有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100H0SV
ペプチドリーム株式会社 研究開発活動 (2019年6月期)
当社の研究開発は、当社独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPSを活用することによる自社創薬および世界中の特別な技術を有する創薬企業、バイオベンチャー企業、アカデミア等の研究機関と戦略的な提携を組むことで、自社の医薬品候補化合物(パイプライン)の拡充を図っております。
PDPSは、低分子医薬品や抗体医薬の利点を併せ持つ特殊ペプチドを用いた医薬品候補化合物を探索する創薬開発プラットフォームシステムとして開発され、開発後も性能向上に向けた基盤研究を継続して行っております。当事業年度においては、PDPSを用いた探索工程の自動化(オートメーション化)に着手いたしました。自動化が成功すれば、開発プログラムのスピード向上とともに、並行して実施するプログラム数の増加、取得できるヒット候補化合物の質の向上が期待されます。
PDPSを用いた創薬は「特殊ペプチド医薬品」に限らず、PDPSから見い出された特殊ペプチドから得られる情報(標的タンパク質のどこに、どのように結合しているか等)を用いて「低分子医薬品」の開発も行っております。また、特殊ペプチドの高い特異性と強い結合力という特性を生かし、標的タンパク質に薬物を届ける運び屋として使用するPDC(ペプチド-薬物複合体)を活用した「PDC医薬品」や診断薬の開発も行っております。
自社創薬については、ヘマグルチニン(HA)を標的タンパク質とした抗インフルエンザウイルス特殊ペプチド「PD-001」に加えて、抗自己免疫疾患・抗アレルギー性炎症(関節リウマチ、乾癬、多発性硬化症、喘息、ドライアイなど)に関与するインターロイキン-17(IL17)を標的タンパク質とした特殊環状ペプチドを用いた医薬品の研究開発など、複数のプログラムが進行しております。「PD-001」は、単剤での非臨床毒性試験はほぼ終了し、大きな問題がないことを確認しております。現在は、異なる作用機序をもつ薬剤との併用における有効性・安全性の確認等を進めております。
戦略的提携による創薬に関する主な進捗については、JCRファーマ株式会社と2016年2月に開始した共同研究において、血液脳関門(Blood-Brain Barrier:BBB)通過を可能とするキャリアとしての特殊ペプチドの創製に成功したことを2019年5月に発表しました。今回創製したキャリアペプチドは、様々な種類の薬物に対し、PDCとすることでBBB通過能を付与し、脳内への取り込み効率を向上させる効果を有します。このキャリアペプチドは、抗体を中心とするタンパク質、ペプチド、核酸、低分子化合物等、幅広い薬物への応用が可能ですが、既に抗体医薬のBBB通過において極めて有効であることが動物モデルで実証されております。また、低分子化合物を中心とした他の薬物への応用についても、体内動態を含む実証データの確認が進められています。また米国Kleo Pharmaceuticals(クリオ・ファーマシューティカル、以下 クリオ)とは、2017年7月に開始した両社の戦略的共同研究開発において、最初の臨床候補化合物が創製されたことを2019年6月に発表しました。今回創製された臨床候補化合物は、多発性骨髄腫を適応症とする「CD38-ARM」です。骨髄腫細胞表面に発現しているCD38を標的とし、PDPSを用いて特定された特殊ペプチドに、クリオ独自のがん免疫療法のプラットフォームであるARMを結合したPDC医薬品候補化合物です。両社は、今回の臨床候補化合物以外にもARMを用いた複数プログラムの研究開発を進めるとともに、クリオが有するARM以外のがん免疫療法のプラットフォーム技術であるSynthetic Antibody Mimics(SyAMs)、およびMonoclonal Antibody Therapeutic Enhancers(MATEs)を用いたプログラムの研究開発も進めております。
こうした活動の結果、当事業年度における研究開発費は1,141,795千円となりました。
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