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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100G5K9

有価証券報告書抜粋 五洋建設株式会社 研究開発活動 (2019年3月期)


事業等のリスクメニュー株式の総数等


当連結会計年度は、生産性向上とICT技術の積極的導入を技術開発方針として、ブランド技術の開発や技術提案力の向上に資する技術開発を推進した。
なお、当連結会計年度における研究開発費は、23億円であった。
また、当連結会計年度における主要な研究開発内容および成果は次のとおりである。

(国内土木事業、国内建築事業及び海外建設事業)
1.土木分野

(1)CIMへの取組み

国土交通省はCIM(Construction Information Modeling)導入ガイドライン制定(2017年3月)に続き、その港湾版を2019年3月に公開するなど、CIM導入の取り組みを加速させている。当社はこれらの動きを先取りし、2016年度より桟橋工事に港湾分野としては初の全面的なCIMを導入して効果の検証を行うなど、積極的にCIMに取り組んできた。
当連結会計年度は適用工種をさらに拡大するとともに、設計や技術提案などにも展開したことで、CIM導入件数は約100件となった。その中で、斜杭式桟橋の複雑な杭配置における施工上注意すべき箇所のビジュアル化と杭の施工手順の計画、気中・水中の地形測量成果の統合と桟橋構造物設計への反映、切土・盛土の施工量が最小となる工事用道路の最適化計画など新たなCIMの活用方法や効果を見出すことができた。当社はこれからも生産性向上や現場職員の負担低減に寄与できるよう積極的にCIMの活用・導入に取り組む予定である。

(2)ICT技術のトンネル工事への導入

当社は、東北の復興支援道路「国道106号与部沢トンネル工事」において、国土交通省の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)を活用した「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に採択され、生産性向上に資するICT技術を工事現場に導入した。
当現場では、BIM(Building Information Modeling)/CIMに対応したクラウドによる受発注者間連携、自律飛行型ドローンによるコンクリート壁面の点検、発注者事務所からの遠隔現場検査、AR/MR※により検査者の周囲に土質情報等が表示される体感型検査等を実施し、多面的に生産性の向上と管理の高度化を行った。当社は、この取り組みで得られた知見を活かし、このような革新的ICT技術の水平展開を図り、技術に裏付けられた省人化、生産性向上を加速する。
※AR:Augmented Realityの略で「拡張現実」といい、現実世界に仮想世界を反映(拡張)させる技術
MR:Mixed Realityの略で「複合現実」といい、仮想世界と現実世界を融合させる技術

(3)AIによる土質及び強度推定の自動化

既存の施設や構造物が存在する条件で地盤の液状化対策を行う場合、地盤の隆起や側方変位等の影響が小さい薬液注入工法が広く適用されている。工法の適用に際しては、地表面への薬液の漏出や地盤の隆起が生じないように、注入位置の土質性状に応じて注入率や注入速度等を適切に設定する必要があるが、事前のボーリング調査だけで、対象区域全体の土質性状を綿密に把握することは極めて難しい。
当社は、薬液注入工法における先行削孔時の計測データを用いて、N値および細粒分含有率を効率的かつ精度良く推定するディープラーニングモデルを開発した。対象区域における適切な地盤改良範囲の設定や、薬液注入工法における最適な注入諸元の決定が可能となる。今後、必要に応じて追加の学習や検証を行い、モデルの精度をさらに向上させながら、地盤改良の設計や提案、対策工である薬液注入工法の品質の向上のために、本技術を適用していく予定である。

(4)ARを活用した施工支援システムの現場適用

当社は、電気、ガス、水道などが3次元的に複雑に埋設された環境下で地下構造物を構築する工事にARを適用した。平面図と現場の3Dモデルを重ねて表示させることで、平面図では把握しにくい3次元的な埋設管配置の理解が容易になり、より高度な施工検討が可能となった。また、現場地表面映像に埋設管・地下構造物躯体の3Dモデルを重ねて表示することで、施工関係者間で見えない部分のイメージ共有が容易になった。これからもBIM/CIMと連携したARを現場に取り組むことで、現場の生産性向上を進めていく予定である。

(5)多様なPCa(プレキャスト)桟橋形式に対応した杭頭接合構造の開発

港湾の桟橋工事では海上作業を最小限に抑えるプレキャスト工法が生産性向上の有効な手段として注目されている。桟橋施設には一般的な直杭式に加えて、より水平剛性を高めた斜杭式も広く適用されており、多様な形式に対応したプレキャスト上部工との杭頭接合構造が求められている。
当社は、国立大学法人東京工業大学および国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所との共同研究により、構造実験を通して優れた構造性能を有する杭頭接合構造(直杭式:鞘管方式、斜杭式:ソケット鉄筋方式)を開発した。

(6)海外大型プロジェクトへの技術導入

海外のプロジェクトでは、国内で経験のない施工条件や課題が課せられる場合が多い。特にバングラデシュのマタバリ石炭火力プロジェクトでは、発電所建設予定地が漂砂環境の厳しいベンガル湾奥に位置するため、新設する航路が著しく埋没してしまう懸念が生じた。このため、衛星写真や地形データ等の現地データの収集分析を基に、現地の実態にあった航路埋没予測解析モデルを開発し、効果的な航路埋没対策工や浚渫計画の立案に活用した。また、国内でも実績のある気海象観測予測システムを本プロジェクトに導入し、リアルタイムに現地状況をモニターしながら日々の工事に活用している。

(7)沈埋トンネル最終接合工法(キーエレメント工法)の現地適用

水底トンネルの1つである沈埋トンネル工法は、従来、最終沈埋函を沈設した後に間隙が残り、最終継手の施工が必要であった。当社が開発したキーエレメント工法は、合理的水圧接合構造と施工誤差吸収機構を持つ高止水ゴムを最終函に導入することで、最終継手を省略できる技術である。また、大型起重機船が不要で、一般の沈埋函と同様の施工が可能である。
現在施工中の東京港臨港道路南北線整備事業には、延長2.5kmの海底トンネルの最終函に本技術が適用されている。当社は2018年9月より最終函の製作を開始し、2019年度に沈設を予定している。
(表彰)
国土技術開発賞二〇周年記念大賞:
一般財団法人国土技術研究センター・一般財団法人沿岸技術研究センター 2018年8月

(8)桟橋の調査診断システムの開発

港湾施設の目視調査は、専門知識を有するものが小型船に乗り、船上から観察して劣化状況を把握するが、専門家の確保や調査時間・コストがかかり、特に桟橋下面の調査は労力を要することが課題となっていた。そこで高精度カメラを搭載した『i-Boat(旧称:無線LANボート)』を操船し、桟橋下面の画像データを取得するとともに、ひび割れや剥離などの正確な位置把握や劣化度診断まで自動で行うことができるシステムを開発した。
i-Boatは全長が2.2mであり、遠隔からの無線操船と撮影用カメラの操作が可能である。撮影した画像から、SfM/MVS (Structure from Motion/ Multi-View Stereo)技術により、3次元モデルが構築され、専用のソフトウェアを用いることでひび割れ密度や剥落面積の有無、鉄筋の露出面積割合などの判定基準をもとに劣化度を自動で診断できる。当連結会計年度も、民間桟橋や公共桟橋に対して調査・劣化診断を実施した。今後も港湾構造物の維持管理に積極的に活用していく予定である。
(表彰)
De Paepe-Willems賞:国際航路協会PIANC 2018年5月
第2回インフラメンテナンス大賞国土交通省特別賞:2018年5月

(9)新船種作業船の開発・建造

近年、海洋工事も沖合へと展開していくなか、洋上風力や離島での各種土木工事の実施、大水深防波堤の築造、海洋資源開発など外洋における様々な工事の実施が見込まれている。これらの動向を見据え、SEP型多目的起重機船「CP-8001」の開発・建造を行った。2018年12月に完成し習熟訓練も実施した。
本船は800t吊全旋回式起重機船にSEP機能を付加することにより、気象・海象条件の厳しい海域であっても安全性、稼働率、施工精度の高いクレーン作業が可能である。また、十分な居住スペースと人員輸送のヘリデッキを備えており、遠隔地での作業と長期滞在を可能としている。当社が保有する自航式多目的起重機船「CP-5001」と併用することにより、多種多様な工事に対応可能であり、今後も積極的に投入していく予定である。

2.建築分野

(1)設計、施工へのBIM活用

当社は、品質および生産性の向上を目指し、施工段階や設計段階でのBIM活用に取り組んでいる。当連結会計年度は、事務所ビルの設計施工案件に対し、実施設計から施工までを通してBIMを適用した。まず、実施設計段階において建築と設備の3次元モデルを統合して納まりを調整し、その後、整合性が確保された3次元モデルから2次元図面を切り出すことにより、意匠、構造、設備間で整合性が取れた2次元設計図を作成し、品質の向上につなげることができた。次に、この設計段階の3次元モデルを施工に引き継ぎ、施工段階で決定する設備機器や詳細納まりに合わせて改めて納まりを調整し、若干の修正を施すことにより、2次元施工図を作成することができ、生産性の向上につなげることができた。今後とも、施工案件、設計施工案件でBIM活用を進め、さらなる品質と生産性の向上を目指す予定である。

(2)基礎合理化工法の適用

当社は、基礎工事の省力化および工期短縮を目的として、トラス筋を有するハーフPCa床版を側面型枠として使用するとともに、基礎躯体の一部とする基礎合理化工法の開発を進めている。
当連結会計年度は本工法を建築現場の基礎梁の一部に適用した。その結果、在来工法と比較して、省力化や工期短縮が実現できた。また、配管ピット内では、PCa版をそのまま仕上げ面として使用できることが併せて確認でき、本工法の有用性が検証された。今後も、適用範囲の拡大を図るため、本工法の改良を進めていく予定である。

(3)シアキー型耐震改修工法:性能証明取得

外側から補強鉄骨により耐震補強を行う工法は、建物内部の工事を減らすことができるため、建築物を供用しながらの耐震補強が可能であり、居住者等への負担が少ないという特長がある。しかし、外壁にALC板などの外壁パネルを使用した鉄筋コンクリート造および鉄骨鉄筋コンクリート造建物では、外付け耐震補強工法を適用する場合、外壁パネルを撤去する必要があるため、補強費用が増大し、建物を供用しながらの施工ができない。
そこで、既存梁と補強鉄骨の接続においては、一般に用いられる直径20mm程度の後施工アンカーではなく、直径105mmの剛性、耐力が高い鋼製シアキーを用いる工法を開発することにより、既存梁と補強鉄骨の距離が外壁パネルの厚み分だけ離れていたとしても、補強対象建物の地震力を補強鉄骨に伝えることができるようになった。これにより、コスト削減と供用しながらの施工が可能となった。
(性能証明)
Hyper Lock工法 建築技術性能証明書:一般財団法人日本建築総合試験所
GBRC 性能証明 第18-17号 2018年12月

(4)RCS合成壁:一般評定改定

仮設山留め壁として使用されるSMWの芯材を露出させ、芯材フランジ面に施工したスタッドにより地下外壁と一体化し、芯材を地下外壁構造の一部に取り入れることが可能な工法として、RCS合成壁工法がある。
当連結会計年度は、本工法について既に取得しているベターリビングの一般評定(CBL FP005-04号)の改定を行った。今回の改定では、SMW協会の基準に基づく芯材の建入れ精度(1/200)を考慮した施工誤差(鉄筋とスタッドの離隔≦100mm)が許容されるとともに、芯材と地下外壁間に施工される防水材(厚み4㎜以下)の仕様が追加され、工法の適用範囲が拡大された。今後も本工法の現場適用を推進し、建設現場の生産性向上と施工合理化を図る予定である。
(一般評定改定)
RCS合成壁/杭工法の合成構造としての性能評価書:一般財団法人ベターリビング
評定CBL FP022-18号 2019年2月

(5)実案件適用によるZEB実証

当社施工の久光製薬ミュージアムにおいて、断熱強化や空調・照明の最適制御等による高効率化、換気・昇降機設備の高効率化などの省エネ技術を適切に組み合わせるとともに、基本デザインを変えずに屋根面に太陽光パネルを配置するなどの技術提案を行い、創エネルギーを含めた省エネ率103%を達成し、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS:Building Energy-efficiency Labeling System)において、最高ランクの「ZEB(Zero Energy Building)」認証を取得した。併せて建物にBEMS(Building and Energy Management System)を導入しており、今後、エネルギー分析を行い、最適運用の提案などにつなげていく予定である。

3.環境分野

(1)発生土砂分別・再利用基地の建設・運営

建設発生土は積極的に有効利用されているものの、大量に発生する建設発生土の再利用には課題が多い。当社では、船舶による大量輸送を活用した建設発生土の広域利用の取組みを進めており、建設発生土を集積・保管し、船舶へ積出する土壌再利用センター事業を展開している。汚染土壌については、岩石やコンクリートくず等を分別することや、生石灰や当社技術による製紙灰系泥土改良材「ワトル」を添加して含水比調整を行っている。これまで関東地域を対象とした、千葉県市川市、横浜市の拠点基地を運営していたのに加え、名古屋市に拠点基地を整備し中部地域を対象として運営を開始した。

(2)浚渫土の有効利用技術

カルシア改質土は、浚渫土にカルシア改質材(転炉系製鋼スラグを成分管理、粒度調整した材料)を混合することで、浚渫土の物理性・化学性を改善した材料である。港湾工事によって発生する浚渫土を有効活用し、埋立材や干潟・浅場の中詰材、潜堤材等として広く使用されている。しかし、水中打設に伴う濁りや強度への影響は十分に把握されていなかった。そこで、京浜港ドックを使用した大規模実験により、汚濁の発生を抑制した施工方法を立案するとともに、投入により築造した潜堤の特性(形状や強度)を確認した。
また、効率的なカルシア改質土の混合方法や適切な品質管理方法の開発、吸水性改質材や短繊維を添加することにより新たな用途に適用可能な高機能カルシア改質技術の開発を進めている。

4.技術評価証等の取得
NETIS登録
・電子式看板: KT-180126-A 2019年3月
大臣認定
・高強度コンクリート(Fc39~120):国土交通大臣認定(一般) 2018年8月
・高強度コンクリート(Fc80~120):国土交通大臣認定(一般) 2019年3月

事業等のリスク株式の総数等


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