有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100FH6K
応用地質株式会社 研究開発活動 (2018年12月期)
当社グループは、インフラ・メンテナンス事業、防災・減災事業、環境事業、資源・エネルギー事業の4つのセグメントにおいて、顧客ニーズに応えるソリューションを提供するための技術及び製品の研究開発を進めております。
日本では、国土交通省のi-Constructionの施策など、少子高齢化時代の中で技術者不足が深刻になってきたため、情報技術を駆使して品質の確保と労働生産性の向上に関する施策が取り入れられようとしています。また、海外では、欧州やシンガポールなどで、BIM(BuildingInformation Modeling)が通常業務の中に既に取り込まれ始めております。情報技術の革新により、計画、調査、施工、維持管理までの全てのプロセスの情報が一元管理されていく状況に対して応えていくことが必要です。しかし、BIMの現状を鑑みますと、各種建築物が構築されている下部の地盤構造、地中埋設物のモデル化とそれをBIMに組み込むまでのプロセスは、国内外ともまだ標準化がなされていません。当社グループは、世界に先駆けて地盤構造のBIM化に向けて実用化、標準化をすることを優先課題としています。2018年に、当社はbSI(building SMART International、本部:英国)に加入いたしました。地盤のモデル化やBIMに載せるための技術的課題への対処と標準化に向けた提言を積極的に発信するとともに、関連する研究開発を行っております。
研究開発体制は、当社の技術本部研究開発センターと7事業部(計測システム事業部、エネルギー事業部、社会システム事業部、地球環境事業部、メンテナンス事業部、砂防・防災事業部、流域・水資源事業部)が、当社グループ会社と連携して実施しております。また、研究開発を効率的に推進するため、外部機関の優れた技術の活用を図ることに積極的に取り組み、公的研究機関、大学、民間企業との共同研究を進めるとともに、大学への寄付講座の設定、並びに、研究員の派遣を行っております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は、16億7千5百万円でありました。
前連結会計年度に引き続き、基盤技術開発として下記の2課題に取り組みました。
① 地盤の3次元可視化に関わる地盤調査技術の開発と既保有技術との体系化
② 地盤情報のIcTプラットフォームの整備
地盤の3次元可視化に関わるものとしては、物理探査技術の3次元化(従来のように2次元探査の組み合わせで3次元の解析や表示をするのではない)については、微動アレイ探査、電気探査、地中レーダー探査において、そのシステム化が終了いたしました。現在は、実証試験を通じて適用事例の蓄積を図っている段階です。
地盤情報のIcTプラットフォームの整備については、情報技術ツールの導入による現場作業の効率化・自動化、創業以来蓄積してきた地盤データのデータベース化、安価・小型センサの開発などに取り組んでおります。
セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。
(1) インフラ・メンテナンス事業
インフラ・メンテナンス事業セグメントにおいては、堤防、トンネル、道路、工場施設などのインフラストラクチャーの維持管理に関するソリューション開発を行っております。当社では、トンネル点検や路面下空洞調査の観測結果の判定にAI技術を導入することにより、調査~解析~評価までをパッケージ化することに取り組んでおります。また、Geophysical Survey Systems, Inc.(米国)では、非接触でアスファルト舗装の品質を測定できるPaveScan RDMを開発いたしました。米国の複数の州においてアスファルト舗装管理技術として承認を受けています。また、現在、自動運転を補助するための地下マップデータを取得するための地下レーダー探査装置の開発を進めております。さらに、Geometrics,Inc.(米国)では、ドローンに搭載可能な磁気探査装置MagArrowを開発いたしました。航空機による従来の磁気探査法に比べて安価に実施でき、山岳部など人が立ちいることが難しい場所での磁気探査が可能です。当連結会計年度における研究開発費の金額は6億7千3百万円であります。(2) 防災・減災事業
防災・減災事業セグメントにおいては、自然災害に対する防災・減災に関わるソリューション開発を行っております。当社は、名古屋大学減災連携研究センターに寄付講座を設け、最新の地盤モデルによる被害想定から経済被害予測手法の開発、減災策の提案・提言までの流れを作るべく研究を行っております。また、火山防災分野では、火山噴火に起因する降灰厚を安価な自動降灰量計を開発し、現在、検証試験中です。さらに、Kinemetrics, Inc.(米国)では、地震観測機器の専門メーカーですが、2018年は核実験監視モニタリングシステム向け地震波形データ収録装置「Q330M+」を開発いたしました。長期観測を実施することができる地震計として、低消費電力地震データ収録装置「Q8」の開発を現在進めております。また、地震時の建物健全性評価および地震時の避難行動支援のための情報発信を組み合わせたサービスである「OASIS PLUS」の病院施設への展開を進めております。当連結会計年度における研究開発費の金額は4億5千4百万円であります。(3) 環境事業
環境事業セグメントにおいては、環境保全を支援するソリューション開発に取り組んでおります。当社は、北海道大学大学院工学研究院の循環・エネルギー技術システム分野に寄付を行い、バイオマス(廃棄物系、未利用、資源作物)を中心とした安全・安心な再生可能エネルギーの普及化促進技術システムと、廃棄物のリサイクル・処理技術の効率化と採算性向上を目指した研究開発を行っております。また、福島県三春町の応用生態工学研究所では、淡水域における魚類の効率的なモニタリング手法として、環境DNA(魚の糞や鱗などから溶け出したDNA)を用いた魚類の現存量把握に関する研究を進めております。さらに、グリーンインフラ整備に資するものとして、ウズベキスタンで「アラル海」及びその周辺荒廃地の緑化と、経済価値の高い低木林を造り、不法伐採を防ぎ経済が回るシステムの構築にも取り組みました。当連結会計年度における研究開発費の金額は6千8百万円であります。(4) 資源・エネルギー事業
資源・エネルギー事業セグメントにおいては、資源・エネルギーの探査、及び、エネルギー関連施設の維持管理、再生エネルギー事業開発に必要な基盤技術の開発を行っております。洋上風力発電所の立地に関わる地盤調査技術として、Geometrics, Inc.(米国)が、海洋土木調査向けの小型超高分解能探査システムの開発を進めるとともに、同社製の微動アレイ探査システムを海底に設置できるように改良して、地盤構造を把握する方法を開発いたしました。また、Robertson Geologging, Limited(英国)では、ボーリング孔を利用した調査(検層)機器の開発・製造・販売を行っておりますが、鉱山市場向け検層市場において、実用性を向上させた複数の検層機器を連結したシステム(スタッカブルシステム)の開発を進めております。当連結会計年度における研究開発費の金額は4億7千8百万円であります。- 有価証券報告書 抜粋メニュー
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