有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100G1LK
戸田建設株式会社 研究開発活動 (2019年3月期)
当社グループは、社会、顧客及び社内各部門のニーズやCSRに的確に応えるため、技術開発センターを中心に技術部門の総力を結集して、基礎的研究から新製品開発までの幅広い研究開発活動を行っております。特に重要なテーマについては「技術研究開発プロジェクト」を起こし、全社的な取り組みで短期間に開発を行い着実に成果をあげております。また、西松建設㈱との共同研究をはじめ、公的機関、大学、異業種企業、同業他社との技術交流、共同開発を積極的に推進して、多様な分野での研究開発の効率化を図っております。
当連結会計年度における研究開発費の総額は1,679百万円であり、セグメントごとの研究開発活動は以下のとおりであります。
(国内建築及び国内土木)
(1)建築環境関連技術
当社は「エコ・ファースト企業」として環境大臣と当社が施工中に排出するCO2総量を2030年に1990年比70%削減、2050年には80%削減することなどを約束しております。2018年度の作業所におけるCO2排出量は72,703t-CO2(基準年比62.3%減)、CO2排出量原単位は14.2t-CO2/億円(基準年比50.2%減)となりました。
建設工事施工中に発生するCO2排出量を削減する活動を「低炭素施工システム(TO-MINICA)」と称し、全国の作業所で活用しております。
こうした活動は外部からも評価されており、全世界の企業の環境活動を評価するCDPイニシアチブからは、最高評価である「気候変動A List」に選ばれました。また、2019年1月には、事業運営における電力を100%再生可能電力で調達する取り組みである、RE100にも加盟し、気候変動対策への取り組みをさらに強化しました。
さらに、この削減目標設定の取り組みが国際的イニシアチブであるSBTi(Science Based Targets Initiative)から、科学的根拠に基づくものであることが認められました。この認定は、日本の建設業界では初めてのことであります。
ZEB(ネット・ゼロエネルギー・ビル)の実現に向けて、環境配慮建築に対する各種要素技術を総合的に実験・検証するために、技術研究所に建設した「環境技術実証棟」において、建物外装の断熱手法、自然換気や昼光などの自然エネルギー利用、潜顕分離空調など省エネに寄与できる設備システム、また快適性など環境の品質を向上に資する技術要素について技術開発に取り組んでいます。また、結露に関する設計・施工ノウハウをまとめた「結露防止対策Navi」を開発し、社内展開を図っています。
さらに、技術研究所においては、太陽光パネルや燃料電池からの供給電力を直流のまま供給し、省エネルギー等を図る「直流給電システム」や、省エネを図りながら満足感を向上させることを目的に、居住者の暑い・寒いなどの温冷感に応じて制御を行う「申告型空調システム」を開発・試験導入し、さらなる研究開発に取り組んでおります。
(2)生物多様性関連技術
植生や生物の地域特性を考慮し、緑化設計の妥当性を評価できる「生物多様性評価システム」、食品工場などの防虫対策に関するノウハウまとめた「防虫学校」を開発し、社内展開を図っております。
また、研究所敷地は、関東・水と緑のネットワーク拠点百選にも選出されており、研究所内における施設整備に合わせて、希少種を中心とした移植等による保護・保全手法の研究に取り組んでおります。
(3)放射性廃棄物処分の関連技術
放射性廃棄物処分関連技術としては、ベントナイトに関する技術の開発、地下深部での地震動測定と耐震性評価、海外情報調査、新規制基準制定に伴う学会標準改定の業務、原子力発電所の廃炉に関する調査などを実施しました。
(4)超高層建物構工法関連技術
超高層RC造では、SuperHRCシステムを積極的に採用し、建設中を含めて延べ57棟に適用しております。2016年2月に竣工した55階建て超高層集合住宅では設計基準強度200N/mm2の超高強度コンクリートを採用しました。
コンクリート充填鋼管(CFT)造では、高強度のコンクリートを充填した鋼管に鉄筋を内蔵したSuper CFT造を開発し、構造評定を取得しました。設計施工で高さ178mの複合ビルや設計中の案件を含めて11棟の実績があります。
(5)免震・制振技術
精密生産施設の微振動対策技術では、弾性すべり支承と剛すべり支承を用いた微振動対応型の免震工法に加え、新たに高層住宅の風対策や生産施設の微振動対策用にオイルダンパー付き弾性すべり支承を開発し、2016年2月に生産施設に適用しております。
また、より高性能な免震システムとして、地震の揺れに応じて減衰係数を切り換え、小中地震から大地震まで幅広い範囲で揺れを抑えることが可能な「セミアクティブ免振技術」、電源を用いないで減衰のON/OFFを切り換える「自己復元型トリガー機構」を開発しております。
(6)BCP関連技術
東日本大震災の教訓を受け、BCM対策の核となるソリューション技術として建物の損傷を迅速かつ適格に評価可能な「ユレかんち」を展開しております。「ユレかんち」はIoT技術を実装したローコストなシステムであり、事務所、工場等の複数建物の一括監視を可能にしております。社内物件20棟、社外物件48棟に適用しております。
(7)天井脱落対策技術
在来工法天井の落下・脱落防止対策として「天井耐震クリップ工法」を開発し、技術審査証明を取得しました。また、特に重要な施設のBCP対策として「制震天井システム」や特定天井にも適用可能な高い耐震性能を有する「ペアロッククリップ」を開発しました。ペアロッククリップは2016年9月より当社の施工現場で標準的に採用されております。
また、天井内に多数設置される斜め材の代わりに、門型の抵抗部材を集約して設置し、天井内に多くのスペースを確保しながら、高い耐震性能を実現する「門天工法」を開発しました。「門天工法」は、2017年12月に日本建築センターの技術審査証明を取得しました。
(8)基礎・地盤関連技術
場所打ちコンクリート杭について、常時および地震時の支持力及び引抜き抵抗を向上させ基礎構造の減量化・合理化をはかるための「Me-A工法」を開発し、高層建物への適用など水平展開を進めております。2019年4月時点で共研他社も含めて350件を超える実績があります。
杭基礎の安全性向上および施工性向上のため,鋼管コンクリート杭の杭頭接合部に角型の鋼板プレートを設置して構造性能および配筋の納まりを向上させた「鋼板補強型杭頭接合工法(TO-SPCap工法)」を開発し,日本建築総合試験所の技術性能証明を取得しました。現在施工中を含めて6物件に採用しています。
(9)建築仕上げ材料関連技術
高耐久性床、抗菌・防かび床、帯電防止床を開発し、実用化しております。また、臭気対策として「ゼオライト消臭塗料(オドキャッチャー)」、抗菌対策として光触媒技術を利用した抗菌コーティング材を開発し、病院等に展開しております。
また、木質材料の利用拡大を目指し、耐久性評価などの研究開発を進めております。
(10)建築生産システム関連技術
地上の施工技術では、施工BIMデータを活用した鉄骨自動計測システムの開発、すでに開発した自動計測、建入制御システム、仮ボルト不要接合工法の改良を行い、全支店に展開・活用を予定しております。ロボット技術では、SLAM技術を用いた自律搬送ロボを開発し、現場に導入します。今後、エレベータと連動した水平垂直自動搬送システムの完成を目指します。BIMや衛星測位を利用した3次元タワークレーン自動誘導システムの開発、吊荷旋回制御装置の大型化を今後予定しております。
地下の施工技術では、水の凍結膨張圧を利用した現場造成杭の余盛りコンクリートを低騒音、低振動、無粉塵で杭頭処理を行うことができる「凍結杭頭処理工法」を全支店展開し、公共工事における総合評価落札方式の技術提案に評価され、技術点の高得点を得て、落札(受注)に寄与しております。2019年3月時点で318本の実績があります。また、解体が困難なマスコンクリート構造物を効率よく解体する工法の開発に着手しました。
(11)ICT生産管理関連技術
ICTおよびIoT技術を活用し、現場の安全・品質の向上、施工効率を高めることを目的に、人工知能を活用した様々なシステム開発に着手しました。また、AR・MR等の画像処理技術を活用をしたコンテンツやシステムの開発を行っております。場内通信については、無線メッシュネットワークのシステム検証と、建設中の建築・土木工事で新しいネットワーク環境の研究を進めております。
また、作業者の安全対策として、ヘルメットに設けた生体センサからの信号をもとに熱ストレスの予測などを行う安全管理システムを開発し、現場への導入を進めております。
(12)音響・遮音関連技術
ホールなどの大空間における音楽・講演等をより快適に聴くことのできる空間を提供する室内音響関連技術、交通騒音や隣室騒音等の聞きたくない音を低減する遮音関連技術の双方の研究開発を実施し、多くの実物件に適用しております。
防音壁などの先端部に取り付けることで大きな騒音低減効果が得られるエッジ効果抑制パネル「エッジサイレンサー」を開発し、工事中の騒音対策だけでなく本設にも適用しました。また、トンネル工事中の発破音の低減対策にも取り組んでおります。
集合住宅で問題となる重量床衝撃音に対して、天井内に敷設するだけで低減できる、床衝撃音低減材「サイレント・ドロップ」をフクビ化学工業㈱と共同開発し、建材設備大賞2018を受賞しました。
さらに、近隣への設備騒音などの対策として、敷地境界における騒音予測システムを開発し、社内展開を図っております。
(13)シールド関連技術
狭隘な都市域においてシールド発進立坑用地の確保を容易にした「省面積立坑システム」は、当社施工28件、他社施工分を含めると47件の現場適用実績を持ちます。下水道管きょの劣化防止を目的とした「シールドトンネル内面被覆工法」は、民間6社で共同研究を実施し、(公財)日本下水道新技術機構の技術審査証明を取得済みであります。また、シールド工法の分野では工事で発生する自然由来の重金属汚染土を浄化するシステム、地盤変状の抑制やシールド掘進の効率化など目的に応じた種々の裏込め注入システムの開発や、シールドの発進到達の効率化を図った仮壁直接切削技術の実用化を図るとともに、シールドのAI化を視野に入れたシールドの自動掘進システムの開発に取り組んでいます。さらに、推進工法の分野では、φ3500mm以上の長大口径推進工事の実績を積み上げるとともに、推進工法を応用した「交差点アンダーパス工法」、「非開削トンネル構築工法」等の技術を開発し、営業展開、現場適用に取り組んでおります。
(14)山岳トンネル技術
増加基調の山岳トンネル工事に対応する技術として、覆工品質の向上、支保・補助工法技術の改良、調査計測技術の高度化、環境負荷低減、自動化・高速施工技術の開発・現場適用に部門横断組織で積極的に取り組んでおります。
覆工品質の向上については、覆工コンクリートの充填センサである「ジュウテンミエルカ」の開発が完了し、打設状況の可視化ツールとして一般販売を開始しました。支保・補助工法技術については、吹付けリバウンドを低減できる「Me吹付けコンクリート」、削孔水による地山の脆弱化を防止する「フォアプレート工法」、防水シートの損傷防止に寄与する「突起レスロックボルト」、脚部補強工の「NT-Support」の現場適用に取り組んでいます。調査計測における切羽前方地山の可視化ツールとして開発した「DRiスコープ」は、2017岩の力学連合会フロンティア賞を受賞し、さらなる現場適用を推進しています。環境負荷低減技術については、帯電ミストを用いた粉じん抑制技術や発破低周波音抑制技術の開発に取り組んでいます。また、生産性向上を目指した自動化・高速施工技術としては、自動吹付けシステムの開発や覆工打設管理システム、コンピュータジャンボの穿孔データを活用した地山評価技術や発破設計技術の開発に取り組んでいます。
(15)コンクリート技術
設計基準強度200N/mm2 の超高強度コンクリートや、収縮を低減させることでひび割れを防止し高耐久化を図るフィットクリート(低収縮コンクリート)の開発・現場適用を行っております。さらに、収縮をほとんどゼロにした極低収縮コンクリートを共同開発し、現場適用を行いました。また、現場でコンクリート工事の生産性向上を図る新しい高機能性流動化剤を開発し、すでに7件の適用事例があります。
品質管理に関して、コンクリートの現場受入時の品質管理システムやコンクリート施工時の打重ね時間管理システムを構築しました。また、(独)土木研究所との共同研究である「ボス供試体によるコンクリート構造物の品質検査法」については、(一社)日本非破壊検査協会の微破壊試験の規格として制定され、国土交通省地方整備局の橋梁直轄工事に採用されております。
既設コンクリート構造物の健全度評価技術として、透気・透水試験器を用いた評価方法や小径のコア内で強度を推定する「孔内局部載荷試験」を開発し、実際の調査・点検業務に展開しております。
(16)インフラ再生技術
既設トンネル等の補修補強工法として、新しい無機系繊維材料を用いた「BFP修繕工法」を開発しました。本工法は連続繊維をプレート状に加工し、トンネル覆工内面に設置することで耐荷性や変形性能を向上させる工法であり、鉄道トンネルを主体として現場展開しております。また、高速道路等の「既設床版架替えに係る新型継手工法」を開発中であり、今後、老朽化したインフラ再生技術の開発について積極的に取り組んでいきます。
(17)基盤整備関連技術
わが国の持続的発展を図る上で、社会基盤整備は急務の課題であり、それらを支援するために各種の技術提案及び開発を実施しております。オーバーパスに対応した立体交差急速施工技術「すいすいMOP工法」、アンダーパスに対応した非開削トンネル構築技術「さくさくJAWS工法」(鉄道工事に採用)、鉄道連続立体高架の工期短縮を実現するプレキャストアーチ式高架橋「すいすいSWAN工法」、開削地下構造物の急速構築技術「さくさくSLIT工法」を積極的に提案展開しております。老朽インフラ更新技術、排泥量削減を目指した地盤掘削技術「気泡掘削工法」及び「特殊ポリマー安定液工法」(エンジニアリング功労賞受賞)、地盤強化・液状化対策技術「ハイグリップグラウト工法」など、持続可能で災害に強い基盤整備に資する施工技術の向上を目指しております。また、大規模加速器計画などの地下岩盤利用分野についても積極的に取り組んでおります。
(18)医療施設関連技術
病院内の臭気対策として「ゼオライト消臭塗料(オドキャッチャー)」を開発し、さらに、光触媒技術の利用をはじめとした「院内感染対策トイレシステム」を開発しております。その他、手術室、病室のレイアウト検討のためにバーチャルリアリティ(VR)技術を使った「病院VRシステム」の開発や、洗面台やコンソールなど病室内設備のユニット化にも取り組んでおります。
また、無線通信技術を利用した次世代病院向け照明システム「スマートホスピタルライティングシステム」を開発し、埼玉県立がんセンターをはじめ、複数の病院等に導入しております。
(新領域)
(1)再生可能エネルギー関連技術
鋼とコンクリートを複合利用した浮体式洋上プラットフォームの技術を共同開発し、風力発電に応用、環境省による「浮体式洋上風力発電実証事業委託業務」を受託し、2013年度には実証機(2MW)の実海域設置を成功させ、2015年度に予定通り実証事業を終了しました。2016年度には日本初の実用化を実現し、発電事業として運転データを収集し、制御、設計技術に反映しております。また、コスト削減のための量産化や施工合理化、係留、調査、O&Mなど、普及拡大に向けた技術開発を継続しております。
(2)農業関連技術
茨城県常総市内に農業実証ハウス「TODA農房」を建設し、土地整備関連事業等における提案技術の一つとして、主に施設園芸農業の事業化や園芸ハウスの建設等に関する技術開発を開始しました。
(3)連結子会社における研究開発の主なもの
オフショアウィンドファームコンストラクション㈱において、環境省の「低炭素型浮体式洋上風力発電低コスト化・普及促進事業」の補助を受けて浜出船を建造し、2018年3月に完成しました。2019年度は浜出船等を活用して実証施工を行い、浮体式洋上風力発電施設の建設費の低コスト化及び施工の低炭素化を検証します。
(投資開発、国内グループ会社及び海外)
研究開発活動は特段行われておりません。
当連結会計年度における研究開発費の総額は1,679百万円であり、セグメントごとの研究開発活動は以下のとおりであります。
(国内建築及び国内土木)
(1)建築環境関連技術
当社は「エコ・ファースト企業」として環境大臣と当社が施工中に排出するCO2総量を2030年に1990年比70%削減、2050年には80%削減することなどを約束しております。2018年度の作業所におけるCO2排出量は72,703t-CO2(基準年比62.3%減)、CO2排出量原単位は14.2t-CO2/億円(基準年比50.2%減)となりました。
建設工事施工中に発生するCO2排出量を削減する活動を「低炭素施工システム(TO-MINICA)」と称し、全国の作業所で活用しております。
こうした活動は外部からも評価されており、全世界の企業の環境活動を評価するCDPイニシアチブからは、最高評価である「気候変動A List」に選ばれました。また、2019年1月には、事業運営における電力を100%再生可能電力で調達する取り組みである、RE100にも加盟し、気候変動対策への取り組みをさらに強化しました。
さらに、この削減目標設定の取り組みが国際的イニシアチブであるSBTi(Science Based Targets Initiative)から、科学的根拠に基づくものであることが認められました。この認定は、日本の建設業界では初めてのことであります。
ZEB(ネット・ゼロエネルギー・ビル)の実現に向けて、環境配慮建築に対する各種要素技術を総合的に実験・検証するために、技術研究所に建設した「環境技術実証棟」において、建物外装の断熱手法、自然換気や昼光などの自然エネルギー利用、潜顕分離空調など省エネに寄与できる設備システム、また快適性など環境の品質を向上に資する技術要素について技術開発に取り組んでいます。また、結露に関する設計・施工ノウハウをまとめた「結露防止対策Navi」を開発し、社内展開を図っています。
さらに、技術研究所においては、太陽光パネルや燃料電池からの供給電力を直流のまま供給し、省エネルギー等を図る「直流給電システム」や、省エネを図りながら満足感を向上させることを目的に、居住者の暑い・寒いなどの温冷感に応じて制御を行う「申告型空調システム」を開発・試験導入し、さらなる研究開発に取り組んでおります。
(2)生物多様性関連技術
植生や生物の地域特性を考慮し、緑化設計の妥当性を評価できる「生物多様性評価システム」、食品工場などの防虫対策に関するノウハウまとめた「防虫学校」を開発し、社内展開を図っております。
また、研究所敷地は、関東・水と緑のネットワーク拠点百選にも選出されており、研究所内における施設整備に合わせて、希少種を中心とした移植等による保護・保全手法の研究に取り組んでおります。
(3)放射性廃棄物処分の関連技術
放射性廃棄物処分関連技術としては、ベントナイトに関する技術の開発、地下深部での地震動測定と耐震性評価、海外情報調査、新規制基準制定に伴う学会標準改定の業務、原子力発電所の廃炉に関する調査などを実施しました。
(4)超高層建物構工法関連技術
超高層RC造では、SuperHRCシステムを積極的に採用し、建設中を含めて延べ57棟に適用しております。2016年2月に竣工した55階建て超高層集合住宅では設計基準強度200N/mm2の超高強度コンクリートを採用しました。
コンクリート充填鋼管(CFT)造では、高強度のコンクリートを充填した鋼管に鉄筋を内蔵したSuper CFT造を開発し、構造評定を取得しました。設計施工で高さ178mの複合ビルや設計中の案件を含めて11棟の実績があります。
(5)免震・制振技術
精密生産施設の微振動対策技術では、弾性すべり支承と剛すべり支承を用いた微振動対応型の免震工法に加え、新たに高層住宅の風対策や生産施設の微振動対策用にオイルダンパー付き弾性すべり支承を開発し、2016年2月に生産施設に適用しております。
また、より高性能な免震システムとして、地震の揺れに応じて減衰係数を切り換え、小中地震から大地震まで幅広い範囲で揺れを抑えることが可能な「セミアクティブ免振技術」、電源を用いないで減衰のON/OFFを切り換える「自己復元型トリガー機構」を開発しております。
(6)BCP関連技術
東日本大震災の教訓を受け、BCM対策の核となるソリューション技術として建物の損傷を迅速かつ適格に評価可能な「ユレかんち」を展開しております。「ユレかんち」はIoT技術を実装したローコストなシステムであり、事務所、工場等の複数建物の一括監視を可能にしております。社内物件20棟、社外物件48棟に適用しております。
(7)天井脱落対策技術
在来工法天井の落下・脱落防止対策として「天井耐震クリップ工法」を開発し、技術審査証明を取得しました。また、特に重要な施設のBCP対策として「制震天井システム」や特定天井にも適用可能な高い耐震性能を有する「ペアロッククリップ」を開発しました。ペアロッククリップは2016年9月より当社の施工現場で標準的に採用されております。
また、天井内に多数設置される斜め材の代わりに、門型の抵抗部材を集約して設置し、天井内に多くのスペースを確保しながら、高い耐震性能を実現する「門天工法」を開発しました。「門天工法」は、2017年12月に日本建築センターの技術審査証明を取得しました。
(8)基礎・地盤関連技術
場所打ちコンクリート杭について、常時および地震時の支持力及び引抜き抵抗を向上させ基礎構造の減量化・合理化をはかるための「Me-A工法」を開発し、高層建物への適用など水平展開を進めております。2019年4月時点で共研他社も含めて350件を超える実績があります。
杭基礎の安全性向上および施工性向上のため,鋼管コンクリート杭の杭頭接合部に角型の鋼板プレートを設置して構造性能および配筋の納まりを向上させた「鋼板補強型杭頭接合工法(TO-SPCap工法)」を開発し,日本建築総合試験所の技術性能証明を取得しました。現在施工中を含めて6物件に採用しています。
(9)建築仕上げ材料関連技術
高耐久性床、抗菌・防かび床、帯電防止床を開発し、実用化しております。また、臭気対策として「ゼオライト消臭塗料(オドキャッチャー)」、抗菌対策として光触媒技術を利用した抗菌コーティング材を開発し、病院等に展開しております。
また、木質材料の利用拡大を目指し、耐久性評価などの研究開発を進めております。
(10)建築生産システム関連技術
地上の施工技術では、施工BIMデータを活用した鉄骨自動計測システムの開発、すでに開発した自動計測、建入制御システム、仮ボルト不要接合工法の改良を行い、全支店に展開・活用を予定しております。ロボット技術では、SLAM技術を用いた自律搬送ロボを開発し、現場に導入します。今後、エレベータと連動した水平垂直自動搬送システムの完成を目指します。BIMや衛星測位を利用した3次元タワークレーン自動誘導システムの開発、吊荷旋回制御装置の大型化を今後予定しております。
地下の施工技術では、水の凍結膨張圧を利用した現場造成杭の余盛りコンクリートを低騒音、低振動、無粉塵で杭頭処理を行うことができる「凍結杭頭処理工法」を全支店展開し、公共工事における総合評価落札方式の技術提案に評価され、技術点の高得点を得て、落札(受注)に寄与しております。2019年3月時点で318本の実績があります。また、解体が困難なマスコンクリート構造物を効率よく解体する工法の開発に着手しました。
(11)ICT生産管理関連技術
ICTおよびIoT技術を活用し、現場の安全・品質の向上、施工効率を高めることを目的に、人工知能を活用した様々なシステム開発に着手しました。また、AR・MR等の画像処理技術を活用をしたコンテンツやシステムの開発を行っております。場内通信については、無線メッシュネットワークのシステム検証と、建設中の建築・土木工事で新しいネットワーク環境の研究を進めております。
また、作業者の安全対策として、ヘルメットに設けた生体センサからの信号をもとに熱ストレスの予測などを行う安全管理システムを開発し、現場への導入を進めております。
(12)音響・遮音関連技術
ホールなどの大空間における音楽・講演等をより快適に聴くことのできる空間を提供する室内音響関連技術、交通騒音や隣室騒音等の聞きたくない音を低減する遮音関連技術の双方の研究開発を実施し、多くの実物件に適用しております。
防音壁などの先端部に取り付けることで大きな騒音低減効果が得られるエッジ効果抑制パネル「エッジサイレンサー」を開発し、工事中の騒音対策だけでなく本設にも適用しました。また、トンネル工事中の発破音の低減対策にも取り組んでおります。
集合住宅で問題となる重量床衝撃音に対して、天井内に敷設するだけで低減できる、床衝撃音低減材「サイレント・ドロップ」をフクビ化学工業㈱と共同開発し、建材設備大賞2018を受賞しました。
さらに、近隣への設備騒音などの対策として、敷地境界における騒音予測システムを開発し、社内展開を図っております。
(13)シールド関連技術
狭隘な都市域においてシールド発進立坑用地の確保を容易にした「省面積立坑システム」は、当社施工28件、他社施工分を含めると47件の現場適用実績を持ちます。下水道管きょの劣化防止を目的とした「シールドトンネル内面被覆工法」は、民間6社で共同研究を実施し、(公財)日本下水道新技術機構の技術審査証明を取得済みであります。また、シールド工法の分野では工事で発生する自然由来の重金属汚染土を浄化するシステム、地盤変状の抑制やシールド掘進の効率化など目的に応じた種々の裏込め注入システムの開発や、シールドの発進到達の効率化を図った仮壁直接切削技術の実用化を図るとともに、シールドのAI化を視野に入れたシールドの自動掘進システムの開発に取り組んでいます。さらに、推進工法の分野では、φ3500mm以上の長大口径推進工事の実績を積み上げるとともに、推進工法を応用した「交差点アンダーパス工法」、「非開削トンネル構築工法」等の技術を開発し、営業展開、現場適用に取り組んでおります。
(14)山岳トンネル技術
増加基調の山岳トンネル工事に対応する技術として、覆工品質の向上、支保・補助工法技術の改良、調査計測技術の高度化、環境負荷低減、自動化・高速施工技術の開発・現場適用に部門横断組織で積極的に取り組んでおります。
覆工品質の向上については、覆工コンクリートの充填センサである「ジュウテンミエルカ」の開発が完了し、打設状況の可視化ツールとして一般販売を開始しました。支保・補助工法技術については、吹付けリバウンドを低減できる「Me吹付けコンクリート」、削孔水による地山の脆弱化を防止する「フォアプレート工法」、防水シートの損傷防止に寄与する「突起レスロックボルト」、脚部補強工の「NT-Support」の現場適用に取り組んでいます。調査計測における切羽前方地山の可視化ツールとして開発した「DRiスコープ」は、2017岩の力学連合会フロンティア賞を受賞し、さらなる現場適用を推進しています。環境負荷低減技術については、帯電ミストを用いた粉じん抑制技術や発破低周波音抑制技術の開発に取り組んでいます。また、生産性向上を目指した自動化・高速施工技術としては、自動吹付けシステムの開発や覆工打設管理システム、コンピュータジャンボの穿孔データを活用した地山評価技術や発破設計技術の開発に取り組んでいます。
(15)コンクリート技術
設計基準強度200N/mm2 の超高強度コンクリートや、収縮を低減させることでひび割れを防止し高耐久化を図るフィットクリート(低収縮コンクリート)の開発・現場適用を行っております。さらに、収縮をほとんどゼロにした極低収縮コンクリートを共同開発し、現場適用を行いました。また、現場でコンクリート工事の生産性向上を図る新しい高機能性流動化剤を開発し、すでに7件の適用事例があります。
品質管理に関して、コンクリートの現場受入時の品質管理システムやコンクリート施工時の打重ね時間管理システムを構築しました。また、(独)土木研究所との共同研究である「ボス供試体によるコンクリート構造物の品質検査法」については、(一社)日本非破壊検査協会の微破壊試験の規格として制定され、国土交通省地方整備局の橋梁直轄工事に採用されております。
既設コンクリート構造物の健全度評価技術として、透気・透水試験器を用いた評価方法や小径のコア内で強度を推定する「孔内局部載荷試験」を開発し、実際の調査・点検業務に展開しております。
(16)インフラ再生技術
既設トンネル等の補修補強工法として、新しい無機系繊維材料を用いた「BFP修繕工法」を開発しました。本工法は連続繊維をプレート状に加工し、トンネル覆工内面に設置することで耐荷性や変形性能を向上させる工法であり、鉄道トンネルを主体として現場展開しております。また、高速道路等の「既設床版架替えに係る新型継手工法」を開発中であり、今後、老朽化したインフラ再生技術の開発について積極的に取り組んでいきます。
(17)基盤整備関連技術
わが国の持続的発展を図る上で、社会基盤整備は急務の課題であり、それらを支援するために各種の技術提案及び開発を実施しております。オーバーパスに対応した立体交差急速施工技術「すいすいMOP工法」、アンダーパスに対応した非開削トンネル構築技術「さくさくJAWS工法」(鉄道工事に採用)、鉄道連続立体高架の工期短縮を実現するプレキャストアーチ式高架橋「すいすいSWAN工法」、開削地下構造物の急速構築技術「さくさくSLIT工法」を積極的に提案展開しております。老朽インフラ更新技術、排泥量削減を目指した地盤掘削技術「気泡掘削工法」及び「特殊ポリマー安定液工法」(エンジニアリング功労賞受賞)、地盤強化・液状化対策技術「ハイグリップグラウト工法」など、持続可能で災害に強い基盤整備に資する施工技術の向上を目指しております。また、大規模加速器計画などの地下岩盤利用分野についても積極的に取り組んでおります。
(18)医療施設関連技術
病院内の臭気対策として「ゼオライト消臭塗料(オドキャッチャー)」を開発し、さらに、光触媒技術の利用をはじめとした「院内感染対策トイレシステム」を開発しております。その他、手術室、病室のレイアウト検討のためにバーチャルリアリティ(VR)技術を使った「病院VRシステム」の開発や、洗面台やコンソールなど病室内設備のユニット化にも取り組んでおります。
また、無線通信技術を利用した次世代病院向け照明システム「スマートホスピタルライティングシステム」を開発し、埼玉県立がんセンターをはじめ、複数の病院等に導入しております。
(新領域)
(1)再生可能エネルギー関連技術
鋼とコンクリートを複合利用した浮体式洋上プラットフォームの技術を共同開発し、風力発電に応用、環境省による「浮体式洋上風力発電実証事業委託業務」を受託し、2013年度には実証機(2MW)の実海域設置を成功させ、2015年度に予定通り実証事業を終了しました。2016年度には日本初の実用化を実現し、発電事業として運転データを収集し、制御、設計技術に反映しております。また、コスト削減のための量産化や施工合理化、係留、調査、O&Mなど、普及拡大に向けた技術開発を継続しております。
(2)農業関連技術
茨城県常総市内に農業実証ハウス「TODA農房」を建設し、土地整備関連事業等における提案技術の一つとして、主に施設園芸農業の事業化や園芸ハウスの建設等に関する技術開発を開始しました。
(3)連結子会社における研究開発の主なもの
オフショアウィンドファームコンストラクション㈱において、環境省の「低炭素型浮体式洋上風力発電低コスト化・普及促進事業」の補助を受けて浜出船を建造し、2018年3月に完成しました。2019年度は浜出船等を活用して実証施工を行い、浮体式洋上風力発電施設の建設費の低コスト化及び施工の低炭素化を検証します。
(投資開発、国内グループ会社及び海外)
研究開発活動は特段行われておりません。
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ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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