有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100FI7U
ルネサスエレクトロニクス株式会社 事業等のリスク (2018年12月期)
当社グループの事業その他に関するリスクとして、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手し得る情報に基づいて当社グループが判断したものであります。
(1) 市況の変動
当社グループは、世界各国の景気循環、最終顧客の製品の需要の変化などに起因する、半導体市場の市況変動の影響を受けております。当社グループでは、常に市況の動向を見極めながら事業活動を遂行しておりますが、その影響を完全に回避することは困難であるため、市況が下降した局面においては、製品需要の縮小、生産・在庫数量の増加および販売価格の低下を招く可能性があります。その結果、当社グループの売上の減少や、工場稼働率の低下に伴う売上総利益率の悪化につながり、収益が悪化する可能性があります。
(2) 為替相場および金利の変動
当社グループは、世界各地域において様々な通貨を通じて事業活動を行っております。当社グループは為替変動のリスクをヘッジする取組みを行っておりますが、為替相場が大きく変動した場合、外貨建取引の売上高、外貨建の資材コスト、海外工場の生産コストなど当社グループの業績および財政状態が影響を受ける可能性があります。また、当社の外貨建の資産・負債を日本円に換算表示すること、さらに、海外子会社における外貨表示の財務諸表を日本円に換算表示することによっても、当社グループの資産・負債および収益・費用は変動します。
また、金利の変動により、当社グループの事業運営に係る経費、資産および負債の価値が影響を受けるため、これにより、当社グループの事業、業績および財政状態が悪影響を受ける可能性があります。
(3) 自然災害など
地震、台風、洪水などの自然災害、事故、テロ、感染症をはじめとした当社グループがコントロールできない事由によって、当社グループの事業活動が悪影響を受ける可能性があります。特に、当社グループは、地震が発生する確率が世界の平均より高いと考えられる地域に重要な施設・設備を保有しており、地震の発生時に、その影響により当社グループの施設・設備が損傷を受け、操業を停止せざるを得ないなど、多くの損害が発生する可能性があります。当社グループでは、こうしたリスクに備えて、各種事前対策、緊急対策などを定めたBCP(事業継続計画)などを策定・運用するとともに、各種保険に加入しておりますが、それにより全ての損害を補填できるという保証はありません。
(4) 競争
半導体市場は熾烈な競合状態にあり、当社グループは、製品の性能、構成、価格、品質などの様々な面で、国内外の多くの同業他社との激しい競争にさらされております。とりわけ、近年において、同業他社間による買収、統合、業務提携などが行われており、今後もその可能性がありますが、その結果、当社を取り巻く競争環境はさらに激化する可能性があります。当社グループでは、競争力の維持強化に向けて、先端技術の設計、開発のプラットフォーム化、原価低減の推進、第三者との戦略的提携やさらなる企業買収の可能性の検討などの様々な施策に取り組んでおりますが、これらの施策を適時適切に行えなかった場合、製品のマーケットシェアが低下し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、熾烈な市場競争により、当社グループ製品の販売価格が急激な下方圧力に晒され、それを価格交渉や原価低減などの様々な収益性改善のための施策では補いきれずに、売上総利益率の悪化に見舞われる可能性があります。さらに、売上総利益率が低い当社グループ製品について、顧客において他の製品への移行が困難または一定の期間を要する場合などには、当社グループは、適時に生産の中止・減少が行えない可能性があり、その結果、当社グループの収益性を低下させる可能性があります。
(5) 事業戦略の推進
当社グループは、急激に変化する経営環境下で、収益基盤を強化するため、中期成長戦略の策定、当社グループ内における組織体制の改編など様々な事業戦略および構造改革を遂行しております。これらの事業戦略および構造改革には一定の費用が伴う一方で、経済・事業環境の変化、将来の不確実な要因、予期できない要因などにより、その遂行が困難になる可能性や当初計画していた効果を得られない可能性がある他、当初の見込みを上回る費用が発生する可能性があり、その結果、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6) グローバルな事業展開
当社グループは、グローバルに事業を展開しておりますが、潜在的な顧客と現地企業との間の長期に亘る関係などの障壁、投資、輸出入に関する制限、関税、公正な取引などの各種規制、政治的・社会的・経済的リスク、疾病またはウィルスの流行または感染、為替変動、賃金水準の上昇、物流障害などの様々な要因により悪影響を受ける可能性があります。その結果、当社グループは、グローバルな事業展開に関する当初の目的を達成できず、当社グループの事業、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(7) 戦略的提携および企業買収
当社グループは、事業拡大や競争力の強化などを目的として、重要な技術や製品の研究開発、生産などの分野において、第三者との間で、共同出資関係を含む戦略的提携や企業買収を実施することがあり、例えば、2017年2月には米国の半導体企業である旧インターシル社を買収しており、また、2018年9月には米国の半導体企業であるIDT社との間で、同社を買収し、当社の完全子会社とする内容の合併契約を締結しております。当社グループでは、これらの提携や買収にあたって、投資回収や収益性などの可能性について様々な観点から検討していますが、事業遂行、技術、製品、人事、システム、関連当局の独占禁止法(競争法)への対応などの面で統合に時間と費用を要することに加え、資金調達、技術管理、製品開発などの経営戦略について提携先・買収先と不一致が生じたり、提携先・買収先において財務上その他の事業上の問題が生じた場合などに、提携関係・資本関係を維持できない、または買収時に想定していた投資回収や収益性を実現できなくなる可能性があります。また、提携先・買収先の主要顧客や主要人員を維持・確保できないことなどにより、想定していたシナジーやメリットが実現できない可能性があるなど、提携や買収が当初の期待通りの目的を達成できる保証はありません。
(8) 資金調達
当社グループは、事業資金を金融機関からの借入などにより調達しておりますが、新製品を発売し、事業・投資計画を実行し、製造能力を拡張し、技術もしくはサービスを取得し、または負債を返済するため、将来、追加的に資金を調達しなければならない可能性があります。半導体業界の事業環境の悪化、金融・証券市場の環境の悪化、貸手側の融資方針の変更などにより、当社グループが必要な資金を適時に調達できない、または資金調達コストが増加する可能性があることなどにより、当社グループの資金調達が制約される可能性があります。なお、当社グループが金融機関と締結している借入に係る契約の一部には財務制限条項が定められております。万一、当社グループの財務内容などの悪化により同条項に抵触し、上記借入について期限の利益を喪失する場合、当社グループの事業、業績および財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
(9) 追加ファイナンスについて
2012年12月10日開催の取締役会決議に基づく第三者割当増資の実行後、当社において更なる成長資金が必要となった場合、旧㈱産業革新機構(2018年9月25日付で㈱産業革新投資機構に商号変更。以下同様)より合計500億円を上限として、追加の出資または融資を行う用意がある旨の申し出を受けておりましたが、旧㈱産業革新機構は、2018年9月21日付で会社分割を実施し、当該会社分割により、当社との契約における旧㈱産業革新機構の契約上の地位を新設分割設立会社である㈱INCJが承継しております。かかる追加の出資または融資の具体的条件および時期は現時点において何ら決定しておらず、かかる追加の出資または融資が確実に実行される保証はありません。当該申し出に基づき、出資が実行された場合には、更なる既存株式の希釈化が生じ、当社株価に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当該申し出に基づき融資が実行された場合には、当社有利子負債が増加し、事業活動などが制約を受ける可能性があります。さらに、今後、金利の変動が発生した場合、当社グループの事業、業績および財政状態が悪影響を受ける可能性があります。
(10) 筆頭株主である㈱INCJとの関係について
当社は、2013年9月30日に第三者割当増資の方法により、旧㈱産業革新機構等を割当先として普通株式を発行し、旧㈱産業革新機構は、当該株式の引受けにより、当社の議決権総数の過半数を所有する大株主となりました。旧㈱産業革新機構は、2017年6月以降、段階的にその所有株式を売却し、当社の議決権総数の3分の1以上を所有する大株主となりました。旧㈱産業革新機構は、2018年9月21日付で会社分割を実施し、当該会社分割により、旧㈱産業革新機構が所有しておりました当社の株式の全てを新設分割設立会社である㈱INCJが承継しました。そのため、㈱INCJによる当社株主総会における議決権行使などにより、当社グループの事業運営が重大な影響を受ける可能性があります。また、㈱INCJは、投資目的で当社株式を所有しており、将来において当該株式を市場売却した場合には、売却時の市場環境などにより、当社株式の市場価格などに重大な影響を与える可能性があります。
(11) 急速な技術革新など
当社グループが事業を展開している半導体市場は、急速な技術変化と技術標準の進展などを特徴としております。そのため、当社グループがこうした変化について、研究開発などにより適切に対応できなかった場合、当社グループ製品の陳腐化、代替製品の出現などにより、当社グループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。
(12) 製品の生産
① 生産工程
半導体製品は、非常に複雑な生産工程を経て生産されております。当社グループは、歩留り(材料当たりの製品良品率)を改善するため、生産工程の適切な管理および改良に継続して取り組んでおりますが、この生産工程に何らかの問題が発生した場合は、歩留りの悪化による製品出荷の遅延や出荷数量の減少、最悪の場合は出荷停止の結果を招く可能性があります。
② 原材料、部品、生産設備などの調達
半導体製品の生産にあたっては、その生産に必要となる原材料、部品、生産設備などを適時に調達する必要があります。当社グループは、これらの調達に関連する問題の発生を回避するため、複数の供給者との緊密な関係構築に努めておりますが、原材料などの中には特定の供給者からしか入手できないものも含まれているため、需給が逼迫した場合や、供給者において自然災害や事故、経営状況の悪化、事業撤退などの事象が発生した場合、これらを適時に調達できず、また調達できる場合でも調達価格が大幅に上昇する可能性があります。また、調達した原材料や部品に欠陥が存在した場合、当社グループの生産工程に悪影響が生じる可能性や当社グループにおける追加の費用負担が発生する可能性があります。
③ 外部への生産委託
当社グループは、半導体製品の生産の一部を外部のファウンドリ(受託生産専門会社)などに委託しております。これらの外注先の選定にあたっては、技術力や供給能力などについて、あらかじめ厳しく審査を行い、信頼できる会社を選定しておりますが、外注先の責による納入の遅延や製品の欠陥をはじめとした、生産面でのリスクが生じる可能性を否定できず、外注先の生産能力不足や自然災害による外注先の操業停止などにより、当社グループが十分な製品供給を行えない可能性があります。
④ 適切な水準での生産能力の維持
半導体市場は市況変動の影響を受けやすく、また、将来の製品需要を正確に予測することは困難であるため、必ずしも当社グループの生産能力を製品需要と見合った適切な水準に維持できるとは限りません。また、生産能力増強のための設備投資を行う場合であっても、通常、実際に当社グループの生産能力の増強に寄与するまでには一定期間を要します。
そのため、特定の製品に関する需要が、ある時点における当社グループの生産能力を大幅に超過し、かかる需要超過の状態が継続した場合であっても、顧客が希望する製品供給を適時適切に行うことができず、当該製品に関する販売機会の喪失、競合他社製品への切り替えによるマーケットシェアの低下、当該顧客との関係悪化などを招く可能性があります。
他方、特定の製品に関する製品需要の高まりに応じて設備投資を行い、生産能力の増強を図った場合であっても、当該設備投資により実際に生産能力が増強される時点以降において当該製品に関する需要が維持される保証はなく、実際の製品需要が想定を下回った場合などにおいて当該設備投資について見込んだ収益による投資の回収が行えない可能性があります。
(13) 品質問題
当社グループでは、様々な施策を通じて、当社グループ製品の品質向上に取り組んでおりますが、これらの製品に用いられる技術の高度化、顧客における製品の使用方法の多様化、外部調達した原材料や部品における欠陥などにより、出荷時に発見できない欠陥、異常または故障が製品に存在する可能性があり、顧客への出荷後にそれらが発見される場合があります。この場合、製品の返品や交換、損失の補償、製品の採用打ち切りなどの結果につながり、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。こうした事態に備えて、当社グループでは、生産物賠償責任保険(PL保険)、生産物回収費用保険(リコール保険)などの保険に加入しておりますが、それにより損失を全額補填できるという保証はありません。
(14) 製品の販売
① 主要顧客への依存
当社グループは、当社グループ製品の顧客に対する売上高の多くを特定の主要顧客に依存しております。これらの主要顧客が当社グループ製品の採用を中止し、または著しくその発注数量を減らした場合、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
② 顧客固有の仕様に基づいた製品に係る顧客からの計画の変更など
当社グループは、顧客からその顧客固有の仕様に基づいた製品の開発を受注することがあります。しかし、受注後に、発注元の顧客がその製品を搭載する予定であった最終製品の市場への投入を延期または中止したり、その製品の機能・性能が顧客の要求に満たない場合には、その製品の採用を中止する可能性があります。また、顧客は、その製品を組み込んだ最終製品の売れ行きが芳しくない場合、その製品の発注数量を減少させ、または納入期日を延期することがあります。
こうした特定顧客向け製品に係る顧客からの製品計画の変更、発注の減少や延期などは、当社グループの売上や収益性を低下させる可能性があります。
③ 販売特約店などへの依存
当社グループは、日本国内およびアジア地域では、多くの当社グループ製品を特定の主要な販売特約店などを通じて販売しております。当社グループがこれらの販売特約店などに対して、競争力ある販売報奨金やマージンを提供できない場合または販売特約店などにとって適切な売上数量を確保できない場合、販売特約店などは当社グループ製品の販売体制縮小などの見直しを行い、その結果、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
(15) 人材の確保
当社グループは、事業を展開していくうえで、経営、技術開発、営業その他において優秀な人材の確保に努めております。しかしながら、こうした優秀な人材は限られているため、かかる人材を求める競争は熾烈であります。そうした状況下で、当社グループが優秀な人材を確保することができない可能性があります。
(16) 退職給付債務
当社グループが計上している退職給付に係る資産や負債は、割引率や長期期待運用収益率などの数理計算上の前提に基づいて算出されています。金利変動や株式市場の下落などにより、数理計算上の前提と実績に乖離が生じ、退職給付債務が増加もしくは年金資産が減少した場合、退職給付制度における積立不足が増加し、当社グループの業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。
(17) 設備投資と固定費比率
当社グループが営む半導体事業は、多額の設備投資を必要とする事業であり、当社グループは、継続的に設備投資を行っておりますが、かかる設備投資に伴い償却費用を負担する必要があります。また、市場環境の変化に伴い需要が減少し、想定した販売規模を達成できない場合、あるいは供給過剰により製品の単価が下落した場合、こうした設備投資の一部または全部について、回収することができない、あるいは回収できるとしても想定より長い期間を要する可能性があり、その結果、当社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの費用の大部分は、上記の設備投資に伴う償却費用に加えて、工場の維持等に伴う生産コスト、研究開発費用といった固定費で占められているため、主要顧客からの受注の減少、製品需要の減少等による売上の減少や、工場稼働率の低下等が生じた場合であっても、それらの事象に対応した固定費の削減を行うことが困難であり、その結果、比較的小規模の売上の減少等が当社グループの収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
(18) 固定資産の減損
当社グループは、工場設備などの有形固定資産に加えて、旧インターシル社の買収に伴う多額ののれんなどの無形固定資産を含む多くの固定資産を保有しております。これらの固定資産については、減損の兆候がある場合には、固定資産から得られる将来のキャッシュ・フローによる資産の帳簿価額の回収可能性を検討しております。当該資産が十分なキャッシュ・フローを生み出さない場合には、減損を認識しなければならない可能性があります。また、当社は、これまで日本において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準(以下「日本基準」)を適用しておりましたが、2018年12月期の有価証券報告書よりIFRSを任意適用しております。IFRSにおいては、のれんの償却が行われない一方で、減損の判定方法が異なります。かかる会計基準の変更の結果、日本基準と比較して、のれんの減損を認識しなければならない時期が早まる可能性があり、また、認識すべき減損額が多額になる可能性があります。
(19) 情報システム
当社グループの事業活動において、情報システムの重要性が増大しております。当社グループでは、情報システムの安定的運用に努めておりますが、自然災害、事故、コンピューターウィルス、不正アクセスその他の要因により情報システムに重大な障害が発生した場合、当社グループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。
(20) 情報管理
当社グループは、事業活動の遂行に関連して、多数の秘密情報や個人情報を有しております。これらの情報については、法令や社内規則に基づき管理しておりますが、予期せぬ事態により情報が流出するおそれがあり、そのような事態が生じた場合、営業秘密の流出による競争力の低下や、顧客の信用や社会的信用の低下を招き、当社グループの事業、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(21) 法的規制
当社グループは、事業を展開する国および地域において、事業や投資の認可、独占禁止法(競争法)上の制限、輸出制限、関税、会計基準・税制、環境法令をはじめとする様々な規制の適用を受けております。今後、法的規制の強化などに伴う事業活動の制約、コストの増加などにより、当社グループの事業、業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、法令遵守や財務報告の適正性確保のために内部統制システムを構築し、運用していますが、内部統制システムは本質的に内在する固有の限界があるため、その目的が完全に達成されることを保証するものではありません。従って、将来にわたって法令違反等が発生する可能性が皆無ではありません。当社グループが法令等に違反した場合には、課徴金等の行政処分、刑事処分もしくは損害賠償請求の対象となり、または当社グループの社会的評価が悪影響を受け、その結果、当社グループの事業や業績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。
(22) 環境問題
当社グループは、地球温暖化、大気汚染、水質汚濁、産業廃棄物、有害物質、土壌汚染などに関する様々な環境法令の適用を受けております。当社グループは、これらの規制に細心の注意を払いつつ事業を行っておりますが、過失の有無にかかわらず、環境問題に対して法的もしくは社会的責任を負う可能性があり、そのような事態が生じた場合、その対応のために多額の費用負担が発生する可能性や当社グループの社会的信用の低下を招く可能性があります。
(23) 知的財産権
当社グループは、知的財産権の確保に努めておりますが、その国や地域などによっては知的財産権に対する十分な保護を得られない可能性があります。また、当社グループ製品には第三者からライセンスを受けて開発・製造・販売しているものがありますが、今後、第三者から必要なライセンスを受けられない可能性や、ライセンスを受けられるとしても従前よりも不利な条件でしかライセンスを受けられない可能性があります。さらに、当社グループの製品に係る知的財産権に関して、当社グループまたはその顧客が第三者から特許侵害訴訟等を提起され、その結果によっては、当社グループの当該製品が、一定の国・地域で製造・販売できなくなる可能性や、当社グループが第三者または当社グループの顧客に対して損害賠償責任を負う可能性があります。
(24) 法的手続
当社グループは、グローバルに事業活動を展開しており、様々な国で訴訟、規制当局の調査その他の法的手続の当事者になる可能性があります。当社グループが現在当事者となり、または今後当事者となる可能性のある法的手続について、その解決には相当の時間、費用などを要する可能性があり、結果を予測することは困難ですが、その結果が、当社グループの事業、業績、財政状態、キャッシュ・フロー、評判および信用に悪影響を及ぼす可能性があります。
① 特許侵害およびトレード・シークレットの不正使用等に関する民事訴訟
当社米国子会社は、特許侵害およびトレード・シークレットの不正使用等に関連して、他社から米国で民事訴訟を提起されております。2008年11月、当社の米国子会社に対して、米国テキサス州東部地区連邦裁判所(以下「第一審裁判所」)において特許侵害およびトレード・シークレットの不正使用等に基づく民事訴訟が提起されました。2016年6月、第一審裁判所は、当社米国子会社に対する77.3百万米ドルの賠償命令を含む判決を出しましたが、当社米国子会社は米国連邦巡回控訴裁判所(以下「第二審裁判所」)に控訴しました。2018年7月、第二審裁判所は、第一審裁判所の判決による賠償額を取り消し、第一審裁判所での再審理を命じました。上記第二審裁判所の判決理由を踏まえ、当連結会計年度において、これまで79百万米ドルを計上していた訴訟損失引当金を22百万米ドルに変更しております。訴訟の進展に伴い、当該金額は増減する可能性があります。
② 独占禁止法(競争法)違反の可能性に関する民事訴訟
当社グループは、スマートカードチップに関する独占禁止法(競争法)違反の可能性に関連して、同製品の購入者からカナダおよび英国で民事訴訟を提起されております。カナダにおける民事訴訟は、2013年7月にブリティッシュコロンビア州上位裁判所において提起され、現在も継続中であります。英国における民事訴訟は、2014年12月にイングランド・ウェールズ高等法院において提起され、現在も継続中であります。当該訴訟の状況に基づいて、合理的に見積りが可能な限りにおいて、訴訟損失引当金を計上しております。訴訟の進展に伴い、当該金額は増減する可能性があります。
③ 環境汚染問題に関する請求
当社台湾子会社は、事業承継元の会社が過去に保有していた台湾の工場において生じた環境汚染問題に関連して、他社から損害賠償請求を受けております。2004年6月以降、当社台湾子会社は、事業承継元の会社が過去に保有していた台湾の工場において生じた環境汚染問題に関する汚染浄化費用ならびに当該工場に勤務していた元従業員等が提起した環境汚染問題に関する集団訴訟における賠償責任および訴訟費用について、他社から損害賠償請求権を留保している旨の通知を受けておりました。当社台湾子会社は当該集団訴訟の被告ではありませんが、2017年12月、上記請求について、当該請求者から当社台湾子会社に対して仲裁の申し立てがなされました。その後当該請求者の要求により仲裁手続は停止されております。本件に関して、将来の引当金の計上の要否、その金額、発生時期を合理的に見積もることが困難なため、引当金は計上しておりません。
④ その他
当社は、上記以外にも他社との訴訟や損害賠償請求案件などの支払に備えた偶発損失引当金を計上しております。
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