定等に係る郵政管理・支援機構の事務費用は、郵便窓口業務、銀行窓口業務、保険窓口業務において見込まれる利用者による郵便局ネットワークの利用の度合等に応じて按分され、保険窓口業務に係る按分額を当社が拠出金として拠出することとなり、2020年3月期に当社が支払った拠出額は575億円です。)。
ア 郵便局ネットワークを最小限度の規模の郵便局により構成するものとした場合における人件費、賃借料・工事費その他の郵便局の維持に要する費用、現金の輸送及び管理に要する費用、固定資産税・事業所税
イ 簡易郵便局で郵政事業に係る基本的な役務が利用できるようにすることを確保するための最小限度の委託に要する費用
当社は、日本郵便株式会社がユニバーサルサービスを提供する上での関連保険会社として、当該拠出金を拠出する必要があり、郵政管理・支援機構により算定された当該不可欠な費用の額が、当社の想定よりも多額である場合又は郵便局ネットワークの使用により当社グループが受ける利益と比較して多額である場合には、当社グループの業務運営や経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

② 日本郵便株式会社への委託手数料等に関するリスク
当社は、日本郵便株式会社と締結している生命保険募集・契約維持管理業務委託契約、保険窓口業務契約等及び代理店手数料規程等に基づき、日本郵便株式会社に対して委託手数料を支払っておりますが、その一部には、日本郵便株式会社が当社に提供する業務に必要な経費単価に郵便局数等を乗じて算定するものや、保有契約の維持管理のための活動に応じて加算されるものが含まれており、当社からの委託業務に基づき発生する費用に応じて増加する可能性があります。
当社は、契約乗換等の事案の発生を受け、2021年3月期から、契約の継続及び募集品質の向上を一層強化する観点から、一部手数料率等の見直しを行っており、今後も各年度における当社グループの事業戦略と整合させながら、日本郵便株式会社において、募集品質の確保を前提に、一定基準以上の販売実績を確保した場合のボーナス手数料を追加するなど、適切なインセンティブの仕組みの導入を検討する場合がありますが、かかる適切な仕組みを設定することができない場合には、募集品質の向上に関する当社の取り組みが不十分と評価され当社への信用がさらに毀損する可能性や、新契約の獲得又は保有契約の維持に影響を及ぼす可能性があります。なお、2021年3月期においては、販売実績に対するボーナス手数料の追加は行わず、募集品質の向上等に対するインセンティブの仕組みを実施しております(委託手数料の詳細及び2021年3月期における見直しの内容については、「4 経営上の重要な契約等 (参考) 日本郵便株式会社に支払う委託手数料」に記載のとおりであります。)。

③ 郵便局ネットワークへの依存に関するリスク
当社の商品及びサービスの提供は、郵便局ネットワークに大きく依存しており、当社の新契約保険料の9割程度が郵便局ネットワークにおいて獲得されております。
近年はコミュニケーション手段の多様化により、生活に必要な様々なサービスがインターネット等によって簡単に利用できるようになっております。加えて、契約乗換等に係る事案の発生により、郵便局ネットワークに対するお客さまからの信用は大きく毀損されています。これらに伴う、郵便局数及び郵便局の利用者数又は利用頻度の減少、さらには郵便サービス自体の利用頻度の減少により、郵便局ネットワークの販売力や魅力が損なわれる場合には、当社の新契約の獲得や既存契約の維持に影響を及ぼす可能性があります。
当社の商品及びサービスの提供の大部分は、業務委託先である日本郵便株式会社の従業員により行われております。そのため、日本郵便株式会社が優秀な人材を確保できない場合や、当社による日本郵便株式会社の従業員の保険業務に関する教育、特に新しい商品及びサービスに関する必要な知識の獲得のための教育が十分でない場合等においては、当社の商品及びサービスの提供が期待どおりに行われない可能性があります。さらには、日本郵便株式会社の金融商品の販売に関する総合的コンサルティング施策の推進により、日本郵便株式会社において、お客さまへのかんぽ生命商品のご提案、保全・維持活動等への従事割合が相対的に減少する場合には、郵便局における当社商品及びサービスについての販売力・活動量が低下する恐れがあります。
また、日本郵便株式会社では、当社の商品以外にも、他の生命保険会社の生命保険や変額年金保険、損害保険会社の損害保険の受託販売を行っております。日本郵便株式会社が人材その他の経営資源を他社の商品等の販売に充てた場合や、日本郵便株式会社において取り扱われる他社の商品等の割合が当社の商品等に比べて著しく増大した場合には、当社グループの業務運営に影響を及ぼす可能性があります。
上記のとおり、商品・サービスの供給の太宗を郵便局ネットワークに依存している当社のビジネスモデルには様々なリスクが内在しております。当社は、これらのリスクの顕在化に備え、郵便局ネットワークを補完又は一部代替する商品・サービスの提供手段を検討してまいりますが、郵便局ネットワークを補完又は一部代替できるだけの提供手段を開拓できる保証はなく、いったん開拓できた場合でも当該新たな提供手段が郵便局ネットワークに比べ有効に機能しない場合には、当社グループの業務運営に影響を及ぼす可能性があります。

(3) ビジネスモデル、当社特有の規制に関するリスク
① 商品の集中、顧客構成に関するリスク
当社の取り扱う商品は、個人向け生命保険、とりわけ養老保険・終身保険など貯蓄性の高い商品に集中しております。個人向け生命保険については、国内の雇用水準及び家計水準、代替商品であるその他の商品に対する相対的魅力、保険会社の財務健全性、社会的信用に対する一般的な認識、出生率及び高齢化といった日本の人口構成に影響を与える長期的な人口動態等の要因が、新規契約数や既存契約の消滅率に影響を及ぼしています。
また、当社の顧客基盤(2020年3月末:お客さま数 約2,468万人(個人保険及び個人年金保険の契約者数並びに被保険者数の合計(当社が受再している簡易生命保険契約を含みます。)))は中高年層及び女性の比重が高く、青壮年層の割合が相対的に低くなっております。
当社は、下記「③ 郵政民営化法に基づく法規制に関するリスク」における一定の制約の下、青壮年層を含めたお客さまの保障ニーズに適切にお応えできる、競争力の高い新商品開発を目指しておりますが、これが想定どおりに進捗しない場合には、中長期的な商品・販売戦略に影響を及ぼす可能性があります。

② 事業費の削減に関するリスク
上記「(1) 募集品質・コンプライアンスに関するリスク ① 保険募集プロセスの品質事案に関するリスク」に記載のとおり、現在、積極的な募集活動を停止していることから、新契約の獲得及び保有契約の維持は困難な状況となっております。一方で、当社の事業費には、日本郵便株式会社に委託している保険料の収納や保険金の支払事務等の対価として支払う委託手数料(維持・集金手数料の一部)や、郵政管理・支援機構への拠出金、システム維持費など、営業活動量に左右されず固定的に発生する経費が一定程度含まれることから、かかる保有契約の減少見通しに連動して直ちに事業費を削減することができない可能性があります。そのため、仮に積極的な募集活動の停止期間が長期にわたり継続する等により、保有契約が減少する場合には、当社商品及びサービスの収益性の低下を通じ、当社グループの経営成績、財政状態及びEV等の指標に影響を及ぼす可能性があります。

③ 郵政民営化法に基づく法規制に関するリスク
当社は、郵政民営化法及び関係政省令の下、金融庁及び総務省の監督下にあります。また、郵政民営化法及び関係政省令の主な目的は、国内における公正かつ自由な競争を促進することに加えて、同種の業務を営む事業者との対等な競争条件を確保するための措置を講じることにあります。同法では、当社が郵政民営化に関する施策で重要なものを企画する場合は、この目的を担保するため、内閣官房に設置された郵政民営化推進本部が運営する、郵政民営化委員会における審議が必要である旨が定められております。
郵政民営化法の目的である、同種の業務を営む事業者との対等な競争条件の確保の観点から、当社には他の日本の生命保険会社にはない業務制限規制が課されております。主な規制項目として、被保険者一人あたりの加入可能な保険金額に上限があること、保険会社等の子会社化が禁止されていること、新商品の開発にあたって内閣総理大臣及び総務大臣の認可が必要であること、新たな資産運用手段を実施するにあたって内閣総理大臣及び総務大臣の認可が必要であること等があります(以下「上乗せ規制」といいます。かかる規制の詳細については「第1 企業の概況 3 事業の内容 (参考) 郵政民営化法による特例措置」に記載のとおりであります。)。これらの規制により、将来的に当社の競争力や収益機会がさらに制限された場合には、当社グループの業務運営に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 事業環境等に関するリスク
① 経済環境の変動に伴うリスク
当社グループが行う事業は、その収益の多くが日本国内において生み出されるものであるため、国内の景気や世帯収入の動向などが、当社グループの行う事業に影響を及ぼす可能性があります。近年は、国内及び海外経済の不確実性や金融市場の変動の影響が懸念されております。また、長期にわたる少子化の影響を受け、国内の総人口及び労働人口の継続的な減少も予測されております。さらに、足下では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う緊急事態宣言の発出等により、経済活動全体及び金融市場に多大な悪影響が生じています。これらの経済情勢等の動向は当社グループの業務運営に影響を及ぼす可能性があります。

② 競合他社との競争に関するリスク
当社は、日本の生命保険市場において、国内生命保険会社、外資系生命保険会社、各種協同組合等との激しい競争に直面しております。近年は、特に、商品内容・ラインナップ、販売チャネル、保険料水準等に関して、当社より優位に立っている会社もあります。また、統合や再編、異業種との提携等により、又は新技術等(FinTechやサービスの自動化・AI化など)を応用した魅力的な商品・サービスの開発により、競合他社が今後より高い競争力を備える可能性もあります。さらに、当社が業務範囲を拡大した場合や、当社を取り巻く規制緩和、新規参入等に伴い市場構造に変化が生じた場合に、現時点では競合関係にない会社との競合関係が新たに生じる可能性もあります。以上のような競合他社の動向等を踏まえ、当社においても、ICTを活用した事務サービスの高度化とお客さまサービスの向上、次世代システムの構築、お客さまニーズにマッチした保険商品の開発等を進めてまいりますが、これらの取り組みが競合他社に劣後した場合には、当社の競争力に影響を及ぼす可能性があります。

③ 日本の人口動態に関するリスク
1970年代半ば以降、日本の出生率は総じて徐々に低下する傾向にあり、現在は世界で最低の水準にあります。これらの結果、15歳から64歳までの人口は減少傾向が続いており、この傾向が、日本国内における生命保険の総保有契約高の減少の主要な要因であると考えております。また、国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、15歳から64歳までの人口は、今後も減少し続けるであろうと予測しております。こうした見通しの下、当社は、人口減少や公的医療費の増加等の社会的課題を踏まえ、健康増進サービスやデジタルマーケティングの推進、青壮年層等を含むお客さまニーズにマッチした保障性商品等の開発等の検討を進めてまいりますが、お客さまニーズにマッチしたサービスの提供や商品開発ができない場合には、当社グループの業務運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(5) 事業戦略・経営計画が奏功しないリスク
当社は、中期経営計画をはじめとする事業戦略・経営計画を策定しておりますが、これらに含まれる施策の実施については、本「事業等のリスク」に記載された各種のリスクが内在しております。また、将来において、当社による上記施策の実施を阻害するリスクが高まる又は新たなリスクが生じる可能性もあります。
さらに、これらの事業戦略・経営計画は、市場金利、外国為替、株価、事業環境、法制度、一般的経済状況、当社及び日本郵便株式会社の従業員の活動状況等に係る多くの前提を置き、それらに基づいて作成されておりますが、かかる前提どおりとならない場合には、当該計画における目標を達成できない可能性があります。また、当社は、現中期経営計画において、「保障重視の販売の強化」、「新たな顧客層の開拓」、「新商品開発」等に取り組むこととしておりましたが、現在、契約乗換等に係る事案の発生により積極的な募集活動を停止するなど計画策定時における前提が大きく変化しており、当該計画における目標を達成できない可能性があります。
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)目標とする経営指標」に記載のとおり、日本郵政グループの中期経営計画において、当社グループは、保有契約年換算保険料(個人保険)、1株当たり当期純利益及び1株当たり配当額という3つの主要定量目標を設定しております。しかしながら、保有契約年換算保険料(個人保険)については、市場金利の低下に伴う保険料の値上げなどにより貯蓄性商品の新契約の獲得実績が想定以上に減少したこと及び、契約乗換等に係る事案の発生により積極的な募集活動を停止していることを主たる要因として、2019年6月末、9月末、12月末及び2020年3月末においてそれぞれ4.6兆円、4.5兆円、4.4兆円及び4.3兆円と推移しており、加えて2021年3月期においては保有契約年換算保険料に係る目標及び営業目標を設定しないことから、中期経営計画における保有契約年換算保険料(個人保険)の目標達成は困難であると認識しております。
さらに、2022年3月期以降に営業目標を設定する場合においては、適正な募集品質に基づく営業力に見合った目標設定へ見直すとともに、新契約と契約継続を同じ重要度で評価できるよう、新契約と消滅契約(解約等)の月額保険料を差し引きしたストック目標の導入や、募集品質に係る評価項目の見直しを行う予定でありますが、かかる営業目標・評価基準等の見直しが奏功しない場合には、当社グループの業務運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社は、お客さま本位の営業活動の徹底と抜本的な改善策により、全社をあげて信用回復に取り組んでおりますが、かかる信用が早期に回復しないことにより、新契約の獲得が計画どおり進まない場合や既存の契約の解約数が増加する場合には、当該計画における目標の達成がさらに困難になるほか、当該計画期間終了後も新契約の獲得や既存の契約の維持については、厳しい状況が継続することが見込まれます。
当社は、法令上可能な限りにおいて、新たな収益機会を得るため新規業務への参入を行うことがありますが、契約乗換等に関する事案の発生により当社グループへの信用が大きく毀損している状況では、新規業務への参入が困難となる可能性があります。加えて、当社は新商品の販売開始にあたって、郵政民営化法に基づく認可を取得する必要がありますが、当該認可が得られない可能性や認可取得のために当社の計画どおりの時期又は内容で新商品を投入できない可能性があります。また、かかる認可を取得し、新商品を販売した場合であっても、商品性が市場ニーズにマッチしない、営業体制が確保できない、予想を超える外部要因等により収益が確保できない等、当該商品が当初想定した成果をもたらさない可能性があります。このような結果、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
さらには、現中期経営計画期間において、次期オープン系システム・基幹系システム・新営業用携帯端末等のシステム整備・改修等に約1,500億円規模の投資を行うこととしております。これらの投資は減価償却を通じて今後数年間にわたり費用化されるとともに、その管理・維持には相当程度のコストが生じる見込みでありますが、投資額に見合った成果が得られない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

Ⅱ 重要なリスク
(6) 日本郵政との関係に関するリスク
① 日本郵政株式会社が議決権を保有することによる影響力及び他の一般株主との利益相反に関するリスク
日本郵政株式会社は、2019年4月の日本郵政株式会社による当社株式の売出し及び当社による自己株式取得後において、64%程度まで低下したものの、当連結会計年度末現在において、引き続き50%超の当社株式を保有しております。したがって、日本郵政株式会社が、当社の役員の選解任、他社との合併等の組織再編、減資、定款の変更等の当社の株主総会決議の結果に重要な影響を及ぼす可能性があります。さらに、日本国政府は、当連結会計年度末において、日本郵政株式会社の発行済株式総数の約57%(自己株式を除く議決権割合は約63%)を保有しております。
日本郵政株式会社は、下記「② 日本郵政グループとの人的関係及び取引関係に関するリスク」に記載の当社との業務委託関係その他の取引・契約関係等にあるほか、子会社等を通じて当社と競合し又は競合する可能性のある事業(当社以外の生命保険会社の商品の受託販売等)を行うなど、当社について他の一般株主と異なる利害関係を有しております。例えば、2018年12月19日に、日本郵政株式会社は、アフラック・インコーポレーテッド及びアフラック生命保険株式会社との間で、「資本関係に基づく戦略提携」に関する基本合意書を締結いたしました。この合意において、日本郵政株式会社は、アフラック・インコーポレーテッドの普通株式の発行済株式総数の7%を取得することのほか、がん保険に関する取り組みの再確認、新たな協業の取り組みの検討を行うこととしております。新たな協業の取り組みについては、顧客の多様なニーズに応えるとともに、当社を含む日本郵政グループ3社(日本郵政株式会社、日本郵便株式会社及び当社)及びアフラック生命保険株式会社の各社の企業価値向上に資することを目的として、日本郵便株式会社及び当社又はいずれかにおいて販売されるアフラック生命保険株式会社の新商品開発を含め協業項目を今後検討していくこととしておりますが、現時点で具体的にその内容は決定しておりません。このため、協業に基づくアフラック生命保険株式会社の新商品の販売が当社グループの業績等に影響を及ぼすなど、当社と日本郵政株式会社との間で協業項目の具体的な内容について意見の相違が生じ、当社又は当社の一般株主の利益と相反する可能性があります。また、日本郵政グループの利益やユニバーサルサービスの提供等の観点から議決権の行使等を行うなど、一般株主の利害と異なる議決権の行使その他の行為を行う可能性があります。

② 日本郵政グループとの人的関係及び取引関係に関するリスク
a.日本郵政グループにおける当社の位置づけ
当社グループは、当社の親会社である日本郵政株式会社を中心とした日本郵政グループにおける、生命保険事業セグメントを担っております。
なお、日本郵政グループは、生命保険業のほか、郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業、銀行業等を行っております。


b.日本郵政グループとの人的関係
本書提出日現在において、当社では、日本郵政グループの役員を兼任する役員が在職しております。そのうち、主な日本郵政グループの役員を兼任する役員は、下表のとおりとなっております。また、当社の経営会議(「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 b.業務執行」に記載のとおりであります。)には、当社の常務以上の執行役を兼任している者を除き、原則、日本郵政株式会社の役員は出席していませんが、議題又は報告事項に応じて、出席が必要と当社が考える日本郵政株式会社の代表執行役に出席を要請することとしております。
氏名当社における役職主な日本郵政グループ
における役職
兼任の理由
千田 哲也取締役兼代表執行役社長日本郵政株式会社
取締役(非常勤)
グループの経営管理の実効性及び経営の効率性を高めるため
市倉 昇取締役兼代表執行役副社長日本郵政株式会社
常務執行役(非常勤)
国が資本金の2分の1以上を出資している法人である日本郵政株式会社として国会において当社に関する専門的な質問への答弁に対応するため
増田 寬也
(注)
取締役(非常勤)日本郵政株式会社
取締役兼代表執行役社長
グループガバナンス強化のため

(注) 同氏は、日本郵政株式会社の子会社である、株式会社ゆうちょ銀行の取締役(非常勤)も兼任しております。
当社の役員の状況については「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (2) 役員の状況」に記載のとおりであります。
また、当社は、日本郵政株式会社及びその子会社である日本郵便株式会社との間で、人事交流を目的として相互に出向者を受け入れており、モニタリングその他郵便局に対する支援等の業務を行っておりますが、このうち、当社において事業運営に重要な影響を及ぼす役職についている者はおりません。


c.日本郵政グループとの取引
当社は日本郵政グループに属する他社との取引を行っております。当連結会計年度における主な取引は以下のとおりであります。
取引内容取引先金額
(百万円)
取引条件の決定方法等
ブランド価値使用料の支払日本郵政株式会社2,958左記の取引に係る取引条件の決定方法等については、下記「d.日本郵政株式会社に対するブランド価値使用料」に記載のとおりであります。
システム利用料の支払日本郵政株式会社
日本郵政インフォメーションテクノロジー株式会社
2,930システムの提供に係る必要経費に、他企業の利益率を考慮して設定した一定の利益率を乗じた金額を、当社、日本郵便株式会社及び株式会社ゆうちょ銀行が、システムの利用状況等に応じて負担。
代理店業務に係る委託手数料の支払日本郵便株式会社248,798各契約の保険金額及び保険料額に、保険種類ごとに設定した手数料率を乗じて算定した募集手数料、保険料の収納や保険金の支払事務など、委託業務ごとに設定した業務単価に、業務量を乗じて算定した維持集金手数料等を支払。
郵便料金等日本郵便株式会社6,743郵便料金については、約款に基づき、一般の顧客と同料金で利用。
日本郵便株式会社所有の建物の賃借日本郵便株式会社2,688賃料については、積算法に準ずる方法により設定。共益費については、民間ビル相場に基づき設定することで妥当性を担保。
窓口端末機使用料の支払株式会社ゆうちょ銀行1,826端末業務の取扱件数に応じて、当社と株式会社ゆうちょ銀行の分担割合を定めており、窓口端末機の保守費用のうち、当社の分担割合に応じた額を支払。

(注) 上記のほか、「(2) 日本郵便との関係に関するリスク ① ユニバーサルサービスの提供に関するリスク」に記載のとおり、郵便局ネットワーク維持に係る郵政管理・支援機構への拠出金の支払いが、2020年3月期において575億円あります。
なお、日本郵政グループに属する他社との取引条件の適切性を確保するため、新たに重要な取引を実施する場合及び既存の重要な取引条件を変更する場合に、社外取締役を含む取締役会で決議する態勢を整備しております。


d.日本郵政株式会社に対するブランド価値使用料
当社は、2015年3月31日付けで、日本郵政株式会社、日本郵便株式会社及び株式会社ゆうちょ銀行との間で、日本郵政グループ共通の理念及び方針その他のグループ運営に係る基本的事項について定め、円滑な日本郵政グループの運営に資することを目的とした「日本郵政グループ協定」を締結し、また、その下で、日本郵政株式会社との間で「日本郵政グループ運営に関する契約」を締結しております(かかる契約の詳細については「4 経営上の重要な契約等」に記載のとおりであります。)。
当該協定等に基づき、グループ運営を適切・円滑に行うために必要な事項や、法令等に基づき日本郵政株式会社による管理等が必要となる事項については、日本郵政株式会社との事前協議又は日本郵政株式会社への報告の対象となります。
また、当該協定等に基づき、当社は日本郵政株式会社に対し、日本郵政グループが持つブランド力を当社の事業活動に活用できることによる利益の対価(郵政ブランドに対するロイヤリティ)として、ブランド価値使用料を支払っております。
当該協定の締結前においても、当社は日本郵政グループに属することによるブランド価値の利益を享受していたものの、完全親子会社関係を前提としていたため、当該ブランド価値に係る金銭の支払いは行っておりませんでしたが、株式会社ゆうちょ銀行及び当社が2015年11月4日に株式上場するにあたり、グループの総合力としてのブランド価値を維持・向上させるという日本郵政株式会社の責務が明確化されたことを契機に、当社はブランド価値使用料を支払うことといたしました。
当社が日本郵政グループに属することにより利益を享受するブランド価値は当社の業績に反映されるとの考え方に基づき、当該利益が反映された業績指標である前年度末時点の保有保険契約高に対して、一定の料率(0.0036%)を掛けて算出することとしております。
この料率は、重大な経済情勢の変化等、特段の事情が生じない限り変更しないこととしております。
なお、ブランド価値使用料は、当社が日本郵政グループに属している限り、継続して支払うこととなり、当社が日本郵便株式会社法に定める関連保険会社としての業務を行っている間は、日本郵政株式会社の当社株式の保有割合にかかわらず、当社は日本郵政グループに属するものとして、当該使用料の支払義務が継続いたします。
重大な経済情勢の変化等の特段の事情に起因してブランド価値使用料の算定方法が変更された場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

e.日本郵政株式会社が有する商標
日本郵政株式会社は、「日本郵政グループ」、「JP」のほか、「かんぽ生命」、「JAPAN POST INSURANCE」等の商標を有しており、2015年3月31日付けで締結した「日本郵政グループ商標管理協定」及び「グループ商標管理契約」により、当社グループがこれらの商標を使用する場合のルールを定めております。また、これらの商標使用についての対価は、上記dに記載のブランド価値使用料に含まれております。
なお、当社はこれらの商標が当社のブランド認知度等に貢献していると考えており、「日本郵政グループ商標管理協定」の終了等により、当該商標が使用できなくなった場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

③ 日本郵政株式会社による当社株式の追加処分に関するリスク
日本郵政株式会社は、当連結会計年度末現在、当社の総議決権数のうち約64.5%を保有しており、引き続き50%超の当社株式を保有しておりますが、郵政民営化法上、日本郵政株式会社が保有する当社株式は、その全部を処分することを目指し、当社の経営状況及びユニバーサルサービスの提供への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に処分するものとされております。日本郵政株式会社は、当社株式を、当社の経営の自由度の拡大、日本郵政グループの一体性や総合力の発揮等も視野に入れ、まずは、保有割合が50%程度となるまで、段階的に売却していく旨を公表しております。郵政民営化法に基づき、当社は同業他社にはない上乗せ規制に服しておりますが(上記「(3) ビジネスモデル、当社特有の規制に関するリスク ③ 郵政民営化法に基づく法規制に関するリスク」に記載のとおりであります。)、かかる規制は、(ⅰ)日本郵政株式会社が当社株式の全部を処分した場合、又は、(ⅱ)日本郵政株式会社が当社株式の2分の1以上を処分し、かつ、内閣総理大臣及び総務大臣が、他の金融機関等との間の適切な競争関係及び利用者への役務の適切な提供を阻害するおそれがないと認め、当該規制を適用しない旨を決定した場合に適用されなくなります(郵政民営化法第134条、第135条)。しかしながら、今後の日本郵政株式会社による当社株式の売却の時期等は未定であり、また上記の決定には当局の裁量が存在するため、上乗せ規制がいつどのように撤廃されるかは、不透明な状況にあります。ただし、上乗せ規制のうち、新商品の開発及び新たな資産運用手段を実施するにあたっての認可等、郵政民営化法第138条に定める業務の制限については、日本郵政株式会社が当社株式の2分の1以上を処分した旨を総務大臣に届け出た日以後は適用されないとされております。この場合において、当社が各業務を行おうとするときは、その内容を定めて、内閣総理大臣及び総務大臣に届け出なければならないとされており、また、業務を行うにあたっては他の生命保険会社との適正な競争関係及び利用者への役務の適切な提供を阻害することのないよう特に配慮しなければならないとされております(郵政民営化法第138条の2)。
今後の日本郵政株式会社による当社株式の売却の時期、売却の規模等は未確定ですが、将来、当社株式の追加的な売却が行われ、又はかかる売却により市場で流通する当社株式の数が増え需給が悪化するとの認識が市場で広まった場合には、当社株式の流動性及び株価形成等に影響を及ぼす可能性があります。
逆に、当社株式の処分に係る郵政民営化法の定めの変更、株式市場の動向等により日本郵政株式会社による当社株式の売却が予定どおりに進まない場合には、上乗せ規制の撤廃が行われず、日本郵政株式会社及び当社が期待する経営の自由度の拡大等が実現しない可能性もあります。

④ 日本郵政株式会社による当社株式の追加処分に伴う、日本郵政グループとの契約関係に関するリスク
日本郵政株式会社による当社株式の売却に伴い、当社が日本郵便株式会社との間で締結している生命保険募集・契約維持管理業務委託契約、保険窓口業務契約、その他の契約の条件が当社に不利な内容に変更された場合や、当該契約が終了した場合は、当社が郵便局ネットワークを利用できなくなるなど、当社の事業を従前どおり維持するために莫大なコストと時間等が必要となり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社が日本郵政グループとの間で締結している日本郵政グループ協定及び日本郵政グループ商標管理協定、並びに当社が日本郵政株式会社との間で締結している日本郵政グループ運営に関する契約及びグループ商標管理契約について、当社が関連保険会社に該当しないこととなり協定や契約そのものを適用しないこととなった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 日本国政府との関係が希薄化することによる顧客の認識の変化に関するリスク
当社は、当社の唯一の株主を日本郵政株式会社、日本郵政株式会社の唯一の株主を日本国政府としている当社の上場前の状態にあっても、日本国政府その他の公的機関から何らの保証その他の信用補完を受けていたわけではありませんが、日本郵政株式会社が当社の親会社ではなくなることに伴い、当社と日本国政府との関係が弱まった場合には、顧客等が、当社の経済的信用力が低下したという誤認や錯誤を有することとなる可能性があります。実際の当社の経済的信用力とは無関係であるにもかかわらず、かかる誤認や錯誤が社会に広く伝播した場合等においては、当社による従業員採用活動への悪影響や、当社の顧客その他の取引先による当社との取引停止、取引量の減少、保険契約の解約、当社にとって不利な取引条件の変更等を誘発する可能性があります。

(7) 資産運用に関するリスク
① 国内金利に関する市場リスク
当社の資産構成においては、円金利資産の割合が高く、当社の契約者に対する債務のデュレーションが運用資産より長期であることから、資産と負債のデュレーションのミスマッチによる国内金利の変動リスクを有しております。
2016年2月の日本銀行によるマイナス金利政策導入以降、低金利環境が継続しておりますが、当社が既に保有している保険契約の予定利率は変わらないことから、当初想定していた運用収益が確保できない、あるいは逆ざや(資産運用ポートフォリオの平均運用利回りが既契約の責任準備金の積立てに用いた予定利率を下回る現象)となる可能性があります。
一方、国内金利が現在の水準より上昇した場合には、資産運用利回りが上昇することにより、利息収入などの収益が向上するものの、債券価格の下落により、評価損・減損損失や売却損等が発生する可能性があります。また、保険契約者がより高い収益を得られる別の金融商品へ資金を移動させることにより、保険契約の解約が増加する可能性があります。

② ①以外の市場リスク
当社は外貨建資産を保有しており、その一部については、為替リスクをヘッジするため為替予約をしております。当社の保有する外貨建資産に係る為替リスクがへッジされていない部分について、為替相場の変動が発生した場合や、為替リスクをヘッジしていたとしても、国内外の金利差拡大によりヘッジコストが高まり、これまでの条件でロールによる為替予約が出来なくなった場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、外国金利の変動により、当社の保有する外国証券の価値が下落した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、当社において、国内外の経済状況又は市場環境の悪化や低迷等によって、保有している株式の価格が下落した場合には、保有株式に評価損・減損損失や売却損等が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、オルタナティブ運用などの資産運用の多様化が、期待した結果を生まない可能性があります。

③ 信用リスク
当社グループの取引先・投資先・当社が保有する有価証券の発行者において、国内外の景気動向や特定の業種を取り巻く経営環境の変化、不祥事の発生、国家間紛争等その他不測の事態により、財政状態が悪化した場合には、信用リスク及び与信関係費用が増加し、又は当社が保有する有価証券の価値が下落すること等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、外国公社債運用などの資産運用の多様化が、期待した結果を生まない可能性があります。

上記①~③のリスクに備えて、当社では、保険契約の引受けによって生じる負債に見合った運用資産を適切に管理し、損益の安定を図る目的で、資産と負債のバランスを考慮してリスクコントロールを行う、ALM(Asset Liability Management:資産・負債の総合的な管理)及び財務健全性の維持を軸にしたERM(Enterprise Risk Management:統合的リスク管理)の高度化に向けた取り組みを継続しております。また、定期的にストレステストを実施し、ストレス事象発生時の対応力を検証するとともに、特に運用資産の多様化にあたっては、審査やモニタリングの体制を強化しています。しかしながら、そうした対応が奏功しないあるいは当社のALMによって対処可能な程度を超えて市場環境が大きく変動した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼすほか、その結果としてお客さまからの信用が毀損され、新規保険契約の減少や解約の増加にもつながる可能性があります。

(8) 保険料設定に関するリスク
当社は、保険の種類及び内容、契約時の被保険者の年齢、性別、保険金額等を考慮して、次に掲げる計算基礎率(予定死亡率、予定利率、予定事業費率)等に基づいて保険料を設定しております。
予定死亡率過去の統計をもとに、性別・年齢別の死亡者数を予測し、将来の保険金の支払等に充てるために必要な保険料を設定いたします。この計算に用いる予測された死亡率を予定死亡率といいます。
予定利率資産運用による一定の収益を予め見込み、その分を割り引いて保険料を設定いたします。この割引率を予定利率といいます。
予定事業費率保険会社の事業運営上必要な経費を予め見込んで保険料を設定いたします。この割合を予定事業費率といいます。

保険契約においては、実際の死亡率が事前に設定した予定死亡率を超過した場合、実際の運用利回りが事前に設定した予定利率を下回った場合、実際の経費が事前に設定した予定事業費を超過した場合には、保険期間中の保険料等の受取総額を、保険金・経費等の支払総額が上回ることにより損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(9) 大規模災害等の発生に伴うリスク
当社は、日本全国に営業網を有して生命保険業を営んでおります。このため、地震、噴火、津波、台風、洪水、大雪等大規模災害、新型インフルエンザ等の感染症の大流行、テロリズム、国家間紛争等の人的災害、水道、電気、ガス、通信・金融サービス等に係る社会的インフラの重大な障害や混乱等が発生した場合には、以下のような事態が発生する可能性があります。
・当初の想定を超える保険金の支払い、又は保険契約解約の発生
・被災に伴う、新規の保険営業機会の低下や保険ニーズの低下による収入保険料の減少
・大規模感染症の拡大に伴う外出自粛要請の発令等による経済活動の停滞と、金融市場におけるリスク回避志向の高まりによる保有株式等の価値の毀損
・当社役職員・関係職員の被災・罹患あるいは災害拡大防止に伴う出勤者の減少による業務の停止又は停滞と、事業継続・復旧のための費用の発生
・当社グループの本社、支店その他の設備や施設の損壊による業務の停止又は停滞と、事業継続・復旧のための費用の発生
・非常時における社会的要請等を踏まえた特別の取扱いやサービスの設定及びその適用事例が当初想定を超えて発生することによる損失の発生
とりわけ、2020年3月期末に発生した新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、当社においても上記の状況が発生するリスクが高まっております。加えて、首都圏直下型地震や、大型台風などの異常気象、大規模感染症等のリスクがあります。
当社では、保険金支払に備えて保険業法上の基準に従って危険準備金を積み立てるほか、十分な資金流動性の確保に努めております。また、万一の際に、保険会社として保険金支払などの重要な業務を確実に実施できる体制を確保するための業務継続計画を策定し、平時から定期的に危機管理委員会や防災訓練等を実施し、全役職員の危機管理意識向上を図るとともに、災害に向けての対応状況を確認しています。また、危機発生時には危機管理委員会を中心に適切かつ迅速な対応をとる体制としており、今般の新型コロナウイルス感染症対応にあたっても、感染の防止と通常業務の維持に努めております。
しかしながら、そうした対応が奏功しないあるいは想定以上の災害が発生し、多額の保険金・給付金の支払いが発生した場合、又は資金繰りの悪化あるいは保険金支払の体制が維持できないことにより、保険金の支払いが滞ることで、社会的な評価の低下を招いたり、業務の復旧に多額の費用や長期の期間を要する場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(10) 情報漏えいリスク
当社グループは、事業を行う上で、当社が直接に又は当社の代理店である日本郵便株式会社を通して、大量の情報を取得し保有しております。この情報には、保険契約者等の個人や法人のお客さまの情報のほか、業務上知り得た様々な内部情報が含まれます。その中でも、個人情報(「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」に定める個人番号も含みます。以下同じ。)については、個人情報の保護に関する法律をはじめとする関係法等に基づき、適切な取扱いが求められております。特に、近年、企業・団体が保有する個人情報の漏えい・紛失や不正なアクセス、サイバー攻撃等が発生するケースが多発しており、より厳格な管理が要求されております。
当社グループでは、プライバシーポリシーを策定するとともに、情報管理に関する規程等を整備し、厳正な情報管理に努めております。従業員、代理店、業務委託先又はその他の者による不正なアクセス等により、今後、仮に当社が保有する個人情報やその他重要な情報が外部に漏えい等した場合には、損害賠償請求や行政調査、指導又は処分を受ける可能性があり、また、かかる事案に対応するための時間及び費用が生じること、当社グループの社会的信用が毀損すること等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(11) 人材の確保に関するリスク
当社グループは、生命保険会社としての業務遂行のため、保険数理、資産運用、リスク管理等各分野において安定した事務遂行と高い専門性を有する有能で熟練した人材を必要としております。しかし、有能で熟練した人材は限られており、かつ、当社グループは人材の確保及び採用において他社等と競合しているため、有能で熟練した人材の採用又は育成及び定着を図ることができない可能性があります。
また、「(1) 募集品質・コンプライアンスに関するリスク ① 保険募集プロセスの品質事案に関するリスク」に記載のとおり、現在、当社グループはお客さま等ステークホルダーからの信用を大きく毀損しており、有能な人材の確保は一層困難な状況になっています。さらに、役職員の自己都合による退職が増加する可能性があります。
以上のようなリスクに備えて、当社グループでは、多様かつ有為な人材の確保・育成に向けて、①計画的な人材育成、②適材適所に基づくジョブローテーション、③一人ひとりのモチベーションの最大化、④働き方改革に取り組んでおりますが、これらの対応が奏功せずに、有能な人材の確保・育成が進まない、又は退職者が想定を超えて増加する等の場合には、当社グループの競争力の相対的な低下を招き、結果として、当社グループの業務運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(12) 訴訟等に関するリスク
当社グループは、事業の遂行に関して、訴訟、行政処分その他の法的手続が提起又は開始されるリスクを有しております。また、人事処遇や勤務管理などの人事労務上の問題、職場の安全衛生管理上の問題等に関連する訴訟等を、当社グループの従業員等から提起される可能性もあります。さらに、「(1) 募集品質・コンプライアンスに関するリスク ① 保険募集プロセスの品質事案に関するリスク」に記載のとおり、保険募集プロセスの品質事案に関連して、保険契約者等から訴訟を提起される可能性があります。
当社に対する新たな訴訟が提起された場合、その解決には相当の時間及び費用を要する可能性があります。また、社会的関心・影響の大きな事象についての訴訟等が発生し、当社に対して損害賠償の支払いが命じられる等不利益となる判断がなされた場合には、当社グループの社会的信用、業務運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(13) 風評・風説等に関するリスク
当社グループが行っている事業全般に対する風評・風説が、報道機関・市場関係者への情報伝播、インターネット上の掲示板やソーシャル・ネットワーキング・サービスへの書き込み等により拡散し、報道機関により否定的報道が行われる場合には、当社グループが提供するサービスの公益性、事業規模、社会における認知度・注目度等を背景に、当該風評・風説、報道等が事実に基づくか否かにかかわらず、顧客や市場関係者等から否定的理解・認識をされ、又は強い批判がなされる可能性があり、それにより、商品、サービス、事業のイメージ・社会的信用がさらに毀損し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(14) 格付けの低下に関するリスク
当社は、株式会社格付投資情報センター(R&I)、株式会社日本格付研究所(JCR)、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン株式会社(S&P)の各格付会社より信用格付けを取得しております。2020年3月末現在における信用格付けは、それぞれ「AA-」(保険金支払能力)、「AA」(保険金支払能力格付)、「A」(保険財務力格付け)となっており、当社の財務の健全性に対して一定の評価を得ているものと認識しております。しかしながら、契約乗換等に係る事案の発生を受け、当社の業務運営の根幹である新契約の獲得、保有契約の維持並びに事業費の抑制などが計画どおりに進捗せず、当社の将来的な財務内容の見通しが悪化することにより、各社の信用格付けが引き下げられた場合には、当社グループの資本市場における負債性資金の調達が当社グループに有利な内容で行えない可能性があるとともに、当社の業務運営に対する不安を想起させ、さらなる新規契約の減少又は既存契約の解約の増加等につながる可能性があります。


Ⅲ 上記以外のリスク

(15) リスク管理の有効性に関するリスク
当社グループは、リスク管理に関する規程を定め、リスク管理態勢を整備し、保険引受リスク、資産運用リスク、市場流動性リスク、資金繰りリスク及びオペレーショナルリスクの全般の管理を実施しております。
しかしながら、当社グループのリスク管理は、過去の経験・データに基づいて構築されているため、将来発生するリスクを正確に予測することができず、新しい業務分野への進出や外部環境の変化等によりリスク管理が有効に機能しない可能性があります。
また、当社グループがリスク管理の方針及び手続を策定する際、参考又は前提とした情報が真実性、正確性、完全性又は合理性に欠ける場合には、リスク管理の有効性に悪影響を与える可能性があります。
さらに、当社グループの事業に内在するリスクを管理するためには、膨大な取引や事象の適切な記録、審査、調査等に係る方針及び手続の有効性や効率性等が重要ですが、かかる方針や手続が万全とは言えない可能性があります。
加えて、リスク管理の実施及びその遵守状況の監督は、当社グループ内部だけでなく、当社の商品及びサービスを提供する日本郵便株式会社における郵便局ネットワーク全体に対しても行う必要があります。郵便局ネットワークは、当社の商品及びサービスに加えて、株式会社ゆうちょ銀行の商品及び日本郵便株式会社の郵便・物流サービスも提供しているところ、約2万局の郵便局を有する郵便局ネットワークに対する実施・監督に困難又は落ち度が生じた場合には、当社によるリスク管理が機能せず、又は不十分となる可能性があります。
当社は、経営環境、リスクの状況などの変化に応じ、リスク管理態勢全般について随時見直しを行い、万全のリスク管理態勢を構築するよう努めておりますが、当社グループのリスク管理態勢が有効に機能しない場合や、欠陥が発生した場合等には、予期していなかった損失を被る可能性や、行政処分を受ける可能性があり、当社グループの社会的評価、事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社は今後、必要な許認可等を取得の上、当社の商品及びサービスの内容や範囲を拡充する方針ですが、当社の事業拡大に伴い、リスク管理態勢の増強も必要となります。しかし、事業の拡大に比してリスク管理態勢の拡充が十分ではない場合等においては、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(16) 市場流動性・資金繰りに関するリスク
① 市場流動性リスク
金融市場の混乱等により、市場において正常に金融商品の取引・資金決済ができなくなった場合や、通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされることになった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、国内外の金融市場及び経済状況の悪化等により、市場の流動性が減退した場合には、当社の保有する資産の売却可能性や価値が減少する可能性があります。

② 資金繰りリスク
当社の財務内容の悪化等による新契約の減少に伴う保険料収入の減少、大量解約に伴う解約返戻金支出の増加、巨大災害に伴う保険金の大量支払による資金流出等により資金繰りが悪化し、保険金等の支払いが滞った場合や資金の確保に通常よりも著しく低い価格での資産売却を余儀なくされることにより損失を被った場合には、当社グループの業務運営、社会的信用、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(17) オペレーショナルリスク
当社グループが業務を遂行していく過程には、オペレーショナルリスクが存在し、内部及び外部の不正行為、労務管理及び職場環境面での問題発生、顧客本位の業務運営への対応が不十分であることによる信用失墜、自然災害による被災やシステム障害等に伴う事業中断及び不適切な事務処理、外部への情報漏えいの発生等が生じる可能性があります。特に、当社は郵便局ネットワークに大きく依存しており、そこでは当社の事業のみならず、銀行・物流のサービスも並行して提供されるため、これらのオペレーショナルリスクが顕在化する可能性が相対的に高く、当社グループの業務運営、社会的信用、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

① 事務リスク
当社グループの業務には、従業員等が適正かつ正確な事務を怠る、あるいは事故、不正等を起こすことにより損失を被る事務リスクが存在します。これらの事務リスクが顕在化した場合には、当社グループの業務運営に影響を及ぼす可能性があります。

② システムリスク
当社グループは、当社が保有するシステムだけでなく、日本郵政株式会社、日本郵便株式会社及び株式会社ゆうちょ銀行が所有するシステム等も利用して、生命保険の募集及び管理業務を行い、また、全国の郵便局や当社の各種拠点等と通信を行っており、情報システムは、当社の事業にとって極めて重要な機能を担っております。
かかる情報システムには、地震、噴火、津波、台風、洪水、大雪、火災等の自然災害やテロリズム等の外的要因に加えて、人的過失、事故、停電、ハッキング、コンピュータウイルスの感染、サイバー攻撃、システムの新規開発・更新における瑕疵、通信事業者等の第三者の役務提供の瑕疵等により重大な障害や故障等が発生する可能性があります。こうしたシステム障害・故障等が生じた場合には、業務の停止・混乱及びそれに伴う損害賠償、行政処分、社会的信用の毀損、これらに対する対応や対策のためのコスト等が発生することにより、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

③ 保険金の支払いに関するリスク
当社は、正確・迅速な保険金等のお支払いが生命保険会社の根幹業務であるとの認識の下、支払管理態勢の強化、お客さまサポートの充実に取り組んでおりますが、何らかの理由により、監督当局又は当社が支払管理態勢の強化が不十分であると判断した場合には、各種改善策を講じる可能性があり、当社グループの社会的信用、事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(18) 業務提携に伴うリスク
当社グループは、様々な業務について、他社との提携を行っております。業務提携先において業務遂行上の問題が生じ、商品・サービスの提供に支障をきたす場合、保険契約者の情報の漏えい等の重大な違法行為が発生した場合等において、当社グループの業務運営、社会的信用、事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(19) 保険会社全般に適用される法制度等に関するリスク
当社は日本の生命保険会社であり、保険業法及び関連業規制の下、他の日本の生命保険会社と同様に、金融庁による監督下にあります。保険業法及び関連業規制の主な目的は、保険業を行う者の業務の健全かつ適切な運営及び保険募集の公正を確保することにより、保険契約者等の利益を保護することにあります。この目的に基づき、保険業法は、内閣総理大臣(原則として金融庁長官に権限委任。以下同じ。)に対して、免許取消しや業務停止、報告徴求、会計記録等に関する厳格な立入り検査の実施等、保険業に係る広範な監督権限を与えております。特に、以下のいずれかに該当することとなったときには、保険業法第133条及び第134条の定めにより、業務の全部若しくは一部の停止又は免許の取消しを命ぜられる可能性があります。
・法令、法令に基づく内閣総理大臣の処分又は定款、事業方法書、普通保険約款、保険料及び責任準備金の算出方法書に定めた事項のうち特に重要なものに違反したとき
・保険業の免許に付された条件に違反したとき
・公益に害する行為をしたとき
・保険会社の財産の状況が著しく悪化し、保険業を継続することが保険契約者の保護の見地から適当でないと認められたとき

生命保険業免許は、当社の主要な事業活動の前提となっております。当該免許に期限はありませんが、上記のとおり取消事由等が定められております。当連結会計年度末現在において、免許取消事由等に該当する事象は発生していないと認識していますが、当該事象が発生した場合には当社の事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。
加えて、当社は、金融庁が日本の生命保険会社の健全性を判断する指標として定める、ソルベンシー・マージン比率と実質純資産に基づく監督に服しております。
ソルベンシー・マージン比率は、大災害や株価の大暴落など、通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる「支払余力」を有しているかどうかを判断するための行政監督上の指標の一つです。2020年3月31日現在、当社の連結ソルベンシー・マージン比率は1,070.9%であり、法令上の規制比率に比べ相当程度高い水準を確保しておりますが、近時の金融市場の状況に対応した収益追求資産の増加により、低下する傾向にあります。これが200%を下回った場合には、内閣総理大臣による早期是正措置が発動される可能性があり、当社グループの業務運営、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、保険監督者国際機構(以下「IAIS」といいます。)は、コムフレーム(国際的に活動する保険会社グループ(以下「IAIGs」といいます。)に対する共通の監督枠組み)やその一部であるIAIGsに対する保険資本基準(以下「ICS」といいます。)について議論を行ってきました。その結果、IAISは、2019年11月にコムフレームを採択し、ICSについて2020年から5年間のモニタリングを行った後、2025年から規制資本要件として適用する実施計画を公表しております。IAISの構成員である金融庁は、この議論に沿った国内各社に対する新たな規制の導入を検討しておりますが、現行の規制とは大きく異なる可能性があります。このように新たな規制や基準等が導入された場合には、これらに含まれる制約が、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
そのほか、国際会計基準審議会は、2017年5月に保険契約に関する初めての真に国際的な基準として、国際財務報告基準(以下「IFRS」といいます。)第17号「保険契約」を公表しております。当該基準は保険契約を経済価値で評価するため、毎期の変動が純資産に影響を及ぼす可能性があります。今後、日本の法定会計の変更等により、IFRS又は同基準に準じる基準を当社グループの会計基準において適用する場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(20) 法改正に伴うリスク
当社グループは、上記「(19) 保険会社全般に適用される法制度等に関するリスク」に記載した保険業法による規制以外にも、保険法、犯罪による収益の移転防止に関する法律等、各種の法規制の適用を受けており、その改正、その執行に関する政府方針の変更等が行われることにより、関連するコンプライアンス対策の強化・改善のための追加的な費用が発生するなど、当社グループの業務運営、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(21) WTOの手続きに関するリスク
日本は、国家間での物品・サービス等の調達について、国際的なルールを定める機関である、WTO(World Trade Organization:世界貿易機関)の加盟国であることから、政府調達においては、国内の供給者等に特別な保護を与えることなく、透明性のある、かつ、公平な方法で調達を実施することが要請されております。
日本は、加盟国として「政府調達に関する協定を改正する議定書」を定めていますが、この中で、公社を承継した会社は、この議定書に定められたルールが適用されるとされており、当社グループが物品等の調達を実施する場合においては、WTOによる政府調達のルールを遵守する必要性があります。
当社グループの作為又は不作為により、これらのルールを遵守できなかった場合には、調達行為が成立しない、あるいは調達行為に遅れが発生する可能性があり、当初想定していた計画が実施できないなど、当社グループの社会的信用、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。


(22) 責任準備金の積立に関するリスク
当社は、日本の生命保険会社として、保険業法及び関連業規制に基づき、保険料収入の大部分を、責任準備金として将来の保険金等の支払いに備えて積み立てております。責任準備金は、当社の負債の最も大きな部分を占めているものであり、各保険契約の保障対象となる事象の起こる頻度や時期、保険金等支払額、資産運用額等につき一定の前提を置き、これらに基づく見積りによって計算されるものであります。これらの前提と実際の結果が乖離した場合や環境の変化により将来乖離が見込まれる場合には、責任準備金の積増しが必要となる可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、責任準備金の積立水準に関するガイドラインや標準利率・標準生命表は、金融当局である金融庁等によって定められているものですが、これらに変更があった場合には、保険料見直しや責任準備金の積増しが必要となる可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(23) 契約者配当準備金に関するリスク
当社が確保すべき契約者配当準備金の繰入額は費用として扱われ、これにより各事業年度における純利益が減少します。当社は契約者配当準備金の繰入額の決定について裁量を有しており、その水準については、当社商品の競争力、業績、ソルベンシー・マージン比率等の様々な要素を考慮して判断しておりますが、その水準によっては、当社グループの株主への配当原資の額、事業、業績及び財政状態又は当社の株式価値に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約については、「旧簡易生命保険契約に基づく保険責任に係る再保険契約」において、当社が引き受けた保険契約と区分してその収益及び費用を経理するものとし、簡易生命保険契約の再保険損益の8割を契約者配当準備金に繰り入れることとしております。また、再保険配当の計算方法の変更の必要性について、毎事業年度、郵政管理・支援機構と当社間で協議することとされておりますが、本契約締結以降、当該計算方法が変更されたことはなく、当連結会計年度末時点において変更の予定もありません。

(24) 固定資産の減損損失に関するリスク
当社グループは、固定資産の減損会計を適用しております。当社グループが保有する固定資産について、経営環境の変化や収益性の低下等により減損損失を計上することになる場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(25) 繰延税金資産に関するリスク
当社の繰延税金資産は、現行の会計基準に従い、将来の課税所得見積りを合理的に行った上で計上しておりますが、将来の課税所得見積額の変更や税制改正に伴う税率の変更等により、繰延税金資産額が減少するなど、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(26) 退職給付債務に関するリスク
当社グループの退職給付費用及び債務は、将来の退職給付債務算出に用いる年金数理上の前提条件に基づいて算出しておりますが、金利環境の急変等により、実際の結果が前提条件と異なる場合、前提条件に変更があった場合等には、退職給付費用及び債務が増加する可能性があります。また、当社グループの退職給付制度を改定した場合にも、当社が追加的に負担すべき債務が発生する可能性があります。これらの退職給付費用及び債務の増加又は発生により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(27) 生命保険契約者保護機構への負担金及び国内の他の生命保険会社の破綻に係るリスク
当社は、生命保険契約者保護機構(以下「保護機構」といいます。)への負担金支払義務を負っております。保護機構は、破綻した生命保険会社の保険契約者を保護することを目的としており、破綻した生命保険会社から他の生命保険会社へ保険契約を移転する際に、資金援助を実施しております。保護機構への負担金額は保険料収入及び責任準備金の額などに応じて決められるため、当社の保険料収入及び責任準備金の額が他の生命保険会社に比して増加した場合、負担金が増加する可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、日本の他の生命保険会社の破綻は、日本の生命保険業界全体の評価にも悪影響を与え、保険契約者の生命保険業界全体に対する信用を損ない、これにより当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(28) 管理会計等に基づく数値等の正確性に関するリスク
本書には、日本の会計基準によらず、外部監査を受けていない管理会計等に基づく数値・分析等が含まれております。当社は、これらについても正確性の確保に努めておりますが、有効でない場合等には、当該数値等の信頼性に影響を及ぼす可能性があります。

従業員の状況研究開発活動


このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E31755] S100ITE5)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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