有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100FZ3C
第一三共株式会社 研究開発活動 (2019年3月期)
当社グループは、「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」を2025年ビジョンとして掲げております。
2025年ビジョンの達成に向けて、重点領域であるがん領域については、抗体薬物複合体(以下「ADC」という。)フランチャイズ、急性骨髄性白血病(以下「AML」という。)フランチャイズ及びブレークスルー・サイエンス(注1)を3つの柱として設定し、戦略的な研究開発活動に取り組んでおります。
また、がん以外の領域については、希少疾患、免疫疾患を中心として、研究の加速化を進めております。
さらに、新規モダリティ(注2)の技術研究を通じて、革新的な創薬技術に基づく研究開発活動にも取り組んでおります。
研究から初期開発段階では、パートナリング、オープンイノベーション、トランスレーショナルリサーチを利用して、標準治療を変革する先進的新薬の継続的創出を目指した活動を進めております。
後期開発段階では、がん領域と循環代謝領域等の製品の開発を進めております。
ライフサイクルマネジメント(注3)では、循環代謝領域を中心に継続した取り組みを実施しております。
(注)1.ブレークスルー・サイエンス:革新的な科学技術を応用した、がん治療法に抜本的な変革をもたらす新規治療手段。
2.新規モダリティ:ADC、核酸医薬、治療用ウィルス、細胞治療等の新規創薬基盤技術。
3.ライフサイクルマネジメント:適応症の拡大や用法・用量の改善等により、医薬品の製品価値を一層高め、長期間にわたりその価値を医療現場に提供するための取り組み。
当連結会計年度の研究開発費は、2,037億円(前連結会計年度比13.7%減)となり、売上収益に対する研究開発費の比率は、21.9%となりました。
主な研究開発プロジェクトの進捗状況は、次のとおりであります。
(1) がん領域
① DS-8201(抗HER2 ADC):トラスツズマブ デルクステカン
HER2が発現した複数のがん種を対象としたフェーズ1試験パート2(症例拡大試験)を日本及び米国で実施しております。
2018年6月、本試験における安全性と有効性に関する最新データを米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表いたしました。これらの最新データにより、HER2の発現程度によらず、また幅広いがん種において、本剤の有用性が示唆されました。
2018年9月、HER2発現またはHER2変異のある非小細胞肺がん患者の安全性と有効性に関する最新データを世界肺がん学会議(WCLC)で発表いたしました。これらの最新データにより、非小細胞肺がんにおいても本剤の有用性が示唆されました。
2018年10月、本試験における安全性と大腸がん患者の有効性に関する最新データを欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表いたしました。
2018年12月、本試験におけるHER2低発現乳がん患者の最新データを米国サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表いたしました。これらの最新データより、HER2低発現の乳がん患者においても本剤の有用性が示唆されました。また、本剤の全ての臨床試験で発現した間質性肺疾患(以下「ILD」という。)について、ILD外部判定委員会の判定結果を含めた中間報告を実施いたしました。
上記の試験に加え、がん種ごとに以下の試験を実施しております。
(ⅰ) 乳がん
・T-DM1を含む前治療を受けたHER2陽性の再発・転移性乳がん患者を対象(3次治療以降)とした、全奏功率を主要評価項目とするグローバル・フェーズ2試験(DESTINY-Breast01)の患者登録(約230名)を2018年9月に完了いたしました。
米国食品医薬品局(以下「FDA」という。)への承認申請目標時期を2020年としていましたが、2019年度前半に前倒しすることを2019年3月に発表いたしました。試験結果については、結果が得られた後、学会において発表する予定であります。具体的な承認申請時期については、今後の米国FDAとの協議に基づいて決定いたします。
・さらに、当該患者を対象とした、本剤投与群と治験医師選択薬投与群の安全性と有効性を比較評価するグローバル・フェーズ3試験(DESTINY-Breast02)を2018年9月に開始いたしました。
・本剤は、上記の患者に対する治療を対象として、米国FDAより、画期的治療薬の指定制度の対象品目と認定されております。
・トラスツズマブ等の前治療を受けたHER2陽性の再発・転移性乳がん患者を対象(2次治療)とした、本剤投与群とT-DM1投与群の安全性と有効性を比較評価するグローバル・フェーズ3試験(DESTINY-Breast03)を2018年9月に開始いたしました。
・HER2低発現乳がん患者を対象とした、本剤投与群と治験医師選択薬投与(化学療法)群の安全性と有効性を比較評価するグローバル・フェーズ3試験(DESTINY-Breast04)を2019年1月に開始いたしました。
(ⅱ) 胃がん
・HER2陽性の再発・進行性胃がん患者を対象とした日本及び韓国でのフェーズ2試験(DESTINY-Gastric01)を実施しております。
・本剤は、上記の患者に対する治療を対象として、厚生労働省より、先駆け審査指定制度の対象品目と認定されております。
(ⅲ) 非小細胞肺がん
・HER2陽性の再発・進行性非小細胞肺がん患者を対象としたグローバル・フェーズ2試験を2018年5月に開始いたしました。
(ⅳ) 大腸がん
・HER2陽性の再発・進行性大腸がん患者を対象としたグローバル・フェーズ2試験を実施しております。
(ⅴ) 併用・研究開発提携等
・米国Bristol-Myers Squibb Co.とHER2陽性の乳がん患者を対象とした、免疫チェックポイント阻害剤ニボルマブ(製品名:オプジーボ)との併用療法を評価する臨床試験を実施しております。
・米国Merck & Co., Inc.の子会社とHER2発現の乳がん及び非小細胞肺がん患者を対象とした、免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(製品名:キイトルーダ)との併用療法を評価する臨床試験の実施に関する契約を2018年9月に締結いたしました。
・ドイツMerck KGaA及び米国Pfizer Inc.と、HER2発現またはHER2変異のある固形がんの患者を対象とした、免疫チェックポイント阻害薬アベルマブ(製品名:バベンチオ)及びMerck KGaAが開発中のDNA損傷応答阻害剤(DDR阻害剤)との併用療法を評価する臨床試験に関する契約を2018年10月に締結いたしました。
・当社独自のADC技術を使って創製されたDS-8201の価値最大化を図るため、がん領域のグローバル事業において豊富な経験とリソースを持つアストラゼネカ社と本剤に関するグローバルな開発及び商業化契約を2019年3月に締結いたしました。
② U3-1402(抗HER3 ADC)
HER3陽性の再発・転移性乳がん患者を対象としたフェーズ1/2試験を日本及び米国で実施しております。
2018年6月、本試験における安全性と有効性に関するデータを米国臨床腫瘍学会(ASCO)で初めて発表いたしました。さらに、2018年12月、本試験の最新データを、米国サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表いたしました。これらの最新データにより、本剤の有用性が示唆されました。また、当社ADC技術の応用可能性が示唆されたと考えております。
現在、上記の試験に加え、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤を投与中に病勢進行したEGFR変異のある非小細胞肺がん患者を対象とした米国でのフェーズ1試験を実施しております。
③ キザルチニブ(FLT3阻害剤)
本剤は米国FDAよりFLT3-ITD変異を有する再発・難治性のAML治療を対象として、優先承認審査指定(注4)を受けております。また、米国FDA及び欧州医薬品庁よりAML治療を対象として、希少疾病用医薬品指定を受けております。さらに、2018年8月に米国FDAよりFLT3-ITD変異を有する再発または難治性のAML治療を対象として画期的治療薬の指定を、2018年9月に厚生労働省よりFLT3変異を有するAML治療を対象として希少疾病用医薬品の指定を受けました。
2018年5月にFLT3-ITD変異を有する再発・難治性のAML患者を対象とした、欧米及びアジアでのフェーズ3試験(QuANTUM-R試験)において、主要評価項目を達成し、2018年6月開催の欧州血液学会(EHA)のLate Breaking Sessionで発表いたしました。本試験結果に基づき、2018年10月に日本における製造販売承認申請を行いました。また、2018年11月に欧州医薬品庁、米国FDAに販売承認申請が受理され、それぞれ迅速審査(注5)、優先審査(注6)の指定を受けました。
現在、上記の試験に加え、AMLの一次治療の適応取得を目的としたグローバル・フェーズ3試験(QuANTUM-First試験)を実施しております。
(注)4.優先承認審査指定:米国FDAより、重篤で未充足の医療ニーズが高い疾患に対し、高い治療効果が期待できる薬剤に対して指定されるもので、審査の迅速化が見込まれる。
5.迅速審査:欧州医薬品庁より、公衆衛生及び治療上の革新性の観点から多大な貢献が期待される薬剤に対して指定されるもので、審査期間の短縮が見込まれる。
6.優先審査:米国FDAより、治療上重要な進歩をもたらす薬剤や、現在適切な治療法がない疾患への治療法を提供する薬剤に対して指定されるもので、通常審査期間(10ヵ月目標)に比べ審査期間の短縮(6ヵ月目標)が見込まれる。
(ⅰ) 併用等
・FLT3-ITD変異を有する再発または難治性のAML患者及びFLT3-ITD変異を有し強力な化学療法が受けられない新規AML患者を対象とした、MDM2阻害剤ミラデメタン(注7)(DS-3032)との併用療法を評価するグローバル・フェーズ1試験を2018年12月に開始いたしました。
(注)7.ミラデメタン(DS-3032):固形がん及び血液がん患者を対象としたフェーズ1試験を実施中であります。また、キザルチニブとの併用は、AML疾患動物モデル等を用いた非臨床試験において、単剤に比べて相乗効果があることが示唆されております。
④ ペキシダルチニブ(CSF-1R/KIT/FLT3阻害剤)
本剤は米国FDAより腱滑膜巨細胞腫(以下「TGCT」という。)の治療における画期的治療薬の指定制度の対象品目と認定されております。さらに、希少疾病用医薬品指定を受けております。
2017年10月に欧米でのTGCT患者を対象としたフェーズ3試験において、主要評価項目を達成し、2018年6月開催の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表いたしました。本試験結果に基づく販売承認申請が2019年2月に米国FDAに受理され、優先審査の指定を受けました。
⑤ アキシカブタジン シロルーセル(抗CD19 CAR-T細胞)
2018年10月に厚生労働省より、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、形質転換濾胞性リンパ腫、及び高悪性度B細胞リンパ腫を対象として、希少疾病用再生医療等製品に指定されました。
⑥ DS-1205(AXL阻害剤)
EGFRチロシンキナーゼ阻害剤投与中に病勢進行したEGFR変異のある非小細胞肺がん患者を対象とした、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤ゲフィチニブ(製品名:イレッサ)との併用療法を評価する日本でのフェーズ1試験を2018年10月に開始いたしました。
がん領域における主な研究開発提携等は、次のとおりであります。
① DarwinHealth, Inc.との新規がん標的獲得に向けた共同研究契約の締結
当社は、米国DarwinHealth, Inc.と新規がん標的獲得を目的とする共同研究契約を2018年4月に締結いたしました。
本契約の下、両社は特定のがん種について、同社が保有するバイオインフォマティクス技術(注8)を用いて標的候補の探索、評価及び検証を実施いたします。
(注)8.バイオインフォマティクス技術:遺伝子の配列情報や蛋白質の発現情報など、生命体から得られる膨大な情報をコンピュータの計算能力を駆使して効率的に解析し、生物学的に意味のある有益な情報を抽出する技術。
② Zymeworks Inc.とのバイスペシフィック抗体に関する共同研究の拡大
当社は、2016年9月にカナダZymeworks Inc.とバイスペシフィック抗体(注9)(二重特異性抗体)に関する共同研究及びクロスライセンス契約を締結いたしました。本契約の下、当社は1つのバイスペシフィック抗体の作製において、同社が独自に保有する技術基盤を使用する権利を取得し、一方、当社が保有するがん免疫関連の抗体を活用したバイスペシフィック抗体の研究開発及び商業化の権利を同社に許諾いたしました。
2018年5月に同社との共同研究を拡大する契約を締結し、当社は新たに2つのバイスペシフィック抗体の作製において、同社の技術基盤を使用する権利を取得いたしました。
(注)9.バイスペシフィック抗体:抗体1分子中の2つの抗原結合部位に、異なる種類の抗原が結合できる抗体。
③ Glycotope GmbHとのADCに関するライセンス契約の締結
当社は、ドイツGlycotope GmbHががん治療薬として開発中のgatipotuzumab(抗TA-MUC1抗体)を、当社のADC技術を活用してADC化した薬剤の事業化を目的として、オプション契約を2017年10月に締結いたしました。
2018年7月に、予備的試験の結果を踏まえ、オプション権を行使し、本剤に関する全世界での独占的開発及び商業化権利を取得するライセンス契約を締結いたしました。
④ ロシュグループとのHER2低発現コンパニオン診断薬開発に関する提携契約の締結
当社は、2018年11月にスイスのロシュグループとHER2低発現を特定するためのコンパニオン診断薬(注10)の開発提携契約を締結いたしました。
(注)10.コンパニオン診断薬:薬剤投与前に治療の有効性や安全性を予測し、適切な治療を選択するために利用され、またその治療効果のモニタリングにも利用される臨床検査薬のこと。
⑤ Sarah Cannon Research Instituteとのがん領域のグローバル開発に関する提携契約の締結
当社は、2018年12月に米国Sarah Cannon Research Instituteと、当社が保有するADCフランチャイズを含むがん領域パイプラインの開発加速を目的として、日本を含むグローバル臨床試験実施に向けた提携契約を締結いたしました。
⑥ AnHeart Therapeutics Inc.とのDS-6051に関するライセンス(製品導出)契約の締結
当社は、2018年12月に米国AnHeart Therapeutics Inc.と、当社が保有するROS1/NTRK阻害剤DS-6051に関するライセンス(製品導出)契約を締結いたしました。
当社が日本と米国で実施中のROS1またはNTRK融合遺伝子を持つ固形がん患者及び神経内分泌腫瘍患者を対象としたフェーズ1試験については、本契約締結後も同社と連携して推進いたします。
(2) がん以外の領域
① エドキサバン(抗凝固剤)
日本では、2011年より下肢整形外科手術患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制の適応症で製品名リクシアナとして販売しており、2014年に非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制、並びに静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺塞栓症)の治療及び再発抑制の両効能を追加取得しております。
日本を含めた全世界では、30以上の国または地域で販売されております。
現在、心房細動や静脈血栓塞栓症の患者における本剤の使用について、臨床試験や使用実態下のデータを創出する活動に取り組んでおります。カテーテルアブレーション(注11)を施術される心房細動患者を対象としたELIMINATE-AF試験により確認された有効性及び安全性について、2019年3月開催の欧州不整脈学会(EHRA)2019のLate Breaking Sessionで発表いたしました。
(注)11.カテーテルアブレーション:心房細動患者の脈を正常なリズムに戻すため、カテーテルという細い管を血管から心臓に入れて、不整脈の原因となる電気回路を遮断する施術。
② エサキセレノン(高血圧症治療剤)
本態性高血圧症患者を対象とした国内フェーズ3試験の結果に基づき、2018年2月に国内製造販売承認申請を行いました。
「高血圧症」を適応として、2019年1月に国内製造販売承認を取得いたしました。
現在、糖尿病性腎症患者を対象とした国内フェーズ3試験も実施中であります。
③ ミロガバリン(疼痛治療剤)
日本及びアジアでの糖尿病性末梢神経障害性疼痛の患者を対象としたフェーズ3試験及び帯状疱疹後神経痛の患者を対象としたフェーズ3試験の結果に基づき、2018年2月に国内製造販売承認申請を行いました。
「末梢性神経障害性疼痛(注12)」を適応として、2019年1月に国内製造販売承認を取得いたしました。
日本及びアジアでの脊髄損傷後神経痛の患者を対象としたフェーズ3試験を2019年3月に開始いたしました。
(注)12.末梢性神経障害性疼痛:末梢性神経障害性疼痛は、さまざまな原因によって末梢神経に損傷や機能異常が起こり生じる痛み。代表的なものに糖尿病性末梢神経障害性疼痛や帯状疱疹後神経痛などがある。
④ DS-5141(デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療剤)
㈱Orphan Disease Treatment Instituteと共同で臨床試験を実施しているDS-5141は、厚生労働省より先駆け審査指定制度の対象品目と認定されております。
2018年4月に国内フェーズ1/2試験の結果概要を発表いたしました。本試験において、ジストロフィンタンパク質の明らかな発現を試験期間中は確認することができなかったものの、安全性上の懸念は認められず、遺伝子のエクソン45をスキップすることで得られるメッセンジャーRNAの発現が確認されたことから、開発を加速して参ります。
⑤ VN-100(皮内投与型季節性インフルエンザワクチン)
当社は、当社グループにおけるインフルエンザワクチン事業を見直した結果、戦略上の理由により、VN-100の開発中止を2018年10月に決定いたしました。
がん以外の領域における主な研究開発提携等は、次のとおりであります。
① iPS細胞由来インスリン産生細胞におけるオープンイノベーション研究の開始
当社は、三菱UFJキャピタル㈱(以下「三菱UFJキャピタル」という。)、国立大学法人東京工業大学と、iPS細胞からインスリン産生細胞を作製し、再生医療・細胞治療への活用を目指すオープンイノベーション研究を2019年1月に開始いたしました。
本研究を行うために、2013年に当社と三菱UFJキャピタルが共同設立したOiDEファンド投資事業有限責任組合から共同研究等に必要な資金を全額出資し、OiDE RYO-UN㈱を設立しております。
2025年ビジョンの達成に向けて、重点領域であるがん領域については、抗体薬物複合体(以下「ADC」という。)フランチャイズ、急性骨髄性白血病(以下「AML」という。)フランチャイズ及びブレークスルー・サイエンス(注1)を3つの柱として設定し、戦略的な研究開発活動に取り組んでおります。
また、がん以外の領域については、希少疾患、免疫疾患を中心として、研究の加速化を進めております。
さらに、新規モダリティ(注2)の技術研究を通じて、革新的な創薬技術に基づく研究開発活動にも取り組んでおります。
研究から初期開発段階では、パートナリング、オープンイノベーション、トランスレーショナルリサーチを利用して、標準治療を変革する先進的新薬の継続的創出を目指した活動を進めております。
後期開発段階では、がん領域と循環代謝領域等の製品の開発を進めております。
ライフサイクルマネジメント(注3)では、循環代謝領域を中心に継続した取り組みを実施しております。
(注)1.ブレークスルー・サイエンス:革新的な科学技術を応用した、がん治療法に抜本的な変革をもたらす新規治療手段。
2.新規モダリティ:ADC、核酸医薬、治療用ウィルス、細胞治療等の新規創薬基盤技術。
3.ライフサイクルマネジメント:適応症の拡大や用法・用量の改善等により、医薬品の製品価値を一層高め、長期間にわたりその価値を医療現場に提供するための取り組み。
当連結会計年度の研究開発費は、2,037億円(前連結会計年度比13.7%減)となり、売上収益に対する研究開発費の比率は、21.9%となりました。
主な研究開発プロジェクトの進捗状況は、次のとおりであります。
(1) がん領域
① DS-8201(抗HER2 ADC):トラスツズマブ デルクステカン
HER2が発現した複数のがん種を対象としたフェーズ1試験パート2(症例拡大試験)を日本及び米国で実施しております。
2018年6月、本試験における安全性と有効性に関する最新データを米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表いたしました。これらの最新データにより、HER2の発現程度によらず、また幅広いがん種において、本剤の有用性が示唆されました。
2018年9月、HER2発現またはHER2変異のある非小細胞肺がん患者の安全性と有効性に関する最新データを世界肺がん学会議(WCLC)で発表いたしました。これらの最新データにより、非小細胞肺がんにおいても本剤の有用性が示唆されました。
2018年10月、本試験における安全性と大腸がん患者の有効性に関する最新データを欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表いたしました。
2018年12月、本試験におけるHER2低発現乳がん患者の最新データを米国サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表いたしました。これらの最新データより、HER2低発現の乳がん患者においても本剤の有用性が示唆されました。また、本剤の全ての臨床試験で発現した間質性肺疾患(以下「ILD」という。)について、ILD外部判定委員会の判定結果を含めた中間報告を実施いたしました。
上記の試験に加え、がん種ごとに以下の試験を実施しております。
(ⅰ) 乳がん
・T-DM1を含む前治療を受けたHER2陽性の再発・転移性乳がん患者を対象(3次治療以降)とした、全奏功率を主要評価項目とするグローバル・フェーズ2試験(DESTINY-Breast01)の患者登録(約230名)を2018年9月に完了いたしました。
米国食品医薬品局(以下「FDA」という。)への承認申請目標時期を2020年としていましたが、2019年度前半に前倒しすることを2019年3月に発表いたしました。試験結果については、結果が得られた後、学会において発表する予定であります。具体的な承認申請時期については、今後の米国FDAとの協議に基づいて決定いたします。
・さらに、当該患者を対象とした、本剤投与群と治験医師選択薬投与群の安全性と有効性を比較評価するグローバル・フェーズ3試験(DESTINY-Breast02)を2018年9月に開始いたしました。
・本剤は、上記の患者に対する治療を対象として、米国FDAより、画期的治療薬の指定制度の対象品目と認定されております。
・トラスツズマブ等の前治療を受けたHER2陽性の再発・転移性乳がん患者を対象(2次治療)とした、本剤投与群とT-DM1投与群の安全性と有効性を比較評価するグローバル・フェーズ3試験(DESTINY-Breast03)を2018年9月に開始いたしました。
・HER2低発現乳がん患者を対象とした、本剤投与群と治験医師選択薬投与(化学療法)群の安全性と有効性を比較評価するグローバル・フェーズ3試験(DESTINY-Breast04)を2019年1月に開始いたしました。
(ⅱ) 胃がん
・HER2陽性の再発・進行性胃がん患者を対象とした日本及び韓国でのフェーズ2試験(DESTINY-Gastric01)を実施しております。
・本剤は、上記の患者に対する治療を対象として、厚生労働省より、先駆け審査指定制度の対象品目と認定されております。
(ⅲ) 非小細胞肺がん
・HER2陽性の再発・進行性非小細胞肺がん患者を対象としたグローバル・フェーズ2試験を2018年5月に開始いたしました。
(ⅳ) 大腸がん
・HER2陽性の再発・進行性大腸がん患者を対象としたグローバル・フェーズ2試験を実施しております。
(ⅴ) 併用・研究開発提携等
・米国Bristol-Myers Squibb Co.とHER2陽性の乳がん患者を対象とした、免疫チェックポイント阻害剤ニボルマブ(製品名:オプジーボ)との併用療法を評価する臨床試験を実施しております。
・米国Merck & Co., Inc.の子会社とHER2発現の乳がん及び非小細胞肺がん患者を対象とした、免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(製品名:キイトルーダ)との併用療法を評価する臨床試験の実施に関する契約を2018年9月に締結いたしました。
・ドイツMerck KGaA及び米国Pfizer Inc.と、HER2発現またはHER2変異のある固形がんの患者を対象とした、免疫チェックポイント阻害薬アベルマブ(製品名:バベンチオ)及びMerck KGaAが開発中のDNA損傷応答阻害剤(DDR阻害剤)との併用療法を評価する臨床試験に関する契約を2018年10月に締結いたしました。
・当社独自のADC技術を使って創製されたDS-8201の価値最大化を図るため、がん領域のグローバル事業において豊富な経験とリソースを持つアストラゼネカ社と本剤に関するグローバルな開発及び商業化契約を2019年3月に締結いたしました。
② U3-1402(抗HER3 ADC)
HER3陽性の再発・転移性乳がん患者を対象としたフェーズ1/2試験を日本及び米国で実施しております。
2018年6月、本試験における安全性と有効性に関するデータを米国臨床腫瘍学会(ASCO)で初めて発表いたしました。さらに、2018年12月、本試験の最新データを、米国サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表いたしました。これらの最新データにより、本剤の有用性が示唆されました。また、当社ADC技術の応用可能性が示唆されたと考えております。
現在、上記の試験に加え、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤を投与中に病勢進行したEGFR変異のある非小細胞肺がん患者を対象とした米国でのフェーズ1試験を実施しております。
③ キザルチニブ(FLT3阻害剤)
本剤は米国FDAよりFLT3-ITD変異を有する再発・難治性のAML治療を対象として、優先承認審査指定(注4)を受けております。また、米国FDA及び欧州医薬品庁よりAML治療を対象として、希少疾病用医薬品指定を受けております。さらに、2018年8月に米国FDAよりFLT3-ITD変異を有する再発または難治性のAML治療を対象として画期的治療薬の指定を、2018年9月に厚生労働省よりFLT3変異を有するAML治療を対象として希少疾病用医薬品の指定を受けました。
2018年5月にFLT3-ITD変異を有する再発・難治性のAML患者を対象とした、欧米及びアジアでのフェーズ3試験(QuANTUM-R試験)において、主要評価項目を達成し、2018年6月開催の欧州血液学会(EHA)のLate Breaking Sessionで発表いたしました。本試験結果に基づき、2018年10月に日本における製造販売承認申請を行いました。また、2018年11月に欧州医薬品庁、米国FDAに販売承認申請が受理され、それぞれ迅速審査(注5)、優先審査(注6)の指定を受けました。
現在、上記の試験に加え、AMLの一次治療の適応取得を目的としたグローバル・フェーズ3試験(QuANTUM-First試験)を実施しております。
(注)4.優先承認審査指定:米国FDAより、重篤で未充足の医療ニーズが高い疾患に対し、高い治療効果が期待できる薬剤に対して指定されるもので、審査の迅速化が見込まれる。
5.迅速審査:欧州医薬品庁より、公衆衛生及び治療上の革新性の観点から多大な貢献が期待される薬剤に対して指定されるもので、審査期間の短縮が見込まれる。
6.優先審査:米国FDAより、治療上重要な進歩をもたらす薬剤や、現在適切な治療法がない疾患への治療法を提供する薬剤に対して指定されるもので、通常審査期間(10ヵ月目標)に比べ審査期間の短縮(6ヵ月目標)が見込まれる。
(ⅰ) 併用等
・FLT3-ITD変異を有する再発または難治性のAML患者及びFLT3-ITD変異を有し強力な化学療法が受けられない新規AML患者を対象とした、MDM2阻害剤ミラデメタン(注7)(DS-3032)との併用療法を評価するグローバル・フェーズ1試験を2018年12月に開始いたしました。
(注)7.ミラデメタン(DS-3032):固形がん及び血液がん患者を対象としたフェーズ1試験を実施中であります。また、キザルチニブとの併用は、AML疾患動物モデル等を用いた非臨床試験において、単剤に比べて相乗効果があることが示唆されております。
④ ペキシダルチニブ(CSF-1R/KIT/FLT3阻害剤)
本剤は米国FDAより腱滑膜巨細胞腫(以下「TGCT」という。)の治療における画期的治療薬の指定制度の対象品目と認定されております。さらに、希少疾病用医薬品指定を受けております。
2017年10月に欧米でのTGCT患者を対象としたフェーズ3試験において、主要評価項目を達成し、2018年6月開催の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表いたしました。本試験結果に基づく販売承認申請が2019年2月に米国FDAに受理され、優先審査の指定を受けました。
⑤ アキシカブタジン シロルーセル(抗CD19 CAR-T細胞)
2018年10月に厚生労働省より、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、形質転換濾胞性リンパ腫、及び高悪性度B細胞リンパ腫を対象として、希少疾病用再生医療等製品に指定されました。
⑥ DS-1205(AXL阻害剤)
EGFRチロシンキナーゼ阻害剤投与中に病勢進行したEGFR変異のある非小細胞肺がん患者を対象とした、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤ゲフィチニブ(製品名:イレッサ)との併用療法を評価する日本でのフェーズ1試験を2018年10月に開始いたしました。
がん領域における主な研究開発提携等は、次のとおりであります。
① DarwinHealth, Inc.との新規がん標的獲得に向けた共同研究契約の締結
当社は、米国DarwinHealth, Inc.と新規がん標的獲得を目的とする共同研究契約を2018年4月に締結いたしました。
本契約の下、両社は特定のがん種について、同社が保有するバイオインフォマティクス技術(注8)を用いて標的候補の探索、評価及び検証を実施いたします。
(注)8.バイオインフォマティクス技術:遺伝子の配列情報や蛋白質の発現情報など、生命体から得られる膨大な情報をコンピュータの計算能力を駆使して効率的に解析し、生物学的に意味のある有益な情報を抽出する技術。
② Zymeworks Inc.とのバイスペシフィック抗体に関する共同研究の拡大
当社は、2016年9月にカナダZymeworks Inc.とバイスペシフィック抗体(注9)(二重特異性抗体)に関する共同研究及びクロスライセンス契約を締結いたしました。本契約の下、当社は1つのバイスペシフィック抗体の作製において、同社が独自に保有する技術基盤を使用する権利を取得し、一方、当社が保有するがん免疫関連の抗体を活用したバイスペシフィック抗体の研究開発及び商業化の権利を同社に許諾いたしました。
2018年5月に同社との共同研究を拡大する契約を締結し、当社は新たに2つのバイスペシフィック抗体の作製において、同社の技術基盤を使用する権利を取得いたしました。
(注)9.バイスペシフィック抗体:抗体1分子中の2つの抗原結合部位に、異なる種類の抗原が結合できる抗体。
③ Glycotope GmbHとのADCに関するライセンス契約の締結
当社は、ドイツGlycotope GmbHががん治療薬として開発中のgatipotuzumab(抗TA-MUC1抗体)を、当社のADC技術を活用してADC化した薬剤の事業化を目的として、オプション契約を2017年10月に締結いたしました。
2018年7月に、予備的試験の結果を踏まえ、オプション権を行使し、本剤に関する全世界での独占的開発及び商業化権利を取得するライセンス契約を締結いたしました。
④ ロシュグループとのHER2低発現コンパニオン診断薬開発に関する提携契約の締結
当社は、2018年11月にスイスのロシュグループとHER2低発現を特定するためのコンパニオン診断薬(注10)の開発提携契約を締結いたしました。
(注)10.コンパニオン診断薬:薬剤投与前に治療の有効性や安全性を予測し、適切な治療を選択するために利用され、またその治療効果のモニタリングにも利用される臨床検査薬のこと。
⑤ Sarah Cannon Research Instituteとのがん領域のグローバル開発に関する提携契約の締結
当社は、2018年12月に米国Sarah Cannon Research Instituteと、当社が保有するADCフランチャイズを含むがん領域パイプラインの開発加速を目的として、日本を含むグローバル臨床試験実施に向けた提携契約を締結いたしました。
⑥ AnHeart Therapeutics Inc.とのDS-6051に関するライセンス(製品導出)契約の締結
当社は、2018年12月に米国AnHeart Therapeutics Inc.と、当社が保有するROS1/NTRK阻害剤DS-6051に関するライセンス(製品導出)契約を締結いたしました。
当社が日本と米国で実施中のROS1またはNTRK融合遺伝子を持つ固形がん患者及び神経内分泌腫瘍患者を対象としたフェーズ1試験については、本契約締結後も同社と連携して推進いたします。
(2) がん以外の領域
① エドキサバン(抗凝固剤)
日本では、2011年より下肢整形外科手術患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制の適応症で製品名リクシアナとして販売しており、2014年に非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制、並びに静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺塞栓症)の治療及び再発抑制の両効能を追加取得しております。
日本を含めた全世界では、30以上の国または地域で販売されております。
現在、心房細動や静脈血栓塞栓症の患者における本剤の使用について、臨床試験や使用実態下のデータを創出する活動に取り組んでおります。カテーテルアブレーション(注11)を施術される心房細動患者を対象としたELIMINATE-AF試験により確認された有効性及び安全性について、2019年3月開催の欧州不整脈学会(EHRA)2019のLate Breaking Sessionで発表いたしました。
(注)11.カテーテルアブレーション:心房細動患者の脈を正常なリズムに戻すため、カテーテルという細い管を血管から心臓に入れて、不整脈の原因となる電気回路を遮断する施術。
② エサキセレノン(高血圧症治療剤)
本態性高血圧症患者を対象とした国内フェーズ3試験の結果に基づき、2018年2月に国内製造販売承認申請を行いました。
「高血圧症」を適応として、2019年1月に国内製造販売承認を取得いたしました。
現在、糖尿病性腎症患者を対象とした国内フェーズ3試験も実施中であります。
③ ミロガバリン(疼痛治療剤)
日本及びアジアでの糖尿病性末梢神経障害性疼痛の患者を対象としたフェーズ3試験及び帯状疱疹後神経痛の患者を対象としたフェーズ3試験の結果に基づき、2018年2月に国内製造販売承認申請を行いました。
「末梢性神経障害性疼痛(注12)」を適応として、2019年1月に国内製造販売承認を取得いたしました。
日本及びアジアでの脊髄損傷後神経痛の患者を対象としたフェーズ3試験を2019年3月に開始いたしました。
(注)12.末梢性神経障害性疼痛:末梢性神経障害性疼痛は、さまざまな原因によって末梢神経に損傷や機能異常が起こり生じる痛み。代表的なものに糖尿病性末梢神経障害性疼痛や帯状疱疹後神経痛などがある。
④ DS-5141(デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療剤)
㈱Orphan Disease Treatment Instituteと共同で臨床試験を実施しているDS-5141は、厚生労働省より先駆け審査指定制度の対象品目と認定されております。
2018年4月に国内フェーズ1/2試験の結果概要を発表いたしました。本試験において、ジストロフィンタンパク質の明らかな発現を試験期間中は確認することができなかったものの、安全性上の懸念は認められず、遺伝子のエクソン45をスキップすることで得られるメッセンジャーRNAの発現が確認されたことから、開発を加速して参ります。
⑤ VN-100(皮内投与型季節性インフルエンザワクチン)
当社は、当社グループにおけるインフルエンザワクチン事業を見直した結果、戦略上の理由により、VN-100の開発中止を2018年10月に決定いたしました。
がん以外の領域における主な研究開発提携等は、次のとおりであります。
① iPS細胞由来インスリン産生細胞におけるオープンイノベーション研究の開始
当社は、三菱UFJキャピタル㈱(以下「三菱UFJキャピタル」という。)、国立大学法人東京工業大学と、iPS細胞からインスリン産生細胞を作製し、再生医療・細胞治療への活用を目指すオープンイノベーション研究を2019年1月に開始いたしました。
本研究を行うために、2013年に当社と三菱UFJキャピタルが共同設立したOiDEファンド投資事業有限責任組合から共同研究等に必要な資金を全額出資し、OiDE RYO-UN㈱を設立しております。
このコンテンツは、EDINET閲覧(提出)サイトに掲載された有価証券報告書(文書番号: [E00984] S100FZ3C)をもとにシーフル株式会社によって作成された抜粋レポート(以下、本レポート)です。有価証券報告書から該当の情報を取得し、小さい画面の端末でも見られるようソフトウェアで機械的に情報の見栄えを調整しています。ソフトウェアに不具合等がないことを保証しておらず、一部図や表が崩れたり、文字が欠落して表示される場合があります。また、本レポートは、会計の学習に役立つ情報を提供することを目的とするもので、投資活動等を勧誘又は誘引するものではなく、投資等に関するいかなる助言も提供しません。本レポートを投資等の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。本レポートを利用して生じたいかなる損害に関しても、弊社は一切の責任を負いません。
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