有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100FGIO
株式会社レゾナック・ホールディングス 研究開発活動 (2018年12月期)
当社グループは、連結中期経営計画「Project 2020+」に基づき、「インフラケミカルズ」、「エネルギー」、「移動・輸送」、「生活環境」、「情報電子」という5つの領域における社会課題の解決、新たな価値創造のために、当社が保有する多様な事業領域と、競争優位性のある要素技術である「中核技術」、当社が培ってきた世界トップレベルの技術である「戦略技術」を深化・融合させ、当社独自の特徴ある研究開発を推進してきた。
当社グループは、現業強化と周辺分野の拡大に向けた研究及び事業開発を強化すると共に、オープンイノベーションやM&Aを活用し、当社グループの次世代を担う事業の創出に取り組んでいる。特に、電池材料やSiCエピウェハーなど当社の将来の成長を牽引する事業の早期の成果顕現に注力している。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は、197億35百万円である。
セグメントごとの研究開発活動は次のとおりである。
(石油化学)
石油化学分野では、コア技術である触媒、有機合成、高分子合成の技術を集積し、電子・電気機器、輸送機器、食品包装などの分野において、多様な市場ニーズに応えるための研究開発を推進している。
主要な誘導品事業であるアセチル及びアリルアルコール製品群では、自社開発した製造プロセスの優位性を伸長させるため、触媒の性能向上と新触媒の開発を進めている。2014年6月、当社技術を用い大分に新設した酢酸エチルプラントは、稼働開始以来高稼働を継続しているが、更なるコスト競争力の強化と生産性の向上を達成すべく、触媒性能の向上を追求している。
アリルアルコール製品群において、環境対応型溶剤である酢酸ノルマルプロピルは順調に販売量を増やしており、更なる市場拡大を企図して新規用途の展開を積極的に進めている。この他、当社技術の特長を活かした新規誘導品の研究開発を推進している。
また、耐熱透明フィルム「ショウレイアル®」は、モバイルディスプレイ材料などの分野に向けて精力的に市場開拓を進めており、ガラスに匹敵する光学特性と手触り感が評価され、国内外で採用されている。
当連結会計年度における石油化学セグメントの研究開発費は、14億14百万円であった。
(化学品)
化学品分野では、広範多岐にわたる需要、個々のお客様の要望に迅速に応え、お客様の新製品開発の鍵となる材料をタイムリーに提案することを目的として、半導体プロセス材料、光機能材料、ソルダーレジスト、高機能ゲル、各種有機中間体、化粧品原料、インフラケミカルズ、エネルギーなどの研究開発を推進している。
半導体製造プロセス材料として、各種エッチングガス、クリーニングガス、成膜材料及び洗浄剤、溶剤の開発を進め、市場展開している。今後も引き続き、低環境負荷、高性能化に寄与する研究開発を進める。
テレビなどの大型液晶ディスプレイに使用される各種製品は、市場で高い評価を受けているが、更に、お客様との情報ネットワークを駆使して、お客様の要望に即した新規開発品を複数市場に投入している。特に、屈曲性に優れたチップ・オン・フィルム(COF)用ソルダーレジストは市場要求に合致し、販売を拡大している。また、半導体や電子部品の放熱性を高めるカーボンコート箔テープ「HSシリーズ」に柔軟性を高めた新シリーズを拡充し、サンプル提供を行っている。また、各種レジストなどの電子材料に使用される高機能性イソシアネートモノマー「カレンズAOI®」において、一般工業分野向け新グレード「AOI-VM®」の開発、生産能力の強化を行い、販売を継続している。
高速液体クロマトグラフィー用「ショウデックス®カラム」では、先進国向けを主体に、最先端技術へ適用できるカラムを開発し、並行して新興国の市場開発を積極的に進めている。世界6拠点から収集した営業情報に基づき、分析ノウハウ・技術サービスを的確、迅速にお客様に提供している。また従来にない迅速分析を実現したSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)用充填カラム、医薬・バイオ・食品分野における高感度分析を可能としたHILIC(親水性相互作用クロマトグラフィー)用充填カラム、抗体タンパク質を高精度で分析可能なSEC用充填カラム等の市場ニーズに適した新製品を順次発売している。
有機中間体では、当社固有原料と精密有機合成技術の強みを活かした各種中間体の開発に注力し、化粧品原料では、水溶性ビタミンE誘導体「TPNa®」に目のクマへの改善効果を見出し、アイケア用途として出荷を開始するなど、高機能ビタミンC誘導体「アプレシエ®」に続き、複数の化合物において市場投入に向けた進展が見られた。
インフラケミカルズでは、インフラ構造物の延命、補修に注目し、光硬化タイプの下水管更生用樹脂の技術開発に注力している。また新規に開発中のインフラ補修材は橋脚や水利用施設補修の試験施工を実施している。
エネルギーでは、リチウムイオン電池負極材用水系バインダー樹脂「ポリゾール®LBシリーズ」の持つ、低抵抗性、優れた温度特性、負極集電体との高密着性などの特性が認められ、順調に出荷を伸ばしている。今後研究開発を加速し、長寿命化、超急速充電対応化などの特性をレベルアップし、リチウムイオン電池の高性能化への寄与が期待できる。
当連結会計年度における化学品セグメントの研究開発費は、27億3百万円であった。
(エレクトロニクス)
エレクトロニクス分野では、高性能化の市場要請に応えるべく、最先端技術の開発に邁進している。
記録材料については、ハードディスク外販のトップメーカーとして、市場をリードする新技術の開発を継続しており、世界に先駆けて実用化した垂直磁気記録方式での高性能化を進めると共に、次世代ハードディスクへの高密度記録となるシングルド記録(瓦書記録)、マイクロ波アシスト記録、熱アシスト記録の開発により更なる高性能化に向けた取り組みを行っている。世界最大の記録容量である第9世代ハードディスクとして、2.5インチサイズにおいては1枚当たり1テラバイト、3.5インチサイズにおいては1枚当たり1.5~1.8テラバイトのハードディスクを出荷している。
発光素子・材料では、高効率化、高出力化をターゲットとしたLED製品の開発に注力している。反射型LEDは、産業機器用光電センサーなどに採用されているが、本技術を発展させ、従来の反射型LEDの2倍近い出力の「ダブルジャンクション反射型LED」を開発し、生体認証や監視カメラ、バーチャルリアリティ、車載センサーなど高出力が求められる用途に受注活動を進めている。
希土類磁石合金では、既に採用が進んでいる希少金属の1つであるDy(ジスプロシウム)を使用せずに従来品と同様の性能を持つネオジム磁石用合金を製造する技術をベースに、より高濃度のDy添加が必要な用途においてもDyフリーを達成すべく、更なる技術開発に取り組んでいる。
先端電池材料については、各種電気自動車用に加えスマートフォン等の携帯用など多様なリチウムイオン電池に必要な、寿命、入出力、低抵抗性、容量を満たす、黒鉛負極材「SCMG®」、高容量Si黒鉛負極材、カーボンナノファイバー「VGCF®」、カーボンコートアルミ箔「SDX®」、外装材であるアルミラミネートフィルム「SPALF®」などの素材・部材の開発・販売を引き続き進めている。
当連結会計年度におけるエレクトロニクスセグメントの研究開発費は、51億57百万円であった。
(無機)
無機分野では、素材の特性を活かした材料及びその用途開発を進めている。
電子デバイス、パワーデバイス市場向けには、デバイスの高密度化、高性能化に対応した高い放熱性と電気絶縁性を併せ持つフィラー材料の開発を行っている。高熱伝導材料の開発と評価技術の深化により、放熱部材向けのフィラーとしての性能向上を実現し、パワーモジュール等の用途への展開を進めている。
また、スマートフォンなど多くの電子機器に用いられる積層セラミックコンデンサー(MLCC)の用途では、MLCCの更なる小型化・高容量化に貢献すべく、原料である超微粒子酸化チタンの材料開発に取り組んでいる。
当連結会計年度における無機セグメントの研究開発費は、5億86百万円であった。
(アルミニウム)
アルミニウム分野では、市場から要望されている軽量、高強度、高機能の材料、部品及び製品の開発を進めると共に、これらの製造プロセスに係る基盤技術の研究にも注力している。
素形材関連では、当社が開発した気体加圧式ホットトップ連続鋳造法及び気体加圧式水平完全連続鋳造法を基軸とし、鍛造技術と合わせて、アルミ加工製品の開発を進めている。昨今、自動車における軽量化ニーズの高まりを受け、サスペンションや駆動部品を始めとした自動車用部品でアルミ製品の採用が拡大しており、今後も需要は堅調に増加することが見込まれる。アルミ合金の開発強化のため、2018年2月事業開発センター融合製品開発研究所の傘下組織として、喜多方事業所(福島県)内に研究施設「アルミ製品評価センター」を開所した。評価・解析技術を強化し、押出、鍛造及び引抜の金型技術、並びに加工、接合の各プロセス技術、各種製品に適した合金の開発、塑性加工及び熱伝導のシミュレーション技術を深化させている。
圧延素材関連では、高熱伝導・高強度アルミニウム板材「ST60」の新グレード「ST60-HSM®」の開発・販売を引き続き進めている。本製品は純アルミニウム並みの放熱性(熱伝導性)を持ちながら、アルミニウム合金A6061に匹敵する高強度を実現したものであり、各種筐体や液晶バックライトシャーシなどの放熱部材としての採用拡大を目指している。
アルミ缶では、グラビア印刷と同等の写真やグラデーションなど、諧調のあるデザインの再現性を向上できるインクジェット方式の印刷技術を開発し、市場開拓を進めている。新方式は製版・刷版工程が不要なことから、データ入稿から納品までの期間を大幅に短縮でき、小さなロットサイズでも生産可能なことから新たなニーズが期待できる。
当連結会計年度におけるアルミニウムセグメントの研究開発費は、18億60百万円であった。
(その他)
省エネルギー効果の高い次世代パワー半導体材料として注目されるSiCエピウェハーについては、2015年に上市した市場の高品質化要求に応えた新グレード品「ハイグレードエピ」について良好な評価を得ており、月産7,000枚に設備増強して積極的に市場展開している。
当社独自技術である高輝度LED照明等の植物工場向け製品については、継続した研究活動により高速栽培技術「S法」の適用範囲を広げ、市場開拓に取り組んでいる。特許庁の「事業戦略対応まとめ審査」制度を活用して取得した特許権を軸に、栽培面積1平方メートルあたり日産500グラムのレタスを収穫する高速栽培技術「S500」(従来技術の2.5倍以上)と高い野菜の清浄度を維持できる栽培環境技術をアピールし、実証設備、大型工場の受注活動を進めている。
プリンテッドエレクトロニクスについては、高効率の製造法を確立した銀ナノワイヤを用いて透明導電フィルムのロール試作品を作成し、市場開拓を進めている。
燃料電池触媒については、長期的戦略のもと、非白金化を目指す新規複合金属酸化物の開発を進めている。
カーボン分野では、三菱商事㈱と共同で運営するフロンティアカーボン㈱を通じて、引き続きフラーレン製品の製造及び販売を促進していく。技術開発においては高純度フラーレンの合成と精製の効率向上に取り組むと共に、フラーレンの特性を最大限に引き出す分散技術の開発にも注力している。特に、電子受容性に優れる特性を活かした有機薄膜太陽電池の負極材や、他の有機エレクトロニクスデバイス向けを主軸に開発を進めている。
研究開発におけるAI活用も積極的に取り組んでおり、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト」の委託事業に参画し、人工知能(AI)の活用により、要求特性を満たすポリマーを設計する際の試行回数を大幅に低減できることを見いだしている。また、過去数十年にわたり蓄積してきた技術文書の貴重な知見を有効活用し、新たな価値創造の源泉としていくために、手書き文字を含む技術文書をAIで高精度自動読み取りし電子テキスト化する機能と、利便性の高い検索機能を併せ持つ、技術文書活用を目的としたデータベースシステムの開発に取り組んでいる。
2016年初に、有機と無機・アルミの更なる融合を目指して、応用化学品研究所を母体に融合製品開発研究所を組織し、アルミ・無機分野の技術者の一部を事業開発センターに集約して、研究所(融合製品開発研究所、先端技術開発研究所)、共通支援センター(分析物性センター、安全性試験センター、計算化学・情報センター)、及び事業化プロジェクトの体制で研究開発を推進してきている。融合製品開発研究所は、事業部や事業所と連携し、現行事業や製品の付加価値を高める開発、その周辺の成長分野を開拓する開発、及び製品に関する高度な技術サポートによる事業強化を行い、先端技術開発研究所は、当社グループが保有する広範な技術・材料の中でも、将来にわたって強みを発揮できるコア技術・コア材料を軸とした次世代事業テーマの創出してきている。
2019年からは、新中期経営計画「The TOP 2021」に基づき、融合製品開発研究所の拡大、先端技術ラボの新設などにより、一層の研究成果顕現を目指した体制とする。また横浜市が公募する研究開発拠点施設整備・運営等事業の優先交渉権を取得し、3年後に研究開発拠点施設の供用開始を行う予定である。
当連結会計年度におけるその他セグメントの研究開発費は、全社共通を含め、80億15百万円であった。
当社グループは、現業強化と周辺分野の拡大に向けた研究及び事業開発を強化すると共に、オープンイノベーションやM&Aを活用し、当社グループの次世代を担う事業の創出に取り組んでいる。特に、電池材料やSiCエピウェハーなど当社の将来の成長を牽引する事業の早期の成果顕現に注力している。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は、197億35百万円である。
セグメントごとの研究開発活動は次のとおりである。
(石油化学)
石油化学分野では、コア技術である触媒、有機合成、高分子合成の技術を集積し、電子・電気機器、輸送機器、食品包装などの分野において、多様な市場ニーズに応えるための研究開発を推進している。
主要な誘導品事業であるアセチル及びアリルアルコール製品群では、自社開発した製造プロセスの優位性を伸長させるため、触媒の性能向上と新触媒の開発を進めている。2014年6月、当社技術を用い大分に新設した酢酸エチルプラントは、稼働開始以来高稼働を継続しているが、更なるコスト競争力の強化と生産性の向上を達成すべく、触媒性能の向上を追求している。
アリルアルコール製品群において、環境対応型溶剤である酢酸ノルマルプロピルは順調に販売量を増やしており、更なる市場拡大を企図して新規用途の展開を積極的に進めている。この他、当社技術の特長を活かした新規誘導品の研究開発を推進している。
また、耐熱透明フィルム「ショウレイアル®」は、モバイルディスプレイ材料などの分野に向けて精力的に市場開拓を進めており、ガラスに匹敵する光学特性と手触り感が評価され、国内外で採用されている。
当連結会計年度における石油化学セグメントの研究開発費は、14億14百万円であった。
(化学品)
化学品分野では、広範多岐にわたる需要、個々のお客様の要望に迅速に応え、お客様の新製品開発の鍵となる材料をタイムリーに提案することを目的として、半導体プロセス材料、光機能材料、ソルダーレジスト、高機能ゲル、各種有機中間体、化粧品原料、インフラケミカルズ、エネルギーなどの研究開発を推進している。
半導体製造プロセス材料として、各種エッチングガス、クリーニングガス、成膜材料及び洗浄剤、溶剤の開発を進め、市場展開している。今後も引き続き、低環境負荷、高性能化に寄与する研究開発を進める。
テレビなどの大型液晶ディスプレイに使用される各種製品は、市場で高い評価を受けているが、更に、お客様との情報ネットワークを駆使して、お客様の要望に即した新規開発品を複数市場に投入している。特に、屈曲性に優れたチップ・オン・フィルム(COF)用ソルダーレジストは市場要求に合致し、販売を拡大している。また、半導体や電子部品の放熱性を高めるカーボンコート箔テープ「HSシリーズ」に柔軟性を高めた新シリーズを拡充し、サンプル提供を行っている。また、各種レジストなどの電子材料に使用される高機能性イソシアネートモノマー「カレンズAOI®」において、一般工業分野向け新グレード「AOI-VM®」の開発、生産能力の強化を行い、販売を継続している。
高速液体クロマトグラフィー用「ショウデックス®カラム」では、先進国向けを主体に、最先端技術へ適用できるカラムを開発し、並行して新興国の市場開発を積極的に進めている。世界6拠点から収集した営業情報に基づき、分析ノウハウ・技術サービスを的確、迅速にお客様に提供している。また従来にない迅速分析を実現したSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)用充填カラム、医薬・バイオ・食品分野における高感度分析を可能としたHILIC(親水性相互作用クロマトグラフィー)用充填カラム、抗体タンパク質を高精度で分析可能なSEC用充填カラム等の市場ニーズに適した新製品を順次発売している。
有機中間体では、当社固有原料と精密有機合成技術の強みを活かした各種中間体の開発に注力し、化粧品原料では、水溶性ビタミンE誘導体「TPNa®」に目のクマへの改善効果を見出し、アイケア用途として出荷を開始するなど、高機能ビタミンC誘導体「アプレシエ®」に続き、複数の化合物において市場投入に向けた進展が見られた。
インフラケミカルズでは、インフラ構造物の延命、補修に注目し、光硬化タイプの下水管更生用樹脂の技術開発に注力している。また新規に開発中のインフラ補修材は橋脚や水利用施設補修の試験施工を実施している。
エネルギーでは、リチウムイオン電池負極材用水系バインダー樹脂「ポリゾール®LBシリーズ」の持つ、低抵抗性、優れた温度特性、負極集電体との高密着性などの特性が認められ、順調に出荷を伸ばしている。今後研究開発を加速し、長寿命化、超急速充電対応化などの特性をレベルアップし、リチウムイオン電池の高性能化への寄与が期待できる。
当連結会計年度における化学品セグメントの研究開発費は、27億3百万円であった。
(エレクトロニクス)
エレクトロニクス分野では、高性能化の市場要請に応えるべく、最先端技術の開発に邁進している。
記録材料については、ハードディスク外販のトップメーカーとして、市場をリードする新技術の開発を継続しており、世界に先駆けて実用化した垂直磁気記録方式での高性能化を進めると共に、次世代ハードディスクへの高密度記録となるシングルド記録(瓦書記録)、マイクロ波アシスト記録、熱アシスト記録の開発により更なる高性能化に向けた取り組みを行っている。世界最大の記録容量である第9世代ハードディスクとして、2.5インチサイズにおいては1枚当たり1テラバイト、3.5インチサイズにおいては1枚当たり1.5~1.8テラバイトのハードディスクを出荷している。
発光素子・材料では、高効率化、高出力化をターゲットとしたLED製品の開発に注力している。反射型LEDは、産業機器用光電センサーなどに採用されているが、本技術を発展させ、従来の反射型LEDの2倍近い出力の「ダブルジャンクション反射型LED」を開発し、生体認証や監視カメラ、バーチャルリアリティ、車載センサーなど高出力が求められる用途に受注活動を進めている。
希土類磁石合金では、既に採用が進んでいる希少金属の1つであるDy(ジスプロシウム)を使用せずに従来品と同様の性能を持つネオジム磁石用合金を製造する技術をベースに、より高濃度のDy添加が必要な用途においてもDyフリーを達成すべく、更なる技術開発に取り組んでいる。
先端電池材料については、各種電気自動車用に加えスマートフォン等の携帯用など多様なリチウムイオン電池に必要な、寿命、入出力、低抵抗性、容量を満たす、黒鉛負極材「SCMG®」、高容量Si黒鉛負極材、カーボンナノファイバー「VGCF®」、カーボンコートアルミ箔「SDX®」、外装材であるアルミラミネートフィルム「SPALF®」などの素材・部材の開発・販売を引き続き進めている。
当連結会計年度におけるエレクトロニクスセグメントの研究開発費は、51億57百万円であった。
(無機)
無機分野では、素材の特性を活かした材料及びその用途開発を進めている。
電子デバイス、パワーデバイス市場向けには、デバイスの高密度化、高性能化に対応した高い放熱性と電気絶縁性を併せ持つフィラー材料の開発を行っている。高熱伝導材料の開発と評価技術の深化により、放熱部材向けのフィラーとしての性能向上を実現し、パワーモジュール等の用途への展開を進めている。
また、スマートフォンなど多くの電子機器に用いられる積層セラミックコンデンサー(MLCC)の用途では、MLCCの更なる小型化・高容量化に貢献すべく、原料である超微粒子酸化チタンの材料開発に取り組んでいる。
当連結会計年度における無機セグメントの研究開発費は、5億86百万円であった。
(アルミニウム)
アルミニウム分野では、市場から要望されている軽量、高強度、高機能の材料、部品及び製品の開発を進めると共に、これらの製造プロセスに係る基盤技術の研究にも注力している。
素形材関連では、当社が開発した気体加圧式ホットトップ連続鋳造法及び気体加圧式水平完全連続鋳造法を基軸とし、鍛造技術と合わせて、アルミ加工製品の開発を進めている。昨今、自動車における軽量化ニーズの高まりを受け、サスペンションや駆動部品を始めとした自動車用部品でアルミ製品の採用が拡大しており、今後も需要は堅調に増加することが見込まれる。アルミ合金の開発強化のため、2018年2月事業開発センター融合製品開発研究所の傘下組織として、喜多方事業所(福島県)内に研究施設「アルミ製品評価センター」を開所した。評価・解析技術を強化し、押出、鍛造及び引抜の金型技術、並びに加工、接合の各プロセス技術、各種製品に適した合金の開発、塑性加工及び熱伝導のシミュレーション技術を深化させている。
圧延素材関連では、高熱伝導・高強度アルミニウム板材「ST60」の新グレード「ST60-HSM®」の開発・販売を引き続き進めている。本製品は純アルミニウム並みの放熱性(熱伝導性)を持ちながら、アルミニウム合金A6061に匹敵する高強度を実現したものであり、各種筐体や液晶バックライトシャーシなどの放熱部材としての採用拡大を目指している。
アルミ缶では、グラビア印刷と同等の写真やグラデーションなど、諧調のあるデザインの再現性を向上できるインクジェット方式の印刷技術を開発し、市場開拓を進めている。新方式は製版・刷版工程が不要なことから、データ入稿から納品までの期間を大幅に短縮でき、小さなロットサイズでも生産可能なことから新たなニーズが期待できる。
当連結会計年度におけるアルミニウムセグメントの研究開発費は、18億60百万円であった。
(その他)
省エネルギー効果の高い次世代パワー半導体材料として注目されるSiCエピウェハーについては、2015年に上市した市場の高品質化要求に応えた新グレード品「ハイグレードエピ」について良好な評価を得ており、月産7,000枚に設備増強して積極的に市場展開している。
当社独自技術である高輝度LED照明等の植物工場向け製品については、継続した研究活動により高速栽培技術「S法」の適用範囲を広げ、市場開拓に取り組んでいる。特許庁の「事業戦略対応まとめ審査」制度を活用して取得した特許権を軸に、栽培面積1平方メートルあたり日産500グラムのレタスを収穫する高速栽培技術「S500」(従来技術の2.5倍以上)と高い野菜の清浄度を維持できる栽培環境技術をアピールし、実証設備、大型工場の受注活動を進めている。
プリンテッドエレクトロニクスについては、高効率の製造法を確立した銀ナノワイヤを用いて透明導電フィルムのロール試作品を作成し、市場開拓を進めている。
燃料電池触媒については、長期的戦略のもと、非白金化を目指す新規複合金属酸化物の開発を進めている。
カーボン分野では、三菱商事㈱と共同で運営するフロンティアカーボン㈱を通じて、引き続きフラーレン製品の製造及び販売を促進していく。技術開発においては高純度フラーレンの合成と精製の効率向上に取り組むと共に、フラーレンの特性を最大限に引き出す分散技術の開発にも注力している。特に、電子受容性に優れる特性を活かした有機薄膜太陽電池の負極材や、他の有機エレクトロニクスデバイス向けを主軸に開発を進めている。
研究開発におけるAI活用も積極的に取り組んでおり、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト」の委託事業に参画し、人工知能(AI)の活用により、要求特性を満たすポリマーを設計する際の試行回数を大幅に低減できることを見いだしている。また、過去数十年にわたり蓄積してきた技術文書の貴重な知見を有効活用し、新たな価値創造の源泉としていくために、手書き文字を含む技術文書をAIで高精度自動読み取りし電子テキスト化する機能と、利便性の高い検索機能を併せ持つ、技術文書活用を目的としたデータベースシステムの開発に取り組んでいる。
2016年初に、有機と無機・アルミの更なる融合を目指して、応用化学品研究所を母体に融合製品開発研究所を組織し、アルミ・無機分野の技術者の一部を事業開発センターに集約して、研究所(融合製品開発研究所、先端技術開発研究所)、共通支援センター(分析物性センター、安全性試験センター、計算化学・情報センター)、及び事業化プロジェクトの体制で研究開発を推進してきている。融合製品開発研究所は、事業部や事業所と連携し、現行事業や製品の付加価値を高める開発、その周辺の成長分野を開拓する開発、及び製品に関する高度な技術サポートによる事業強化を行い、先端技術開発研究所は、当社グループが保有する広範な技術・材料の中でも、将来にわたって強みを発揮できるコア技術・コア材料を軸とした次世代事業テーマの創出してきている。
2019年からは、新中期経営計画「The TOP 2021」に基づき、融合製品開発研究所の拡大、先端技術ラボの新設などにより、一層の研究成果顕現を目指した体制とする。また横浜市が公募する研究開発拠点施設整備・運営等事業の優先交渉権を取得し、3年後に研究開発拠点施設の供用開始を行う予定である。
当連結会計年度におけるその他セグメントの研究開発費は、全社共通を含め、80億15百万円であった。
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