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有価証券報告書 抜粋 ドキュメント番号: S100LQ6N (EDINETへの外部リンク)

有価証券報告書抜粋 ブライトパス・バイオ株式会社 事業の内容 (2021年3月期)


沿革メニュー関係会社の状況


当社は、新規の「がん免疫治療薬」の開発に領域を定める、探索研究から早期臨床試験段階にある複数のパイプラインを有する創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴は以下のとおりであります。

(1) 事業モデル

当社の事業モデルは、新規がん免疫治療薬を自社創製もしくは導入し、探索研究から早期臨床試験までを手掛け、国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスアウトし、ライセンス先からライセンス収入を得るものです。
医薬品開発は上市までに一般的に10年以上かかり、投資回収までが長く、開発後期段階になるほど要する資金が大きくなるため、ベンチャーで創薬を事業として成立させるためには、開発投資を早期に回収できる仕組みが必要ですが、医薬品産業においては大手製薬企業が開発途上にあるベンチャーが創製するシーズをライセンスインする取引が豊富に行われています。現在は承認薬に至ったシーズのうち、ベンチャーが創製するシーズの数が、従来の大手製薬企業のそれを上回るようになっています。



この事業モデルでは、上市前の開発段階で、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合を得る販売ロイヤリティ収入等)を得ることを目指します。ライセンス後もライセンス先企業と共同開発し、開発費の貢献に合わせて将来の利益を按分したり、ライセンス先から開発協力金を得て開発を主導する等、色々な形態があります。



当社は、様々な開発ステージにあるパイプライン(医薬品候補)の開発を同時並行で進めることにより、投資早期回収と黒字転換後の継続的な収入の実現を図ります。

(2) 開発中のがん免疫治療薬の特徴

当社は「一人ひとりが、自らの力で、がんを克服する世界を実現する」ことを目指し、新規のがん免疫治療薬の開発を行っています。
がん免疫療法は、がん細胞に対する免疫反応(がん免疫)を惹起または増強させ、がん免疫によりがん細胞を殺傷し、腫瘍縮小、がんの進行・転移抑制、再発予防を図るものです。これまでも、がん治療には約50年に一度生存率を大きく改善する治療法の革新が起こってきましたが、がん免疫治療は、近年において、外科手術・放射線療法・化学療法に次ぐ「第4の治療」としての地位を確立しました。特に、免疫チェックポイント阻害抗体※1は、多様ながん種、がんのステージにおいて標準療法に組み込まれ、がん治療を大きく変えました。一方で、今ある免疫チェックポイント阻害抗体単剤で治療効果が出せる領域にも限りがあることも分かってきており、他の新しいがん免疫治療薬を組み合わせる複合的がん免疫療法や、欧米に続き本邦でも承認されたCAR-T(キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞)療法※2に代表される細胞医薬という新しいモダリティ(医薬品形態)も出て来ています。
がん免疫治療薬は、人がもともと備え持つ、がんを排除する免疫システム=がん免疫を適正に「成立」させることによってがんの治療を図るものです。



がん免疫の成立を妨げる要因(がん免疫サイクルが滞る箇所)は、がん種、がんのステージ、個人差等によって、異なります。当社はパイプラインにおいて、複数のメカニズム/モダリティを有することによって、その滞りの解消に適した方法を選択することを可能にしています。



■当社の事業領域



(3) 開発パイプライン

当社が開発を手掛ける新規がん免疫治療薬のモダリティ(医薬品形態)は、がんワクチン、細胞、抗体に及んでいます。がんペプチド※3ワクチンGRN-1201が最も開発ステージにおいて進んでおり、現在、非小細胞肺がんを対象に本邦初の免疫チェックポイント阻害剤との併用による第Ⅱ相臨床試験を米国で進めています。それに、頭頸部がんを対象とする臨床試験が始まったiPS細胞由来再生NKT細胞※4療法(導入オプションを保有)が続き、その他各種固形がんを対象とする複数の探索・非臨床試験ステージのパイプラインを有します。



GRN-1201(がんペプチドワクチン)
GRN-1201は、欧米人に多いHLA※5-A2型の腫瘍関連抗原ペプチド4種で構成される、米国や欧州を始めとするグローバル展開を想定したがんペプチドワクチンです。より多くの抗腫瘍効果をもつT細胞(リンパ球の一種で、抗腫瘍活性や抗腫瘍免疫促進機能をもつ)を誘導できるよう複数抗原をワクチンとして投与するところに特徴があります。米国でメラノーマ(悪性黒色腫)を対象に第一相臨床試験を実施し、安全性と免疫誘導が示され、現在は同じく米国で、非小細胞肺がんの、免疫細胞にダメージを与える化学療法をいくつも経た患者でなく一次治療(ファースト・ライン)の患者を対象に、免疫チェックポイント阻害抗体ペンブロリズマブとの併用による第二相臨床試験を実施しています。これまでのがんワクチンの開発では、ワクチンで誘導された活性化T細胞が、免疫抑制がかかる腫瘍局所に浸潤したとき「疲弊」(無機能化)してしまうことが、技術課題として挙げられてきました。そこで、本第二相臨床試験では、ペンブロリズマブをワクチンと併用することで免疫抑制を一部解除し、T細胞が本来の抗腫瘍効果を発揮できるようになることを想定しています。一定の累積症例数に至ったところで、中間評価を行い、目標とする奏効率をクリアしていれば、さらに症例数を積み重ねていきます。米国における新型コロナウイルス感染状況を受けて、臨床試験は停止や中止をすることなく継続できていますが、症例登録には時間がかかっています。


BP1101・BP1209(完全個別化ネオアンチゲンワクチン)
一人一人で全く異なるがん特有の遺伝子変異由来の抗原(ネオアンチゲン※6)に対するがん免疫を誘導する完全個別化ネオアンチゲンワクチン※7です。
がん遺伝子変異量(ネオアンチゲンの量)と免疫チェックポイント抗体療法の奏効が相関することから、同抗体によりネオアンチゲンをがんの目印として認識するT細胞の抗腫瘍効果が高まると考えられています。このネオアンチゲンは患者一人ひとりで全く異なるため、一人ひとりに個別のネオアンチゲンワクチンを製造し投与する完全個別化治療となり、一定の患者層に共通した薬剤を大量製造することを前提とする従来の医薬品とは異なる開発法が求められます。
BP1209は、BP1101の次世代型で、投与されたネオアンチゲンワクチンが体内で効果的にT細胞を活性化できるように、樹状細胞※8とT細胞が会合するリンパ節へのネオアンチゲンワクチン送達能を高めた、樹状細胞マーカー抗体結合ワクチンです。現在探索研究を進めています。






BP1401(TLR9アゴニスト)
BP1401は、免疫抑制が強くかかる腫瘍微小環境において抗腫瘍効果を持つT細胞が能動的に賦活化される環境を整えるために、樹状細胞の受容体TLR9を刺激するTLR9アゴニストです。がん細胞を攻撃するT細胞が腫瘍局所に存在しない“Cold Tumor”を、それらが多く存在する“Hot Tumor”へと転換することを図るものです。
BP1401は、このTLR9アゴニストの有効成分である核酸を脂質に織り込む脂質製剤とすることで安定性を高め、標的とするTLR9発現樹状細胞への核酸のデリバリーを高めています。



iPS-NKT(iPS細胞由来再生NKT細胞療法)
iPS-NKTは、iPS細胞から再分化誘導したNKT細胞を用い、固形がんを対象とする新規の他家細胞医薬です。NKT細胞は、多面的な抗腫瘍効果(直接傷害/自然免疫の活性化/獲得免疫の誘導/免疫抑制環境の改善)を持つものの血中に僅かしか存在しないため、従来の培養法では細胞療法として機能を保った細胞を十分量確保できないという課題がありました。そこで、NKT細胞を一旦iPS細胞化することによってiPS細胞ならではの高い増殖能を付与し、そこからNKT細胞に再び分化誘導する技術の開発に成功し、これをがん免疫細胞療法に用いられるようになりました。iPS細胞技術は、現在の患者さん自身の血液から製造開始する自家中心の細胞療法の世界に、ドナー健常人の血液からマスターiPSセルバンクを作製し、このマスターセルバンクから均質な細胞を大量製造する他家細胞療法を可能にしました。




2020年6月から頭頸部がんを対象として、世界でも初となるiPS細胞由来再生NKT細胞療法の医師主導治験が開始されました。固形がんを対象とするマスターセルバンク型の免疫細胞療法には大手製薬企業も参入を表明していますが、臨床試験に進むに当たって先行組の一つとなっております。
当社は2018年に、理化学研究所が進める本開発プロジェクトに参画し、共同研究を進めており、iPS-NKTの独占的開発製造販売ライセンスの導入オプション権を有しています。
当社は医師主導治験を後押しするとともに、医師主導治験に続く企業治験を見据えた製造工程改良を進めています。

BP2301(HER2 CAR-T)
BP2301は、様々な固形がんで高発現しているHER2抗原を認識するキメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞(HER2 CAR-T細胞)療法です。血液がんで70-90%の奏効率に至ることもあり、優れた臨床効果を示し承認されたCAR-T療法を、より多くの患者がいる固形がんへと適応を拡げることを目指しています。固形がんへの展開には、がん免疫に抑制がかかる腫瘍微小環境においてCAR-T細胞が疲弊し十分に機能を発揮できないという課題があります。この課題を解決するために、当社は信州大学の中沢洋三教授及び京都府立医科大学の柳生茂希助教らと新規CAR-T細胞培養法を共同開発し、これを中沢教授の非ウイルス遺伝子導入法と組み合わせることにより、若いメモリーフェノタイプの、体内で長期生存可能で、したがって持続的な抗腫瘍効果発現が期待されるCAR-T細胞の製造に成功しました。最初の治験対象がん種として小児がんの一つである骨・軟部肉腫を対象とする臨床試験開始に向けて準備を進めています。



抗体医薬
BP1200(抗CD73抗体)、BP1210(抗TIM-3抗体)等がん免疫を成立させることを目指した抗体を複数開発しています。T細胞ががん細胞を殺傷する「がん免疫」の成立を妨げる様々な要因が腫瘍局所には存在しますが、その要因のトリガーとなる免疫調整因子の代表的なものがPD-1/PD-L1です。ニボルマブやペンブロリズマブといった抗PD-1抗体は、T細胞疲弊を促す免疫チェックポイントPD-1を抗体で阻害することによってがん免疫の成立が可能となることを、科学的に証明しました。抗PD-1抗体はがん治療の革新をもたらしましたが、それでも奏効率はがん種により10-40%であり、残りの抗PD-1抗体で効果が得られない60-90%の患者においても効果が得られる次世代免疫調整因子抗体となることを目指して開発を進めています。現在複数候補の探索研究を進めています。


(4) 許認可、免許及び登録等の状況について
① 許認可、免許及び登録、行政指導等
医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律、日本では「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、2014年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。

② 知的財産権の状況
知的財産は、個別のペプチドの物質特許を押さえ、その上で複数ペプチド投与を前提とするためその組み合わせの臨床上の有用性を、実際の臨床試験のデータを実施例として特許化する2層構造が骨格となります。なお、GRN-1201については、物質特許を含め当社が特許を有しております。


発明の名称特許登録番号出願国
(登録国)
権利者
上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)由来ペプチド4579836日本当社
7655751米国
2554195カナダ
腫瘍抗原4097178日本当社
4035845日本
4624377日本
CD4陽性T細胞に認識されるペプチド4443202日本当社
副甲状腺ホルモン関連タンパク質のHLA-A24またはHLA-A2結合ペプチド4579581日本当社
がんペプチドワクチン2591799欧州(注)当社
5706895日本
5980303日本

(注)欧州については、ドイツ、スペイン、フランス、英国、イタリアが含まれております。

[用語解説]

※1(免疫チェックポイント阻害抗体)
がん細胞がもつ、免疫チェックポイントと呼ばれる分子を介して免疫の働きにブレーキをかけて免疫細胞の攻撃から逃れる仕組みを阻止するため、免疫チェックポイント分子を阻害してブレーキを解除し、がん細胞に対する免疫反応を高める抗体医薬品。

※2(CAR-T療法)
Chimeric Antigen Receptor T-cell Therapy:キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法
がん細胞が発現する抗原に対する抗体を改変したキメラ抗原受容体を、T細胞(抗腫瘍免疫をもつリンパ球の一種)に遺伝子導入し、がん細胞を抗原を目印として認識するキメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞を培養で増やして投与する治療法。

※3(ペプチド)
アミノ酸が複数個つながったもの。タンパク質の断片。

※4(NKT細胞)
がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に、他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつ免疫細胞のこと。活性化すると、多様なサイトカインを産生し、自然免疫系に属するNK細胞の活性化と樹状細胞の成熟化を促す。成熟した樹状細胞は、更に獲得免疫系に属するキラーT細胞を増殖・活性化させることで、相乗的に抗腫瘍効果が高まる。また、自然免疫系を同時に活性化させることで、T細胞では殺傷できないHLA陰性のがん細胞に対しても殺傷能を持つ特徴がある。

※5(HLA)
HLA(Human Leukocyte Antigen=ヒト白血球抗原)は、体のほとんど全ての細胞表面で発現がみられる、免疫機構において重要なタンパク質で、細菌やウイルスなどの病原体の排除やがん細胞の拒絶、臓器移植の際の拒絶反応などに関与しており「主要組織適合遺伝子複合体」とも呼ばれている。
HLAはがん細胞でも細胞表面上に発現しており、がんワクチンの作用機序においては、がん細胞内でがん抗原タンパクが分解されて生成されたペプチドと結合して細胞表面に移動し、CTLにがん細胞として認識させるように機能する。
HLAは自己と非自己(他)を区別する「自他認識のマーカー」であり、非常に多様な「他(た)」を自己と区別するために、非常に多様な型がある。ペプチドはHLAの特定の型に結合し、型が合わない場合は結合しない。

※6(ネオアンチゲン)
がん細胞に独自の遺伝子異常が起きた際に生じる、遺伝子変異(アミノ酸変異)を含む抗原のこと。個々の患者のがん細胞に生じた独自の遺伝子変異によって発現されるようになったがん特異的な抗原で、正常な細胞には存在しない。免疫系から「非自己」として認識されるネオアンチゲンを標的とすることで、がん細胞を殺傷する免疫を効率よく誘導できるようになることが期待されている。

※7(完全個別化ネオアンチゲンワクチン)
個々の患者のがん細胞にあるネオアンチゲンを探索し、これに対するオーダーメイドのがんワクチン。海外で臨床試験が行われている。

※8(樹状細胞)
枝状、樹状の形態をした突起を有する細胞であり、抗原提示細胞としての機能を有する免疫細胞の一種。体内に侵入した細菌やウイルスなどの抗原を細胞内に取り込み消化し、免疫情報をリンパ球に伝える。がんにおいては、細胞傷害性T細胞にがん抗原の情報を伝達して、がん細胞への攻撃などの免疫反応を開始させる。


沿革関係会社の状況


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