有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100J2Q6 (EDINETへの外部リンク)
ブライトパス・バイオ株式会社 研究開発活動 (2020年3月期)
当社は、設立以来、新規作用メカニズムのがん免疫治療薬の研究開発を行っています。
なお、当社は医薬品開発事業及びこれに付随する単一セグメントであり、当事業年度における研究開発費は1,484百万円であります。
(1)GRN-1201:がんペプチドワクチン
GRN-1201は、欧米人に多いHLA-A2型のペプチド4種で構成される、米国や欧州を始めとするグローバル展開を想定したがんペプチドワクチンです。より多くの抗腫瘍効果をもつT細胞を誘導できるよう複数抗原をワクチンとして投与するところに特徴があります。米国でメラノーマ(悪性黒色腫)を対象に第一相臨床試験を実施し、安全性と免疫誘導が示され、現在は同じく米国で、非小細胞肺がんの、免疫細胞にダメージを与える化学療法をいくつも経た患者でなく一次治療(ファースト・ライン)の患者を対象に、日本発ワクチンとしては初となる、免疫チェックポイント阻害抗体ペンブロリズマブとの併用による第二相臨床試験を実施しています。これまでのがんワクチンの開発は、ワクチンで誘導された活性化T細胞が、免疫抑制がかかる腫瘍局所に浸潤したとき疲弊してしまう可能性が技術課題として挙げられてきました。そこで、本第二相臨床試験では、ペンブロリズマブをワクチンと併用することで免疫抑制を一部解除し、T細胞が本来の抗腫瘍効果を発揮できるようになることを想定しています。一定の累積症例数に至ったところで、中間評価を行い、目標とする奏効率をクリアしていれば、さらに症例数を積み重ねていきます。
本試験は米国で進めており、治験施設は地域の中核病院として新型コロナウイルスの感染拡大防止への対応に追われているため、現在の臨床試験中のがん治療薬候補の大部分と同様に、追加の患者登録が一時的に滞っている状況にあります。この状況が想定より長引けば全体の治験計画に影響を及ぼす可能性があります。
(2)BP1101:ネオアンチゲン
BP1101は、がん特有の遺伝子変異由来の抗原(ネオアンチゲン)に対するがん免疫を誘導する完全個別化ネオアンチゲンワクチンです。がん遺伝子変異量(ネオアンチゲンの量)と免疫チェックポイント抗体療法の奏功が相関することから、同抗体によりネオアンチゲンをがんの目印として認識するT細胞の抗腫瘍効果が高まると考えられています。このネオアンチゲンは患者一人ひとりで全く異なるため、一人ひとりに個別のネオアンチゲンワクチンを製造し投与する完全個別化治療となり、一定の患者層に共通した薬剤を大量製造することを前提とする従来の医薬品とは異なる開発法が求められます。現在非臨床試験を進めています。
(3)BP1401:TLR9アゴニスト
BP1401は、免疫抑制が強くかかる腫瘍微小環境において抗腫瘍効果を持つT細胞が能動的に賦活化される環境を整えるために、樹状細胞の受容体TLR9を刺激するTLR9アゴニストです。BP1401による刺激はサイトカインシグナルを介して、T細胞が腫瘍局所に浸潤していない“Cold Tumor”を、それらが多く存在する“Hot Tumor”へと転換することを図るものです。BP1401は、このTLR9アゴニストの有効成分である核酸を脂質に織り込む脂質製剤とすることで安定性を高め、標的とするTLR9発現樹状細胞へのデリバリーを高めています。現在非臨床試験を進めています。
(4)iPS-NKT:iPS細胞由来再生NKT細胞療法
iPS-NKTは、iPS細胞から再分化誘導したNKT細胞を用い、固形がんを対象とする新規の他家細胞医薬です。NKT細胞は、多面的な抗腫瘍効果を持ちながら、血中に僅かしか存在しないため、従来の培養法では細胞療法として機能を保った細胞を十分量確保できないという課題がありました。そこで、NKT細胞を一旦iPS細胞化することによって、培養での高い増殖能を付与し、そこからNKT細胞に再び分化誘導するという技術開発に成功し、これをがん免疫細胞療法に用いることができるようになりました。iPS細胞技術は、現在の自家中心の細胞療法に、均質な細胞の大量製造を可能にするマスターセルバンク型の他家細胞療法を可能にし、当年度は数々の大手製薬企業の参入が表明されましたが、臨床試験に進むに当たってこれらに先行しております。
当社は2018年に、理化学研究所が進める本開発プロジェクトに参画し、共同研究を進めており、iPS-NKTの独占的開発製造販売ライセンスの導入オプション権を有しています。世界でも初となるiPS細胞由来再生NKT細胞療法の臨床応用実現に向け、医師主導治験を後押しするとともに、医師主導治験に続く企業治験を見据えた製造工程改良を進めてまいります。
(5)BP2301:HER2 CAR-T
BP2301は、様々な固形がんで高発現しているHER2抗原を認識するキメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞(HER2 CAR-T細胞)療法です。血液がんで70-90%の奏効率に至ることもあり、優れた臨床効果を示し承認されたCAR-T療法を、より多くの患者がいる固形がんへと適応を拡げることを目指しています。固形がんへの展開には、がん免疫に抑制がかかる腫瘍微小環境においてCAR-T細胞が疲弊し十分に機能を発揮できないという課題があります。この課題を解決するために、当社は信州大学の中沢洋三教授及び京都府立医科大学の柳生茂希助教らと新規CAR-T細胞培養法を共同開発し、これを中沢教授の非ウイルス遺伝子導入法と組み合わせることにより、若いメモリーフェノタイプの、体内で長期生存可能で、したがって持続的な抗腫瘍効果発現が期待されるCAR-T細胞の製造に成功しました。現在、非臨床試験を実施中です。
(6)BP1200:抗CD73抗体
BP1200は、腫瘍内でのアデノシン産生に介入するCD73を標的とする新規免疫調整因子抗体です。腫瘍内で産生されるアデノシンは、T細胞の疲弊と抑制を引き起こし、抗腫瘍免疫活性を低下させます。CD73は多くのがんで高発現し、予後不良を引き起こすことが報告されています。BP1200はCD73のアデノシン産生酵素の機能を阻害します。
T細胞ががん細胞を殺傷するがん免疫の成立を妨げる様々な要因が腫瘍局所には存在しますが、その要因のトリガーとなる免疫調整因子の代表的なものがPD-1/PD-L1です。ニボルマブやペンブロリズマブといった抗PD-1抗体は、T細胞疲弊を促す免疫チェックポイントPD-1を抗体で阻害することによってがん免疫の成立が可能となることを、科学的に証明しました。抗PD-1抗体はがん治療の革新をもたらしましたが、それでも奏効率はがん種により10-40%であり、残りの抗PD-1抗体で効果が得られない60-90%の患者の「がん免疫」を、PD-1以外の抑制系免疫調整因子の一つであるCD73を阻害することによって成立させようとするのがBP1200です。今後リード最適化とさらなる機能評価ならびにより機能の高い新規クローンの取得を進める予定です。
(7)BP1210:抗TIM-3抗体
BP1210は、世界各国の多様ながん種、ステージで医薬品承認が進む免疫チェックポイントPD-1/PD-L1阻害抗体に続く、免疫チェックポイントTIM-3を阻害する新規抗体です。TIM-3はPD-1分子の局在や機能と同様に、T細胞に発現し、腫瘍局所においてT細胞の疲弊を促します。BP1210は、T細胞に発現するTIM-3を阻害することにより、TIM-3がもたらす細胞疲弊を回避し、抗腫瘍免疫活性を亢進します。抗PD-1抗体で、抑制系免疫チェックポイントの阻害で「がん免疫」が成立することが科学的に証明されたように、同じ抑制系免疫チェックポイントTIM-3を阻害することにより、抗PD-1抗体だけでは不十分だった「がん免疫」を成立させることを目指します。今後リード最適化とさらなる機能評価ならびにより機能の高い新規クローンの取得を進める予定です。
(8)その他の開発プログラム
これらに加え、新しい世代のがん免疫を亢進する抗体医薬シーズを複数創製しており、川崎創薬研究所においてこれらの研究を加速してまいります。
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E31851] S100J2Q6)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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