有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100FI7U
ルネサスエレクトロニクス株式会社 研究開発活動 (2018年12月期)
(1) 研究開発活動の体制および方針
当社グループの研究開発活動は、現在必要な、または近い将来に必要となるであろうデバイス、ソフトウェアおよびシステムなどの開発につき、車載制御、車載情報に関する製品はオートモーティブソリューション事業本部が、スマートファクトリー、スマートホームおよびスマートインフラに関する産業関連製品はインダストリアルソリューション事業本部が、分野を問わない幅広い用途を対象とした製品はブロードベースドソリューション事業本部が担当して取り組んでおります。デバイス・プロセス技術、新規実装技術、設計手法などの部門横断的な共通技術については、各事業本部と生産本部とが協力しながら担当する体制としております。
また、コンソーシアムや外部研究機関などへの研究委託や、幅広い分野やお客様へ最適なサポートを行うためのサード・パーティの活用など、自社の研究開発リソースのみならず社外のリソースも必要に応じて活用しております。
電子機器や社会インフラの急速なネットワーク化により訪れるスマート社会では、これまでマイコンが主に使われてきた制御機器と、システムLSIが主に使われてきたIT機器が急速に融合しており、マイコンを軸にした新たな制御機器市場の拡大が期待されます。当社グループは、こうした市場変化に対応するため、マイコンとアナログ&パワー半導体などを組み合わせたセットを提供するキットソリューションを強化するとともに、アプリケーションごとに共通して使用できるIP(設計資産)やOSなどのソフトウェアをプラットフォームとして提供するための研究開発活動を通じて、新市場での成長を実現してまいります。
(2) 主な研究開発の成果
① 新市場を創出するSOTB™技術とDRP技術で進化するe-AIソリューションによりエンドポイントインテリジェンスを推進し、IoTの普及拡大に貢献
昨今、普及が加速するIoT(Internet of Things)機器において、電池の交換や充電といった電力の供給問題を解決することが課題の一つとなっております。これに対し、当社グループは、製品の低消費電力化を進める一方、電池が完全に不要になるエナジーハーベスト(環境発電)専用の組み込みコントローラを開発しました。
本コントローラは、当社グループ独自のSOTB™(Silicon On Thin Buried Oxide)(注1)プロセス技術を採用し、従来トレードオフの関係にあった、動作している時の電力と動作していない時の電力の両方を極限まで減らすことに成功しました。極めて低電流で動作しつつ動作中の電力も低いため、電源を供給するための電池を全く使用せず、光や振動、水流など、微量の環境発電を使用してIoT機器を動かすことが可能になります。これにより、例えば、フィットネスウエアや靴などから生体情報を取得したり、農場に土壌を監視するセンサを設置したり、構造物の振動センシング(感知)で公共インフラを管理するなど、幅広い応用分野で電池のメンテナンスが不要になるという新たな市場を創出することができます。
また、近年、IoT機器にもAIを活用する動きが活発となっていますが、その課題として、情報量が多くクラウドへデータを送信することが困難である点や、クラウド上でのAI判定に時間を要するという点が挙げられます。当社グループは、こうした課題を解決するため、IoTのネットワークの末端の装置にAI技術を実装する「e-AI(イーエーアイ)(embedded-Artificial Intelligence)」を注力技術の一つと位置づけ、組み込み機器の進化を実現するe-AIソリューションを提供しております。今般、これまでのデータ量の比較的少ない電流や振動波形を用いたe-AIソリューションに加えて、情報量が多い画像データのAI処理もクラウドに上げずに組み込み機器側でリアルタイムに処理できるマイクロプロセッサ「RZ/A2M」を開発しました。
本製品は、当社グループ独自のDRP(Dynamically Reconfigurable Processor)(注2)を搭載しております。本DRPは、半導体のハードウェアでありながら、ソフトウェアで演算回路の構成を瞬時に変更できるため、ハードウェアの高性能性とソフトウェアの柔軟性を兼ね備えております。これにより、指紋や虹彩といった生体認証、ハンディバーコードスキャナでの高速スキャニングなどが可能となり、クラウド上のAIでは実現が困難なリアルタイム性やプライバシー、セキュリティといった課題を解決します。
当社グループは、こうした革新的技術であるSOTBに加え、DRPによりe-AIソリューションを進化させ、IoTのネットワークの末端の装置(エンドポイント)を賢くする「エンドポイントインテリジェンス」を推進し、IoTの普及拡大に貢献します。
(注)1 SOTB™:ウエハ基板上の薄いシリコン層の下に極めて薄い絶縁層(BOX: Buried Oxide)を形成した当社グループ独自のプロセス技術であります。シリコン層に不純物を混入しないことにより低電圧で安定した動作が可能となるため、電力効率の高い演算性能を発揮でき、また、スタンバイ時はBOX層下のシリコン基板電位を制御することにより、リーク電流を削減し、待機電力を抑えることができます。
2 DRP:1クロックごとに演算回路の構成を動的に変更することができる当社グループ独自のハードウェアIPであります。
② 28ナノメートルプロセス技術採用の最先端の車載制御向けマイコンや画像認識向けSoCなど、エンドツーエンドソリューションを提供することにより、自動運転の実用化を加速
近年、自動運転に向けた技術開発が急速に進展する中、自動運転を実現するためには、自動車の「走る・曲がる・止まる」という根幹を担う制御機能に加え、人やモノのセンシング機能や通信機能などが必要となります。当社グループは、ADAS(エーダス)(Advanced Driver Assistance System)や自動運転に向けて、センシング機能から制御機能に至るまで、エンドツーエンドのソリューションを提供していますが、車載制御用マイコンとして世界に先駆けて、28ナノメートル(注1)プロセス技術を採用した「RH850/E2xシリーズ」を発表し、サンプル出荷を開始しました。
本製品の最大の特長は、40ナノメートルプロセス技術の採用製品と比較し、同一電力で約3倍もの高い演算処理性を備えていることであります。これにより、次世代の低燃費エンジンの開発が可能になるほか、電気自動車(EV : Electric Vehicle)やプラグインハイブリッド自動車(PHEV : Plug-in Hybrid Electric Vehicle)に搭載するモータやインバータの高効率化と小型化を実現します。また、当社グループ独自のSG-MONOS(注2)技術を28ナノメートルプロセスにも採用することで、より大容量のメモリを搭載することができるようになりました。これにより、運転中でもOTA(Over The Air)(注3)によるプログラム更新が可能になるとともに、自動運転時代においても、状況に応じて、より安全性の高い制御プログラムを適用することが可能になります。
一方、自動運転システムの開発にあたっては、車両周辺の環境をリアルタイムに認識する高度なセンシング処理が求められており、その手法としてAIを取り入れたコンピュータビジョン処理が期待されています。
当社グループは、こうしたAI処理を高速にかつ低消費電力で実現する専用回路を搭載した画像認識(スマートカメラ)向けSoC「R-Car V3H」を開発しました。
当社グループは、自動車向け事業において、普及価格帯の量産車に搭載できる実用的かつ現実的な半導体ソリューションを提供することを目指しております。そのため、画像信号を高速で処理する性能を満たすだけでなく、直射日光を浴びて高温になりやすい車両筐体に設置できるよう、製品の性能と低消費電力の最適なバランスを追求しております。当社グループは、こうした市場のニーズに対応した専用回路の搭載により、これまでトレードオフの関係にあった高度なコンピュータビジョン処理と低消費電力の両立に成功しました。また、緊急自動ブレーキのような運転支援機能に適した一つ下のクラスの「R-Car V3M」とあわせて、スケーラビリティに長けた製品展開を実現できることから、お客様の車種展開や要望にも柔軟に対応できます。
当社グループは、こうした先端技術開発と量産車に搭載可能な高品質のソリューション提供を通じて、自動運転の実用化を加速し、より安全なクルマ社会の実現に貢献します。
(注)1 ナノメートル:1ナノメートルとは、10億分の1メートルであります。
2 SG-MONOS:MONOSは、「Metal(メタル)-Oxide(酸化膜)-Nitride(窒化膜)-Oxide(酸化膜)-Silicon(シリコン)」の略称であり、シリコンの上に構築する酸化膜/窒化膜/酸化膜の3層構造に、制御ゲート(メタル)を搭載した記憶用トランジスタ(メモリセル)の構造であります。この構造に、ゲート電極を二つに分けた「スプリットゲート(SG)」構造を採用した技術がSG-MONOS技術で、高信頼性・高速動作・低消費電力を実現する当社グループの独自技術であります。
3 OTA:ドライバが無線ネットワークを介して、自動車用のOSその他のソフトウェアのアップデートやアップグレードが可能となる仕組みであります。
(3)研究開発費
当社グループでは開発費の一部について資産化を行い、無形資産に計上しております。無形資産に計上された開発費を含む当連結会計年度の研究開発費は、1,279億円となり、前連結会計年度の1,295億円と比べ17億円減少しました。これは主に、製品設計、システム開発、デバイス開発、プロセス技術開発、実装技術開発に使用しました。
なお、当社グループは半導体事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載は省略しております。
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ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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