有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100FHLZ
株式会社福田組 研究開発活動 (2018年12月期)
当社グループの研究開発活動は、「価値創造」の経営理念のもと、生産性向上・品質向上・自然環境の保全に加え、新たな分野への市場参入を目的とした新工法の実証実験等を中心に取り組んでおります。
また、現場に密着した研究開発ニーズと独創的なアイディアの発掘を目的として、広く社員から意見を募り研究開発活動に反映させております。
なお、当連結会計年度は研究開発費として、168百万円を投入しております。
当連結会計年度の主な研究テーマは次のとおりであります。
( 建設事業 )
(1) 当社
① 免震技術、免震ゴム交換方法の研究
免震建築物については9棟の施工実績を有しております(内6棟は設計・施工)。
また、建物に既に設置されている免震ゴムの交換方法について研究を進めており、2019年から2020年には、実際の建物において免震ゴムの交換工事を行う予定です。
② 既存建築物の改修技術の研究
既存建築物の耐震性向上や耐久性改善等の長寿命化及びコンバート対応できるリニューアル技術を研究し、ストック価値を高める構・工法の開発を目指しております。特に、リニューアル工事につきましては、設計・施工による実績も増加しており、耐震補強に関する提案力の向上及びその受注に向けた取り組みを行っております。
③ 荷取り構台の開発
新築や改修などで使用できる、従来よりコンパクトで軽量な荷取ステージの開発を行い、新築の現場で2件、改修の現場で1件、試作品による施工実験を実施しました。その結果、特に改修の現場で、高い有用性が確認できました。今後、それら施工実験結果を基に改良を行い、水平展開を図って行く予定です。
④ コンクリートの長さ変化、ひび割れに関する調査・研究
コンクリート強度、骨材、混和材などをパラメータとして、コンクリートの長さ変化やひび割れの観察などの調査・研究を行っており、今後、そのデータを現場で活用して行く予定です。
⑤ BIMの活用への取り組み
BIMについてはいくつかのモデル現場を選定し、配筋の納まりの確認や施工ステップの3D化など、現場での活用に向けた取り組みを行っており、今後も継続して行く予定です。
⑥ ICT技術の活用への取り組み
測量機器関連のメーカーなどと協力して、現場での3Dスキャナーの活用や鉄骨建て方の効率化の検証実験などを行いました。ICT技術の検証実験などは今後も継続して行い、有効性が確認出来たものは、現場へ水平展開して行く予定です。
⑦ シールド工事等で発生する自然由来ひ素汚染汚泥の浄化技術の開発
自然由来のひ素を含有し環境基準値を超過する地域は全国的に分布しているため、建設工事において発生土や汚泥がひ素に汚染されている事例は多く見られます。一方、環境関連法の強化、土壌汚染に対する認識の高まりから、汚染土壌の処理コストが高騰しており、それらの効率的かつ経済的に処理する技術の開発が求められております。特に都市部におけるシールド工事等においては多量の余剰汚泥が発生し、それらの処理技術の開発は喫緊の課題であるため、自然由来ひ素汚染汚泥を低コストかつ効率的に浄化する技術の開発に取り組んでおります。
⑧ トンネル切羽前方探査システム
トンネル切羽前方の地質や地下水の状態を精度よく調査するために、トンネル切羽より前方にボーリングして、そのボーリング孔を利用した電気探査トモグラフィーの探査方法と解析方法を開発し、トンネル現場での活用を目指しております。
⑨ 自由面発破における自由面形成パターンの合理的検討手法に関する研究
山岳トンネル工事で、発破振動を大幅に低減することが求められる場合において、掘削面に自由面を形成させることで大幅に振動を低減させる自由面発破が有効であります。しかしながら、コストや工程に与える影響も少なくないことから、合理的な自由面発破パターンの検討手法を確立するための研究を行っております。
⑩ 高耐久コンクリートの開発
新潟県を含む日本海側の沿岸部は厳しい塩害環境にあり、また、沿岸部以外でも積雪寒冷地であることから凍結防止剤による塩害を受けております。他方、社会インフラの維持更新時代を迎え、鉄筋コンクリート構造物の長寿命・高耐久化が求められております。そこで、セメントに各種混和材を混合した高耐久コンクリート(耐塩害)の開発を目的として研究開発を進めております。
⑪ 橋梁維持更新(吊足場)
橋梁における維持管理及び補修においての作業床の敷設施工における作業員の安全性の向上、敷設の円滑化による作業効率の向上を目的とした吊足場の実証実験を進め、実用化に向けた開発を進めております。
⑫ 中・高層建築物の階上解体工法の改善
解体する建物が高く、周囲に解体重機の稼動空間が無い場合に、スラブ・梁を多数の強力パイプサポートで鉛直・複数階にわたって補強支持し、解体重機を吊り上げて上層から解体する工法が採用されます。1本の強力パイプサポートは60kgと重く運搬設置作業が重労働でありますが、スラブへの鉛直設置では補強効果が小さいため、工事費低減と安全性向上を図る検討を行っております。
⑬ コンクリート構造物の補強工法
高度経済成長期に建設した社会インフラが今後一斉に老朽化し、建設後50年以上経過する施設の割合が加速度的に増加することが予想されています。これらのインフラを効果的に維持管理・延命化することを目的に複合パネルを用いた補強工法の開発に取り組んでおります。
⑭ デュアルシールドマシンコントロール
都市土木の地下トンネル工事ではシールド掘進機を使用して施工を行っておりますが、現場作業員の高齢化に伴い、掘進機の熟練オペレーター不足が今後懸念され、新規にオペレーターを育成し技術を習得させるにも年単位の時間が掛かってまいります。熟練オペレーターの判断内容を現場の実施工操作データとして解析し、思考のプロセス・ノウハウを習得することで、オペレーターの技量を問わず掘進機操作が可能となるシステムの開発に取り組んでおります。
(2) 福田道路㈱
1. 技術開発
① 「マルチファインアイ(画像損傷診断システム)」について
2017年12月14日にサービス提供を開始し、自治体等から6件の計測を行いました。その中で、地方自治体との実証実験も進めています。実証実験は、今までの管理手法との整合性と新たな帳票の作成、既存データの整理に取り組んでいます。
② 「再生添加剤」の評価について
アスファルトプラントから出荷される再生混合物に必要な「再生添加剤」については、評価すべき「扱いやすさ」を数値化できていない現状です。アスファルト混合物の品質向上のため、各種「再生添加剤」の「扱いやすさ」を数値化すべく、室内試験でも評価できる新しい試験機を設計・作成中です。この試験機を使用して各種混合物の評価を行い、「扱いやすさ」を数値化すべく取り組んでいきます。
③ 「骨材の大きいハイブリッド舗装」の開発
今後、到来する維持補修時代に対応すべく、1層5cm厚で「耐流動」、「クラック抑制」、「凍結抑制効果」、「車両騒音の低減」(ハイブリッド舗装)が図れる混合物を骨材の大きい材料を使用した配合で検討しました。特徴である骨材の大きい材料を使用し、舗装表面が凸凹となり、かつ凸凹が深くなるようにアスファルトプラントで試験練りを行いました。その結果から配合を絞り、転圧方法を代えた水準で検討を進めていきます。
④ 「半たわみ性舗装」の耐久性向上による高耐久性舗装
決められた路線を港湾から出入りするコンテナ車などで運搬するルートが今後特定される予定です。この路線では、耐流動性や耐久性が求められます。また、駐車場についても、このような車両が停止するため、同様な対策が必要となります。耐流動性の高い「半たわみ性舗装」を更に高耐久性とすべく、セメントミルクの配合を樹脂の多い配合とし、曲げ試験で評価しました。今後は、セメントミルクの施工性も含めて開発を行います。
⑤ 舗装工事の省人化が可能なアスファルト混合物
アスファルト舗装については、長らく機械編成も含め省人化(施工人数の削減)が図られていません。省人化を図るためには、施工するアスファルト混合物が締固め効率の良い、アスファルト混合物であることが望ましいです。アスファルト混合物の配合を検討し、アスファルトプラントで試験練りを実施しました。試験練り結果から施工体制を確認し、試験施工を行う予定です。目的は、転圧する機械の省力化や敷均し作業員の削減を図ることによってアスファルト舗装の施工体制を省力化へと変えることです。
⑥ 舗設における熱中症予防対策
夏期におけるアスファルト舗装については、毎年熱中症が懸念されます。特に高温で敷均するアスファルトフィニッシャの周辺は、ぶり返しの熱もあるため、特に注意が必要となります。熱中症対策として、夏期、施工中のアスファルトフィニッシャに直接ミストファンを2台取り付け、ミストにより周辺の雰囲気温度を下げることができました。(温度測定した結果、ミストのため舗設温度は低下しませんでした。)これらから得られたデータを基に熱中症対策として進めていきます。
⑦ コンクリート舗装の養生対策(休日取得のため)
コンクリート舗装は、硬化するプロセスで水和反応のため水分が必要不可欠となります。コンクリートの養生については、打設後、一定期間養生・散水が必要となります。平日、コンクリートを打設した場合、養生(散水)には休日も必要となる場合があります。休日取得のため、保水量のある養生マットを比較試験しました。その中の保水量のある養生マットを更なる利便性を向上させるため、マットの上から散水することができるスリット入りマットに取り組んでいます。
2. 各種登録について
① NETIS登録
・申請中:おとなしくん
② 特許申請等
・申請中:おとなしくん
3. その他
追跡調査
今年度、追跡調査を行ったのは以下の5技術となります。
・アイスインパクト (弾性型凍結抑制舗装)
・ファインシート (多機能性凍結抑制舗装技術)
・ヒートドレッシング工法 (加熱式表面処理工法)
・ヒートドレッシング・Jr (加熱式クラック補修工法)
・メジテープ (成形目地材)
また、明石高専との共同研究(溶融スラグ入りアスファルト舗装の実証実験)については、今年度も追跡調査を実施しました。また、その縁から明石高専の学生を数名、当社のアスファルトプラントで工場見学会を開催することができました。
(3) ㈱興和
① KVSストレーナ
水質が悪く、井戸の耐久性の低下が懸念される地域に対する井戸構造材料として、耐食材料『塩化ビニル管(VP)、ステンレス巻線(SUS)』を組み合わせ、長さ5.5mの“KVSストレーナ”を開発し、販売を開始いたしました。亜鉛メッキ巻線を使用しておらず、地下への亜鉛溶出がなく環境性能が高いこともPR材料となっております。本製品は2009年にNETISに、2010年度にMade in 新潟に登録されており、2018年度は、自社施工、他社販売も含め約464本、累計で3,673本の販売を行っております(2017年度には、Made in 新潟ゴールド技術登録、県知事表彰受賞)。
② 法面作業用アシストロリップ
法面作業を行う際は、立木やアンカーに結んだ「命綱」と作業員の腰部につけた「安全帯」、それと命綱と安全帯を接続する『ロリップ』を用いて身体を支持しています。しかし、ロリップは『握ると動き』『離すと止まる』という仕組みを持っているものの、落ちそうになった時、咄嗟にロリップを握ってしまう事例もあり、逆に墜落してしまう重大事故も発生しておりました。こうした人間の本能(反射)に反する面もあり、改善が望まれていました。
そこで、ヒューマンエラーによる事故防止を目的に、ロリップの下に追加設置する補助装置(アシストロリップ)を開発いたしました。本製品は2009年度にMade in 新潟に、2011年度にNETISに登録されており、2011~2018年度の累計で727個の販売実績があり、労働安全衛生規則第593条の2の改正に対応する改良(補助ロープ対応)を検討・現場検証中であります。
③ フレキシブル伸縮計
地すべり地の地盤変状の監視には、従来インバー線を用いた伸縮計が一般的に用いられてきました。しかし、インバー線は細く動物や木の枝などが触れると簡単に破断するため、厳重に保護する必要があり、設置費や設置労務が掛かるといった問題があります。また、積雪地域では、通常の保護方法の他に、必ず雪囲いが必要となります。
これに比べフレキシブル伸縮計は、インバー線の代わりにφ5mm程度の炭素繊維ケーブルを用いて、簡易な保護で地盤形状に合わせて設置可能であり、設置費や設置労力が少なくてすみます。
フレキシブル伸縮計の炭素繊維ケーブルは、2010年度にNETIS及びMade in 新潟に登録されており、2006年~2018年度の累計で約4,620m(20m/箇所)の実績があり、今後も販売拡大が見込まれます。
④ 遠隔監視制御機器(ネットワークロガー)
下水道流域のマンホールポンプの運転状況や故障、マンホール内の水位を管理事務所で監視できる遠隔監視制御装置を開発いたしました。この機器は、2005年~2018年度の累計で1,062台の販売実績があり、今後も下水道関係の他に、農場関係の揚水ポンプや道路排水ポンプ、消雪用ポンプの遠隔監視用に販売が見込まれております。
⑤ 集水井点検カメラ
砂防関係施設の点検において、現存施設の機能及び性能を的確に把握しておくことが重要とされています。砂防関係施設のうち、集水井工は地すべり対策工として地下水排除を目的とする重要施設となりますが、現行の点検方法では集水井工の構造や形状、立坑内の環境による問題点が多く、困難な作業となっておりました。
このため、経済的かつ簡易で正確に立坑内の状況や機能の確認が確認出来る“立坑(集水井工)内の点検装置(集水井点検カメラ)”を開発しました。本点検装置は2017年2月に特許(特許6089069号)を取得しており、全周撮影型を新たに開発し特許出願中であります。これまでに国土交通省及び新潟県等発注の砂防施設点検業務を中心に使用し、107箇所の防止区域602基の集水井工において点検を行っております。今後も砂防関係施設点検への活用が期待されております。
⑥ MR(複合現実)技術の活用
現実世界と仮想モデルを相互に融合するMR(複合現実)に着目し、建設業界での利活用方法を模索してきました。2017年から新潟県内のゲーム・アニメ等のコンテンツ開発会社とMR出力システムの共同開発を行っております。
現在は、地中熱ヒートパイプ融雪、下水熱利用融雪システムのMRモデルを制作し、客先とのイメージ共有やPRに利用しております。将来的には、公共的な構造物などの3D台帳化による維持管理などが見込まれております。
⑦ TRT(熱応答試験)装置
地中熱利用設備の設計に必要な地中採熱量等の調査に使用するTRT(熱応答試験)装置を開発しました。そして、2017年4月から始まった建築物の省エネ基準適合性判定に対応するため特定非営利活動法人地中熱利用促進協会が創設したTRT装置認定制度における全国第1号認定を2017年3月に受けております。
地下100mにわたる深度別温度計測機能、WEBを通じた遠隔監視制御機能など、他社には見られない優位な機能を有しており、自社で使用するほかシステムの販売も開始しており、新潟県柏崎市の地中熱関連事業を中心に、TRTの実績は20件以上に上っております。
⑧ 場所打ち杭工事等における無溶接鉄筋篭組立工法
場所打ち杭工事等においては、通常の鉄筋コンクリート工事と異なり、組み立てた鉄筋を吊上げて建込みをするため堅固な鉄筋篭の現場製造が求められております。しかし、2012年の道路橋示方書改訂以降、現場溶接が禁止されたことから、鉄筋篭崩壊事例が散見されております。
改訂前から無溶接による鉄筋篭組立に着目し、開発グループの一員となって組立工法開発に取り組み、2011年度にNETIS登録をして、資材販売を始めております。2017年度からは、新潟県内でも国道バイパス工事に採用されはじめ、徐々に当工法の優位性が浸透しつつあります。また、2018年8月には、工法を構成する技術のひとつである、アプセットバット溶接で環状型帯鉄筋を製作する「ピタットフープ」が建築技術性能証明を受けております。
(4) ㈱レックス
① 表面含浸材塗布装置の開発
近年増えている表面含浸材の塗布によるコンクリート構造物補修工事では、人力施工が主体であり、施工管理手法が確立されておりません。そこで、機械化施工による施工や管理の効率化及び施工品質の向上を図るため、「表面含浸材塗布装置」の開発を行い、2009年にMade in 新潟登録を行っております。2011年度には、作業性や信頼性を向上させた改良型の装置を開発しております。
これまでに、国土交通省、新潟県等の発注工事において活用されております。
② 防護柵清掃工法(GRクリーン工法)の開発
消雪パイプ設置区間において防護柵類に付着した錆汚れは、視線誘導機能や美観を損なうものであり、汚れの除去が困難であるため問題となっておりました。
そこで、洗剤メーカーと共同で防護柵清掃専用洗剤による「GRクリーン工法」を開発し、洗浄後の排水処理手法も含めた防護柵清掃工法を開発し、2010年にはMade in 新潟登録を行っております。
③ 社会インフラ維持管理上の課題を解決するため技術・工法の開発
橋梁の長寿命化に寄与する補修工法や維持管理技術、トンネルの清掃機械、農業水利施設の補修材料等、道路構造物をはじめとした社会インフラの維持管理上の課題を解決するための技術や工法の開発に取り組んでおります。
( 不動産事業及びその他 )
研究開発活動は、特段行われておりません。
また、現場に密着した研究開発ニーズと独創的なアイディアの発掘を目的として、広く社員から意見を募り研究開発活動に反映させております。
なお、当連結会計年度は研究開発費として、168百万円を投入しております。
当連結会計年度の主な研究テーマは次のとおりであります。
( 建設事業 )
(1) 当社
① 免震技術、免震ゴム交換方法の研究
免震建築物については9棟の施工実績を有しております(内6棟は設計・施工)。
また、建物に既に設置されている免震ゴムの交換方法について研究を進めており、2019年から2020年には、実際の建物において免震ゴムの交換工事を行う予定です。
② 既存建築物の改修技術の研究
既存建築物の耐震性向上や耐久性改善等の長寿命化及びコンバート対応できるリニューアル技術を研究し、ストック価値を高める構・工法の開発を目指しております。特に、リニューアル工事につきましては、設計・施工による実績も増加しており、耐震補強に関する提案力の向上及びその受注に向けた取り組みを行っております。
③ 荷取り構台の開発
新築や改修などで使用できる、従来よりコンパクトで軽量な荷取ステージの開発を行い、新築の現場で2件、改修の現場で1件、試作品による施工実験を実施しました。その結果、特に改修の現場で、高い有用性が確認できました。今後、それら施工実験結果を基に改良を行い、水平展開を図って行く予定です。
④ コンクリートの長さ変化、ひび割れに関する調査・研究
コンクリート強度、骨材、混和材などをパラメータとして、コンクリートの長さ変化やひび割れの観察などの調査・研究を行っており、今後、そのデータを現場で活用して行く予定です。
⑤ BIMの活用への取り組み
BIMについてはいくつかのモデル現場を選定し、配筋の納まりの確認や施工ステップの3D化など、現場での活用に向けた取り組みを行っており、今後も継続して行く予定です。
⑥ ICT技術の活用への取り組み
測量機器関連のメーカーなどと協力して、現場での3Dスキャナーの活用や鉄骨建て方の効率化の検証実験などを行いました。ICT技術の検証実験などは今後も継続して行い、有効性が確認出来たものは、現場へ水平展開して行く予定です。
⑦ シールド工事等で発生する自然由来ひ素汚染汚泥の浄化技術の開発
自然由来のひ素を含有し環境基準値を超過する地域は全国的に分布しているため、建設工事において発生土や汚泥がひ素に汚染されている事例は多く見られます。一方、環境関連法の強化、土壌汚染に対する認識の高まりから、汚染土壌の処理コストが高騰しており、それらの効率的かつ経済的に処理する技術の開発が求められております。特に都市部におけるシールド工事等においては多量の余剰汚泥が発生し、それらの処理技術の開発は喫緊の課題であるため、自然由来ひ素汚染汚泥を低コストかつ効率的に浄化する技術の開発に取り組んでおります。
⑧ トンネル切羽前方探査システム
トンネル切羽前方の地質や地下水の状態を精度よく調査するために、トンネル切羽より前方にボーリングして、そのボーリング孔を利用した電気探査トモグラフィーの探査方法と解析方法を開発し、トンネル現場での活用を目指しております。
⑨ 自由面発破における自由面形成パターンの合理的検討手法に関する研究
山岳トンネル工事で、発破振動を大幅に低減することが求められる場合において、掘削面に自由面を形成させることで大幅に振動を低減させる自由面発破が有効であります。しかしながら、コストや工程に与える影響も少なくないことから、合理的な自由面発破パターンの検討手法を確立するための研究を行っております。
⑩ 高耐久コンクリートの開発
新潟県を含む日本海側の沿岸部は厳しい塩害環境にあり、また、沿岸部以外でも積雪寒冷地であることから凍結防止剤による塩害を受けております。他方、社会インフラの維持更新時代を迎え、鉄筋コンクリート構造物の長寿命・高耐久化が求められております。そこで、セメントに各種混和材を混合した高耐久コンクリート(耐塩害)の開発を目的として研究開発を進めております。
⑪ 橋梁維持更新(吊足場)
橋梁における維持管理及び補修においての作業床の敷設施工における作業員の安全性の向上、敷設の円滑化による作業効率の向上を目的とした吊足場の実証実験を進め、実用化に向けた開発を進めております。
⑫ 中・高層建築物の階上解体工法の改善
解体する建物が高く、周囲に解体重機の稼動空間が無い場合に、スラブ・梁を多数の強力パイプサポートで鉛直・複数階にわたって補強支持し、解体重機を吊り上げて上層から解体する工法が採用されます。1本の強力パイプサポートは60kgと重く運搬設置作業が重労働でありますが、スラブへの鉛直設置では補強効果が小さいため、工事費低減と安全性向上を図る検討を行っております。
⑬ コンクリート構造物の補強工法
高度経済成長期に建設した社会インフラが今後一斉に老朽化し、建設後50年以上経過する施設の割合が加速度的に増加することが予想されています。これらのインフラを効果的に維持管理・延命化することを目的に複合パネルを用いた補強工法の開発に取り組んでおります。
⑭ デュアルシールドマシンコントロール
都市土木の地下トンネル工事ではシールド掘進機を使用して施工を行っておりますが、現場作業員の高齢化に伴い、掘進機の熟練オペレーター不足が今後懸念され、新規にオペレーターを育成し技術を習得させるにも年単位の時間が掛かってまいります。熟練オペレーターの判断内容を現場の実施工操作データとして解析し、思考のプロセス・ノウハウを習得することで、オペレーターの技量を問わず掘進機操作が可能となるシステムの開発に取り組んでおります。
(2) 福田道路㈱
1. 技術開発
① 「マルチファインアイ(画像損傷診断システム)」について
2017年12月14日にサービス提供を開始し、自治体等から6件の計測を行いました。その中で、地方自治体との実証実験も進めています。実証実験は、今までの管理手法との整合性と新たな帳票の作成、既存データの整理に取り組んでいます。
② 「再生添加剤」の評価について
アスファルトプラントから出荷される再生混合物に必要な「再生添加剤」については、評価すべき「扱いやすさ」を数値化できていない現状です。アスファルト混合物の品質向上のため、各種「再生添加剤」の「扱いやすさ」を数値化すべく、室内試験でも評価できる新しい試験機を設計・作成中です。この試験機を使用して各種混合物の評価を行い、「扱いやすさ」を数値化すべく取り組んでいきます。
③ 「骨材の大きいハイブリッド舗装」の開発
今後、到来する維持補修時代に対応すべく、1層5cm厚で「耐流動」、「クラック抑制」、「凍結抑制効果」、「車両騒音の低減」(ハイブリッド舗装)が図れる混合物を骨材の大きい材料を使用した配合で検討しました。特徴である骨材の大きい材料を使用し、舗装表面が凸凹となり、かつ凸凹が深くなるようにアスファルトプラントで試験練りを行いました。その結果から配合を絞り、転圧方法を代えた水準で検討を進めていきます。
④ 「半たわみ性舗装」の耐久性向上による高耐久性舗装
決められた路線を港湾から出入りするコンテナ車などで運搬するルートが今後特定される予定です。この路線では、耐流動性や耐久性が求められます。また、駐車場についても、このような車両が停止するため、同様な対策が必要となります。耐流動性の高い「半たわみ性舗装」を更に高耐久性とすべく、セメントミルクの配合を樹脂の多い配合とし、曲げ試験で評価しました。今後は、セメントミルクの施工性も含めて開発を行います。
⑤ 舗装工事の省人化が可能なアスファルト混合物
アスファルト舗装については、長らく機械編成も含め省人化(施工人数の削減)が図られていません。省人化を図るためには、施工するアスファルト混合物が締固め効率の良い、アスファルト混合物であることが望ましいです。アスファルト混合物の配合を検討し、アスファルトプラントで試験練りを実施しました。試験練り結果から施工体制を確認し、試験施工を行う予定です。目的は、転圧する機械の省力化や敷均し作業員の削減を図ることによってアスファルト舗装の施工体制を省力化へと変えることです。
⑥ 舗設における熱中症予防対策
夏期におけるアスファルト舗装については、毎年熱中症が懸念されます。特に高温で敷均するアスファルトフィニッシャの周辺は、ぶり返しの熱もあるため、特に注意が必要となります。熱中症対策として、夏期、施工中のアスファルトフィニッシャに直接ミストファンを2台取り付け、ミストにより周辺の雰囲気温度を下げることができました。(温度測定した結果、ミストのため舗設温度は低下しませんでした。)これらから得られたデータを基に熱中症対策として進めていきます。
⑦ コンクリート舗装の養生対策(休日取得のため)
コンクリート舗装は、硬化するプロセスで水和反応のため水分が必要不可欠となります。コンクリートの養生については、打設後、一定期間養生・散水が必要となります。平日、コンクリートを打設した場合、養生(散水)には休日も必要となる場合があります。休日取得のため、保水量のある養生マットを比較試験しました。その中の保水量のある養生マットを更なる利便性を向上させるため、マットの上から散水することができるスリット入りマットに取り組んでいます。
2. 各種登録について
① NETIS登録
・申請中:おとなしくん
② 特許申請等
・申請中:おとなしくん
3. その他
追跡調査
今年度、追跡調査を行ったのは以下の5技術となります。
・アイスインパクト (弾性型凍結抑制舗装)
・ファインシート (多機能性凍結抑制舗装技術)
・ヒートドレッシング工法 (加熱式表面処理工法)
・ヒートドレッシング・Jr (加熱式クラック補修工法)
・メジテープ (成形目地材)
また、明石高専との共同研究(溶融スラグ入りアスファルト舗装の実証実験)については、今年度も追跡調査を実施しました。また、その縁から明石高専の学生を数名、当社のアスファルトプラントで工場見学会を開催することができました。
(3) ㈱興和
① KVSストレーナ
水質が悪く、井戸の耐久性の低下が懸念される地域に対する井戸構造材料として、耐食材料『塩化ビニル管(VP)、ステンレス巻線(SUS)』を組み合わせ、長さ5.5mの“KVSストレーナ”を開発し、販売を開始いたしました。亜鉛メッキ巻線を使用しておらず、地下への亜鉛溶出がなく環境性能が高いこともPR材料となっております。本製品は2009年にNETISに、2010年度にMade in 新潟に登録されており、2018年度は、自社施工、他社販売も含め約464本、累計で3,673本の販売を行っております(2017年度には、Made in 新潟ゴールド技術登録、県知事表彰受賞)。
② 法面作業用アシストロリップ
法面作業を行う際は、立木やアンカーに結んだ「命綱」と作業員の腰部につけた「安全帯」、それと命綱と安全帯を接続する『ロリップ』を用いて身体を支持しています。しかし、ロリップは『握ると動き』『離すと止まる』という仕組みを持っているものの、落ちそうになった時、咄嗟にロリップを握ってしまう事例もあり、逆に墜落してしまう重大事故も発生しておりました。こうした人間の本能(反射)に反する面もあり、改善が望まれていました。
そこで、ヒューマンエラーによる事故防止を目的に、ロリップの下に追加設置する補助装置(アシストロリップ)を開発いたしました。本製品は2009年度にMade in 新潟に、2011年度にNETISに登録されており、2011~2018年度の累計で727個の販売実績があり、労働安全衛生規則第593条の2の改正に対応する改良(補助ロープ対応)を検討・現場検証中であります。
③ フレキシブル伸縮計
地すべり地の地盤変状の監視には、従来インバー線を用いた伸縮計が一般的に用いられてきました。しかし、インバー線は細く動物や木の枝などが触れると簡単に破断するため、厳重に保護する必要があり、設置費や設置労務が掛かるといった問題があります。また、積雪地域では、通常の保護方法の他に、必ず雪囲いが必要となります。
これに比べフレキシブル伸縮計は、インバー線の代わりにφ5mm程度の炭素繊維ケーブルを用いて、簡易な保護で地盤形状に合わせて設置可能であり、設置費や設置労力が少なくてすみます。
フレキシブル伸縮計の炭素繊維ケーブルは、2010年度にNETIS及びMade in 新潟に登録されており、2006年~2018年度の累計で約4,620m(20m/箇所)の実績があり、今後も販売拡大が見込まれます。
④ 遠隔監視制御機器(ネットワークロガー)
下水道流域のマンホールポンプの運転状況や故障、マンホール内の水位を管理事務所で監視できる遠隔監視制御装置を開発いたしました。この機器は、2005年~2018年度の累計で1,062台の販売実績があり、今後も下水道関係の他に、農場関係の揚水ポンプや道路排水ポンプ、消雪用ポンプの遠隔監視用に販売が見込まれております。
⑤ 集水井点検カメラ
砂防関係施設の点検において、現存施設の機能及び性能を的確に把握しておくことが重要とされています。砂防関係施設のうち、集水井工は地すべり対策工として地下水排除を目的とする重要施設となりますが、現行の点検方法では集水井工の構造や形状、立坑内の環境による問題点が多く、困難な作業となっておりました。
このため、経済的かつ簡易で正確に立坑内の状況や機能の確認が確認出来る“立坑(集水井工)内の点検装置(集水井点検カメラ)”を開発しました。本点検装置は2017年2月に特許(特許6089069号)を取得しており、全周撮影型を新たに開発し特許出願中であります。これまでに国土交通省及び新潟県等発注の砂防施設点検業務を中心に使用し、107箇所の防止区域602基の集水井工において点検を行っております。今後も砂防関係施設点検への活用が期待されております。
⑥ MR(複合現実)技術の活用
現実世界と仮想モデルを相互に融合するMR(複合現実)に着目し、建設業界での利活用方法を模索してきました。2017年から新潟県内のゲーム・アニメ等のコンテンツ開発会社とMR出力システムの共同開発を行っております。
現在は、地中熱ヒートパイプ融雪、下水熱利用融雪システムのMRモデルを制作し、客先とのイメージ共有やPRに利用しております。将来的には、公共的な構造物などの3D台帳化による維持管理などが見込まれております。
⑦ TRT(熱応答試験)装置
地中熱利用設備の設計に必要な地中採熱量等の調査に使用するTRT(熱応答試験)装置を開発しました。そして、2017年4月から始まった建築物の省エネ基準適合性判定に対応するため特定非営利活動法人地中熱利用促進協会が創設したTRT装置認定制度における全国第1号認定を2017年3月に受けております。
地下100mにわたる深度別温度計測機能、WEBを通じた遠隔監視制御機能など、他社には見られない優位な機能を有しており、自社で使用するほかシステムの販売も開始しており、新潟県柏崎市の地中熱関連事業を中心に、TRTの実績は20件以上に上っております。
⑧ 場所打ち杭工事等における無溶接鉄筋篭組立工法
場所打ち杭工事等においては、通常の鉄筋コンクリート工事と異なり、組み立てた鉄筋を吊上げて建込みをするため堅固な鉄筋篭の現場製造が求められております。しかし、2012年の道路橋示方書改訂以降、現場溶接が禁止されたことから、鉄筋篭崩壊事例が散見されております。
改訂前から無溶接による鉄筋篭組立に着目し、開発グループの一員となって組立工法開発に取り組み、2011年度にNETIS登録をして、資材販売を始めております。2017年度からは、新潟県内でも国道バイパス工事に採用されはじめ、徐々に当工法の優位性が浸透しつつあります。また、2018年8月には、工法を構成する技術のひとつである、アプセットバット溶接で環状型帯鉄筋を製作する「ピタットフープ」が建築技術性能証明を受けております。
(4) ㈱レックス
① 表面含浸材塗布装置の開発
近年増えている表面含浸材の塗布によるコンクリート構造物補修工事では、人力施工が主体であり、施工管理手法が確立されておりません。そこで、機械化施工による施工や管理の効率化及び施工品質の向上を図るため、「表面含浸材塗布装置」の開発を行い、2009年にMade in 新潟登録を行っております。2011年度には、作業性や信頼性を向上させた改良型の装置を開発しております。
これまでに、国土交通省、新潟県等の発注工事において活用されております。
② 防護柵清掃工法(GRクリーン工法)の開発
消雪パイプ設置区間において防護柵類に付着した錆汚れは、視線誘導機能や美観を損なうものであり、汚れの除去が困難であるため問題となっておりました。
そこで、洗剤メーカーと共同で防護柵清掃専用洗剤による「GRクリーン工法」を開発し、洗浄後の排水処理手法も含めた防護柵清掃工法を開発し、2010年にはMade in 新潟登録を行っております。
③ 社会インフラ維持管理上の課題を解決するため技術・工法の開発
橋梁の長寿命化に寄与する補修工法や維持管理技術、トンネルの清掃機械、農業水利施設の補修材料等、道路構造物をはじめとした社会インフラの維持管理上の課題を解決するための技術や工法の開発に取り組んでおります。
( 不動産事業及びその他 )
研究開発活動は、特段行われておりません。
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