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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100FH9I

有価証券報告書抜粋 株式会社クラレ 研究開発活動 (2018年12月期)


事業等のリスクメニュー株式の総数等

当社グループにおける研究開発活動は、私たちの使命「私たちは、独創性の高い技術で産業の新領域を開拓し、自然環境と生活環境の向上に寄与します。」に基づいて、社内カンパニー・事業部・連結子会社に所属するディビジョン研究開発とコーポレート研究開発との緊密な連携の下に推進されています。
コーポレート研究開発は、以下3点を通じて、クラレグループ全体の業容拡大・収益向上に資することを目指しています。
① 新事業の創出:素材事業を主に、あるいはそれらに加工技術を付加した部材事業をターゲットとし、早期創出を目指します。2018年度より開始した中期経営計画「PROUD 2020」の進行中に、部材事業の事業化を推進するとともに、当社における部材事業の立ち上げにおいて、何が必要かを見極めます。
② 既存事業の強化・拡大:コーポレート機能の抜本的見直しのもと、カンパニー・グループ会社との協働・支援を強化し、全社事業の盤石化を図るとともに、新事業開発を促進します。
③ 基盤技術の保有:新事業の創出及び既存事業の強化・拡大を通じて、必要とする基盤技術を構築し、深化・深耕を図ります。
研究開発体制として、コーポレート研究開発は、研究開発本部において、基礎段階のくらしき研究センター・つくば研究センター及びKAI Corporate R&D(米国)、事業化段階の機能製品開発部・成形部材事業推進部及びベクスター事業推進部を擁しています。生産技術に関しては、技術本部 技術開発センターにおいて「原理原則と現場感覚の最適融合」による生産技術開発を推進しています。また、IoTを活用した生産効率、及び品質向上への取り組みを進めています。
ディビジョン研究開発は、社内カンパニー・事業部・連結子会社が各事業所に研究開発部署を有しています。コーポレート研究開発とディビジョン研究開発を合わせた当社グループ(当社及び連結子会社)の研究開発人員数は1,029人です。

当連結会計年度のセグメントごとの研究開発費は、ビニルアセテート6,800百万円、イソプレン1,648百万円、機能材料3,333百万円、繊維1,916百万円、トレーディング158百万円、その他1,339百万円、全社共通(コーポレート研究開発)5,962百万円、合計21,160百万円になります。
セグメントごと及びコーポレートの研究開発活動を示すと次のとおりです。
[ビニルアセテート]
・ポバール樹脂、ポバールフィルム、PVBフィルム、(樹脂、フィルム)の酢酸ビニルチェーンについては、世界のリーディングカンパニーとして、国内外の研究開発部署が連携し、新規用途開発、新商品開発、新規生産技術開発も併せて、研究開発活動を推進しています。
・ポバール樹脂は、当社ビニルアセテートチェーンの根幹に位置する事業として、日米欧亜の6工場を中心としたグローバルネットワークを強みとして市場開発を推進しています。自消・外販両面で安定かつ高い品質の原料供給を基本とし、クラレ発の新規技術を積極投入すると共に技術サービスネットワークの強化により付加価値の高いビジネス機会を提案します。
・ポバールフィルムは、液晶ディスプレイ向け光学フィルムのトップメーカーとして市場を牽引すべく、さらなる高性能化・高品質化に顧客と一体となって取り組んでいます。また、洗剤包装用途を中心にますます拡大する水溶性フィルムについても、ポバール樹脂メーカーである強みを活かし、原料まで遡った高性能化・多機能化を加速させます。
・PVBフィルムは、自動車用途・建築用途の高付加価値品の開発を進めています。その一環として、アイオノマー樹脂をシート化したの更なる高付加価値化やPVBフィルムとのシナジー効果の発現、新規用途開発を推進しています。
・樹脂は、世界規模で食品廃棄ロスの削減や環境負荷の低減が求められるなか、日米欧の3拠点を中心に世界各地のニーズを把握しながら、バリア材料の新技術開発・用途開発を推進しています。またフィルムは、省エネルギー・地球環境保全に貢献する用途へ積極的に展開していきます。さらにバイオマス由来のガスバリアフィルムについては、CO2排出削減効果とガスバリア性を融合した新素材として、用途開発に取り組んでいます。
[イソプレン]
・エラストマー関連では、熱可塑性エラストマー及び液状ゴムの差別化・高付加価値化に取り組んでいます。植物由来原料のファルネセンを用いた液状ゴムは、高機能タイヤの改質剤として国内外のタイヤメーカーへ採用が広がっています。ファルネセンを用いた熱可塑性エラストマーの開発も進めており、更なる差別化製品の開発と市場拡大に向けて研究開発、マーケティング活動を推進しています。
・イソプレンケミカル関連では、独自性の高いC4ケミストリーをさらに進化させた化学品として、香料、溶剤や特殊インキ関連の材料開発ならびに精密有機合成技術を基盤にした新規材料など機能性化学品の創出に取り組んでいます。
・耐熱性ポリアミド樹脂では、自動車の軽量化に伴いエンジン冷却配管が金属製から樹脂製へ置き換わりつつあり、耐加水分解性と柔軟性を両立する押出グレードを開発し、自動車冷却配管メーカー各社で評価が進んでいます。また、PEEKやフッ素系樹脂を代替できる性能を持つ新規ポリマーの開発に取り組んでいます。
[機能材料]
・メタクリル樹脂については、差別化ポリマーの拡充とメタアクリル系樹脂を活用した新規用途開発、新商品開発を主体に研究開発活動を行っています。
・メディカル事業では、クラレノリタケデンタル株式会社の無機/有機の技術の融合による新規歯科材料の開発に注力し、CAD/CAM用ジルコニア、高強度レジン等のデジタル化の流れにも対応した開発、商品化を行っています。また、人工骨インプラント、吸収性骨再生用材料は、配向連通孔技術を特長に、多面的な展開を進めています。
・炭素材料では、買収したCalgon Carbon社との技術融合を進め、「水・環境・エネルギー」分野を重点戦略領域にグローバルな研究開発を推進し、活性炭及び吸着分野のイノベーションを創出していきます。
[繊維]
・PVA繊維については、革新プロセス(VIP)によるゴム補強用フィラメントは、量産1号機が本格稼働を始め、AIやビッグデータ解析により高収率生産を目指しています。また、更なる拡大に向け、増速技術の研究や投資効率の優れた設備の検討を進めています。FRC(セメント補強材)は、脱アスベストが本格化する新興国を中心に拡販に努めていますが、中国競合品との競争が激化し、新規用途分野への開拓参入とビジネスポートフォリオの転換を目指しています。
・高強力繊維は、事業拡大のため、グローバルに知財戦略体制を強化し、また日米生産拠点の品質体制の整備と強化を行いました。高強度・低吸水性や耐切創性の特長が求められる高採算の中細繊度品が国内外で伸長し、収益を確保しました。
・人工皮革については、環境対応型革新プロセス(CATS)による特長を生かした新商品開発により、販売拡大が進んでいます。
・不織布については、メルトブローン技術とスパンレース技術を融合した高付加価値不織布をコスメ用途やマスクとして国内外で展開し、急速に販売が拡大しています。また食品用途については、製造環境の衛生管理を進め、東南アジアを始め国内外での拡販に努めています。

・ジェネスタ繊維(PA9T繊維)は、耐熱性、耐薬品性の特長を生かして、自動車のフィルターに採用されました。その特長を生かし、空調関係他の新たなフィルターや炭素繊維との複合による熱可塑性コンポジットの可能性が広がっています。
[トレーディング]
・ポリエステル長繊維では、①熱水に溶解し、生分解性をも有する特殊水溶性樹脂を用いた水溶性繊維、②要求性能に応じた多様な断面構造で高い帯電防止性能を持つ導電性繊維、③高白度でありながら透け防止性能に優れるなど、環境に優しい、高機能性をキーワードにした独自素材の開発を推進しています。
[その他]
・アクア事業推進本部では、中空糸ろ過膜を用いた様々な水の製造・回収、ポリビニルアルコール(PVA)ゲルを用いた産業排水の処理・回収、海洋生態系保全のための海水処理などを通して、「高品質で安全な水の提供」と「環境負荷の低減」に貢献する素材・装置・プラント・技術開発に取り組んでいます。
・クラレプラスチックス株式会社では、スチレン系エラストマーを使用した機能性コンパウンド及び同コンパウンドをベースとしたメッシュシート等の二次製品、水溶性樹脂の特殊コーティング(PVAコート)加工を施したフィルム、成型加工技術を利用したゼロエネルギー住宅向け断熱換気・空調ダクトや機能性コンパウンドと高強力繊維 を使用した土木・産廃用途等向け繊維複合ホース等の開発を推進しています。
[コーポレート研究開発]
・コーポレート研究開発のミッションである ①新事業の創出 ②既存事業の強化 ③基盤技術の構築・深耕の達成に向けて、改革を進めています。また、当社事業の急速なグローバル化に対応し、グループ海外拠点との連携を強化しています。
・酢酸ビニルチェーンの更なる事業拡大を図るべく、これまで培ったコア技術に加え、内外から新たな技術を取り込み、優れた機能を有する酢ビ系新素材の開発を進めています。酢ビ系高分子の基本構造を精密に制御する技術や安価に機能化する技術を獲得し、顧客ニーズに合致した素材を早期に提案できる開発体制を構築することで、世界のリーディングカンパニーとして確固たる地位を確立します。
・触媒開発技術を基盤技術と捉え、これまで長年培った均一系触媒技術のみならず固体触媒技術開発を進めています。これら技術開発を通じ、イソプレン事業、ビニルアセテート事業にかかわる既存事業の強化ならびに新規材料開発を展開していきます。
・カンパニー・グループ会社との連携を通じて、高分子化合物の重合・変性・成形材料化に関する基盤技術を拡充・深耕し、既存技術の強化・拡大と新事業の創出に資するための新規技術・新規材料を開発します。
・機械学習など、デジタル技術の研究開発分野での応用を進めています。
・リチウムイオン二次電池(LiB)の研究開発・市場開発に関し、植物を原料とした低吸湿、耐酸化性ハードカーボンに加え、炭素構造を見直し出力性能をより向上させ、黒鉛同等以上の体積容量を発現する新規炭素材の市場提案、新生産技術開発進めています。加えて、当社ポリマー技術により低抵抗・高接着性を特徴とする水系バインダー、高接着性を特徴とする溶剤系バインダーの開発、低抵抗・高温耐久性を有する新しい構造を有するセパレータの開発を進め、急速に市場進出が進むハイブリッド車や電気自動車などの車載用市場、急速充電コンシューマ市場向けの電池部材の開発を一層加速していきます。
・新規アクリル系の特殊フィルムの開発において、アクリルの透明性を生かしながら、新たな機能を付与させた製品の用途開拓を推進しています。展示会においては、多くの顧客からサンプル供給の要求を受けるなど、注目を集めています。光学や加飾分野では採用に向けた評価が進んでおり、更に市場展開を加速していきます。
・高周波回路基板用途の液晶ポリマーフィルムは、車載用ミリ波レーダーや5Gアンテナなど高周波による高速伝送の需要が高まる中、フレキシブルプリント配線基板として高周波領域での伝送損失が低く、加工性に優れる点が評価され数量が拡大しました。この流れは今後も加速することが予想され、積極的に事業拡大を進めていきます。
・半導体用研磨パッド(CMPパッド)は、人工皮革で培ったポリウレタンの設計及び製造技術を駆使し、従来に無い高硬度ポリウレタンを原料にしています。当社CMPパッドの特長は、高硬度なため研磨するデバイスを平坦にする能力が優れること、高硬度でありながら研磨傷が少ないこと、耐磨耗性が優れるため長時間使えること、などで、複数の顧客・複数プロセスで採用されています。また、顧客のプロセスや種々の研磨対象に応じて適正な銘柄を選定・提案できる体制を整えています。現在、国内のみならず海外への展開も進めており、顧客の各種プロセスに対応していきます。
・微細パターン設計・加工技術を用いた微細パターン付きフィルムを開発し、次世代自動車ディスプレイ用途を中心に市場開拓活動を進めています。拡張現実(AR)を取り入れたヘッドアップディスプレイ(HUD)用途での評価が車載用部材供給メーカー各社で進み、2019年度からの採用を既に決めている自動車メーカーも現れつつあります。特に、欧州Car OEMでの採用が2020年以降加速する事が予想されています。この取組を足掛かりに新規用途創出と市場拡大を目指し、新しいニーズに合った商品開発を更に加速しています。

事業等のリスク株式の総数等


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