有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100G4O0
鹿島建設株式会社 研究開発活動 (2019年3月期)
当社グループは、多様化する社会及び顧客のニーズに対応し、受注や生産への貢献を目的に、建設事業の生産性及び品質向上のための技術開発を進めている。さらに、近年のIoTやAIの急速な技術革新がもたらす建設業のビジネスモデルの転換や、国連が採択したSDGsの実現、地球環境改善等の社会課題解決に資する研究開発を中長期的な課題として取り組んでおり、大学、公共機関や他企業との共同研究も推進しながら、効率的に実施している。
当連結会計年度における研究開発費の総額は139億円であり、主な成果は次のとおりである。なお、当社は研究開発活動を土木事業、建築事業のセグメントごとに区分していないため建設事業として記載している。
(建設事業)
1 当社
(1) 次世代建設生産システムの構築
① 建設機械の自動化を核とした自動化施工システム
生産性、安全性の向上に大きく貢献することを目的に開発を進めている次世代建設生産システム「A4CSEL※」(クワッドアクセル※)は、建設機械を自動運転させて作業を行う、全く新たなコンセプトによる建設施工システムである。これまでに3種類の建設機械を自動化し、実工事に導入してきた。2018年には小石原川ダム本体建設工事(福岡県朝倉市)において、コア材の盛立作業を7台の自動化建機を用いて全自動で実施した。次期適用予定の台形CSGダム(*1)建設工事では、20台以上の自動化建機を導入し、現場の「工場化」を発展させていく計画である。*1:現地発生土材とセメント・水を混合した材料であるCSG(Cemented Sand and Gravel)を用いて造る台形形状のダム。
② リアルタイム地質評価システム
山岳トンネル工事の掘削は、事前の地質調査から得られた情報をもとに切羽で地山状況を直接確認しながら慎重に進める必要があるため、IoT技術を活用しリアルタイムに地質を評価するシステム「スマート「切羽ウォッチャー※」」を開発した。本システムを岩手県のトンネル工事に適用し、コンピュータジャンボの穿孔データを地球統計学手法により解析して得られる前方地質の予測結果や、デジタルカメラで撮影した切羽の画像データの解析により得られる剥落危険度の評価結果を現場の切羽でリアルタイムに確認できることを検証した。なお、本技術は2018年度土木学会賞(技術開発賞)及び2018年度岩の力学連合会賞(技術賞)を受賞した。③ 「鹿島スマート生産ビジョン」の策定
建設就業者不足への対応や働き方改革の実現に向けて、建築工事に関わるあらゆる生産プロセスの変革を推進し、生産性向上を目指す「鹿島スマート生産ビジョン」を策定した。その第一段階として、愛知県名古屋市の「(仮称)鹿島伏見ビル新築工事」をパイロット現場として選定し、施工ロボット技術の他に疲労軽減アシストスーツや顔認証入退場管理システム等のICTを活用した技術・システムを集中的に適用し、その効果を測定しつつ、実現に向けた実証を進めた。④ 鉄骨溶接ロボットの活用
「鹿島スマート生産ビジョン」の実現に向けて実証を進めている前述のパイロット現場において、「作業の半分はロボットと」をコアコンセプトに、柱の全周溶接と梁の上向溶接に汎用可搬型溶接ロボットを本格的に適用した。これには鹿島クレス㈱と協働で溶接ロボットの運用体制を構築するとともに、高品質な溶接を実現するために柱全周溶接の四隅(曲線部)の溶接処理や梁の上向溶接における溶接金属の垂れ等の高度な技術的課題を克服しながら、トータルな技術・施工システムを構築することで対応した。これにより、柱10箇所、梁585箇所の溶接作業を溶接ロボットにて安全かつ高品質に完了した。⑤ ハイブリッド耐火被覆工法の開発
「鹿島スマート生産ビジョン」で目指す耐火被覆ロボットの実用化に向け、鹿島フィット㈱及び㈱万象ホールディングスと共同で鉄骨造建物の耐火被覆工事に「巻付け」と「吹付け」の2通りの工法を併用するハイブリッド耐火被覆工法を開発し、1時間耐火から3時間耐火までの国土交通大臣認定を取得するとともに、都内の建築工事において、梁の耐火被覆作業の試適用を行った。本工法の採用により、下フランジは人手による巻付け、ウェブと上フランジはロボットによる吹付けといった作業分担が可能となり、耐火被覆吹付ロボットの実用化に向け大きく前進した。
(2) 社会・顧客にとって価値ある建設・サービスの提供
① コンクリートの表層品質向上
「美(うつく)シール※」工法の生産性向上並びに品質確保を目的として、高撥水性特殊シート「美(うつく)シート※」を型枠材に自動で貼り付ける装置を開発した。本装置を用いることで、作業員1人で短時間に気泡やシワなく確実に貼り付けられ、本工法の大幅なコスト削減が可能となった。なお、本工法は2014年に積水成型工業㈱及び東京大学の石田哲也教授と共同で開発したもので、「美シート※」をあらかじめ貼り付けた型枠にコンクリートを打設することにより、コンクリート表面の気泡が大幅に低減されるとともに、型枠の取り外しの際には「美シート※」がコンクリート側に残置され、コンクリートの表面を一度も乾燥させることなく、湿潤状態を保つことを可能とする工法である。これにより、コンクリート表面が平滑かつ緻密な仕上がりとなり、コンクリートの高品質・高耐久化を実現した。② リニューアル工事の施工合理化
2011年より阪神高速道路㈱と共同で開発を進めていた「超高強度繊維補強コンクリート(UFC(*2))道路橋床版」を阪神高速道路15号堺線の玉出入路リニューアル工事(大阪市西成区)へ試験的に適用し、2018年11月12日に供用を開始した。高度成長期に建設された高速道路橋では、老朽化した鉄筋コンクリート床版を取り替えるリニューアル工事が進められており、近年の車両の大型化に伴って改訂された現行基準に従えば、重荷重に耐えられる疲労耐久性の高い床版への取り替えが求められる。そこで、非常に高い疲労耐久性をもつと同時に、床版の軽量化が可能なUFC床版を開発した。*2:Ultra-high strength Fiber reinforced Concrete
水結合材比が15%程度、圧縮強度が150N/mm2以上で極めて緻密な鋼繊維補強コンクリート。
(3) 社会課題取り組み強化(環境)
① サンゴ礁のモニタリング
高水温による白化現象やオニヒトデによる食害、赤土流出等によるサンゴの衰退が問題となっている。そこで、沖縄県慶良間諸島海域のサンゴ礁において、サンゴが自然に着生し成長する人工基盤「コーラルネット※」を活用したサンゴ再生に向けた環境保全活動に取り組んでいる。また、上空と水中両方の撮影により、迅速かつ正確なサンゴのモニタリングが可能な水面浮体型ドローン「SWANS※(*3)」(スワンズ)を開発し、「コーラルネット※」を活用したサンゴ再生状況などのモニタリングを効率的に実施することを可能とした。*3:System of Water and Aerial Nearshore Survey
② 環境配慮型コンクリートの開発と適用
これまで有効な手段がなく廃棄処分していた戻りコンクリート(*4)を原材料として再利用する環境配慮型コンクリート「「エコクリート※」R3(アールスリー)」を、2012年度から環境省環境研究総合推進費による研究助成を受け、三和石産㈱及び東海大学の笠井哲郎教授と共同で開発し、神奈川県の物件に大規模適用した。また、普通セメントの代わりに高炉スラグ微粉末を60~70%使用することで製造時のCO2排出量を60%程度低減する低炭素型コンクリート「ECMコンクリート※」(2014年に開発)を初めて土木構造物に適用した。なお、「ECMコンクリート※」を含む高炉スラグ微粉末を用いた環境配慮型(低炭素型)コンクリートは㈱竹中工務店と連名で2019年日本建築学会賞(技術)を受賞した。
*4:受け入れ検査に使用したものなど、やむを得ない理由から使用されず工場に戻される生コンクリート。
(国内関係会社)
1 鹿島道路㈱
舗装に関する新技術の開発舗装路面の高耐久型補修材を開発し、市場への展開を進めている。また、2017年度に開発した舗装用重機自動ブレーキアシスト装置を搭載した重機を実工事に適用し、性能検証を行った。今後、作業員への警告システムの追加等、更なる機能向上を図る。
2 ケミカルグラウト㈱
既存杭補強工法の開発建築構造物の既存杭を活用する方策の一つとして、高圧噴射攪拌工法(*5)による既存杭補強工法を開発した。
本工法は、既存杭の周辺地盤に固化材料を注入し補強することで、建物の耐震性能を向上させるものである。上部構造を残したまま施工を行うことができるため、施設利用者の活動を妨げずに工事を行うことが可能となる。また、使用する機械が小さいため、狭隘な箇所での施工など、様々な現場条件に対応することが可能となる。
今後、さらなる実証実験と施工実績を重ね、病院、学校等の公共建築物や工場、倉庫等の生産施設等への適用を目指していく方針である。
*5:「2018年版 建築物のための改良地盤の設計及び品質管理指針」(国土交通省他監修、一般財団法人日本建築センター他発行)において、高圧噴射攪拌工法が新たに採用された。これにより、高圧噴射攪拌工法の建築分野での利用が可能となった。
(開発事業等及び海外関係会社)
研究開発活動は特段行われていない。(注) 工法等に「※」が付されているものは、当社及び関係会社の登録商標である。
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