有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100GSOJ
株式会社パソナグループ 事業等のリスク (2019年5月期)
当社グループは経営に重大な影響を及ぼす危機を未然に防止し、万一発生した場合には損失の極小化を図るため、リスクマネジメント規程を定めております。リスクに関する統括組織としてリスクマネジメント委員会を設置し、想定される重大リスク毎に担当部を定めたうえ、平時の継続的な監視により新たなリスクを含めた危機の事前予知に務め、危機管理マニュアルに基づいて日常の対策及び緊急時に適切な対応を行う体制を整備し、委員会の主要な活動状況について平時においては定期的に取締役会へ報告しております。また、事業運営上生じる日常的なリスクについては、コンプライアンス担当部内で適正に対応するとともに、適宜経営会議等で報告し、また内部監査室による内部監査を通じて各部署の日常的なリスク管理状況を監視しております。
このようなリスクマネジメントを行うなかで、有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性がある主要なリスクには、以下のようなものがあると考えています。なお、重要と識別された主要な危機・脅威のほか、経営戦略の実現に関連する不確実性としてのリスク及び当社グループの事業活動・経営方針を理解するうえで重要と考えられる事項についても記載しています。
なお将来に関する事項は、別段の記載のない限り当有価証券報告書提出日時点において判断したものであり、当社株式への投資に関連するすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1)法的規制について
政府が推進する働き方改革により、2019年4月施行の改正労働基準法に定められた時間外労働の上限規制や年次有給休暇の取得義務化、2020年4月以降に施行される同一労働同一賃金制度における雇用区分別の均等・均衡待遇の明確化と不合理な待遇差が存在する場合はその格差是正の義務化など、無期・有期双方の従業員を取り巻く法規制や労働環境には重大な変化が起こりつつあります。人材サービス事業を展開する当社グループには多数の有期・無期雇用労働者が就労しており、こうした労働関連法改正への対応や労働環境の変化により、原価率や販管費率が上昇したり、当社グループが必要な人材を十分に維持・確保できなくなる可能性があります。
具体的には、例えばエキスパートサービス事業において、当社グループは適正価格による取引、適正水準の給与支払いに努め、派遣給与支払い水準の引上げや社会保険料負担増の際には請求料金についても値上げするべく派遣先企業との料金交渉に取り組んでおりますが、今後の労働関係諸法令の改正に伴う対応によるスタッフ給与等の上昇や有給休暇取得費用、健康診断費用等の福利厚生関連コストの負担増も想定されるなか、派遣給与と派遣料金の値上げが必ずしも同期しない可能性があります。このような案件の急激な増加や同期しない期間の長期化により、原価率の上昇、あるいは派遣料金のコスト増を敬遠した企業の派遣利用の減少といった影響を受ける可能性があります。
こうした状況への対応として、雇用形態の異なる労働者における職務内容を明確にするとともに、派遣スタッフについては派遣先企業に対して丁寧な説明を行い料金改定等の取組みを進めていくことになります。また事業全体の生産性ならびに効率性の向上等によるコスト増の吸収にも努めてまいります。
また、労働者派遣法及び関係諸法令については、労働市場を取り巻く状況の変化等に応じて今後も適宜改正が予想され、その変更内容と法律で求められる対応の具体的内容によっては、当社グループの事業運営、業績が少なからず影響を受ける可能性があります。
①事業の許認可について
当社グループのエキスパートサービス事業は、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(以下、「労働者派遣法」)に基づき、主として労働者派遣事業として厚生労働大臣の許可を取得して行っている事業であります。労働者派遣法は、労働者派遣事業の適正な運営を確保するために、派遣事業を行う者(派遣元事業主)が、派遣元事業主としての欠格事由に該当したり法令に違反した場合には、事業の許可を取り消し、または事業の停止を命じる旨を定めております。当社グループでは株式会社パソナグループのコーポレートガバナンス本部が主導して適正な派遣取引のためのガイドラインを作成し、徹底して社員教育に努めるとともに、内部監査等により関連法規の遵守状況を日頃より監視し、法令違反等の防止に努めております。しかしながら、万一当社グループ各社及び役職員による重大な法令違反等が発生し、事業許可の取消しまたは事業停止を命じられるようなことがあれば、労働者派遣事業を行えなくなることが考えられます。
また人材紹介事業においては、職業安定法に基づき、有料職業紹介事業として厚生労働大臣の許可を受けて行っている事業であります。職業安定法ではこれまでの改正により、取扱職業の拡大、紹介手数料制限の緩和及び新規学卒者の職業紹介が可能となっているほか、人材派遣事業と人材紹介事業の兼業規制に関する緩和により紹介予定派遣が可能となっております。また、2018年1月には職業紹介の機能強化や求人情報等の適正化を図るための義務が強化されております。人材紹介事業についても、人材派遣事業と同様に、一定の要件を満たさない場合には事業許可の取消し、事業の停止といった措置が規定されていることから、同様のリスクが想定されます。
そして再就職支援事業は、職業安定法に基づき、有料職業紹介事業として厚生労働大臣の許可を受けて行っている事業であります。収益構造やビジネスモデルは人材紹介事業とは異なりますが、求職者を求人企業に紹介するという点において前述の人材紹介事業と同様の規制、指導及び監督を受けることから、同様のリスクが想定されます。
②労働者派遣法について
労働者派遣法の改正により、2015年9月30日以降に開始した労働者派遣契約について、すべての業務において派遣スタッフ個人単位の派遣期間制限(3年)と、派遣先の事業所単位の期間制限(3年、一定の場合に延長可)が設けられ、派遣スタッフが同一の組織単位に継続して3年間派遣されることになった場合は派遣元事業主は派遣先への直接雇用の依頼や新たな就業機会の提供などといった雇用安定措置を講じること、派遣スタッフに対するキャリアアップ措置、派遣先従業員と派遣スタッフの均衡待遇への配慮などが義務付けられております。
当社グループは従来から派遣スタッフの教育研修やキャリアコンサルティングの拡充を推進しておりますが、教育コストの負担が一部増加しております。また、派遣先企業への直接雇用の申入れも積極的に行っていますが、当社グループで派遣スタッフの雇用安定措置を講じる場合において、就業先が決まるまでの待機期間中の労務費等の負担が発生することが考えられます。雇用安定措置等の今後の運用や、今後の法改正及び運用状況によっては、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
③労働契約法について
労働契約法の改正により、2013年4月1日以降に開始した有期雇用契約が通算5年を超えて更新された場合は、労働者の申込みにより、無期雇用契約(期間の定めのない雇用契約)に転換することになりました。
当社グループで派遣スタッフ等を無期雇用する場合、就業先が決まるまでの待機期間中の労務費等の負担が発生することが考えられます。取引先企業への料金改定の交渉等を進め、コスト増を吸収するよう努めますが、今後の運用状況によっては、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
また、今後の法改正により求められる対応の具体的内容によっては、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
(2)個人情報及び機密情報の管理について
当社グループは各事業の運営に際し、派遣登録者、求職者、各サービス利用者、顧客企業、従業員、その他関係者等の個人情報及び機密情報を大量に保有しております。当社グループによる個人情報の取扱いについては、日本における「個人情報の保護に関する法律」だけでなく、2018年5月に施行された「欧州連合一般データ保護規則(GDPR)」をはじめ当該国の個人情報に関する法律が適用されます。これらの法規制は、国境を越えて適用される傾向にあり、その遵守や事業運営における費用が増加する可能性があります。
当社グループではGDPRにも対応した個人情報保護方針等を策定して個人情報の適正な取得・利用・提供等を行うとともに、個人情報の漏洩や滅失を防止するために技術面及び組織面における必要かつ適切な安全管理措置を講じ、全役職員及び全従業員に個人情報保護管理に関する教育を徹底しております。また、当社グループ及び取引先に関する営業秘密・重要情報の漏洩を防止すべき情報管理体制・管理手法を定め、その周知と実施の徹底に努めております。具体的には、前述した様々な秘密保持義務については、各就業規則、秘密情報保持規程において定めるとともに、システムへの不正アクセス、標的型攻撃メールへの防御のための技術的対策、社員に対する定期的な研修や訓練等を実施しております。
こうした当社グループの取組みにもかかわらず、従業員等の故意又は過失、不測の事態等により個人情報及び機密情報が外部に漏洩した場合、損害賠償請求や社会的信用の失墜等により、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を与える可能性があります。
(3)ビジネスモデルの持続性について
人材ビジネス業界は、国内外の景気変動や技術革新等のビジネス環境の変化、労働関連法令における規制等の影響を受けます。当社グループは、人材派遣、委託・請負、人材紹介、再就職支援、福利厚生代行、保育、福祉介護、家事代行など人材サービスを総合的に展開し特定の領域に偏らない事業ポートフォリオの構築を進め、また海外への展開を行っているほか、常に新しい雇用のあり方に関する情報発信や提案、啓蒙活動にも積極的に取り組んでおります。しかし今後、様々な要因により、市場環境や雇用情勢、顧客需要が急激に変化した場合、各事業の業績や当社グループの収益構造に影響を受ける可能性があります。
また今後、長期的には国内の人口推移により更なる人手不足あるいは市場縮小等が起きることも想定されます。当社グループは持続的成長に向けた取組みとして、常に社会の変化の兆しを捉え、コントロールし得るリスクテイクもしたうえ、引き続き、企業理念である「社会の問題点を解決する」ことをテーマとした様々な新規事業・サービスを開発・拡充することでリスク分散を図ってまいります。また、このような新規事業への挑戦が常にできる体制・組織作りを維持するため、グループ社員一人ひとりへの企業理念の更なる浸透を図ることを目指してPasona Way本部を設置し、将来のパソナグループを担う人材の育成、強い組織・仲間づくりの実現に取り組んでおります。
(4)事業投資について
①子会社・関連会社への投資
当社グループは今後も、企業や就労者の多様なニーズに応じたサービス領域の拡大、また社会的課題の解決につながる事業投資を積極的に行っていく考えであります。新規の事業投資については、多額の資金需要が発生する可能性があるほか、収益が必ずしも当初の計画通りに推移する保証はなく、想定した収益規模が確保できない可能性があります。事業の進捗状況を適時に把握し、既存の事業インフラや営業網も活用しながら、早期育成に取り組んでおりますが、こうした取組みにもかかわらず期待した収益を生まない場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
また当社が保有する関係会社株式は、市場動向や経営環境によっては評価替えなどにより当社の個別財務諸表における業績や資産の額に影響を与える可能性があります。
②地方創生事業に係る商業施設について
当社グループの地方創生事業においては、地方の活性化と人材育成及び雇用創造の拠点として複数の商業施設を運営しており、既存の人材サービスと異なる以下のような固有のリスクが想定されます。現在、パブリックソリューションセグメントでは営業損失が継続しております。
・商業施設の新規開設については、施設規模の大きいものは多額の資金負担が生じます。人件費等の固定的な費用も多く、開設後に利用者数が一定水準に至るまでの期間において費用負担が先行する傾向があり、短期的には当社グループの利益を圧迫する場合があります。
・天候、災害等の影響により利用者の減少や営業休止を余儀なくされる可能性があります。また、利用者への訴求力増加施策が不十分であったり利用者の高い満足度を得られず利用者数が計画に届かない場合、収益が計画を下回ったり、追加投資が必要になる可能性があります。
・施設におけるアトラクション等の安全管理、食事の提供や食品の販売における品質管理や食品衛生には十分注意しておりますが、万一事故が発生した場合、当社グループの信頼性の低下や訴訟などが発生する可能性があります。
③企業買収について
当社グループは、事業の強化補強を図る有効な手段として、企業買収を行う場合があります。こうした企業買収に伴い、多額の資金需要及びのれんの償却等が発生する可能性があります。また企業買収にあたっては市場動向や顧客のニーズ、相手先企業の業績及び財政状況などを考慮し進めておりますが、これらの買収が必ずしも当社グループの見込みどおりに連結収益に貢献したり、シナジー効果を生むとは限らず、経営環境や事業の状況の著しい変化等によりそれぞれの経営成績が想定どおり進捗しない場合、のれんの減損損失や株式の評価損が生じるなど、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④減損会計について
当社グループは、地方創生事業に係る商業施設を含めた事業用の不動産やのれん、ソフトウエア等の有形・無形固定資産を所有し、連結貸借対照表に計上しております。こうした資産は、当該資産が生み出す将来キャッシュ・フローの状況により減損会計の適用を受ける場合があり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)資金調達について
当社グループは、事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金及び外部資金を有効に活用しております。グループCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)によりグループ各社間の資金の有効活用と資金調達の一元化を図っているほか、金融機関との間にコミットメントラインを設定しております。資金需要に対する機動的な対応と、当社の考える資本コストのバランスからある程度の現金及び現金同等物を保有するとともに、資金需要の規模に応じた個別借入れ等により資金を確保していますが、今後の経営状況や信用収縮、金融情勢の変化などにより、必要な資金調達ができない場合は、当社グループの事業遂行に影響を及ぼす可能性があります。
(6)社会保険料負担について
当社グループでは、従業員に加えて現行の社会保険制度において社会保険加入対象となる派遣スタッフ及び受託業務に従事するスタッフの完全加入を徹底しております。社会保険料の保険料率や被保険者の範囲等は適宜改定されており、各保険制度の現在の状況は以下のとおりです。これら社会保険料の負担増は原価率や人件費率の上昇につながり、今後、社会保険制度の改正に伴って各保険料率や会社負担額が大幅に上昇したり、加入対象者や被保険者数が大幅に増加する場合、当社グループの収益性の圧迫要因となる可能性があります。
厚生年金保険については、2004年の年金制度改革により標準報酬月額に対する会社負担分の料率は毎年引き上げられ、2017年以降は9.15%となっております。また2016年10月から、週20時間以上働く短時間労働者にも厚生年金保険及び健康保険の適用が拡大されております。
健康保険については、これまで当社グループの従業員及び派遣スタッフ等が属していた人材派遣健康保険組合が解散したことにより、2019年4月に全国健康保険組合に移行しております。健康保険、介護保険の保険料率は年々上昇を続けていた前年のものと大きくは変わっておりませんが、移行に伴う費用のほか健康診断の会社負担が増加しています。
雇用保険についても、適用範囲が31日以上雇用見込みの労働者に拡大し、2017年1月以降は、65歳以上の労働者も適用対象となっております。2019年度の一般の事業における会社負担分の料率は6/1000となっております。
(7)業績の季節的な変動
当社グループのエキスパートサービス事業においては、労働市場の変化の影響を受けるとともに、派遣スタッフの有給休暇取得や稼働日数の多少という季節的な変動要因があり、上期に比較して下期に利益が集中する傾向があります。また、福利厚生アウトソーシング事業においては、上期は夏期休暇等の影響により会員に対し宿泊施設等の利用の都度に支払われる補助金が増し、売上原価が増加する特性があります。当社グループの業績は、このような季節的な変動要因により、概ね利益が下期に偏る傾向があります。
(8)自然災害及びシステム障害等について
当社グループは全国にグループ会社及び営業拠点を有しており、地震や水害など大規模な自然災害、パンデミック、事件・事故、その他企業存続を脅かす事象が発生した場合に備えて、従業員及び派遣スタッフの安否を確認し、安全を確保するための対策を危機管理マニュアルに定めております。また、事業継続のための施策として事業拠点や情報システムの機能分散なども講じております。危機発生時は迅速かつ適切な対応をとる所存でありますが、想定を大きく上回る規模で自然災害等が発生した場合、当社グループの事業運営、財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは事業活動や情報管理にITシステムを多用しており、何らかの原因によって大規模なシステム障害や通信ネットワーク障害が発生した場合、当社グループの事業運営に悪影響を及ぼす可能性があります。
(9)訴訟・不祥事及びレピュテーションリスクについて
当社グループは法令遵守を重視した事業活動を行っておりますが、各種訴訟、係争、損害賠償請求の当事者となる可能性や不祥事、誹謗中傷等のリスクを排除できない場合があります。これらの発生に起因し、当社グループの社会的信用や企業イメージが低下し、売上の減少等、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)当社代表取締役南部靖之及びその近親者の出資する会社との関係について
当社代表取締役南部靖之及びその近親者(同氏の二親等内の親族。以下同じ)、ならびに同氏及びその近親者が議決権の過半数を自己の計算において保有する会社等は、2019年5月末現在、合わせて当社の議決権の48.30%を保有しておりますが、コーポレートガバナンス体制を十分に機能させることにより、適切な事業運営に努めております。
このようなリスクマネジメントを行うなかで、有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性がある主要なリスクには、以下のようなものがあると考えています。なお、重要と識別された主要な危機・脅威のほか、経営戦略の実現に関連する不確実性としてのリスク及び当社グループの事業活動・経営方針を理解するうえで重要と考えられる事項についても記載しています。
なお将来に関する事項は、別段の記載のない限り当有価証券報告書提出日時点において判断したものであり、当社株式への投資に関連するすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1)法的規制について
政府が推進する働き方改革により、2019年4月施行の改正労働基準法に定められた時間外労働の上限規制や年次有給休暇の取得義務化、2020年4月以降に施行される同一労働同一賃金制度における雇用区分別の均等・均衡待遇の明確化と不合理な待遇差が存在する場合はその格差是正の義務化など、無期・有期双方の従業員を取り巻く法規制や労働環境には重大な変化が起こりつつあります。人材サービス事業を展開する当社グループには多数の有期・無期雇用労働者が就労しており、こうした労働関連法改正への対応や労働環境の変化により、原価率や販管費率が上昇したり、当社グループが必要な人材を十分に維持・確保できなくなる可能性があります。
具体的には、例えばエキスパートサービス事業において、当社グループは適正価格による取引、適正水準の給与支払いに努め、派遣給与支払い水準の引上げや社会保険料負担増の際には請求料金についても値上げするべく派遣先企業との料金交渉に取り組んでおりますが、今後の労働関係諸法令の改正に伴う対応によるスタッフ給与等の上昇や有給休暇取得費用、健康診断費用等の福利厚生関連コストの負担増も想定されるなか、派遣給与と派遣料金の値上げが必ずしも同期しない可能性があります。このような案件の急激な増加や同期しない期間の長期化により、原価率の上昇、あるいは派遣料金のコスト増を敬遠した企業の派遣利用の減少といった影響を受ける可能性があります。
こうした状況への対応として、雇用形態の異なる労働者における職務内容を明確にするとともに、派遣スタッフについては派遣先企業に対して丁寧な説明を行い料金改定等の取組みを進めていくことになります。また事業全体の生産性ならびに効率性の向上等によるコスト増の吸収にも努めてまいります。
また、労働者派遣法及び関係諸法令については、労働市場を取り巻く状況の変化等に応じて今後も適宜改正が予想され、その変更内容と法律で求められる対応の具体的内容によっては、当社グループの事業運営、業績が少なからず影響を受ける可能性があります。
①事業の許認可について
当社グループのエキスパートサービス事業は、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(以下、「労働者派遣法」)に基づき、主として労働者派遣事業として厚生労働大臣の許可を取得して行っている事業であります。労働者派遣法は、労働者派遣事業の適正な運営を確保するために、派遣事業を行う者(派遣元事業主)が、派遣元事業主としての欠格事由に該当したり法令に違反した場合には、事業の許可を取り消し、または事業の停止を命じる旨を定めております。当社グループでは株式会社パソナグループのコーポレートガバナンス本部が主導して適正な派遣取引のためのガイドラインを作成し、徹底して社員教育に努めるとともに、内部監査等により関連法規の遵守状況を日頃より監視し、法令違反等の防止に努めております。しかしながら、万一当社グループ各社及び役職員による重大な法令違反等が発生し、事業許可の取消しまたは事業停止を命じられるようなことがあれば、労働者派遣事業を行えなくなることが考えられます。
また人材紹介事業においては、職業安定法に基づき、有料職業紹介事業として厚生労働大臣の許可を受けて行っている事業であります。職業安定法ではこれまでの改正により、取扱職業の拡大、紹介手数料制限の緩和及び新規学卒者の職業紹介が可能となっているほか、人材派遣事業と人材紹介事業の兼業規制に関する緩和により紹介予定派遣が可能となっております。また、2018年1月には職業紹介の機能強化や求人情報等の適正化を図るための義務が強化されております。人材紹介事業についても、人材派遣事業と同様に、一定の要件を満たさない場合には事業許可の取消し、事業の停止といった措置が規定されていることから、同様のリスクが想定されます。
そして再就職支援事業は、職業安定法に基づき、有料職業紹介事業として厚生労働大臣の許可を受けて行っている事業であります。収益構造やビジネスモデルは人材紹介事業とは異なりますが、求職者を求人企業に紹介するという点において前述の人材紹介事業と同様の規制、指導及び監督を受けることから、同様のリスクが想定されます。
②労働者派遣法について
労働者派遣法の改正により、2015年9月30日以降に開始した労働者派遣契約について、すべての業務において派遣スタッフ個人単位の派遣期間制限(3年)と、派遣先の事業所単位の期間制限(3年、一定の場合に延長可)が設けられ、派遣スタッフが同一の組織単位に継続して3年間派遣されることになった場合は派遣元事業主は派遣先への直接雇用の依頼や新たな就業機会の提供などといった雇用安定措置を講じること、派遣スタッフに対するキャリアアップ措置、派遣先従業員と派遣スタッフの均衡待遇への配慮などが義務付けられております。
当社グループは従来から派遣スタッフの教育研修やキャリアコンサルティングの拡充を推進しておりますが、教育コストの負担が一部増加しております。また、派遣先企業への直接雇用の申入れも積極的に行っていますが、当社グループで派遣スタッフの雇用安定措置を講じる場合において、就業先が決まるまでの待機期間中の労務費等の負担が発生することが考えられます。雇用安定措置等の今後の運用や、今後の法改正及び運用状況によっては、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
③労働契約法について
労働契約法の改正により、2013年4月1日以降に開始した有期雇用契約が通算5年を超えて更新された場合は、労働者の申込みにより、無期雇用契約(期間の定めのない雇用契約)に転換することになりました。
当社グループで派遣スタッフ等を無期雇用する場合、就業先が決まるまでの待機期間中の労務費等の負担が発生することが考えられます。取引先企業への料金改定の交渉等を進め、コスト増を吸収するよう努めますが、今後の運用状況によっては、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
また、今後の法改正により求められる対応の具体的内容によっては、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
(2)個人情報及び機密情報の管理について
当社グループは各事業の運営に際し、派遣登録者、求職者、各サービス利用者、顧客企業、従業員、その他関係者等の個人情報及び機密情報を大量に保有しております。当社グループによる個人情報の取扱いについては、日本における「個人情報の保護に関する法律」だけでなく、2018年5月に施行された「欧州連合一般データ保護規則(GDPR)」をはじめ当該国の個人情報に関する法律が適用されます。これらの法規制は、国境を越えて適用される傾向にあり、その遵守や事業運営における費用が増加する可能性があります。
当社グループではGDPRにも対応した個人情報保護方針等を策定して個人情報の適正な取得・利用・提供等を行うとともに、個人情報の漏洩や滅失を防止するために技術面及び組織面における必要かつ適切な安全管理措置を講じ、全役職員及び全従業員に個人情報保護管理に関する教育を徹底しております。また、当社グループ及び取引先に関する営業秘密・重要情報の漏洩を防止すべき情報管理体制・管理手法を定め、その周知と実施の徹底に努めております。具体的には、前述した様々な秘密保持義務については、各就業規則、秘密情報保持規程において定めるとともに、システムへの不正アクセス、標的型攻撃メールへの防御のための技術的対策、社員に対する定期的な研修や訓練等を実施しております。
こうした当社グループの取組みにもかかわらず、従業員等の故意又は過失、不測の事態等により個人情報及び機密情報が外部に漏洩した場合、損害賠償請求や社会的信用の失墜等により、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を与える可能性があります。
(3)ビジネスモデルの持続性について
人材ビジネス業界は、国内外の景気変動や技術革新等のビジネス環境の変化、労働関連法令における規制等の影響を受けます。当社グループは、人材派遣、委託・請負、人材紹介、再就職支援、福利厚生代行、保育、福祉介護、家事代行など人材サービスを総合的に展開し特定の領域に偏らない事業ポートフォリオの構築を進め、また海外への展開を行っているほか、常に新しい雇用のあり方に関する情報発信や提案、啓蒙活動にも積極的に取り組んでおります。しかし今後、様々な要因により、市場環境や雇用情勢、顧客需要が急激に変化した場合、各事業の業績や当社グループの収益構造に影響を受ける可能性があります。
また今後、長期的には国内の人口推移により更なる人手不足あるいは市場縮小等が起きることも想定されます。当社グループは持続的成長に向けた取組みとして、常に社会の変化の兆しを捉え、コントロールし得るリスクテイクもしたうえ、引き続き、企業理念である「社会の問題点を解決する」ことをテーマとした様々な新規事業・サービスを開発・拡充することでリスク分散を図ってまいります。また、このような新規事業への挑戦が常にできる体制・組織作りを維持するため、グループ社員一人ひとりへの企業理念の更なる浸透を図ることを目指してPasona Way本部を設置し、将来のパソナグループを担う人材の育成、強い組織・仲間づくりの実現に取り組んでおります。
(4)事業投資について
①子会社・関連会社への投資
当社グループは今後も、企業や就労者の多様なニーズに応じたサービス領域の拡大、また社会的課題の解決につながる事業投資を積極的に行っていく考えであります。新規の事業投資については、多額の資金需要が発生する可能性があるほか、収益が必ずしも当初の計画通りに推移する保証はなく、想定した収益規模が確保できない可能性があります。事業の進捗状況を適時に把握し、既存の事業インフラや営業網も活用しながら、早期育成に取り組んでおりますが、こうした取組みにもかかわらず期待した収益を生まない場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
また当社が保有する関係会社株式は、市場動向や経営環境によっては評価替えなどにより当社の個別財務諸表における業績や資産の額に影響を与える可能性があります。
②地方創生事業に係る商業施設について
当社グループの地方創生事業においては、地方の活性化と人材育成及び雇用創造の拠点として複数の商業施設を運営しており、既存の人材サービスと異なる以下のような固有のリスクが想定されます。現在、パブリックソリューションセグメントでは営業損失が継続しております。
・商業施設の新規開設については、施設規模の大きいものは多額の資金負担が生じます。人件費等の固定的な費用も多く、開設後に利用者数が一定水準に至るまでの期間において費用負担が先行する傾向があり、短期的には当社グループの利益を圧迫する場合があります。
・天候、災害等の影響により利用者の減少や営業休止を余儀なくされる可能性があります。また、利用者への訴求力増加施策が不十分であったり利用者の高い満足度を得られず利用者数が計画に届かない場合、収益が計画を下回ったり、追加投資が必要になる可能性があります。
・施設におけるアトラクション等の安全管理、食事の提供や食品の販売における品質管理や食品衛生には十分注意しておりますが、万一事故が発生した場合、当社グループの信頼性の低下や訴訟などが発生する可能性があります。
③企業買収について
当社グループは、事業の強化補強を図る有効な手段として、企業買収を行う場合があります。こうした企業買収に伴い、多額の資金需要及びのれんの償却等が発生する可能性があります。また企業買収にあたっては市場動向や顧客のニーズ、相手先企業の業績及び財政状況などを考慮し進めておりますが、これらの買収が必ずしも当社グループの見込みどおりに連結収益に貢献したり、シナジー効果を生むとは限らず、経営環境や事業の状況の著しい変化等によりそれぞれの経営成績が想定どおり進捗しない場合、のれんの減損損失や株式の評価損が生じるなど、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④減損会計について
当社グループは、地方創生事業に係る商業施設を含めた事業用の不動産やのれん、ソフトウエア等の有形・無形固定資産を所有し、連結貸借対照表に計上しております。こうした資産は、当該資産が生み出す将来キャッシュ・フローの状況により減損会計の適用を受ける場合があり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)資金調達について
当社グループは、事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金及び外部資金を有効に活用しております。グループCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)によりグループ各社間の資金の有効活用と資金調達の一元化を図っているほか、金融機関との間にコミットメントラインを設定しております。資金需要に対する機動的な対応と、当社の考える資本コストのバランスからある程度の現金及び現金同等物を保有するとともに、資金需要の規模に応じた個別借入れ等により資金を確保していますが、今後の経営状況や信用収縮、金融情勢の変化などにより、必要な資金調達ができない場合は、当社グループの事業遂行に影響を及ぼす可能性があります。
(6)社会保険料負担について
当社グループでは、従業員に加えて現行の社会保険制度において社会保険加入対象となる派遣スタッフ及び受託業務に従事するスタッフの完全加入を徹底しております。社会保険料の保険料率や被保険者の範囲等は適宜改定されており、各保険制度の現在の状況は以下のとおりです。これら社会保険料の負担増は原価率や人件費率の上昇につながり、今後、社会保険制度の改正に伴って各保険料率や会社負担額が大幅に上昇したり、加入対象者や被保険者数が大幅に増加する場合、当社グループの収益性の圧迫要因となる可能性があります。
厚生年金保険については、2004年の年金制度改革により標準報酬月額に対する会社負担分の料率は毎年引き上げられ、2017年以降は9.15%となっております。また2016年10月から、週20時間以上働く短時間労働者にも厚生年金保険及び健康保険の適用が拡大されております。
健康保険については、これまで当社グループの従業員及び派遣スタッフ等が属していた人材派遣健康保険組合が解散したことにより、2019年4月に全国健康保険組合に移行しております。健康保険、介護保険の保険料率は年々上昇を続けていた前年のものと大きくは変わっておりませんが、移行に伴う費用のほか健康診断の会社負担が増加しています。
雇用保険についても、適用範囲が31日以上雇用見込みの労働者に拡大し、2017年1月以降は、65歳以上の労働者も適用対象となっております。2019年度の一般の事業における会社負担分の料率は6/1000となっております。
(7)業績の季節的な変動
当社グループのエキスパートサービス事業においては、労働市場の変化の影響を受けるとともに、派遣スタッフの有給休暇取得や稼働日数の多少という季節的な変動要因があり、上期に比較して下期に利益が集中する傾向があります。また、福利厚生アウトソーシング事業においては、上期は夏期休暇等の影響により会員に対し宿泊施設等の利用の都度に支払われる補助金が増し、売上原価が増加する特性があります。当社グループの業績は、このような季節的な変動要因により、概ね利益が下期に偏る傾向があります。
(8)自然災害及びシステム障害等について
当社グループは全国にグループ会社及び営業拠点を有しており、地震や水害など大規模な自然災害、パンデミック、事件・事故、その他企業存続を脅かす事象が発生した場合に備えて、従業員及び派遣スタッフの安否を確認し、安全を確保するための対策を危機管理マニュアルに定めております。また、事業継続のための施策として事業拠点や情報システムの機能分散なども講じております。危機発生時は迅速かつ適切な対応をとる所存でありますが、想定を大きく上回る規模で自然災害等が発生した場合、当社グループの事業運営、財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは事業活動や情報管理にITシステムを多用しており、何らかの原因によって大規模なシステム障害や通信ネットワーク障害が発生した場合、当社グループの事業運営に悪影響を及ぼす可能性があります。
(9)訴訟・不祥事及びレピュテーションリスクについて
当社グループは法令遵守を重視した事業活動を行っておりますが、各種訴訟、係争、損害賠償請求の当事者となる可能性や不祥事、誹謗中傷等のリスクを排除できない場合があります。これらの発生に起因し、当社グループの社会的信用や企業イメージが低下し、売上の減少等、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)当社代表取締役南部靖之及びその近親者の出資する会社との関係について
当社代表取締役南部靖之及びその近親者(同氏の二親等内の親族。以下同じ)、ならびに同氏及びその近親者が議決権の過半数を自己の計算において保有する会社等は、2019年5月末現在、合わせて当社の議決権の48.30%を保有しておりますが、コーポレートガバナンス体制を十分に機能させることにより、適切な事業運営に努めております。
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E05729] S100GSOJ)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
ご利用にあたっては、こちらもご覧ください。「ご利用規約」「どんぶり会計β版について」。
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